転生者はお人形さんを作るようです 作:屋根裏の名無し
ちょっと呪骸作成の描写を突っ込まないとモチベ鎮火してしまいそうだったのでこんなことに。
酒呑童子はどうなったのとか、東堂とプロテアの恋の行方とかは完成次第お出ししますので何卒……。
「そろそろ作るか……♠」
後に『大江山事変』と呼ばれた京都の一大事を、望んでもない二正面作戦を強いられつつも、何とかその一切を乗り越えることができた一行。
ヘトヘトに疲れて修学旅行から帰って二週間、そろそろ今後の方針をまとめるため、会議を開くことにした。
その開口一番、人形師は己の欲望をこれ以上なく正直に吐露したのだった。会議はこの時点で型なしである。
カリオストロは何度目かも分からないため息を吐いた。
「お前の魂が不安定な状態だって前も言ったよな?」
「言ったな。でも……」
「でも?」
「禁断症状がでてきてね。そろそろ何か作んないと手がガクガクしてきて震えが止まらないんだ。ほら見てくれ、貧乏ゆすりも出てきた。あっそろそろ足つる」
マスターの姿か?これが……。
カリオストロは視界を覆って天を仰いだ。つける薬を錬金するよりコレを再構築した方が早いのではとすら感じた。
「救いようがねぇ……。プロテア、何か言ってやれお前のお父さまによ」
アルコール依存症のようにバイブレーションする父親を前に話を振られるキングプロテア。
粘土を与えれば直ぐでもこね始めそうに手をワキつかせる彼が不憫に見えたのか、ジト目を明後日に向けて答えた。
「私は別に作ってもいいと思います、です」
「オイコラ甘やかすな目をそらすな」
「……いいのか!!いいんだな!?禁創作期間は解除なんだな!!?」
「乗るなバカ!目を輝かせるな!!……と、言いたいところなんだが、今の布陣のバランスが悪いのは確かだな」
立ち上がったカリオストロの言葉は尻すぼみに小さくなっていく。
期待の眼差しをマスターに向けられ、鬱陶しそうに頭をかいた。
「
「キラーマジンガにコジマ粒子はな──」
「そういうのいいから」
無常にもすげなく遮られる。ぶー垂れながらも人形たちの主はゆるゆるな頭を振り絞って案を出していく。
「前衛2、中衛1、後衛2。バトルだけならこれでいい。なら他に重視すべきもの……盤面だけじゃなくてもっと上の視覚で……あっ」
「思いついたか?」
「指揮官、情報、拠点が足りない」
カリオストロは目線で続きを促し、マスターは頷いて説明を話し始める。
「カリオストロ、キングプロテア。二人は指揮官的な役割ってできる?」
「……ご期待には添えないかもです」
「できないわけじゃねぇがオレ様も本職には劣る。本来コマンダー的な役は中枢がやるべき仕事だが……ま、物作り一点特化のお前じゃ荷が重いだろ」
身を縮めるプロテアにあっけらかんと告げるカリオストロ。マスターは違いないと身をすくめた。
彼は視野が広い方ではなく、他の呪術師に比べ反射神経など毛ほどもない上、戦場でそこまで機転が利く人間かと言えばそうでもない。
彼の代理として現場判断を請け負う存在は今後必要になってくるだろう。
「で、次は情報か」
「何をするにもまず判断の材料は必要だ。相手の配置だとか、現在位置はどこかとか、どんな術式を使うのか……今の俺たちには圧倒的に不足してる。前回もほとんど場当たりの対応だったし」
「情報の集め方ってどうするんですか?月の私みたいなデータ化?それとも……」
「データに間接・直接干渉できる呪骸か、もしくは人海戦術ができる呪骸でいこうかな、と考えてる。例えば……成長と進化を繰り返す好奇心旺盛なハッキングAI、とか。まだ草案段階でしかないから決定ってわけじゃないけどね」
幾つか呪骸の候補をピックアップしつつ、次の不足に話は映る。
「最後は拠点か……いや、あるよな?」
「そうですよ!もうあるじゃないですか、ここ。狭いですけど」
「そう、そこなんだ」とすかさず人形師は指パッチン。
「現時点でマヨナカテレビの拡大はできない。この中で作るにも限界があるし、かと言って自宅を改造するわけにもいかない。父さんも母さんも何も知らないパンピーだし」
「じゃあどうするんだ?家の裏山にでも何か建てるか?」
「いや、それじゃ戦場になるのは俺の街だ流石にそれは堪える。なので────」
「移動拠点型呪骸、作るぞォ!」
天に拳を突き上げ立ち上がった彼の声だけが虚しく木霊する。
造形馬鹿の欲求は留まるところを知らない。
もちろん進んで賛同する呪骸は残念ながらいなかった。
キラーマジンガもマガツイザナギも、この時ばかりは首を横に振った。
そうして人形師は呪骸たちに裏切られ、「頭を冷やせ」とマヨナカテレビの中で半日ほど縛られて放置されてしまったのだった。
⚫
人形師が奇天烈な発想を咎められてから一ヶ月が経過した。
ヤツは諦めていないどころか、荒唐無稽の現実化に王手をかけてしまっている。
「呪骸のみんな!楽しんでるかーい?」
「ウェーイ!」
「君は呪骸じゃないでしょ」
海上を滑るように走る船舶の甲板でノリノリの男が二人。
一人は言わずもがな人形師、そしてもう一人は──
「どうしたんだいカリおっさん。海風に吹かれるのは結構サマになってるけどブスっとしてちゃね」
「気安く撫でんじゃねぇ。不機嫌なのはお前のせいだ、『五条悟』。で、これどこに向かってんだ?アイツは秘密だ秘密だってずっと口を割らねぇし」
目を釣り上げるカリオストロを尻目にして、海風に髪をなびかせながら、五条悟は目隠しをスっと持ち上げ水平線を見つめた。
「
モチベの低下は本当に死活問題なのでご理解頂ければ。
NEXT DOLL's HINT! 『海底』
転生者くん
→禁断症状発症。
魂削れて死ぬかもしんないけどめっちゃデカい呪骸作りたいいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!
アル中みたいな症状出すのはやめないか!
鹿児島県方面に船を走らせ、呪骸にすら全貌を明かさず何かを企んでおり、鹿児島での事が済んだら外国の方にも船を走らせる計画を立てている。
鹿児島県に何か触媒があるんですかね……?
5J
→移動拠点型呪骸!?何それめっちゃ面白そうじゃん!
超巨大呪骸の一番最初の搭乗者にさせることを対価に転生者くんは5Jの手を借りた。
船舶の一つや二つ彼ならきっと持っていることでしょう。最強なので。
カリオストロ
→苦労人。一応転生者くんのことを心配しているのだが、ヤツの欲望の強さは想定の外だった。
キングプロテア
→そろそろ狭い部屋がしんどくなってきていたのでありがたい。
できれば体育館並みの部屋が欲しい。
マガツイザナギ
→目的地の方向に自分と似たような気配を感じている。