転生者はお人形さんを作るようです   作:屋根裏の名無し

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祝福は呪いであり、呪いは祝福である。

汝、その血は祝福なりや?


※時系列は呪術廻戦0、乙骨が狗巻と任務に行く前辺り。
2017年7月頃です。



#30 それでも。

木漏れ日さえ届かない鬱蒼とした森を這う道路。久しく手入れが届いていないのか、方々に伸びる枝や窪んだコンクリートに溜まった泥水が数十秒もせずに視界に現れては消えていく。

補助監督はそれらを鬱陶しげに、しかし巧みなハンドルさばきで避けながら、呪術師三名と呪骸一匹を山の深奥へと運んでいく。

 

そうして程なくして薄汚れてしまったタイヤは目的地の前で足を止めた。

奥まった森のさらに深く、廃墟となって久しい暗い緑に包まれた大きな洋館だった。

 

「いかにも、って感じだな」

 

いち早くバックドアから転がり出たパンダじゃないパンダはすんすんと鼻を鳴らした。

汚れるのが嫌なのか、比較的乾いたアスファルトに両足を置いたせいで変な体勢を強いられている。

 

「……そうだね」

「しゃけ」

 

その後ろからは若干緊張した面持ちの乙骨憂太と心配ないさと言いたげに白い制服の背中を小突く狗巻棘が続く。

 

今回のチームアップで唯一の特級術師は少々クマのある目で森の洋館を眺める。

あまり実戦経験が豊富ではない乙骨でも呪霊がここを根城にしていてもおかしくないということはわかる。

しかし、何かおかしい。ヘンとしか言いようがない違和感を彼はまざまざと肌に感じていた。

 

「……あからさま過ぎねぇか?」

 

フィジカルギフテッドの感覚も何かを捉えたようだった。

最後に降車した禪院真希はトランクから薙刀を取り出しながら眉をひそめる。

 

乙骨憂太、狗巻棘、禪院真希、パンダの以上四名は本日この屋敷に巣食う呪いを祓う任務を請け負うことになった。

依頼者は何を隠そう我らがバカ目隠し(五条悟)

全員で訓練や座学をすることはあれど、実戦ではペアや他の呪術師と組むことが何かと多かったのだが、ここに来て一年生の総力でもって事に当たるとはこの場の誰も思っていなかった。

 

依頼者によれば、この陰鬱な雰囲気漂う洋館には『明確な』意思のある呪霊が潜伏しているとのこと。

 

『狡猾なタイプとの実戦経験は必ず今後の役に立つと思うからね、みんなで頑張って!』

 

最後にそう言い残して、担任は風のように消えてしまった。

……風のように消えるのはいつものことなのだが。

 

そうして意図が分からないまま連れてこられた場所がここだ。

通常呪いは多くの人間がいる場所ほどその質が磨かれる。

もちろん肝を試したいパンピーがよく足を運ぶと思われる心霊スポットなる場所も負の感情──呪いが滞留するわけだが、ここは市街地からは遠く離れており、主だった公共交通機関もない。雰囲気があるとはいえ人の気が無さすぎる。

 

人が感情を差し向けることさえなく、忘れ去られ風化を待つだけの洋館に、このパーティで挑むべき呪霊がいると真希は思えなかった。

 

そう、じゃんけんで負けた憂太がへっぴり腰でその錆びた門を開くまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軋んだ門が開く、錆び付いていた割に随分と呆気なく。まるで歓迎するかのように嬉々として。

門から続くのは苔むした石畳。石の流れは入口と洋館のちょうど中央でくるりととぐろを巻き、そこには大きな噴水が鎮座している。

 

今もなお過去の裕福さを顕示する装飾設備。

そのフチにポツリと、人間大の精巧な人形が腰かけるようにして放置されていた。

 

「おいパンダ、感情のある呪骸はお前だけって話じゃなかったか?」

「俺はまさみちに作られたパンダだ。自然発生した呪骸の方は管轄外だな」

 

ため息と共に「あっそう」と真希は零す。

 

「おい、なに余所見してんだ」

「あっいや、そういう訳じゃ」

 

視線を暫定目標の呪骸に戻した乙骨はぎこちなく閉まっていた刀を己の手に握らせる。

 

「でも、今までのと気配が違──」

「ええ、そうです。私は戦うために作られたわけではありませんから」

 

悪寒。

冷えきった風が吹いた。

 

「はじめまして、呪術師様」

 

厳かに動いた唇が言葉を紡いだ。

 

「私は人形。ここで、あなた方の到着を待っていました」

 

ゆっくりと立ち上がり、石畳を歩む人形の姿は徐々にそれに良く似た──されど違う何かへと変貌していく。

喪服じみた服は狩りの装束へ、球体関節の指は白磁色の肌に覆われていく。

 

()()()、呪いを祓うのだろう?」

 

いつの間にか現れた双刃を手に、彼女は立ち塞がる。

 

「であれば、力を示せ。この私に」

 

大いなる壁として、乗り越えるべき障害として。

 

「──恐ろしい死を迎えたくなければ、死力を尽くして挑むといい」

 




瞬間瞬間を必死に生きてたらもうこんな時期になっていました。
まさか6ヶ月ぶりの更新になるとは……。


人形
→マリカじゃないよ、マリアだよ。
本来の出番はもう少し後だったはずが前倒しになってエントリー。
理由は人形ちゃんのアンケートしてからもう一年経過しそうでビビり散らかしたからです。
お前の筆って遅すぎないか?(自責)

乙骨
→まだ純愛砲撃ってない時代。
本誌で見る彼がお強すぎて書いてて頭バグる。

狗巻くん
→しゃけしゃけ。
多分次話でもっと活躍する。
本誌の出番はいつですか???

フィジカルギフテッド(弱)
→呪術廻戦0時代なのでまだまだ強くなれる余地がある。
最近本誌とかで見る真希さんはだいたいゴリラゴリラゴリラしてるので書いてる時に頭がバグる。

パンダ
→パンダ。

転生者くん
→出番なし。
そろそろ名前を確定させたい。


長らくお待たせした挙句アホほど短いものしかお出しできなくて申し訳なさでパーメットスコア4。

最近は水星の魔女やらUCやらOOを見てました。
スパロボ30もやったせいでほとんど確定路線だった巨大ロボ系呪骸枠をどうするかまた悩み始めてしまってる。
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