The Division Dolls' Frontline   作:はもごろフーズ製ツナ缶 S/N10329

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前回の投稿から結構時間が経ってしまいましたが、無事書き終えることが出来ました。
また、前回同様、誤字脱字ありましたら報告よろしくお願いします。


Ep.2 Police station siege attack

急に目が覚めた。別に何かあって目が覚めたのではなく自然に目が開いた。

冬のニューヨークの朝は寒い。そのため、室温も下がっており毛布にくるまりながら時間を確認するためにデジタル時計を見る。

 

A.M. 4:00 気温 56.4°F(13.6℃) 湿度26%

 

朝の午前4時、室温が13℃ほどしかない。

どうりで寒い訳だ。

ベッドに入った時は疲れていて暖房を入れる余裕などあるはずもなく、そのまま寝てしまった事を思い出した。

時間的にまだ余裕があったし、二度寝もしようと思えばできた。

 

「どうしようかなぁ」

 

「ふわぁ〜・・・おはようエドおじさん。おじさんって早起きなんだね」

 

独り言のつもりだったのに返答があり、驚いて横を見るとそこには

 

「うぅ〜寒いなぁ〜」

 

布団を剥がされて寒がっているナインが居た──

 

 

 

「なにもそんなに驚くことはないんじゃない?」

 

「いや驚くよ?起きたら横に女の子が寝ているんだから」

 

軽い朝食をとりながらブルックリンの路地をパトロールしつつ、ナインに早朝あったことの文句を言っていた。

 

「おかげさまでベッドから転げ落ちたよ・・・それで?ナインはいつベッドに入ってきたんだい?」

 

「う〜ん・・・わかんない!」

 

ニコニコと無邪気な笑顔をこちらを向いて答えてくる。

無性に頭を叩きたくなった。

 

「わかんないって・・・はぁ、まぁいいや。でも、ベッドに入ってくる時はせめて一声かけるようにしてくれ」

 

「ほいほ〜い」

 

「絶対わかってないでしょ・・・」

 

ナインの適当な返事に呆れながらブルックリンの街をパトロールしていると、先日訪れた人質事件が起きた銀行の前を通りかかった。

 

「おじさん、誰かいる」

 

ナインに言われて、すかさず身を隠した。

そしてゆっくりと頭を出して周囲を確認すると、3人組の暴徒が見えた。恐らく昨日の残党だろう。

耳を澄ますと、なにやら会話をしているようだ。

 

「あぁクソッ!寒すぎる・・・」

 

「南に向かった方がいい」

 

「冬は嫌いだ」

 

「泳ぐのはどうだ?」

 

「なんだ、ウォール街まで行くってことか?この島を離れることなんてできない。暖かくなるまで生き延びるしかないんだ」

 

「なんでだよ?やってみる価値はあるだろ?向こう岸はまだマシかもしれない」

 

「・・・でも俺は・・・泳げないんだ」

 

「マジか」

 

「あり得ないな」

 

「全くだ」

 

会話を終えると暴徒たちの間には再び静寂が訪れた。

 

「どうするおじさん?」

 

「・・・放っておこう。それに奴らも戦いは望んでいないだろう」

 

「了解」

 

暴徒たちに見つからないようにそっと影を移動しつつその場から離れて、再び暇なパトロールに戻る。

しばらくすると、暇すぎて痺れを切らしたナインが話を振ってくる。

 

「そういえばおじさん、あの人たちウォール街って言ってたけどウォール街ってどこなんだろう?」

 

さっき暴徒たちの会話の内容についての質問だった。

 

「ん、ウォール街かい?ウォール街はこのニューヨークの中心の島、マンハッタンの最南端にあるストリートの名前だよ」

 

「へぇ〜」

 

「米国の証券取引所とか以外にも他国の金融機関が沢山あった街なんだ。・・・でもこの騒ぎが起きてからは何もわからない状況さ」

 

「たしか、第1波のエージェントもマンハッタンに向かったんだよね」

 

