憑依少女ほむら☆マギカ   作:最終ing 究極 6/5|7/3|9/1

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1話 まどマギの世界じゃないですかー……マジ?

 暁美ほむら。この名前を見聞きした人はどれぐらいいるだろうか。俺は、軽く1000回は見聞きした気がする。この名前は魔法少女まどか☆マギカ、まどマギの愛称で親しまれるアニメ作品に登場する1人のキャラの名前である。

 

 ちなみに超重要人物。主人公は別のキャラクターなのだが、暁美ほむらの真実が明らかになるとW主人公なのでは? と思う人は沢山いた。

 

 かく言う俺もその1人である。

 

 その暁美ほむらというキャラクターは、作品の中でもだいぶ評価が分かれるキャラである。そのキャラは良く言えば、友達思い、悪く言えば、愛が重いのである。

 

 その愛の重さは、映画にてヤバい意味で爆発する。好きという人の意見も、嫌いという意見の人もどちらも一理あるという感じで頭ごなしに否定する事など出来ない。

 

 まぁ、俺は普通に好きなんだけど。

 

 さて、そんな暁美ほむらが好きである俺だが、俺は別に暁美ほむらになりたいなんて思った事は一度もない。

 

 なんで寝て目覚めたら、俺が「暁美ほむら」になってるんだよ……

 

 ──────

 

 俺が暁美ほむらになってから、十数年が経過した。俺は今は中2であるが、学校に行っている訳ではない。というのも、原作でも言われていたように俺こと、暁美ほむらは心臓に爆弾を抱えているのだ。

 

 最近になって、改善の兆しが見られた為、1週間後に学校に行く事になっている。

 

 そして、その行く学校の名前が「見滝原中学校」なのである。その学校によって、俺がまどマギの世界に転生した事が確定した。

 

 個人的には、俺は暁美ほむらと同姓同名なだけで容姿がそっくりで心臓に病気を抱えているだけで、実はまどマギの暁美ほむらとは違うんじゃないかと思いたかった。

 

 だって、まどマギは人気アニメであるが、少女が次々と死んでいく色々な意味で終わってる世界なんだ。

 

 誰が好き好んで、そんな世界に行きたいと思うのか。俺は、まどマギは好きだが、まどマギの世界に転生したいなんて思った事は一度もない。だから、ここはまどマギの世界では無いと思いたかった。

 

 だが、そんな淡い希望はすぐに打ち砕かれた。俺が住んでいた本当の日本には、「見滝原市」なんていう地名は存在しない。だが、俺が転生したこの世界には見滝原市は存在していたのだ。

 

 はっきり言おう。まどマギの世界は生きて行く上では凄まじい程にくそったれな世界である。

 

 そういえば、暁美ほむらの両親の描写はなかったけど、俺の両親はいないみたいだ。いないというのは、既にこの世にいない。要は死んでる。俺が9歳ぐらいの時に交通事故で死んでしまった。病院などの事は親戚がやってくれた。原作でも同じだったのだろうか? 

 

 ──────

 

 見滝原中学校の転校初日だ。クラスの皆の前で自己紹介をする事になったんだけど、クラス中の人の視線が集まると緊張して、口の中が乾いてくる。

 

 ばくばくうるさい心臓を極力気にしないようにして、自己紹介の言葉を口にする。

 

「暁美ほむら、です。えと、あの、その、よ、よろしくお願いします……」

 

 前世ではただのコミュ障のボッチだったし、今世も闘病生活が長くて、担当医と家族以外に話す人とか殆どいなかったから、コミュ障レベルが限界突破してしまっている。あぁ、話したくない。

 

 あと、転校生が珍しいってのは分かるんだけど、そんなに注目しないでください。俺のメンタルが死んじゃう。

 

 クラスの中には、ピンク髪の少女とか水色の髪の少女とかがいて、泣きそうになった俺は悪くないはず。

 

 ──────

 

「暁美さん、髪長いねー。洗うの大変じゃない?」

「暁美さんって、前は何処の学校にいたの?」

「部活とかやってた? 文化部? 運動部?」

「暁美さん、ポニーテール似合うねー。眼鏡もあるから頭良さそうに見えるね」

 

