The Division Dolls' Frontline   作:はもごろフーズ製ツナ缶 S/N10329

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Ep.1 Brooklyn Reconstruction

あの日一体何が起こったのだろうか、どれほど月日が流れただろうか。鳴り響く銃声とパトカーのサイレン、逃げ惑う人々の怒号と悲鳴。いつもと同じブラックフライデーのはずだった。

幼い少年は1人逃げ惑う人の波に呑まれていった。

 

「こちらパトロール!タイムズスクエアはもう壊滅状態だ!応援を要請する!繰り返す!応援を要請する!......クソッ!早く応援をよこしやがれ!!」

 

「もうここは抑えきれないぞ!応援はまだか!!」

 

「いったいなんなんだ!どうなってる!」

 

「早く逃げて!」

 

「もうダメ・・・おしまいよ・・・」

 

みな混乱に陥っている中、少年は両親を探すために精一杯の大声を出す。

 

「お母さん!お父さん!どこにいるの!」

 

しかし、その声は父と母に届くはずもなく悲しくも、その大きな波にもみくちゃにされ消えてゆく。

あの時、何度叫んでもどんに大きな声を出しても誰も助けてはくれなかっただろう。

みな自分のことで精一杯だから

 

「邪魔だ!どけ!」

 

しばらくすると逃げる人に押され尻もちをついてしまい、思わず右手を頬に伸ばす。その時、自分が涙を流していることを知った。周囲に自分を見ている人などいるはずもないのに、それでも人目が気になって両手で目を擦る。

手を頬に下ろし涙が流れていないことを確認すると、視線をもう一度周囲に向ける。とにかく移動しなければならない。そう思った彼は近くの路地裏に逃げ込むように入っていく。

これからどうすればいいか、誰を頼りに生きていくのか、今の状況を飲み込みこれからのことを考えていく。

 

 

その時、彼の頬にもう涙はなかった。

 

 

─序章 ─

 

 

状況が悪いのは、最初から分かっていた

いや、想像以上だ。我々は最高の技術を誇る精鋭、呼ばれるのは最悪の状況下のみ。規則はなく制約もない、目的は残されたものを守る。我々は同僚、我々は隣人あるいは君、友達。だが招集されれば任務が最優先となる

 

 

それが・・・ディビジョン

 

 

冬のニューヨークは雪が降り積もり、凍てつくような寒さに覆われている。アッパー湾からイースト川を辿ってブルックリンに吹く強い風がつめたく、肌に突き刺さる感触を覚える。

ここからはうっすらと自由の女神が見える、そんな呑気なことを言えたらどれだけ良かっただろうか。

周囲に目をやると荒廃したブルックリン地区が広がっている。ふと車のガラスに映った自分の顔を見るが相変わらず酷い顔をしているものだ、目が死んでいる。

その時、装備している端末のAI、ISAC(アイザック)から無線が聞こえる。

 

『ようこそエージェント。ルイス・チャン、ディビジョンの北東部指揮官だ。お前が呼ばれたのは、危機的な状況を迎えているからだ。ISACで目標をアップデートした。最寄りのセーフハウスに向かい装備を整えろ』

 

「了解」

 

そう言われた途端に目標地点がマップにマークされた。そこがセーフハウスだ。ISACは目標地点をマークしてくれるだけでなく、HUDのように移動経路や戦闘状況の提示、敵味方識別、ウイルス汚染の検知、各種装備の制御、ECHO(エコー)と呼ばれる立体映像の記録など、凄まじい多機能ぶりだ。

 

「さて、セーフハウスに向かうとするか」

 

冷たい空気に白い息を吐きながら独り言を虚空にぶつける。目の前には大きな橋、マンハッタン橋が見えた。いつ見ても大きな橋だ、なんてさっきから呑気なことばかり考えている。

ここからセーフハウスはそう遠くない、ISACには160mと距離が表示されている。

放置された車をよけて進んでいき角を右に曲がると、朝日が自分を照りつけてくる。あまりにも眩しかったから思わず手を顔の前に持っていき目を細めた。マンホールから出てる湯気が朝日に照らされて、やけに幻想的に見える。こんな状況になっていなければ観光でもしたい気分だった。

 

セーフハウスに近づいたら再びISACに無線が入る。

 

