転生者はお人形さんを作るようです 作:屋根裏の名無し
でも感想返信するより早く続き出して♡って皆様思ってるような気がしたので私の選択は間違ってないはず。
許し亭許して!
戦いの火蓋を切ったのは死神の銃撃だった。
アブルリーの雪崩を前方に、彼らを貫くことなどお構いなく敵性対象へと照準をセット。妙に長いガンバレルから赤色に輝く散弾が放たれた。
血液代わりの黒靄を撒き散らしてアブルリーの体が弾け飛ぶ。
靄の奥から飛来する凶弾はターゲットの首筋目掛けて寸分の狂いなく殺到する。
残る二体の死神も風貌に似合わぬ速さで肉薄。
一体は鎖による捕縛を、もう一体は背面から長い銃身での殴打を試みた。
「雑魚の肉壁をチャフに本命の攻撃を潜ませる。いい作戦だね。攻撃の到達も寸前までほとんどわからない。並の術師なら普通にやられてるかもだ」
然して──弾はその役目を果たすことなく、鎖は勢いを削がれ、銃身は動きを止める。
三者三様の攻撃は無限の壁に阻まれてしまった。
次いで襲い来るアブルリーの滝流れに飲まれながらも最強は胡散臭い笑みを絶やない。
「今度はこっちから──おっと」
眼には眼を、歯には歯を、攻撃には報復を。
迂闊にもこちらに接近した刈り取る者へと術式を用いた掌打を繰り出そうとした悟。
しかしそれを防ぐ影が飛び込んできた。マガツイザナギである。
五条悟は急ブレーキをかけざるを得なかった。
浮遊する呪骸が携えたそれの呪力は領域に溢れる力と同一、かつ根源であると六眼は観測結果を弾き出す。
そして、以前己が大敗を喫したものと近似の類であると。
「そのミニチュア武器、『天逆鉾』って名前だったりする?」
アブルリーの群れを範囲を拡大した無限で明後日の方向へ押し退けながら、離れた場所でマガツイザナギと同じポーズを保つ少年に話しかける。
絶え間なく飛来する雷撃に氷結、火炎や疾風は彼を害するには至らず、彼が敷いた無限の前に四散を続けていた。
ややあって少年はしたり顔で聞き返す。
「……そうだとしたら?」
全てを諦めたが故に浮かんだ表情ではなく、例えるなら絶望の暗闇に光明を見出した人間のそれだ。
「最悪でしょ。強制術式解除ができる呪具なんて存在しない方が余程いい。フィギュアサイズとはいえ二本目があるなんて流石の僕でも予想外だよ」
あーやだやだと顔をしかめる悟を他所に少年は悟られない程度に小首を傾げる。
が、わざわざ相手に開示する義理もない。
ともすれば、これはまたとないチャンスなのだから。
⚫
か細い勝機の糸を見出した少年はすぐさま次の一手を繰り出した。
「『ヒートライザ』、『チャージ』!」
七色、続けて赤い呪力が禍津神を包みこむ。
前者は全性能の底上げ、後者は一時的に攻撃力を倍加させるスキルだ。
纏う輝きは特級呪物・天沼矛へと集束。既に高い呪力を更に上乗せして臨界状態へと突入する。
「『空間殺法』ッ!」
姿が掻き消えたかと思えば既にその凶刃は五条悟を射程範囲に収めていた。
居合抜きの体勢で抜き放った矛は一拍の緩急をつけて無数の斬撃を浴びせにかかる。
過去に敗北を喫したそれをタダで受ける悟ではない。
領域の効果により必中攻撃となった斬撃を呪力と無限の双壁を敷いた磐石の態勢で迎え撃つ。
本来なら敵全体に特大物理ダメージを与えるだけの『空間殺法』なる攻撃スキルが悟に届く道理はない。
しかし、その手に握る得物が特級呪物ならば。
それも補助スキルの力を一点集中させた乾坤一擲の大技なれば。
無限にすらも、手が届く────!