「そうだね。ここでの治安維持が終わったら次はマンハッタンに向かうことになってる」

 

「そっか・・・」

 

ナインがほっとしたような声と内心嬉しそうな顔になったので、マンハッタンに何かあるのだろうか。

気になって少し聞いてみることにした。

 

「マンハッタンに知り合いでも居るのかい?」

 

「え、あ!ううん!そんなことないよ!なんでもない!」

 

彼女が手を慌ただしく振って全力で否定していたら無線が入った。指揮官からだ

 

『エージェント、我々が流通拠点にしている地元警察署から救難信号が入った。暴徒に襲われている。奴らは人質とドラッグの交換を要求しているらしい。敵の排除とエリアの安全確保、そして人質を解放しろ。オーバー』

 

「こちらパトロール、了解した。直ちに警察署に向かう。行こう、9」

 

「うん!」

 

警察署に向かって走りだす。その途中でJTFの無線を傍受した。

 

『全部隊に告ぐ!暴徒に警察署を制圧されている!作戦を中止し、直ちに帰還しろ!』

 

もう既に警察署は占拠されてしまったようだ。

警察署前にたどり着くとパトカーが炎上しており、駐車場には駐車されているパトカーの影に隠れているJTF兵が数名見えたので、隣にあるもう1台のパトカーの影に隠れた。

 

『エージェント、なんとしても警察署周辺を取り戻せ。あそこを奪われればブルックリン全体を失う』

 

隣のパトカーの影に隠れていた1人のJTFが声をかけてきた。

 

「よぉ!また会ったな、ディビジョンの嬢ちゃん。今夜は一緒に飲んでくれるかい?」

 

「あ、この間のお兄さん。まだ生きてたんだね!」

 

サラッと毒を吐くナインと昨日の口説いてきたJTF兵を横目に分隊長らしき男がこちらに話しかけてくる。

 

「あんたらはこの間の奴らじゃないか。応援に来てくれたのか?」

 

「あぁ、無線は聞いたよ」

 

「そうか、なら話が早い。まずこの駐車場を制圧して警察署内に入るぞ」

 

分隊長はそう言って手に持ったM870にシェルを詰め込み、コッキングをして戦闘態勢に入った。

 

『注意、敵が接近中』

 

ISACの言う通り奥の門が開き、暴徒が駐車場に流れ込む。

 

「今だ!撃て!」

 

分隊長の合図と共に発砲を開始する。

暴徒たちもそれに応戦するように射撃をおこない、激しい銃撃戦が繰り広げられる。

屋上に動きがあり、屋内に繋がっている扉から2人暴徒が飛び出して、警察署の看板の裏に隠れた。

 

「屋上に動きがある。グレネードを持っているようだ!」

 

JTF兵が指をさす方向を見ると暴徒がバッグの中からグレネードを取り出している途中だった。

 

「これでもくらいやがれ!」

 

「まずい!みんな影に隠れろ!」

 

屋上の敵がグレネードを投げた途端、爆音が鳴り響き衝撃が走った。頭をあげると肩には衝撃波で割れた窓ガラスの破片がのっている。

 

「クソッ!お粗末な爆弾なんか作りやがって!」

 

「アレン!上のやつを撃て!今すぐだ!」

 

「了解!」

 

分隊長が指示をするとマシンガンナーは近場にあった車のボンネットにバイポッドを展開し、トリガーを引くと瞬く間にM249が火を吹いた。圧倒的な弾幕で敵を翻弄する。

その弾幕は発砲音と薬莢が落ちる音だけが聞こえる程である。

 

「いいぞアレン!そのまま続けろ!下の敵は俺らがやる!」

 

反撃でパトカーの裏に隠れた敵を釘付けにするように銃弾を撃ち込む。

 

「リロードする!」

 

「カバー!」

 

下の敵を片付けていると急に屋上で爆発が起きた。どうやらバッグの中に入っていたグレネードに誘爆したようだ。その爆発に巻き込まれたもう1人のグレネーダーは吹っ飛んで下に落ちた。