『エージェント、エージェント・フェイ・ラウが到着した。中に入ったら彼女に連絡するように』

 

エージェント・フェイ・ラウ

恐らく自分と同じディビジョン・エージェントであろう。

通信を終え、セーフハウスに到着した。入口には机を横倒しにした簡易的なバリケードが作られている。そのバリケードを飛び越えて建物に入ると右側に階段が見えた。

セーフハウスは2階にあるようだ。階段を駆け上がっていくとやたらと頑丈そうな扉があり、中に入る。

 

『注意、これよりセーフエリアに進入』

 

ISACの言う通りセーフエリアに入るとそこには警察服や戦闘服の上に緑のベストを羽織った人が見える。

恐らくこの街を復興、治安維持をすべく派遣されたJTF(ジョイントタスクフォース)の兵士だろう。

その他には自分と同じディビジョンエージェントの姿がチラホラ見える。その人達に軽く挨拶を交わしてさらに奥の扉のドアノブに手をかけ、扉を開けると中では何やら話しあっているJTFの男性ともう1人はエージェントだろう。腕にはSHD(シェード)のパッチが見える。

 

「この辺りがまずい。暴徒が大挙してこちらに向かってきているんだ」

 

「すぐ人員配置を」

 

話が終わったのかアジア系の顔をした彼女がこちらに顔を向け問いかけてくる。

 

「あなたも招集されたの? エージェントのフェイ・ラウ、ディビジョンよ。活動開始はあなたと一緒。私も第二波の1人」

 

そう言うとラウは机についていた手を僕に伸ばし、手を取り握手をしてくる。

思わず自分も挨拶をし、手を握り返す。

 

 

「エージェントのエドワード、エドワード・ディケンズだ。よろしく」

 

「よろしくエド」

 

「第一波に何が起きたかは、分からないけどやるべきことはいくらでもある。情報は少ないけど、失敗は許されない。マンハッタンは封鎖されブルックリンも限界よ。残った私や、あなた、ここに居るみんなが恐らく最後の防波堤」

 

ラウは強い目で僕の目を見つめる。その目には強い意志を感じ取ることができた。それほど壊滅的な状況なのだろう。実際、ブルックリンの様子を見てきて、それを感じ取ることは容易だった。

 

「うまくいけば、指揮官と合流した後で色々分かるはず。今の状況、誰のせいで街が戦場になったのか。私たちの使命に必要な情報がね。私からは以上」

 

話が終わると彼女はもう一度机に手をつき

机の上に乱雑に置かれている資料や端末に目線を下ろす。

すかざずJTFの兵士が口を開く。

 

「ヘイゼン巡査が状況報告を担当している。戦闘地域が知りたければ彼と話してくれ」

 

入ってきた扉を開けて見送りをしてくれる。

 

「わかった、ありがとう」

 

一言礼を言い部屋を後にすると、ISACから指示が飛んでくる。

 

『端末を操作して、directive51(ディレクティブ51)のステータスと装置を有効にしてください』

 

机に置かれたノートパソコンを操作し、身元確認を行う。

 

『ID確認。SHD装置を起動します』

 

身元確認を終えると机の向かいにいるヘイゼン巡査に話かける。

 

「ヘイゼン巡査、話は聞いています。状況報告を」

 

「エージェント、来てくれて本当によかった。状況はかなり厳しい。緊急事態が発生したら、私が連絡係になる。かなり頑張ってはいるが、状況は一向に良くならない! まったく。はぁ・・・状態が収まる頃には髪の毛一本も残ってないだろうな」

 

「そいつは大変だ、髪の毛を一本でも多く守るために頑張らないと」

 

冗談交じりに言葉を返す

 

「ハッハッハ、そいつは助かるよ」

 

ヘイゼン巡査はにこやかに笑った。

端末には次の目標が表示されている。目標に向かおうとした所、誰かに呼び止められた

 

「ねぇそこのおじさん!!」

 

僕はおじさんと呼ばれたことに、若干傷つきながら声のする方を振り向くと、そこにはまだ幼い少女のような見た目をした女の子がいた。セーフハウスに逃げ込んで来たのだろうか。

 

「どうしたんだいお嬢ちゃん、僕に何かようかい?」

 

少女にこれまでにないくらい優しく声をかけると、なにやら不満げな顔をしている。なにかまずいことでもしてしまったのか、顔が気持ち悪かったのか?