「ヤッベ」
数多の軌跡を描いた矛は呪力を裂き、『空』へと切り込んだ。
するりとまではいかない。ひしゃげたような音を響かせ無限が瓦解する。
呪力と無限では飽き足らず、五条悟へと迫る刃。
しかし呪術界最強の名は伊達ではない。予想だにしない事態ではあったが即座に防壁を多重展開。幾重に矛が突かれようとそれを凌駕する壁を作り出してみせた。
「──っはは。いつぶりだっけ」
攻勢が静まり、悟は違和感を覚えた腕を見やる。
一瞬、なれど僅かに壁が間に合わなかったらしい。
ほんの小さなものであるが、手の甲には少量の血が滲んでいた。
「いいね、いいね。もっと見せてくれ」
久しく感じていなかった熱が五条悟の五臓六腑を駆け巡る。
ここに来て初めて、彼は少年を『己に迫る者』として認識した。してしまった。
しかし対する少年は──もうほとんど出し尽くしてしまっていた。
⚫
無限を打破した攻撃はほとんど偶然によるものだと言っていい。そして易々と出し続けることは不可能である。
天沼矛に秘められし力は『術式を構築する』というものだ。国産みの神話に語られるそれに相応しい。
悟は自分を追い詰めた天逆鉾には『術式を強制解除する』力があると言ったが、その真逆の異能である。
同調によるステータスの閲覧で天沼矛に宿る術式を理解し、悟の発言から天逆鉾の術式を知った。
ここまで材料が集まったところで少年の頭に浮かんだのはカリオストロが使う『錬金術』と日本神話における矛の記述である。
錬金術の工程は理解、分解、再構築であるが、天沼矛はどのようにして術式を構築するのだろうか。
国産み神話においては【イザナギとイザナミが天沼矛で、渾沌の坩堝だった大地をこおろこおろとかき混ぜ、矛から落ちた何かが積もり
少年はここに錬金術との関連性を見出した。
つまるところは天沼矛が『何かを分解した上で、それを使って術式を構築するんじゃないか』と彼は推測したのだ。
その証明は先に起こった通り、五条悟の無限を突破することで示して見せた。切った術式を分解することが天沼矛には可能だったのである。
六眼が天逆鉾と似た力を察知したのもそのはず、似たような芸当が天沼矛にもできたからに他ならない。
が、強い力には代償が伴うものである。
天沼矛の力を使うためには溢れんばかりの呪力を込めねばならない。
術式を分解し呪力を蓄えてはいるものの、少年に還元することは一切ない。
身も蓋もない言い方をするなら、天沼矛はべらぼうに燃費が悪かった。
少年の術式によって創造された人形たちは分割されたとはいえ魂を有するために自分自身で呪力を生産することができる。
とはいえ領域展開などの大量に呪力を消費する場合は己の呪力生産量では追いつくことができない。
そのため不足分は魂の大元、製作者から呪力を供給してもらうのだ。
少年は生得術式以外の才の全てをかなぐり捨てた故か、呪力タンクとしての有用性は高い。しかしそれでも限界はあった。
拡張術式の継続使用、領域展開維持、雑魚シャドウや刈り取る者の召喚・使役、ついでにマガツイザナギがスキルと天沼矛を使い続けて戦えば消費に生産が追いつかないのも当然の帰結だった。
本来なら念の為に控えに入れているマジンガも導入して攻め立てるべきではあるが、心的余裕も呪力的余裕も枯渇している少年はそうすることができなかった。
少年はもうどれほど時間が経ったのかも分からなかった。
それほど経過していないのか、ずいぶん長い間戦ったのか。
ともかく、呪力も気力もそろそろ底を突く。
尽きてしまえば激しさを増して喜々と無限を振るう五条悟の勢いに飲み込まれ、長く短い反抗は終わりを迎えるだろう。
────そうして少年は、本日何度目かも分からない一世一代の賭けに出ることにした。
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シャドウの量も最初に比べればずいぶん少なくなり、刈り取る者も途中で溶けるように消失して、その数は残り一体にまで減少した。
マガツイザナギの攻勢も落ち、ヒートアップした悟にギリギリついていくのが精一杯である。
少年は腰を下ろして瓦礫に身を寄せていた。
何百層にもなる無限と呪力の壁を展開したことで易々と切りこむこともできず、手の打ちようがない。
そして最後の刈り取る者も範囲の縮小を代償に威力を高めた『蒼』の乱打によって消失し、シャドウの群れも数える程しか出てこなくなった。
もう終わりか、つまらなそうに悟は息も絶え絶えの少年に歩み寄る。
「僕の勝ち、でいいかな?」
「──ああ、俺の負けだ」
だが、と少年は続ける。
いや、もう少年の声ではないのかもしれなかった。
「【マガツマンダラ】で【マガツイザナギの主】が【負け】る。この後に起こることって何だと思う?」