屋上を見ると穴だらけになった看板と赤黒い煤が手すりに付着していた。

 

「いいぞ!吹っ飛びやがれ!」

 

「そのままお前も消えちまえ!」

 

ナインが放った弾が駐車場にいた最後の敵の頭に突き刺ささる。

周囲の安全が確保出来たため、カバーから離れて、先程屋上から落ちた敵の落としたグレネードの入った鞄からグレネードを3個ほど拾って自分のポーチに入れた。

 

「よし、駐車場は制圧した!中に入るぞ」

 

「ダメです!入口が封鎖されていて入れません!」

 

中に入ろうとしたが、どうやら入口はシャッターが降りており、到底中に入れそうになかった。

状況を指揮官に説明して、指示を仰ぐ。

 

「こちらエージェント・エドワード、入口を封鎖されていて中に入れない」

 

『了解した。ブルックリン管理官に連絡する。ブルックリン管理官、ディビジョン指揮官だ。エージェントを84分署に向かわせたが、入口を封鎖されていてる』

 

『ディビジョン?ここ最近で1番の知らせね。裏の駐車場を試してみて!』

 

『分かったか、エージェント?そこが入口だ』

 

無線を終えて、裏の駐車場にJTF兵と共に進んだが、やはりそこにも暴徒がいた。

 

「前方に6名確認。アレン、お前はこの位置から援護射撃をしろ。エドと9は左から回れ、ハリスとトーマスは俺と右から行くぞ」

 

分隊長がハンドサインを出してそれぞれのポジションに展開する。

 

「セット完了、いつでも援護射撃できます」

 

「俺らも位置についた。ナインとエドは?」

 

「こっちも大丈夫だよ。いつでもいける!」

 

「よし、総員攻撃開始!」

 

分隊長が指示を出すと一斉にカバーから出て射撃を開始する。

 

「クソッ!お巡りが来やがった!追い返せ!」

 

「ここを守り通せ!無能なJTF共に死を!」

 

暴徒たちも敵の存在に気がつくとこちらに向かって走ってくる。

その中にはこの前のように、バットを持ってこちらに肉薄攻撃を仕掛けようとしている奴もいて、目と鼻の先のカバーまで接近してきた。

 

「ラッシャーだ!」

 

「私に任せて!」

 

9はそう言うと、真横に来た暴徒の攻撃をひらりと避けてみせた。そこからカウンターを合わせて、思い切り暴徒の顔面に拳をぶち込むと、暴徒は吹っ飛び尻もちをついた。

 

「くたばれクズ野郎!」

 

トドメを刺すように尻もちを着いた暴徒に銃弾をお見舞する。

それを見ていたJTF兵が一言

 

「ヒュー、嬢ちゃんなかなか恐ろしいな。これはこの前飲みに誘わなくて正解か?」

 

それを言われてナインはそっちを振り返った。

 

「やだなぁ〜お兄さん、私はそんなに怖くないよ〜」

 

そう言いつつ、倒れ込んでいる暴徒の睾丸を蹴りあげた。その様子を見ていたJTF兵は自分のモノを見つめてこう呟いた。

 

「ハハッ、女を口説くのは控えるとするか・・・」

 

『警告、敵の増援が接近中』

 

「お喋りも女を口説くのもは終わりだ、トーマス。敵が来るぞ」

 

カバーに沿いつつ前進する。

 

『敵が接近中』

 

ISACが警告をしたすぐに奥からぞろぞろと敵が濁流のように流れ込んでくる。

 

「あそこだ!撃ち殺せ!」

 

「一瞬で終わらせてやる!突っ込め!」

 

敵はマシンピストルを乱射して制圧射撃をしつつ距離を詰めてくる。そのため必然的に車の影に隠れることしかできなかった。

何発もの弾が頭上をかすめていく。

 

「クソッ!カス共がどっから湧いてきやがる!」

 

激しい銃撃に晒され、自分たちの隠れたJTFのハンヴィーもボロボロになって限界を迎えようとしている。

 

