転生者はお人形さんを作るようです   作:屋根裏の名無し

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あけましておめでとうございます。
本年は頑張って筆を早くしたいです。

また時間かかってしもた。

もう待ちきれないよ!早く(次の呪骸を)出(さ)してくれ!



#24 それは違うよ!

どうすればいい。

俺は、どうすればいいんだ。

 

呪骸と鬼が刃をまじえる戦場のすぐ側、190cm相当の巨体を器用に縮こませて木の陰に身を潜める男が一人。

そう、東堂葵である。

 

 

瞬きもせず、スウと息を吸い、そして吐く。

鼻腔の奥に届く芳醇なアルコールの匂いに東堂は再び息を吐く。

 

(最初、俺はこの匂いに引っ張られたのかと思った)

 

脳裏に焼き付いた目の前の彼女(キングプロテア)を好きになるイメージ。

普段の自分ならありえないからこそ真っ先に疑ったのは辺りに漂うこのむせ返るほどの酒気だ。

 

だが、認識する限りで自分の身体や思考に異常は見られない。空気に流れる呪力が流入すれば東堂の眼は異常を捉えるだろうし、平衡感覚の欠如や思考の鈍化等は全く見受けられない。

 

(つまり、紛れもなくこれは──)

 

東堂の本心ということだ。

この痛いほど胸に響く鼓動も、彼女から目が離せそうにないのも、今すぐ彼女の下へ駆け出したい衝動も、全部。

 

デカすぎるボディから放たれる一挙一動が、彼の目を奪う。思わず思考も行動も手放して、好きな男の子を目の前にした女の子みたいになってしまうほどに。

それほどまでに東堂にとってキングプロテアは魅力的だった。

タッパがデカいのがタイプだと自負していたが、まさか自分のストライクゾーンがここまで強大だとはついぞ思わなかった。

 

(だが、いいのか?高田ちゃんを愛する俺にそんな資格────)

 

されど東堂はその自分を受け入れることを拒んだ。

彼女のためなら全てを賭していいと思った。起こる奇跡なんか待たずに彼女を抱きしめたいと思った。彼女のためにできないことなど何もない。本気でそう思っていた。

 

だからあまりに身を弁えないこの不躾な熱を、認められずにいた。

俺に二人を愛することなど許されるはずがない、そんな権利はないと。

 

 

『本当に?』

「──!!」

 

 

上裸だった東堂の姿はいつの間にか学ランに変わり、周りの風景も夜の森の学校の教室に早変わり。

声のする方を向けば、冷ややかな目線で東堂を見やる黒セーラーの高田ちゃんが引き戸から半身を覗かせていた。

 

東堂は押し黙る。「高田ちゃん!!!」と声をかける資格は今の自分にはない。

一瞬どころか随分と長い間キングプロテアに心を奪われてしまったのに、どうして彼女と話すことができようか。

 

できない、できるはずがない。

あれだけ恋焦がれた推しの姿が、今はただ辛かった。

立てた契りを破った自分がとても恨めしい、そう思った。

 

「自分に資格なんてない、本当にそう思ってるの?」

「……あぁ」

 

力なく東堂の首は頷いた。

アレは背信だ。間違いなく、高田ちゃんに対する裏切りだ。

 

高田ちゃんはゆっくりと教室に入り、机に突っ伏す東堂の前に立った。

 

「東堂くん、今はまだ決めなくてもいいんだよ」

 

思わず東堂は身を起こした。

彼の目と鼻の先で天使が微笑む。

 

「たくさん迷って、いっぱい悩む。それから答えを出してもいいんじゃない?」

「君が納得することが、私は一番大切だと思う」

 

東堂は彼女に後光を見た。

遍く心を包み込む、大いなる愛に出会ったのだ。

 

「たか、だ、ちゃん……俺は」

 

知らずのうちに涙を流す。とめどなく想いが溢れてくる。

東堂の頭を高田ちゃんは優しく撫でた。

 

「東堂くん、今君がやるべきことは?」

「──ああ、わかってる」

 

涙を拭い、席を立つ。

頭を下げて外に駆けだす背中をアイドルはその姿が見えなくなるまで見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砂塵が舞い、水が走る。

龍を象る土塊の大口を蹴破り、鬼は錬金術師の懐に飛び込んだ。

 

「……チィ」

「ま、そう簡単には取れへんか」

 

驚異的な膂力から放たれた蹴撃は錬成された防壁により阻まれる。その防壁を足場に追撃を試みた酒呑童子に四方八方から刃が迫った。事も無げに身をくねらせて回避して、大きく距離をとる。

 

「そろそろ潮時やろか。のらりくらりやられるのも飽きてきてもうたしな」

 

カリオストロは答えない。ただ鋭い眼差しを彼女に送るのみ。

 

「死にはったらよろしおす、領域展──

 

言い切る前に、酒呑童子は不意に振り向いた。

目を見開く。己の背後にあるべき骨の巨人は遥か後方で()()()()()()、代わりに筋肉モリモリマッチョマンの変態が拳を振りかぶっていた。

 

「──な」

「オラァ!!!」

 

渾身の一撃は吸い込まれるように鬼の鳩尾に叩き込まれる。

 

その瞬間、黒き閃光が迸った。

打撃とタイミングが合致した呪力によって空間が局所的な歪みを引き起こし、拳の威力を桁違いにはね上げる。

 

酒呑童子は勢いよく吹き飛び、風を切りながら樹木をなぎ倒し、そうして山の岩壁に身体をめり込ませた。

 

「プロテアちゃん」

「えっ?あっ、わっ……は、はい!」

 

まさか誰に呼ばれると思うだろう。この世で片手で数える人数しか知りえない自分の名前に思わず役割を脱ぎ捨ててしまうキングプロテア。

 

慌てる姿も愛らしいな、そう思いつつも東堂は構えを解かなかった。

 

「ここは、俺に任せろ」

 

それだけ告げて、東堂は自らが作った倒木の道を追跡する。

 

東堂葵が今やるべきこと、それは────彼女(キングプロテア)を目の前の脅威から遠ざけることだった。

 

 

 

走り去った筋肉モリモリマッチョマンの変態に流され、ここまで黙っていたカリオストロがやっと口を開く。

 

「なあ、プロテア」

「……なんでしょうか」

「アレ知り合いか?」

「そんなわけないじゃないですかぁ!!」

 

 




カリオ「知り合い?」
プロテア「それは違うよ!」


設定を練っている時が一番生を実感する。
それをアウトプットするのが中々に辛い。

自分で作った縛りで呪骸の種類を制限されるの中々にアレ。
ちなみにサブタイトルとか文章中に次の呪骸のヒントが隠されてたり隠されてなかったりただのブラフだったりします。



東堂
→キングプロテアの名を初見で言い当てているのは彼女の身体からキングプロテアの香りがしたから。
いつかの個握の時に高田ちゃんは花が好きという情報を手にした東堂は様々な花を京都校の花壇で育てている。キングプロテアはそのうちの一つである。

キングプロテア
→素が出た。今日は出すつもりはなかったのに。
少し前にカリオストロから香水を貰う。奇しくもその香りは彼女の名前と同名の花のものだった。

カリオストロ
→東堂が介入したせいで酒呑童子と共謀した企みがおじゃん。
詳細はそのうち。

酒呑童子
→闖入者に黒閃をキメられた。不憫。
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