真剣に悩んでいると少女がこちらにずいずいと押しかけてくる。

 

「もう!私の事、子供扱いしてるでしょ!これでも私、エージェントなんだよ?」

 

そう言って彼女はえっへんと自慢げに腕のSHDのパッチと、ISACを見せてくる。

そんな光景に僕は目を疑った。

こんな子がエージェント?とうとう政府のお偉方は、この状況で頭がイカれてしまったのか?

頭がこんがらがって追いつかない。

とりあえず彼女が言おうとしたことの続きを聞くことにした。

 

「ま、まぁ君がエージェントなのはわかった。ところでさっき話しかけてきたことなんだが・・・」

 

彼女が待ってましたと言わんばかりに食いついてくる。

 

「そのことなんだけどね、良かったら私とペアを組まない?その方が効率的に目標を達成できると思うの!ね?悪くない話でしょ?」

 

すごい勢いで彼女が案を投げかけてくる。

彼女の案を聞く限り悪くは無いが、彼女がまともに戦えるとは思えなかった。僕は一応、招集される前は警察官だったが彼女は戦闘どころか、ディビジョンの訓練すら受けてないように見えた。

そんな彼女とはペアを組もうとは思えなかった。ここは適当にあしらって逃げよう、そう考え彼女に答えた。

 

「君の案を聞く限り悪くはないが僕は足を引っ張りたくなくてね、悪いが他を当たってくれないかい?」

 

我ながら嘘が下手くそである。いや、断るのが下手くそというのか、こういうのは苦手だ。

 

「むぅ・・・まだ信じてないでしょ?とりあえず!一緒に行動しましょ!さぁさぁ!」

 

「あ、おい僕はまだいいとも言ってないぞ!」

 

彼女に背中を強引に押されセーフハウスの外に出ると、外は相変わらず寒い。青く広がった空を見つめているのも束の間、彼女が声をかけてくる。

 

「ねぇ、おじさんも第二波の人でしょ?私も第二波で招集されたんだ!」

 

おじさんという言葉に反応して少しムッとしてしまった。

 

「おじさんじゃない、エドワードだ。」

 

「へぇ、じゃあエドおじさんだね!」

 

こいつ・・・さっきキツい言葉をかけてしまったことに対する、若干の申し訳なさが一瞬で吹き飛んだ。そもそも僕はまだおじさんという歳にはなってない・・・はず・・・

 

「ああもうそれでいいよ、それで?君は誰なんだい、名前は?」

 

「わたしは、UMP9!9(ナイン)でいいよ〜 よろしくね!」

 

9は手を伸ばし、握手を求めてくる。

それに答えるべく自分も手を伸ばす。

 

「UMP9・・・?珍しい名前だね。とりあえずよろしくナイン」

 

UMP9・・・コードネームか何かか?彼女の名前、確かどこかで聞いた事ある気がするが、そんなことは一瞬でどうでも良くなった。

 

「とりあえずだ。ナイン、キミはこれからどうするつもりだい?僕は、ヘイゼン巡査から聞いた戦闘地域行こうかと思うんだが、キミはどうするんだい?」

 

「う〜んとね・・・」

 

やはり、彼女はついてくるつもりだろうか。返答を待っていると、北東部指揮官から無線が入る。

 

『ISACは各地点での通信を傍受できる。状況把握には少しは役立つだろう』

 

そんなことか、と呆れている暇もなく次の無線が入ってきた。ヘイゼン巡査からだ。

 

『エージェント!暴徒がブルックリンハイツの配給センターから今週の食料物資を奪っていった!飢えに苦しむ人々に売りつけるつもりなんだ、まさに人々の苦しみにつけこんだ暴挙だ!食料を取り戻してくれ!』

 

「わかった、すぐに向かう」

 

通信を終える。暴徒がブルックリン地区の配給を略奪しようとしているらしい。早急に向かって食料の略奪を阻止しなければならない。

先程の返答を聞かずにナインに問いかける。

 

「だそうだ、僕は今からブルックリンハイツに向かう。キミもついてくるかい?戦力は多い方がいい」

 