「このカバーはもう限界だ!俺が今からアイツらを抑える!そしたら隙を見て2人は向こう側のカバーに走れ!」

 

制圧射撃が開始されると敵は危険を感じて物陰に隠れて撃つのをやめる。銃撃が止んだ今がチャンスだ。

 

「よし今だ!行け行け行け!」

 

「ナイン、走れ!」

 

「うん!」

 

まずナインが向かいのカバーに全力で滑り込む。

 

「おじさん!早く!」

 

こちらに伸ばしている9の手を掴み取り自分もカバーに隠れれた。残りはあのJTF兵だけだ。

 

「全員行ったな!よし、俺もそっちに向かう」

 

そう言ってカバーから飛び出した時だった。

 

「トーマス!まだ出てくるな!」

 

分隊長が叫んだが間に合わず、トーマスと呼ばれるJTF兵は腕と足を撃ち抜かれてしまった。

しかし、走る足を止めずにこちらのカバーに倒れ込むように飛び込んでくる。

 

「ああ!!クソ痛てぇ!腕が!」

 

トーマスは撃ち抜かれた右腕を押さえながら転げ回っている。

ナインがとっさにカバーの奥に引っ張り込む。

 

「お兄さん大丈夫!?」

 

「誰か止血剤を!耐えろトーマス!」

 

「ちくしょう!こんなのじゃマスもかけねぇ・・・!」

 

「何言ってんだアホ野郎!次からは反対の手でしろ!」

 

「敵を排除!オールクリア!」

 

周囲の安全を確保すると皆、トーマスの元に集まり治療を施す。

 

「とりあえず腕の止血はできた。足の方はかすっただけだ。あとはセーフハウスに戻って本格的な治療を受ければ直に良くなるだろう」

 

「トーマス大丈夫か、セーフハウスに戻って治療を受けるぞ。よし立てるか、行くぞ」

 

2人のJTF兵がトーマスの両肩を持ち、歩行を支援する。

 

「すまんがここから先は2人で進んでくれ。警察署へはそこの地下駐車場から入れる。俺たちの仲間を助けてやってくれ」

 

「あぁ、必ず救出してみせる」

 

「安心して分隊長さん、私たちが仲間を助けるから!」

 

ナインは誇らしげに胸を叩き張って見せた。

 

「そいつは頼もしいな。仲間を頼んだぞ」

 

分隊長は別れを告げると先に歩いていった部下の元に走って追いかけて行った。

 

「僕達も行こう」

 

「うん!」

 

分隊長の行っていた地下駐車場への入口に入り奥へ進んでいくと、整備のためジャッキで上げられたパトカーや駐車されている他の車両が多くあった。

敵の存在を確認するためにPulseを使用する。

発見した脅威は5、当然ながらここにも見張りの敵が巡回しているようだ。

 

「敵が多いな・・・」

 

どう攻略するか周囲を見渡していると燃料が入ったガソリン缶が目に入った。

 

「ピンと来た。僕があのガソリン缶を撃つから引火した敵を撃ってくれ」

 

「なるほどね、了解!」

 

ナインも察したのか銃を構える。

そして引き金を引いて2発ガソリン缶に命中させる。1発目は缶に穴を開け、2発目は漏れたガソリンに引火し、周りにいた暴徒達の服に着火して瞬く間に燃焼し始めた。

 

「あ゛あ゛あ゛!!」

 

「ひ゛ぃあ゛つ゛!!」

 

「た、ただだ誰かぁ!早く助けてくれぇ!!」

 

火達磨になった暴徒は言葉にもならい声を上げて地面に転げ回り、必死に火を消そうとするが叶わずに1人は焼死してしまった。

残りの2人は既にナインが始末していた。

その光景に愕然としていた2人の暴徒を始末する。

 

『警告、敵の接近を検知』

 

