転生者はお人形さんを作るようです 作:屋根裏の名無し
皆様、大変長らくお待たせしました。いや、ほんとに待たせすぎました。そろそろSSに時間を捻出できそうです。
以前より短めにはなりますが、何卒ご了承のほどを。
感想も時間かかりますが必ず返信していきますので気長にお待ちくださいませ。
「まだやる?」
「然り。依代がそう望むならば、我はその意に応えよう」
互いに手痛いダメージもなく、既に手札は出尽くした。
戦いは未だ平行線を辿っている。
このまま『茈』が解禁されない限りは寿命の概念が存在しないアメノサギリが優勢か。
対象のHPを半分にする『神の審判』は反転術式を使われれば意味がない。蒼も赫も両者の攻撃を無力化する『混迷の霧』に阻まれてしまう。
本来ホームグラウンドである領域を展開しているアメノサギリが戦いを有利に進めて然るべきだ。しかし彼が手繰る術式の名に違わず、呪力の底はまるで見えない。
ロスを極限まで減らす六眼持ちとはいえ、領域内での燃費は悪くなるはずが、その振る舞いから見るにさほど意に介していないようだ。
「……む」
不意にアメノサギリの動きが止まった。
玉虫色の輝きを湛えていた瞳が濁る。ゆっくりと色が解け、黒に飲まれていく。
そうして変貌した目玉は身が縮んでいるというか、腰の低そうな印象があった。伏し目がちな瞼がそう見せたのか、纏う雰囲気から神威が霧散したのか。
そして悟の六眼は外面の変化以上の呪力の揺らぎを捉える。彼はアメノサギリだったものに警戒するでもなく、親しげに声をかけた。
「や、少年。気分はどうだい?」
「……最悪」
「そりゃ重畳」
静寂に包まれた領域に響いた声は先ほどとは比べ物にならない。たった一言に途方もない哀愁が漂い、同情を誘うようで。
超然とした神の声帯を使っているにも関わらず、響く音に覇気は微塵も感じられない。あるのはただ、諦観と願望が同居した憂いに満ちた音吐だけ。
悟は陰鬱が詰め込まれた声音に面食らった顔をした。
「なんだい、さっきまでの威勢はどこいっちゃったのかな?ん?」
「そのことなんだが、あー……」
身体の表面積の半分以上を占める眼球のせいで流し目が余計怪しく見える。
悟を捉えて離さなかったはずの瞳が逃げるように明後日に向けられているのだ。さもありなん。
「あ、もしかして僕に連れてかれるとか思った?」
巨体が大きく身動ぎした。図星である。
依代が主導権を握ったアメノサギリはめいいっぱい、これでもかと目を逸らす。
彼が何も言うことはない。だが少なくともそれは威厳のある沈黙ではなかった。
「沈黙は肯定と受け取っちゃうよ?そもそも僕は尊重なしに何でも進めちゃうような人間じゃない。いきなり学生から呪術師にワープ進化しろとか、そんなことは言わないからさ」
「やめて!そんな事言ったって俺を無理やり呪術師にする気でしょう!?」
「しないから!もししちゃったら窮屈な箱の中にしまって貰っても構わないぜ!」
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少年の敗因は早とちりの一言に尽きる。
まずは相手がいくら怪しかろうと、実力行使の前に対話を試みてくれた五条悟の意志を汲むべきだったのだ。
だというのに、だというのに少年は、今できる最大限の戦術をもって、まだ何もしていない目隠しに反旗を翻した。お前の好きにはさせん、と。
禍津曼荼羅が解除され、閉塞された世界が無形の呪力となって霧散する。
空中で解けた領域を尻目に割れた窓ガラスが散らばった駐車場にて呪術師と人形師は向かい合った。
「もう一度言うけど、君を無理くり呪術師にするつもりはない」
「ほんと?拉致監禁されたりしない?秘匿死刑されない?」
「ちょっと前までそう考えてたよ」しゃがみ込んだ悟は割れたガラスを人差し指でいじくりながらあっけらかんと答える。