ナインは、ぱあっと満面の笑みで肯定してくる。

 

「ようやくわかってくれたんだね! さぁ、早く向かいましょう!」

 

現場は現在地から南に2ブロックほど進んだ所にある。ここからそう遠くない、二人で走って向かう。

コンテナをよじ登るとそこには、暴徒がひざまづいているJTF兵の頭に銃を突きつけている。横にはもう1人のJTF兵が横たわっていた。

 

「おい!金は持ってるか?あん?いい時計だな?」

 

「頼む、やめてくれ!誰も死ぬ必要なんてないんだ!」

 

早く助けなければ彼は撃たれてしまう。僕は持っていた銃のトリガーに指をかけ迷わず引いた。

すると、銃はバンッと大きな破裂音を立てて銃口が向いている暴徒の頭をめがけ、発射された弾が空気を切り裂き飛んでいく。一瞬にして暴徒の頭に命中し血を流して脱力して倒れ込む。

 

「すまない!助かった!」

 

JTF兵がこちらに走ってきた。少し遅れていたら彼は撃たれていただろう。

 

「間に合ってよかった、怪我はないかい?」

 

「あぁ、大丈夫だ。本当に助かったよ。ありがとう」

 

彼は深々と感謝をするとセーフハウスの方へ歩いていく。

それよりも食料の手掛かりを探さなければならない。

 

「おじさん!この人ビーコン持ってるよ!」

 

先程、射殺した暴徒の横に血を流し横たわっているJTF兵の死体をさして9は叫んだ。その死体を調べるとISACが反応した。

 

「確認、行方不明の物資を発見しました」

 

JTFの追跡ビーコンだ。その後を追えば食料は見つかるはずだ。

 

「ナイン、移動しよう。目標地点はあっちだ」

 

「うん、わかった!早く行こう!」

 

ナインは目標地点に向かって走り出す。目の前にあるフェンスをよじ登り乗り越える。

それを追いかけるようにフェンスをよじ登り角を曲がる。

しばらく進むと物資の箱を開けるのに苦戦している暴徒たちが見えたので、すかさずタクシーの影に隠れた。

 

「ふんぬぬぬ!!なんだこれ!ビクともしない!」

 

「やり方が間違っているからだ。俺がやる」

 

「え?ハァ・・・あぁいいぜ、やってみろよ」

 

「ぐぬぬぬぬ!」

 

見る限り奴らは油断しているようだ。敵は二人、攻撃をしかけるなら今しかない。

 

「敵確認!おじさん、指示を!」

 

「よしナイン、同時に攻撃をしかけるぞ。キミは左の敵をやってくれ」

 

「左だね、了解」

 

「せーのでいくぞ、せーの」

 

タイミングを合わせ勢いよくタクシーの影から体を出し、暴徒に銃を向け発砲する。

 

「お前も開けれて・・・グハァ!」

 

「おい!?どうし・・・がぁぁ!!」

 

二人の暴徒が倒れ込む

 

「ターゲット排除、よくやったね9」

 

「ふふふ、おじさんなにかご褒美とかないの?」

 

微笑みながらナインが冗談を言う。

彼女がディビジョン・エージェントという話は本当のようだ。

 

『確認、エリア確保、無力化しました』

 

ISACが報告をするに周囲の安全は守られたようだ。

物資をJTFに回収してもらう。そのためには物資を回収目標に指定しなければならない。

物資に近づき端末を操作して目標に指定するとISACが警告をした。

 

『警告、敵が接近中』

 

警告を聞くとナインと僕は近くのカバーに隠れた。

警告からまもなく奥の建物から暴徒が出てきて、こちらに向かってくる。

 

「敵が来る、気をつけて」

 

「おじさんも何かあったら言ってよね!」

 

一人、二人、三人、四人の暴徒がハンドガンやマシンピストルを乱射しながらこちらに走ってくる!