先程の惨劇を聞きつけた仲間がやってきたようだ。

敵の数を把握するために駐車場の柱に張り付き、様子を伺う。柱から顔をそっと出した瞬間に左頬を銃弾がかすった。

反射的に顔を引っ込めると同時に、じんわりと生温かい血が流れたが、アドレナリンが出ているためか痛みはしなかった。

セレクターをセミからフルに切り替え、銃だけを柱の影から出し、トリガーを引いてブラインドショットをする。

しかし、手応えはなく、あらぬほうに飛んで行った銃弾がパトカーの盗難防止装置の警報を鳴らしただけだった。

 

「これじゃらちが開かないな」

 

どう打開するか悩んでいると、ふと先程拾ったグレネードの存在を思い出した。ポーチからグレネードを取り出して安全ピンを抜き、敵めがけて投擲する。

 

「フラグアウト!」

 

放物線を描き敵側のカバーの裏に落ちた。

そして数秒も立たないうちに爆発を起こして敵が吹き飛んだ。

 

「やるじゃん!」

 

ナインは爆発で怯んだ敵をニコニコと殺戮していく。その様子を見てあのJTF兵(トーマス)の気持ちがなんとなくわかった気がした。

 

「これで全員だね。警察署内に入ろう」

 

「ところでおじさん、その頬の傷大丈夫?」

 

そう告げられて頬に手をかざすとグローブが赤く滲んでいた。

 

「まぁ、かすり傷だから大丈夫だよ。それよりも早く先に進もう。人質は待っててくれない」

 

「そうだね。わかった」

 

警察署内に繋がる階段を見つけて登る。その先にある扉を開け、警戒しつつ散らかったロッカールームを通り抜けて左の通路に入った。

受付の待機所を進むとISACの警告が入った。

 

『警告、付近に敵を検知』

 

「正面に敵2名、会話してる」

 

ナインが敵を見つけたようだ。なにやら会話をしているらしい。

 

「何言ってんだ、バレちまうだろ。さっさと始末しちまおうぜ」

 

「生かしておくんだよ、交渉に使うんだ。取引だよ」

 

暴徒がニヒルな笑みを浮かべているのに対し、牢屋に閉じ込められた人質のJTF兵が鉄格子を叩いて暴徒に吠えている。

 

「俺をここから出せ!」

 

ガンガンと鉄格子の扉を無理矢理前後させ、大きな音を立ててここから出すように訴えている。

一方で、もう1人のJTF兵は冷静な態度を取っていた。

 

「静かにしてろ。大人しくして、抜け出すまでの時間を稼ぐんだ」

 

しかし、その言葉とは裏腹にベッドに深く座りこみ、下を向いて半ば諦めた様子だった。

 

「フラッシュはまだ持ってるかい?」

 

「もちろん、まだ沢山あるよ!」

 

ナインは腰のポーチからスタングレネードを取り出す。

 

「ナインのタイミングで投げてくれ。それに合わせる」

 

「わかった、それじゃあいくよ!」

 

遮蔽物から極力体を晒さずにスタングレネードを投げると綺麗に敵の足元に落ちて、強烈な閃光と共に爆音を鳴らす。

それが攻撃開始の合図となった。

 

「うわぁ!!なんだ!?」

 

「クソ!何も見えな──

 

「おい、どうした?なにかあった──

 

敵の目が眩んでいた隙に1発で仕留め、もう片方は9がやった。

牢屋の方に進んで行くと閉じ込められたJTF兵に声をかけられた。

 

「そこのあんたら!悪いが牢屋のロックを解除してくれないか?そこの端末から解除できるはずだ」

 

「わかった。今解除するから待っててくれ」

 

指示通り、端末を操作して牢屋のロックを解除する。

 

「あんた達が誰か知らないが助かったよ」

 

「もうダメかと思ったよ。ありがとう」

 

JTF兵は感謝を述べつつ先程射殺した暴徒から銃を奪い取り、残弾数を確認していた。

 

「上にはまだ奴らのリーダーが残ってる。そいつを始末しに行くぞ」

 

