転生者はお人形さんを作るようです 作:屋根裏の名無し
最初、そこには闇しかなかった。
月はなく、星もなく、ただひたすらに冷たいだけの、生きた心地のしない闇があった。
そこに『自分』が在るのはわかる。だが今、自分の中で『自分』は酷く曖昧だ。
何者で、どこにいて、どうしてここにいるのか。全てどこか遠く離れた場所に置いてけぼりにしてしまったようで、心細い。
光を失った深淵の中から滲むようにして色が浮上する。浮上した色彩はしばらく闇の中を漂い、少しずつ見慣れた形へと姿を変えて自分の前に立ち顕れた。
それは机で、それは紙で、そして天秤だった。
机に置かれた天秤の両端、秤の中で白い炎と黒い炎が灯り、まだ半分ほど闇に浸っていた紙に記されし文字列を光の下に暴き立てる。
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簡素な文字が簡潔に質問を綴っていた。その下には答えを書けとばかりに四角で囲われた空欄が転がっていて。
その文字を認識すると同時、机の上で白色が漆黒のキャンバスに躍り、羽根ペンへとその姿を変えた。
……催促されているのだろうか。
現れた羽根ペンを持ち、おもむろに『まきます』と書いた。
今の自分は『まいてない』。
ならきっと、まいた方がいい。
すると紙に書かれた文字が消え、次の文章が浮かび上がる。
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紙の近くにUSBメモリが現れる。
手に取りじろじろと見回してみたが、何の変哲もない。
だがこの手にシュッと収まる馴染みよう、自分のモノだったのではと思えてならない。
しかしこの中にはどんな夢が詰まっていたのだろうか。肝心なところを想起できず歯痒い気分になる。
ここに中身を覗けるような機械はないことが、何より悔やまれた。
これは大切なものだった、気がする。
少し悩んで、『いる』と書いた。
今度は文字がミミズのように紙の上を這い回って、次の文字列を作り上げた。
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ひらがなではあるが、恐らく『一』か『全』。
どこかその言葉に冒涜的な何かを感じながら『一』と箱の中に記す。
自分は『全』よりも『究極の一』が欲しい。
文字は消え、その代わりに闇の中にまた色が生まれた。
色は徐々に輪郭を帯びていき、ハートを象った。
けれどもそれは、とてもじゃないが幼い少女が好みそうなものではない。
どくどくと脈を響かせ、血を被ったような赤に染まった、記号のハートと本物のハートが融合した気味の悪い物体。それが闇を裂いて生まれ落ちた。
| ㅤㅤㅤㅤ賭けるㅤㅤㅤㅤ |
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即答。同時にハートに亀裂が入り──────
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「──っチィ、これ以上はヤバいか」
巨大な右手の中でくうくうと寝息を立てるマスター。その胸に押し当てられていた華奢な手のひらがゆっくりと後ずさる。
「いいご身分だなぁお前は」と吐き捨てながら少女は額に浮いた汗をミミッキュから受け取ったタオルで拭いとった。
「無事なんですよね?」
「あ?んなもん当然に決まってんだろ。万に一つもオレ様がそんなヘマは起こさねぇよ。予防策のプランも同時に走らせてるから遠慮なく安心しとけ」
そう言うと彼女は傍らに置いていたノートに先ほど覗いた記憶の断片の記録をつけ始めた。
プロテアは自分の指に寄りかかる彼女の長い金髪を小指でちょいちょいともてあそんでいる。
さらさらだ〜!と無邪気に笑うプロテアに「当然だろ」と素っ気なく彼女は返す。満更でもなさそうな顔ではあるが。
「ハートの崩壊が魂の分割を暗示してんなら作成可能上限は……恐らく後8体。まー仮に全部作ったとして本体が無事な可能性は甘々に見積もって五分五分。まだ五体満足なのは『縛り』そのものがコイツの魂を──」
文句と考察を並行しつつ今回の収穫を書き終えた開闢の錬金術師は大きく嘆息をつく。
来た道も、行く先も、彼女に待ち受けるのは気苦労ばかりのようであった。
助けて……真乃……めぐる……灯織……!
ランキングから消えた後にまた投稿しようかなーと思ってたらそれを許してもらえなかった。
評価、感想、お気に入りの数々、誠にありがとうございます。
でも思った以上にプレッシャーかかってきてヤバいのでちょっと休ませてください……。
ちゃんと設定練り練りしてくるので許してくだちい……。
次回カリおっさん製作秘話やります。
転生者くん
→色々あって天才美少女錬金術師(TS)のカリオストロを作成。
今回出番はなかった。
お空の世界の最っ高に可愛い天才美少女錬金術師マ美肉おじさん
→好きなんだろ?こういう女の子がさ!(好き)
自分の魂を錬金術で完璧にチューニングしたボディに移し替えて数千年以上の時を生きるマジで美少女に受肉したおじさん。
色々あって転生者くんの生得領域の更に深層にアクセスしていた。
生得領域の更に深層について
→転生者くんが転生する前に結んだ
縛りの影響か、ひどく抽象的なことしか美少女錬金術師は認知できなかったが、それでもいくつかの手がかりを掴めたようだ。