 俺は聖徳太子じゃないですけど。あと、コミュ障の俺にとって、初対面の人に囲まれて話すとか、無理なんですけど。

 

 ちなみに髪の話が出ていたけど、今の俺の髪形は普通のポニーテールだ。親の形見である赤いリボンで髪を結っている。原作では三つ編みだったのだが、三つ編みを毎朝準備するのが面倒過ぎて、簡単な髪形にしておいた。

 

 毎日、髪の手入れとか長い髪を複雑な髪形にしている世の中の女子達を本当に尊敬するよ。

 

 ……そういえば、ピンク髪の少女が何故か赤リボンじゃなくて、黄リボンだったんだよね。原作では、赤だった気がするんだけど。

 

 あれ、そんな少女がこっちに近付いて来る。俺、なんかやらかしたっけ? 

 

「暁美さん、保健室行かなきゃいけないんでしょ? 転校初日で保健室の場所分からないと思うから、私が案内してあげるね」

 

 俺が複数人に囲まれて困っている時に、俺を助けてくれた女神が降臨した。比喩無しに本当の女神である。正確に言うなら、あと少しで女神になる予定のピンク髪の少女である。

 

 その少女は、俺が薬を飲むから保健室に行かなくちゃいけない事を説明してくれて、俺を教室の外に連れ出してくれた。

 

「ごめんね、皆は悪気ないだけど、珍しい転校生だからはしゃいじゃって☆」

 

 大丈夫、それは分かってるから。前世の経験のせいで悪意には敏感だから。話しかけに来たのが、転校生を困らせてやろうみたいな性悪ではなく、ただ純粋に興味を持っているだけなのは分かってる。

 

 それはそうと、助け船を出してくれた彼女にはお礼を言っておかないと。

 

「その、さっきはありがとう、ございます」

 

「そんなに緊張しなくてもいいよ。クラスメイトなんだから。わたしは鹿目まどか。気軽にまどかって呼んで! ほむらちゃんって呼んでもいい?」

 

 無理です。出会って数時間の人を相手にいきなり名前呼びは俺にはハードルが高過ぎる。中学時代は小学校からの親友以外は全員苗字呼びしてた俺がそんな事出来る訳ないじゃないですかー。

 

 精々名前呼びしたのは、クラス内に同姓の人がいて、区別がつくようにしていたぐらいだ。

 

「いや、その、呼び方は好きにしてもらって、大丈夫、です、ま、まど……鹿目さん」

 

 やっぱり名前呼びは無理でした。まど「か」のあと一文字だったけど、その一文字を言うまでの壁が果てしなく高い。

 

 前世では、彼女はアニメキャラだったし、普通に呼び捨ては出来たのだけど、ここは現実だ。現実で即呼び捨てとか、陽キャぐらいしか出来ません。

 

 俺が名前呼びしなかった事が若干不服だったのだろうか。むぅと唸っている。流石に俺がコミュ障で初対面が名前呼びしなかったのは、まぁ仕方ないかみたいな雰囲気で納得してくれた事に一先ず安堵する。

 

「ほむらちゃんの名前って、燃え上がれ~って感じがしてカッコいいよね」

 

 ほむらを感じにすると焔だからね。そのまんまだね。ほむらっていう名前はカッコイイけど、俺にとってその名前は借り物のような気がして、好きにはなれない。本来ここにいるべきなのは、俺ではなくて本物の「暁美ほむら」なのだから。

 

 俺は、あの「暁美ほむら」みたいにカッコよくはなれないだろう。

 

「……名前負けしてます」

 

 名前負けというより、本人負け? まぁ、今の俺は「暁美ほむら」に絶対に負けている。

 

「勿体ないよ! それならほむらちゃんだって、カッコよくなればいいよ!」

 

 無理なんだよ、俺は「暁美ほむら」ではないんだから。

 

 ──────

 

「じゃあ、この問題を…… 暁美さん、やってみようか」

 

 前世では、大学まで行っていたし、病院でも勉強はしていたから、解けはする。解けはするのだが、明らかに中学校レベルを超えている気がする。

 

 何故、中学校で二項定理とか出てくるんだろうか。俺の前世では、高校の範囲だぞこれ。

 