 

「ぶっ殺せ!」

 

「殺っちまえ!」

 

「奴らを逃がすな!」

 

残弾数を確認し、落ち着いて狙いを定める。

タン!タン!と軽快にリズムを刻むように暴徒に弾を撃ち込み、慎重に一人、二人と無力化していく。

再びカバーに身を隠すと頭上を弾丸が掠めていく。

 

「ナイン!残りの2人をやってくれ!」

 

「了解!」

 

ナインは、タタン!タタン!とバースト射撃をして自分のカバーを撃ってきた暴徒を無力化していく。先程までカバーの上を掠めていた弾が黙る。

 

「ありがとうナイン、助かったよ」

 

「大丈夫!」

 

エリアを制圧すると、指定された残りの目標を見つけた、さっき奴らが出てきた建物だ。

ガレージの中に敵がいないか、ISACのpulse(パルス)を使って索敵するため、ナインが突入しようとするのを制止する。Pulseを起動すると、ソナーのようにオレンジの波が遮蔽物を沿って周囲の捜索を始めた。

脅威なし、と表示されているので中に敵はいないだろう。

 

「ふぅ・・・敵はもういないようだ。さぁ、中にある物資を目標に指定しよう。恐らくこれで最後だ」

 

物資箱に近づき、端末を操作してビーコンをJTFに送信する。これで物資を回収してくれるだろう。

ヘイゼン巡査から無線が入る。

 

『エージェント、よくやった。これで人々に食料を届けられる、感謝するよ』

 

「あぁ、住民を守れて光栄だよ。次の目標を教えてくれ」

 

『 あぁ!エージェント!銀行で人質事件だ。目的のビルへは地下鉄のトンネルで行かなければならない。トンネルは工事していて地上から入れるだろう。現場に行って、被害を最小限に抑えて欲しい!それと2人ともくれぐれも気をつけてくれ』

 

「了解!エドおじさん!早く行こう!」

 

「ああ!」

 

ナインが目標地点に向かって走り出し、来た道を戻っていく。その後を追うように自分も走り出す。

放置されたパトカーやトラックの間を縫うようにしばらく走り抜けていくと、そこにはクレーンが建てられた工事現場が見えた。

 

「目標地点はここだ。ヘイゼン巡査が言ってた通り工事中のようだね。そこの階段から下に降りれそうだ」

 

階段の方を指さすとナインは階段を駆け下り、しまったシャッターの前まで走っていった。

自分もその後を追う。

 

「エドおじさん!シャッターが閉まってるけど、そこのスイッチを押せば開けれそうだから押してくれない?」

 

「わかった、今押すよ」

 

9に指定されたスイッチを押すとシャッターが開いた。

中は円形の穴が真っ直ぐ伸びており、工事に使う機材や鉄パイプといった資材が線路上に散乱していた。

奥に進んでいくと少し開けた場所に着いた。そこにはプラットフォームの様なものがあり、高さは一人分くらいで段差というより壁に近い高さだった。

 

「目標はこの上だ。よし、ナイン、登れるかい?」

 

「うん!このくらい楽勝だよ!」

 

そう言うとナインは先程フェンスを乗り越えたように軽々と段差を登って振り返り、自分を引き上げるために手を伸ばしてくる。

 

「おっと、すまないね」

 

グッと手を握り返し、片方の手でプラットフォームの縁を力いっぱい掴んで自分の身体を持ち上げた。

プラットフォームに登ると小さな部屋が角にあり、その中には上に繋がるはしごがあった。

 

「目標はあの先だよ!おじさん早く早く!」

 

ナインはあっという間にはしごを登っていく。

自分もはしごを登るとそこは銀行の中庭に繋がっていた。

 

『警告、敵を検知しました』

 

ISACの警告を聞くとすかさず生垣に身を隠す。

Pulseを起動して、敵の位置を確認すると人型の赤い輪郭が浮かび上がった。

 

「敵は3人・・・ナイン、一斉にやるぞ」

 

「さっきみたいにやればいいんだね!」

 

目で合図を送り、同時に生垣から飛び出して発砲を開始した。

 

「誰だテメェら!!」

 

「俺たち以外の奴らは不要だ!!殺すぞ!!」

 

暴徒たちも銃を乱射して応戦してくるが、あっという間に制圧する。

しかし、奥から暴徒の仲間が4人ほど出てきた。

 

「おい、お前らなにがあった!!?」

 

「なんだお前─「見ればわかるだろ!敵だ!テメェも無駄口叩いてないで早く撃て!」

 

敵が大勢出てきて制圧射撃をしてくる。

 

「クソ・・・このままじゃ押されてしまうな・・・」

 

