転生者はお人形さんを作るようです   作:屋根裏の名無し

30 / 35
※2022年4月1日午前2時19分現在、何かが空を飛んでしまった箇所を修正。


多分覚えてる人少ないと思うんで、『#18 青春アミーゴ』『#26 鋼鉄の咆哮』の前半だけちらっと見てから今回のお話をご覧頂きたい。




#29 What's the next stage?

『よう、呪詛師。息災か?』

 

酷くねっとりとして、しかしか細い声が、ようやく眠りにつけた男の耳を打った。

男は薄く目を開き、嘆息。自分を寝かせていた布団から気だるげに身を起こす。

やっと猿の惑星から切り離されたと思えば寝込みを襲われるとは。まさか呪術師ではなく呪霊だとは、夢にも思わなかったが。

 

「……」

 

深淵が人の形をして胡座をかいている。

差し込む月明かりが不意に部屋を照らすが、輪郭を残して他を捉えることは叶わない。まるでその部分だけが世界から切り取られたように、黒一色で塗りつぶされていた。

 

声にせよ姿にせよ異様そのものだ。しかしそれの存在は明らかに心許なかった。期限間近の蛍光灯でもそこまで明滅はしないだろう。

 

『俺は酒呑童子。()()()、取引をしよう』

 

 

そんな夜から早数ヶ月、東堂葵によって王手をかけられていた酒呑童子の命は、彼女を失うことを良しとしなかった夏油傑によって救われる。

呪霊操術に少なくない損害こそ出したもののまんまと逃げ果せることができた二人は、京の都を見下ろせる山中に腰を下ろしていた。

 

「お前は『私の呪霊確保に協力し、私と私の“家族”には手を出さない』」

「その代わりあんたはんは『うちの命の喪失を防ぐ』。期限は百鬼夜行とやらの幕が引くまで、そういう契約やったなぁ」

 

彼らの視界には焼ける京都が映っていた。

猿の悲鳴、人の怒号、崩れる家屋、立ち上る黒煙。

……かつて栄華を極めた都はその面目を大いに失いつつある。

 

「街はぼうぼう、山には巨人。ご要望には沿ったつもりやけど……」

 

帳を降ろさせずにあの巨人(キングプロテア)を市井の下に晒し、街には適度に火の手を放つ。

猿の心とは弱いもので、たったのそれだけで呪いを集めてしまう。

 

「範囲が広すぎる。次からは量より質を取れ。後は死にかけて面倒を増やすな」

「はぁい、仰せの通りに。ほな、次はどうする?」

 

酒呑童子はなあなあなあと、夏油の周りをぐるぐるぐる。

さすがに鬱陶しくなったのか、夏油の細い目がさらに細くなる。

 

「何が目的だ、酒呑童子」

「何って……くどいし、疑い深いなぁ。前も一回お話したやろ?うちの目的は──お気に入りが輝くさまを見たい、それだけなんよ。だから夏油はん、あんたはなぁんも気にせんで、思うままにうちを使ってええの。な?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいいやっほおおおおおお!!!」

 

 

──戦艦に心躍らない男はいるだろうか?

いや、ない。全ての男は浪漫が大好きである(諸説あり)。

 

以前交わした約束通り、完成した呪骸──この艦体は元々呪霊だったものだが──の内部へ五条悟が一番乗りした。

 

「ようこそお待ちしておりました、五条悟様。私、ムサシと申します。お父様の御友人として、歓迎させて頂きます」

 

うだるような暑さにも関わらず、白いシャープカに厚手のコートを着用した少女がしずしずと一礼する。

奇声を上げて乗艦した彼も思わず「あっ、こちらこそどうぞよろしく」と調子が狂ってしまった。

 

五条は彼の後ろにいた人形師の背後を一瞬で取って耳打ちする。

まこと、見事な術式の無駄遣いである。

 

「……これ、君の趣味かい?」

 

これ、とは明らかにオーバーテクノロジーじみた内装のことだろうか。それともこの艦を任せている少女のことだろうか。もしくは人形に『お父様』と呼ばせている──実際のところ彼女が勝手に呼び始めたのだが──ことだろうか。