 世界も違えば、頭の出来とか教育カリキュラムが違うという事だろうか。公立でこれならもっと頭良い私立とかの学校は何をやっているんだろうか。

 

 どうでもいいかもしれないが、前世の中学校時代にこの問題を解こうとして、挫折した苦い過去があります。

 

 ──────

 

 体育は死んだ。半年の病院生活では、リハビリはしていたのだが、それでも学校の体育とかマジで死ぬ。誰だよ、学校の教科に体育を追加した奴。一族諸共呪ってやる。

 

 ──────

 

 夕暮れの橙色の光が俺の帰宅路を照らす。周りには人がおらず、独りぼっちである。ボケ―としながら歩いていると、周りの風景がいつの間にかおかしな事になっている事に気が付いた。

 

 道は幾つものもがき苦しむ人が描かれた不気味なものになっており、空は赤く染まっている。

 

 あ、そういえば、「暁美ほむら」の登校初日は魔女に襲われるんだった。すっかり、忘れてた。いや、言い訳をすると最後に見たのは、十数年前の事だし、その間は前世との性別の違いやら何やらで苦労していたし、仕方ないよ、うん。

 

 俺には、十数年前の事を覚えていられるような完全記憶能力なんかないんです。こんなことあったなと思い出す事は出来るんだけど。

 

 さーて、ヤバいぞぉ。

 

 冷や汗をかきまくっていると、後方から音がした。錆びついた機械のようにギギギと首を回してみると……

 

 門の形をした魔女が現れた。見ているだけでドン引きしたくなるような造形で幾つもの人が描かれているそれは、【芸術家の魔女】。

 

 その門からは人型の使い間が複数現れ、俺を殺そうと歩いて近付いて来る。

 

 これは、あれだな。

 

「逃げるが勝ち……!」

 

 走る為に足を動かそうとしたら、鉛のように重い足がもつれて、その場で転んでしまった。完全に体育での疲労が尾を引いている。これで俺が死んだら、体育を作った奴に憑りついて呪ってやる。

 

 その場から立ち上がろうとしても、転んだ時に足を捻ったのか、上手く立ち上がれない。

 

 使い間たちが近付いて来る。

 

 きゃー、犯される──! 

 

 内心でどんなに体育を生み出した馬鹿野郎を罵倒しても、使い魔達は近付いて来る。

 

 そんな時だった。

 

 突然、目の前にコスプレ2人組が現れた。その2人は瞬く間に襲い掛かろうとしていた使い魔達を撃破していく。これは勝ったな、風呂入ってくる。あ、魔女の結界だから風呂入れないやん。

 

「間一髪だったわね」

 

 そう言うのは、コスプ…… 魔法少女2人組のうちの1人。巴マミ。黄色髪の少女で、黄色を基調としたブラウスやスカート、ベレー帽などを身に着けたベテラン魔法少女。

 

「もう大丈夫だよ、ほむらちゃん!」

 

 そう言ってくれるのは、学校で出会った鹿目さんだった。ピンクを基にしたフリルやリボンをあしらったデザインでいかにも魔法少女らしい衣装である。

 

 アニメで知っていたとは言え、急に目の前にコスプレ紛いの魔法少女達が出てくると何とも言えない気持ちになる。

 

 それを急に現れた2人組に驚いていると判断したのか、後ろから声がした。あの忌々しい諸悪の根源畜生の、白い淫獣の声が。

 

「彼女は魔法少女。魔女を狩る者達さ」

 

 知ってます。あと、お前は魔法少女に狩られて、とっとと元いた星に帰ってくれよ。頼むから。マジで本当に頼むから。殴りたくなってしまう衝動を抑えていると、鹿目さんが口を開いた。

 

「いきなり秘密がばれちゃったね。クラスの皆には内緒だよ☆」

 

 その秘密なら既に知ってます。なんなら今ここにいる全魔法少女達よりも魔法少女の秘密について知ってます。

 

 遠い目をしていると、鹿目さんと巴さんがトドメの一撃を放つ。その攻撃で魔女は敗れ、結界は解除されたのだった。

 

 ──────

 