「エドおじさんここは任せて!」

 

ナインは得意げな顔をして腰につけているポーチからなにか取り出した。

 

「これでもくらえ!」

 

ナインが投げた物が敵の足元に落ちると強烈な閃光と爆音が響き渡った。

 

「うぉ!?フラッシュバンを投げたのか!」

 

敵が怯んでいるうちに丁寧に弾を撃ち込んでいく。

 

「あったり〜!どう?驚いた?」

 

「ハハッこりゃ1本取られたな・・・」

 

『確認、エリア確保。敵を無力化しました』

 

呆気に取られながら割れた窓ガラスから銀行の中に入っていくと事務室の方から何やら声がする。

 

「大丈夫か?大きな音がしたが外はどうなってる?」

 

「誰かおらんの?ここから出してくれへん?」

 

外から閉ざされたドアの鍵を開けると中には2人、男の市民がいた。

 

「やっとや!ああ、ホンマに良かった、まったく恐ろしかったで!嬢ちゃんありがとうな!」

 

「驚いたけど感謝してるよ、ありがとう」

 

『上手く解決してくれたな、エージェント』

 

「えへへ〜感謝されちゃった〜」

 

「ナイン、まだ油断できないよ。次の戦闘地区に向かおう」

 

「よ〜し、もっと働くぞ〜」

 

銀行の入口に立てられたバリケードを登り表の通りに出ると、外はすっかり暗くなっていた。

ヘイゼン巡査から次の目標について無線が飛んでくる。

 

『エージェント、暴徒が鎮痛剤の箱を盗んで行った!きっと売るか、自分たちで使うんだろう。本当に薬が必要としてる人がいるだ!箱を取り戻してくれ!』

 

「恐らく今日、最後の目標だろう。もうひと踏ん張りだ、さっさと終わらせてセーフハウスに戻ろう」

 

「そうだね、それじゃあ出発進行〜!」

 

9と僕は今日最後の目標に向かって走り出す。

辺りを見渡すと街路樹がライトアップされている。こんなことが起きていなければ世間はクリスマスムードに包まれていただろう。

去年のクリスマスのことを思い出し、少し寂しい気持ちになったが、今はすべきことが沢山ある。

ブルックリンが、ニューヨークが復興できれば、時間はかかるかもしれないが、また平和な日常を送ることができるだろう。

この願いを現実にするために行動に移す。

降ってきた雪を気にせずに全力で走り、目標地点に向かう。

そんな姿を見て9はクスリと笑った。

 

「うふふ、おじさんって意外と子供っぽいところあるんだね」

 

「そうかい?童心を忘れないのはいいことさ」

 

「なにそれ〜意味わかない」

 

たわいのない話を交わしていると目標地点の駐車場に着いた。

 

『確認、行方不明の補給物資を発見しました』

 

駐車場にはフードを深々と被り物資をあさっている暴徒達が見えて会話が聞こえてくる。

 

「周りは俺が警戒しておくからお前ら2人で回収してくれ」

 

「おい、見ろよこれ。こいつはすげぇや。売ったらいくらになると思う?」

 

「さぁな、この鎮痛剤を馬鹿どもに売りつけてやればどれだけ高くても買うだろ」

 

「なるほど、喉から手が出るほど欲しいって訳か。いい商売になりそうだ」

 

9がその会話に嫌気がさしたのか小声で本音をぶちまける。

 

「なにあいつ・・・ほんとクズみたいな奴ら・・・消えちまえ!」

 

そう言うと9は銃を奴らに向けトリガーを引く。続けで自分も敵を排除する。

もう1人、脚に数発撃ち込むとその場で倒れ込んだ。

 

『確認、エリア確保。敵を無力化しました』

 

「標的を排除、補給物資を回収目標に設定する」

 

補給物資に駆け寄り、JTFに回収させるために目標指定する。

 

『確認、回収用に物資をマークし、JTFに通知しました』

 

すると、驚くことに先程撃ったはずの敵が喋りだした。

 

「クッソ・・・てめぇ・・・クソが・・・!殺してやる・・・!絶対に殺してやる・・・!」

 