 

「悪いか?」

「別に♡︎ㅤいやね、前にメカメカしいのを見てても思ったけど、随分と精巧に作ってんだなぁって。うちの学長も呪骸作ってるけど、ぬいぐるみ専門だからさ」

「学長さん、ねぇ」

「そ。呪術高専東京校学長、夜蛾正道。人形の趣味は合わないかもだけど、話を聞いて損はないと思うよ」

「……質問、構いませんか?」

「おや、ムサシちゃんは学長が気になるかい?」

 

黙って二人のコソコソ話──もちろん彼女の耳には筒抜けだが──を聞いていた彼女がずい、と一歩踏み出した。

 

「いえ。その夜蛾正道様の呪骸──クオリティはいかほどかと思いまして」

 

穏やかな声色ではあるものの、隠しきれないドスが利いていた。

五条悟は困ったように「うぅ〜ん」と唸る。アイマスクの下の目はきっと宛もなく動いているのだろう。

 

「精巧さ、で言えばきっと君たちの方が勝っているよ」

「………………安心しました。では、ご案内致しますね。ご一緒にお越しください」

 

たっぷり間を置いてから艦内へ歩き出した彼女に二人はすぐにはついていけなかった。

 

「僕は否定はしないよ。趣味は人それぞれだし」

「ムサシは最初からああでしたッ!」

 

 

その後慌ててムサシの背を追いかけた二人は、いくつかの部屋を回って甲板にたどり着いた。

 

「あら、マスター。早かったですね」

 

一体いつの間に植えたのだろうか。この戦艦が完成してから数日も経過していないというのに。

ヤマトは新たに増設されたと思わしきプランターに水を巻いていた。

 

「それナノマテリアル*1製?」

「カリオストロ製です。美味しいですよ?」

 

まあ、再現されたものより安全性はあるだろう。

少年と五条は切られたスイカを怖々食べてみた。

さすが開闢の錬金術師といったところか、お味は中々のものだった。

 

「制御を失っていた呪霊が身体を持って家庭菜園とは、世の中わかんないもんだ」

「本当は四六時中マスターをお護りをしようかと思っていたんですけど、カリオストロに『マスターはお前がそう在ることを望んじゃいねぇ』って断られちゃって……

って、そっちが先じゃないわねごめんなさい!その節はありがとうございました。悟さん」

 

居住まいを正して頭を下げたヤマトに五条はいやいやと大袈裟に手を振った。

 

「僕はただのアッシーくんだからそんなかしこまんなくていいって。ヤマトちゃんがこれからは彼の力になってあげてくれれば、僕にとっては一番ありがたい」

「──はい、必ず!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──一通り見て回ったけど、君が懸念していた暴走の予兆はないね。僕の六眼が保証してあげよう!」

 

ドン!と胸を張った五条に人形師は良かったと胸を撫で下ろす。

 

「にしても君は無茶をする。人形一つ隔てているとはいえ、呪霊を二体も取り込むなんて」

「そうでもしないと、ヤマトは近いうちにダメになってたじゃんか」

「その前に君がダメになっちゃうかもしれなかったんだぜ?」

「呪霊って取り込んだらダメなの?」

「……仮に取り込める術式があったとしても、きっとやめておいた方がいい」

 

五条の口にしては珍しく、軽薄な物言いがなりを潜めていた。が、それもすぐに終わる。

外していたアイマスクをキュッとつけ、人の悪い笑みを浮かべた。

 

「だって君が僕との約束の前にくたばってもらっちゃ困るからね」

「──約、束?」

「……ちょっとちょっとちょっと!そんな唐変木で朴念仁な鈍感系主人公みたいな首の傾げ方しない!『ちょ〜っとだけ僕の手伝い』するって、言ったよね!ね?