 魔女を倒した後は、巴さんが魔法少女や魔女の説明をする為に自室に上げてくれた。アニメでは、巴さんは1人暮らしとかいいなとか思ってた自分をぶん殴りたい。中学生で1人暮らしって、相当ヤバい。いやまぁ、俺も両親いないし、部屋では1人暮らしだけど、中身が違う。

 

 だけど、巴さんは中身も外も中三だ。そんな少女が1人暮らしとは、相当に心細いだろう。

 

(既に知っている)魔法少女や魔女諸々の説明がされた後、俺からの質問のターンになったのだが、やっぱりこれだけは聞いておきたい。魔女をこの目で見て、実は普通に怖かった。

 

 内心では体育の野郎への罵倒をしていたりしたが、それは恐怖を紛らわす為だった。いやまぁ、確かに体育への恨みは普通にあるけれども。

 

「あれと戦うのは、怖く、ないんですか?」

 

 原作の知識で「怖いものは怖いけど、頑張って人を助ける」みたいな解答をするだろうと知っていても、聞かずにはいられなかった。

 

「確かに魔女と戦うのは怖いよ? 魔女に負けたら死んじゃうかもしれないし。それでも、わたしが魔女を倒して、誰かを救えるなら戦うよ。こんな偉そうな事言ってるけど、魔法少女になったのは1週間前なんだけどね…… あはは」

 

 苦笑いをしている鹿目さんと鹿目さんと【ワルプルギスの夜】について話している巴さんを見ながら、あれこれ考えてしまう。陽が沈み始めていたので今日はそこでお開きになった。

 

 ──────

 

 家に帰ってすぐに着替えて、ベッドの中に入った。今日は色々な事がありすぎて、正直食欲がない。不気味な魔女の姿を見たというのもあるけど、魔法少女をこの目で見てしまったのが大きいだろう。

 

 そして、巴さんに「魔法少女にならないか」と勧誘された事も大きい。白畜生曰く、俺は魔法少女になれる素質と才能があるらしい。

 

 巴さん的には、ワルプルギスの夜に対抗する為の戦力が欲しいのだろう。ワルプルギスの夜は、強力だ。昔から存在しているにも関わらず、戦った魔法少女は全て返り討ちにしてきたほどの弩級魔女なのだから。数人のただの魔法少女が挑むだけでは恐らく負けるだろう。

 

 しかも、ワルプルギスの夜が現れれば、その被害はまさに天災。一度暴れ出したら、数千の命は潰える。

 

 だから、ワルプルギスの夜と戦うのに1人でも多くの魔法少女が欲しい。それは納得も出来るし、理解も出来る。

 

 少女2人だけに戦わせて、精神年齢は成人してる俺が戦わなくてどうするという意思もある。子供にだけ戦わせて、自分は戦わない大人とかクズの鏡だ。

 

 だけど、世界の魔法少女に救いは無い。願いを叶え、誰かを助けたとしても、最後には誰かを呪い続ける魔女となってしまう。それが白畜生が生み出す魔法少女の末路。

 

 しかも、それだけじゃない。魔法少女になると、その体は死ぬ。その体は死体と化し、魔力さえあれば、睡眠も食事も不必要な体になってしまう。

 

 白畜生曰く、「効率よく魔女と戦う為」とか言ってるけど。他にも少女に「体死んでるんだよね」みたいな事を言って、少しでも心を追い詰めて絶望させやすくする為なんではなかろうかと思ってはいる。

 

 あと、個人的に気にしてるのが1つ。

 

 魔法少女の末路が魔女になるのなら、魔法少女になって魔女を殺す事は、即ち魔法少女を殺す事。つまり人を殺す事になってしまうのではないかという事。

 

 魔女になれば、人であった頃の記憶を失くし、人の原型を留めていないけど、間違いなく人であったのだ。

 

 今日、2人が戦っていた魔女も元は魔法少女だったのかもしれない。他にも魔女の生まれ方はある。穢れを溜めたグリフシードが孵化する、使い魔が成長して魔女になったもの。だけど、俺が魔法少女になって戦うのが元魔法少女だった場合……

 

 

 

 

 

 

 

 

 吐いた。変な想像なんてするんじゃなかった。




ポニーほむら、可愛いよね。ポニーテール好きの俺を即死させたよ
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