取り立て魔法使いと奴隷少年   作:コーヒーブレイク

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金貸しは名付ける

 

 俺の生業は金回りがいいように思われるが決してそんなことはない。いくら回収しても金は次の客に渡るし、売り上げの3割は俺たちに金を提供してる大富豪に持ってかれる。(ちなみにこれでも扱いはいい方で、魔法が使えないチンピラなら5割は持っていかれる)

 

 金に困るやつと金が有り余るやつの間で浮かび上がる上澄みを啜りながら生きているのが俺たち金貸しだ。もちろん情け容赦なんて持ち合わせてたら啜ることもできず餓死するだろう。

 

 振り返ってみるとなかなかハードな職業に着いてる俺は今、美少年を風呂に入れていた。あぁ勘違いしないで欲しいが、俺にそういう趣味はない。目が見えないまま入るのは不便だろうと思ってのことだ。いずれ一人で入れるようになってもらう。

 

「……ッ……ッ」

 

 灰色の髪に湯をかけるとまるで殴られたように身をすくませる。細い体を疼くめる姿を側から見たらまるで俺が虐待してるみたいだろう。予想していたより衰弱がひどいので風呂はさっさと上がらせ服を着せる。

 

 平均的に見て身長の高い俺のシャツを着ているのでかなり不恰好だが、とりあえず身なりを整え普段メシを食っているダイニングテーブルに座らせた。

 

 落ち着いてから話をしようと思っていたが、それだと数日は身の回りの世話をしてやらなくてはいけなさそうなので、椅子に座って全方位にビビってるガキにこれからの説明をすることにした。

 

「ウチの国が戦争に勝ったのは知ってるな?知らなそうだな……説明してやるからしょげなくていいぞ」

 

 我らがネバホッカ法国は先の戦争で見事、隣国のムシウルカを攻め落とした。それ自体はいいことなんだろうが俺は素直に喜べない。

 

 なにせたくさんの奴隷がこの国に入ってきたのだ。借金が返せないやつは労働力として奴隷にするのが定石だが、いま奴隷市場にはムシウルカ軍出身の体力のある奴隷が溢れている。栄養失調気味のおっさん奴隷なんて誰も買わないし、人手が足りてしまっている。

 

 端的にいうと、金は貸せても回収できない。真面目に返済してくる客も最近は戦勝による好景気で一気に返済を終えるパターンが多いので、定期的に金をよこす金ズルがいなくなっている。

 

 非常にまずい。金がないやつから金を取るにはかなり無茶をすることになるし、俺一人じゃ絶対に人手が足りない。

 

「というわけで今は猫の手も借りたいって状況なわけだ。たとえ、金ズルを殺したやつで、声も出せないオマエでもタダで働くだけまだマシだ」

 

 ガキは緊張した顔で細い肩を縮こませる。とても餌皿で人の首を叩き斬る胆力や度胸があるとは思えないが、事実コイツはやってのけた。俺も程度荒事はこなせるが、それは魔法によるもので、体力とか単純な武力は心許ない。

 

 その点コイツは優秀だ。理由は不明だな衰弱した体で目にも止まらない速さで動けるし、尋常じゃない武力も持っている。得体の知れない、というと手札としては危険かもしれないが奴隷の契約がある以上逆らうことはないだろう。

 

「まぁ不景気が終わるまではよろしくな……あー」

 

 言い淀むとガキはおずおずとこちらを伺う。

 

「オマエ名前は?……声出せとは言ってねぇよ。後から見えなくなったなら字くらい書けんだろ」

 

 俺は愛用しているペンにインクをつけてやり、ガキの右手に持たせてやった。紙をテーブルに置き、場所を教える。

 

 ガキは少し迷った後、手探りでヨレヨレの線を書き始めた。

 

 書き終わったのか、恐る恐るペンを俺とは逆の方向に差し出す。いちいち声をかけるのもめんどくさいので回り込んでからペンと紙を受け取る。そこに書かれていたのはとても文字とは思えない、角ばった記号だった。

 

『骨町 正一』

 

「なんだこれ、オマエもしかして別の国のやつか?」

 

 ガキは少し迷った後、頷いた。どうやらこれは文字らしいが、全く読めない。異国の言葉でもどことなく文字らしい部分があるはずだ。だが俺にはこの4つの記号になんらかの意味を見出すことができなかった。

 

「読めねえし発音もわからないなら無いと同じだろうに」

 

 ガキは寂しそうに……というよりなにか諦めたように俯く。

 

 しかし困った。名前がないというのはどうにも不便だし、いつまでもコイツとかガキとか言ってると他のガキと区別がつかない。

 

「気に入らないかもしれねぇが、とりあえず名前つけるぞ」

 

 名付けはしたことがないが、まぁ適当でいいだろう。

 

「オマエ、ウチで働いてる間はロッコだ。いいな?悪くないだろ?」

 

 ロッコは少し目を見開いた後、微妙な笑顔を作った。顔が綺麗な分、無理してる表情はやたらとブサイクに見えた。

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