「君が敗北宣言すると発生するギミックがあるのかい?」
「そんなものは
突如、維持するのも精一杯なはずの領域の一点に強大な呪力が立ち上る。
マガツイザナギが天高く浮かび、携えた国産みの神器を掲げた。
「あれは天逆鉾じゃなくて天沼矛って言う呪物でね。宿る力は『術式を構築する』ってもんでして。厳密に言えば【切った術式を分解して別な術式に再構築する】ってやつなんだが」
こおろ、こおろ。
海原ではなく天を混ぜ。
「なるほど、それで僕の無限を切り裂いたってわけか」
「ご明察。まあクソほど燃費は悪いけど」
こおろ、ころ。
創るは式、この時限りの召霊式。
「で、何しようとしてるんだい?ここまで来たんだし教えてもらってもいいでしょ」
「今日この場限りの即興術式を作ってますよ。単発でしか使うことを考えてないから縛りもかけ放題で」
「そりゃいいね」
こおろ、こおろ。
因果を辿り、
「止めないんです?」
「勿体ないじゃん、ラスボス直前だぜ?」
こおろ、ころ。
いざや来たれい、心の雛形、霧統べしものよ。
意識が寸断された少年の身体は宙に浮かび、天を掻き回すマガツイザナギの下へと辿り着く。
渾沌だった空が天沼矛によって極彩色に染まる。全ての準備は整った。
少年を中心に濃密な呪力の奔流が吹き荒れ、うねり、収束する。
彼を依代に人であり、人ならざるものが招来する。
領域内の瓦礫は消え、漆黒に黄金の波紋が浮かぶ地平が顔を出す。
赤と黒に彩られし空は黄昏色に塗り替えられた。
黒い地面が波打ち、瞼を閉じた銀色で巨大な眼球が浮上する。
おもむろに開いた眼はカメラのレンズのように不規則に瞳の大きさを変え、眼前で笑う五条悟を見据えた。
「呪霊と呼ぶには少々神々し過ぎる。かと言って精霊かと聞かれると随分その在り方が違う」
「さしずめ────仮想神霊、ってところか。それも特級クラスの」
相対する霧と境界の神格と現代最強の呪術師。
そうしてまもなく、
バックベアードって知ってるかい?シナドとかフォーグラーでもいいよ。後サードアイ。
公式ファンブックの189ページ、2巻15話『領域』のところに割と困惑する一節があっておめめグルグルしてきた。
先生は雰囲気で呪術を描いておられる……?(クソ失礼)
今回は一口メモはお休みです。
その代わりと言っちゃあなんですが、マガツマンダラに引き込んでからの決戦でいくつか想定していたルートを紹介しましょう。
①特級仮想神霊
→今回やることにしたルート。一応正規ルートということになるんでしょうか。さすがに分岐の方を書く気力はないので正規もクソもないんですけども。
ペルソナと主、
『マガツイザナギ』をその身に宿し、『マガツマンダラ』の内で『敗北』することで因果を手繰り寄せるとかなんとか。
要は条件揃えて神霊召喚を成し遂げたと思って頂ければ。
②我は影、真なる我√
→なに転生者君?
五条悟に正攻法で勝てない?
転生者君、それは無理に勝とうとするからだよ
逆に考えるんだ、自分が勝たなくたっていいさと考えるんだ
眼には眼を、歯には歯を、五条悟には五条悟を。
シャドウ悟を召喚して五条悟に勝とうとしたルートです。
最終的に五条悟が己の影を認めてペルソナ『インドラ』を獲得するとこまで書いてみましたが、そうなると誰もこいつを止められなくなるぞと思いやめました。
現実世界で使えなくとも、領域展開は【実質的な認知世界】なんで、五条悟の戦略がまた一つ増えてしまうところでした。おお、こわいこわい。
シャドウ悟を早期に受け入れてしまう五条悟のビジョンが視えてしまったのも断念理由の一つです。
ちなみに五条悟のペルソナが『インドラ』の理由は無量空処使う時の手の形──印相が帝釈天印ということから引っ張ってきました。
お蔵入りになっちゃったけどな!
③幾千の呪言√
→マガツイザナギの引き寄せられる力で想定していたのはキャベツ刑事を依代に這い出てきたアメノサギリまでだったんですが、どうにかこねくり回して奴さんを顕現させてしまおうとしたルートです。
バカ目隠しが本腰入れて潰しにかかってきてしまうのでやめました。
たかが『幾千』、『無限』に敵う道理なし。
運良く生き残れても秘匿死刑かホルマリン漬けにされて忌庫で保管されるんじゃないかい?
⑤幾万の真言√
→上記ルートからさらに派生したルート。
『幾千』は『幾万』へと変じ、無限に曇りなき真実を突きつける。
いわゆる光堕ち(何がとは言ってない)ルートです。
さすがにここまでやると一戦にしては冗長すぎるので泣く泣く断念。
正直これ一番やりたかった。
⑥幾億の虚言√
→アメノサギリ√から派生する道筋です。
色々あって転生者くんが一国の安寧秩序を脅かすレベルの怨霊と化します。
天津より連綿と続く呪詛はげに恐ろしきものなり。