彼は呪骸や諱に振り回されていたのではなかった。マガツイザナギも、アメノサギリも、呪骸使いの指揮下にあったのだ。
「でも君力に振り回されてないし、別に困り事とかないでしょ?なら、僕から言うことはなーんもない。あ、強いて言うなら戦いの前の宣言を反故にされたのちょっと悲しいなーくらい」
「うぐっ」
「なんだっけ?ほら、『どうしても俺を呪術師にしたいんなら──』だっけ?」
ヤンキー座りから立ち上がったバカ目隠しはクネクネしながら距離を詰めてきた。人形師は俯いたまま動くことができず、暗いアスファルトに視線を注いだ。話も聞かずバトルを挑んだ後ろめたさと内股オネエ歩きしてくる190cmの外面優男を直視したくなかったことが彼をそうさせた。
「俺に、どうしろと」
「なぁに簡単なことだよ。君の気持ちいい宣言はこれでチャラにしてあげよう」
五条悟は人の悪い笑みを浮かべた。
「ちょ〜っとだけ僕の手伝いをしてくれないかなって。強く聡い僕の後輩たちを育てるために、ね」
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「……れぎゅれぇしょんに反するんとちゃうん?」
巨大な画面から這い出した呪骸に対してそう酒呑童子の口が動いた。
全てにおいて規格外のサイズを誇るキングプロテアにはさしもの大江の鬼も呆気に取られてしまう。
「手加減された方が良かったか?」
「んふふ、ふふ。いや、半端な加減はいらへんよ。ほれ、やってみぃ」
クスクスと笑い、ちょいちょいと手招きをする酒呑童子。
その横合いからごう、と。とんでもない風切り音を響かせ壁が薙いだ。
圧倒的質量を誇るキングプロテアの巨腕が酒呑童子が言い切る前にその身体を真横に打ち払ったのである。
しかしその腕は、
「イヤやわぁえげつな……そないな腕、人に向けちゃあかんよ。骨抜く前に砕いてまうやろ?」
声が聞こえる。カラカラとした声が聞こえる。
舞い上がった土煙の幕が上がれば、そこには無傷の酒呑童子。
自分の背後に
「『死霊操術』──なかなか使い勝手がよろしやすなぁ」
酒呑童子は受肉体である。不幸にも神便鬼毒を呑んでしまった人間──呪術師に受肉した存在である。
これより未来の話になるが、両面宿儺の術式がその器に刻まれていくように、その肉体に元より宿っていた術式を受肉体が扱えようと何ら不思議なことはないのではなかろうか。
『死霊操術』は大地に眠る生物の残留思念を骨の形で現世に顕現させる術式だ。
そして、ここは大江山だ。一体何百、何千の鬼の遺志が眠っているのだろう。
酒呑童子はそのおびただしい想念をまとめあげ、鬼のがしゃ髑髏としたのである。
「ふふふ、これでトントン。ほな、まぁ……すぐに逝かんとくれやすなぁ?」
勝てなかったよ……。
不用意にそんなこと言うから巻き込まれちゃうんやなって。
主人公君
→多分この後お辞儀した。古事記にもそう書いてある。
5J
→\ババーン/
呪術師にしないとは言ったけど負けは負けだし、何ならバトル直前に呪術師になること賭けてなかった君?と詰め寄り良心につけこんだ。
酒呑童子
→悠仁に宿儺の術式が焼き付くのであれば、ほぼ漂白済の酒呑童子なら器となった呪術師の術式も使えると判断。うわっ……酒呑童子強すぎ……?
キングプロテア
→ボロが出るので喋るなと言われた。
森の中からめっちゃ粘っこい視線を感じるし何か寒気もする。
【直感:A】並の嫌な予感がするので一刻も早くテレビの中に帰りたいけど状況が状況なので出ずっぱり。
後二話か三話くらいで東堂に愛を囁かれる。
失踪してた期間中色々調べたり実際にプレイしたりしてたので、これから作る呪骸の引き出しはそこそこ豊富になってきました。イェイイェイ。
慣れない格ゲーとか謎解き、ノベルゲーとか色々やってきたんでこれで同作品被りは避けれる……はずだ!