どうやら瀕死の状態でまだ生きており、手に握られた拳銃をこちらに向けようとするが、あまりにも出血が多いため力が入らず手が震えている。

しばらくするとナインが暴徒の言葉に反応し、暴徒に向けて無機質で機械のような声を発する。

 

「ふ〜ん・・・お兄さんまだ抵抗しようとするだ。・・・それにクソはお兄さん達の方でしょ?物資を盗んで、挙句の果てには本当に困ってる人たちに高い金額で売りつけようとしてたもんね。・・・さようなら」

 

まるで落ちているゴミを見るような目で暴徒の頭にバレルを押し付けて、トリガーに指をかける。

あと数ミリ引けば発射される状態で自分は耐えれなくなってしまいナインの銃を手で押し付けて無理やり下ろさせる。

 

「ナインもういい、ほっといてやれ。そいつはもう死ぬ」

 

「でも!こいつは・・・」

 

「それでもだ」

 

「っ・・・わかった」

 

ナインは不満げな顔をして周囲に目を向け警戒を始めた。

もう、暴徒は虚ろな目をして息をしていなかった。

ISACからはJTF兵から無線が繋がった。

 

『こちらスピア5。現場に向かっている』

 

『警告、敵が接近中』

 

「できるだけ急いでくれ。敵が接近している。」

 

すかさずPulseを起動し敵の位置を確認する。

ナインは、残弾数を確認してトラックの屋根に登ってそこに伏せた。

奥の建物の影からぞろぞろと敵が出てくる。

 

「兄弟の仇だ!絶対に許すな!」

 

「ウラァ!!」

 

「死ねぇ!」

 

暴徒たちはまたしても乱射しながら距離を詰めてくる。

 

「ちくしょう、いつになったらセーフハウスに戻れるんだ・・・」

 

腕時計に目をやると午後11時を回っていた。

空になったマガジンを放り投げ、新しいマガジンをポーチから取り出し銃に装填する。

息を整え、銃弾が止む隙を見てカバーから乗り出し敵に打ち込んでいく。

タン!タン!タン!と慎重に狙う。

 

「ナイン!そっちは大丈夫かい!」

 

「うん!」

 

ナインは敵を排除していく。

メインアームの弾が切れ、リロードをしている隙にバットを持った暴徒が懐に飛び込んできた。

 

「うぉぉ!!」

 

「クソッ!」

 

そのまま押し倒されバットを振りかざす。すかさずメインアームで攻撃を防ぎ、腰のホルスターからハンドガンを取り出し敵に2発撃ち、胸と脳天をぶち抜く。

体勢を取り直し起き上がって、メインアームのリロードを済ませようとするも、どうやらさっきの攻撃を防いだ時に壊れてしまったようだ。

使い物にならなくなったサブマシンガンを投げ捨て、仕方なくそのままハンドガンで残りの敵に応戦する。

 

『スピア5、現場到着、交戦準備完了』

 

現場に到着したJTF兵も応戦し始める。

 

「エージェント、カバーする!射線に注意しろ!」

 

LMGを持ったJTF兵が駐車している車のボンネットにバイポッド立てて注意を促す。

 

すると、バララララッ!!と音を立てて制圧射撃を開始し敵の暴徒はなぎ倒されていった。

 

『目標確保。敵の全滅を確認しました』

 

『よくやったねエージェント。これで本当に困っている人たちに薬を届けられるよ』

 

「ふぅ・・・援護感謝する。あなた達が来なかったらどうなっていたことか・・・」

 

「いいんだよエージェント。君たちはブルックリンのためによくやってくれてる。一度セーフハウスに戻って休めばいい。さぁ、あとは俺たちがやっておくから行って」

 

「ありがとう、ナイン行こう」

 

ナインは頭を縦に振り、トラックの荷台から降りてこちらに寄ってくる途中で1人のJTFに呼び止められる。

 

「嬢ちゃんも大変だったな、どうだい?セーフハウスに戻ったら一杯やらないかい?」

 

「ごめんねお兄さん、わたしお酒飲まないんだ〜」

 

JTF兵を軽くあしらってナインは逃げるように歩き出した。

 

「ハッハッハッ!お前振られてるじゃないか!」

 

「バカ!そんなこと言うな悲しくなるだろ!」

 