 

一も二もなく降参のポーズ。

さすがに勘違いで戦闘を仕掛けた挙句、敗北したそれを出されては仕様がなかった。

 

「ヒトマルマルマル、おやつの時間。ところでマスター、一体何をしているの?」

「……過去のやらかしを掘り返されて白旗上げてる」

「そう。サトル、お求めのアイスココアを持ってきた」

「サンキュー、イオナちゃん」

 

冷えたココアを口に運んだ五条が「ああそうそう」と思い出したように口にする。

 

「今日はこれから課外実習でね」

「そうすか。引率頑張ってください」

「呪術実習の内容は──明確な意志疎通ができる存在との戦い方なんだけど」

「イオナ、この人だけボッシュートできる?」

「できない。白旗は投降の証だから」

「イオナ……?嘘だよな……!?」

「さっすが!話がわかる!イオナちゃん、面舵いっぱい!針路東でヨーソロー!」

「合点」

「ちょっと待ってぇぇぇええ!!!?」

 

確かに手伝いするとは言ったが今日とは言ってない。

そんな少年の想いを裏切るように戦艦は回頭。目的地へと航行を開始した。

 

*1
蒼き鋼のアルペジオにおいて、『霧の艦艇』を形作る基本因子。彼女たちのコアがこれらをコントロールすることで船体や武装、生物等を含めあらゆるものを再現することが可能。ただし、劣化すると砂状になってしまうので注意




みんなは軽率に投降しないように、気をつけよう!

めっちゃ頑張ったので褒めて(乞食)


純正サマーオイル
→まだ開頭手術してない。乙骨くんに目星を付け始めた辺り。
そろそろ水曜スペシャルみたいな感じで呪霊ゲットするの心身共にしんどくなってきたなぁと思っていたところ、その心を受信した酒呑童子(侵される前のすがた)に契約を持ちかけられる。

夏油傑は『彼女の生命の喪失を防ぐ』代わりに、酒呑童子は『夏油傑の呪霊確保に協力し、彼と彼の“家族”に手を出さない』というのが今回の縛りの内容。

鬼の思惑が全く読めないので頭を抱えている。
美々子、菜々子。その鬼に近づくんじゃありません。


酒呑童子(侵される前のすがた)
→一人称、俺。当然ながら()()酒呑童子になる前の彼ももちろん存在している。
大江山でドンパチする結構前に夏油傑と接触し、契約を交わした。
その時にはその時なりの思惑があったようだが、復活直前にとあるイレギュラーによって存在を丸ごと侵されてしまった。


酒呑童子(侵された後のすがた)
→一人称、うち。
存在を侵されたとしても縛りは続行中。瀕死状態になったことを感知した夏油が嫌々ながら救出にやってきた。

現在は自分を侵しやがった者に興味が湧き、それが最高に輝くさまを見たいがため、舞台を整えている。夏油傑に協力するのも、そのためである。


転生者くん一行
→酒呑童子の大立ち回りや夏油傑の存在により優先度が減少し、ついかで五条悟が転生者くんの呪術高専に対する印象を悪化させないために根回しを行ったため、無事?に京都から地元へ帰ることができた。


〜時系列〜

2016年n月
→転生者くん、ミミッキュを作る。

2016年n+1月
→転生者くん、マガツイザナギを作る。

2017年一月辺り
→転生者くん、キングプロテアを作る。

2017年?月
→酒呑童子、夏油傑と縛りを結ぶ。

2017年3月辺り
→転生者くん、カリオストロを作る。

2017年4月辺り
→乙骨憂太くん、呪術高専へ編入。特級過呪怨霊・祈本里香一度目の完全顕現。
→転生者くん、キラーマジンガを作る。

2017年5月頃
→転生者くん(中学三年)、修学旅行で京都へ。

①加茂・メカ丸と接触。同時刻、酒呑童子受肉。
②5Jと接触。同時刻、酒呑童子VSカリオストロ。
③5Jに敗北。同時刻、夏油傑と東堂葵が接触。

2017年7月頃(イマココ)
→夏休み!!!
5Jとクルーザーで鹿児島近海まで呪霊戦艦ヤマトを確保しに行く。
確保後、呪霊戦艦ムサシと伊401の残骸をサルベージし、イオナを作る。


〜今後の予定〜

2017年9月頃
→乙骨・狗巻、ハピナ商店街にて任務。
→京都姉妹校交流会。

2017年立冬
→夏油傑が宣戦布告。

2017年12月24日
→百鬼夜行、開催。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。