JTF兵達がナインにあしらわれた兵士をいじっている横を僕は苦笑いでその場を後にし、ナインとセーフハウスに戻るため帰路につく。

しばらくすると壊れてしまったMP5のことを思い出し思わずため息をついてしまう。

 

「はぁ・・・」

 

「おじさんどうしたの?大きなため息ついて」

 

キョトンとした顔で覗き込んでくるナインにフレームがひん曲がったMP5を見せる。

 

「あらら、派手に壊れちゃったね」

 

「そうなんだよ、メインアームなしでハンドガンだけで戦うってのも流石にね・・・」

 

「セーフハウスに戻ったらヘイゼン巡査に聞いてみたら?たぶん武器くらい貸してくれるんじゃない?」

 

「それもそうだね、聞くことにするよ」

 

深深と雪が夜のブルックリンに降り積もる。気温も氷点下を下回っているだろう。

突然、横を歩いているナインが寒くないか気になった。

 

「おぉ寒い寒い・・・ナインは寒くないのかい?」

 

「うん、全然平気だよ!」

 

そう言うとぶんぶんと体を動かし全体で表現してくれた。

 

「ハハハ、元気だね。僕は招集前は西海岸で仕事をしていたから寒さには慣れないよ・・・っとセーフハウスに到着と」

 

簡易バリケードを乗り越え、階段を登り、やたらと重圧な扉を開けて中に入り、ヘイゼン巡査にこれまでのことを報告をする。

 

「たっだいま〜!」

 

「おかえり、2人ともよくやってくれたね。疲れているだろうから報告は朝でいいよ。さぁ、ゆっくり休んでくれ」

 

「ヘイゼン巡査。少しよろしいですか?」

 

「あぁ、なんだい?」

 

「実は先程の戦闘で銃が壊れてしまって、新しい銃が欲しいのですが・・・」

 

ボロボロになってしまったMP5を見せて事情を説明する

 

「おや、それならそこにいる武器庫係に聞くといいよ。君にあった銃をきっとくれるはずさ」

 

「感謝します」

 

礼を言って案内された武器庫に寄り、係の人に事情を説明して銃を持ってきてもらう。

しばらくすると、大きなアタッシュケースを奥の部屋から持って来て目の前の机の上にドンと乗せた。

 

「こいつなら君に合うと思うよ」

 

アタッシュケースのロックを一つ一つ外していき中を覗くとそこにはM4A1が入っていた。

 

「M4A1」

 

「そうだ。いい銃さ。カスタム性も抜群で性能もいい!JTFでも主力のアサルトライフルだよ」

 

話を聞きながら様々な部分を弄る。

 

「カスタムパーツが欲しかったら言ってくれ。サイトからグリップなんでも装着するよ」

 

「気に入ったよ、ありがとう」

 

「お気に召してなによりだ。また寄ってくれ」

 

武器庫係に別れを告げ、ロビーに戻るとナインが駆け寄ってくる。

 

「ねぇねぇ、どんな武器を貰ったの?見せて見せて!」

 

無邪気に寄ってくるので貰ったM4をナインに手渡す。

 

「へぇ〜M4を貰ったんだ。ずっとMP5を使ってたけど、カービンライフルに変更したんだね。使いこなせるの?」

 

不思議そうにナインはまじまじ見た後に銃を返す。

 

「使っていくうちに慣れるよ」

 

渡されたM4のスイベルにベルトを通し、着込んでいたボディーアーマーのポーチにマガジンを入れる。

 

「よし、これで準備は完了だ。・・・けど、朝からフルで働いてるわけだし、僕は少し仮眠を取らせてもらうよ」

 

「わかった。おじさんおやすみ〜」

 

「ナインは寝ないのかい?」

 

「うん。まだ眠たくない」

 

「そうか、眠たくなったら寝るんだよ。それじゃおやすみ」

 

それだけ言い残して仮眠室に入る。装備を外し仮眠スペースの横にあるテーブルの上に装備を置く。ベッドの上に横になり目をつぶりリラックスする。

今日は色々なことがあったが、これは序の口に過ぎず、今後も今日以上に大変な日があるかもしれない。

気を引き締めつつ眠りについた。

 

 

 

Ep.1 END




実は9ではなく、416かVectorにしようとしてたら本家様がまさかのコラボしたので急遽、9に変更しました。
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