そう言って2人のJTF兵は階段を駆け上がって行った。その後を追うように自分たちも階段を登る。

登った先は休憩室のような場所で左の部屋にはソファー、右の部屋にはビリヤード台と卓球台が置いてあった。

そして壁にはテレビが掛けており、追いかける足を止めて放送されているニュースを見た。

 

『ドルインフルは───ける一方──ンハッタ───全に封鎖され、ライフラインが──に遮断し───情報に─りますと、マンハッタンでは略奪────返され、この状──府は対応策がな───です』

 

音が途切れ途切れで音飛びしている状態だが、恐らく内容はパンデミック初期の頃の録画だろう。今はこの状況よりも酷くなってるはずだ。

 

「おじさん何してるの?早く行くよ!」

 

余程テレビに見入ってしまったのか先に追いかけていたナインが戻ってきて壁の端から顔をひょっこりと覗かせて戻ってきた。

 

「あ、あぁごめん。すぐに行くよ」

 

止まっていた足を上げて再び上階を目指す。

休憩室を出てすぐ右の階段を上がるとそこには悲惨な光景が広がっていた。

廊下の壁には貶す文が書かれた落書き、倒れた自販機、割れてしまったガラス、何より奥には豚共と壁に書かれた文字の下には大量に血を流して死んでいるJTF兵の姿があった。

その光景に思わず息を呑んだ。

散らばったものを避けて先に進む。ピチャピチャと血液を踏む音が生々しく感じた。

 

『通知、敵を検知』

 

廊下を抜けた先はデスクトップのPCとモニター、その他資料などが置いてあるごく普通のオフィスで3名ほど暴徒が巡回している。

 

「JTFは役立たずの無能だ。奴らには誰も救えない」

 

「奴らは本当にこのままで済むと思ってるのか?この街はイカれてるのになんにも改善しない」

 

「JTFはあまり信用されてないんだ。だから俺はアイツらには従わない。むしろ皆殺しにしてやる」

 

散々な言い様だった。暴徒たちの会話の内容が癪に障ったのかJTF兵は怒りをあらわにした。

 

「あいつらには借りがあるからな。それを今返してやらないとな!!」

 

カバーから飛び出し暴徒たちを撃ち始めたので、それに続けて自分たちも撃ち始める。

その射撃に暴徒たちは驚いた様子でデスクに隠れた。

 

「クソ!やっぱり始末しておくべきだったんだ!!」

 

「おい!アイツらがここに来たってことは下の奴らは殺されたのか?!」

 

「クソ野郎!よくも兄弟を!!」

 

飛び交う銃弾によりデスクの上のモニター火花を散らしながらが倒れ、整理された資料が舞い散る。

 

「あのアホどもに戦略があるとは思えない。このまま一気に畳み掛けるぞ」

 

「了解!」

 

敵を牽制して制圧しつつ、左右に展開しそれぞれのポジションに着く。

 

「あぁクソ!!皆殺しにしてやる!!」

 

「おいアレックス!頭を出すな!」

 

暴徒がデスクから頭を覗かせた瞬間、ナインが撃ち抜いた。

 

「アレックスがやられた!!クソ!こんな所勘弁だ!」

 

最後の1人が逃げ出そうとするが見逃さず射殺する。

 

『敵の増援を検知』

 

「嘘だろ、まだ来るのかよ」

 

署長室の横の扉から暴徒が出てきたが2人だけですぐに片付けれた。

 

「オフィスは片付いたな。あとは屋上だけだ。この扉から上に行ける。ついてきてくれ」

 

先導するJTF兵達の後を追って屋上へと繋がる扉の前にたどり着く。

 

「よし、これから屋上に突入する。みんな準備はいいな?」

 

各自、リロードを済ませて準備万端の様子だ。

 

「もちろんだルーカス」

 

「いつでもOKだよ」

 

JTF兵がドアノブに手をかけた。

 

「ふぅ・・・よし!行くぞ!!」

 

ガタンと勢いよくドアノブを下げると共に扉を肩で押し開けた。JTF兵が先行して走る。その後ろに続いて9と僕は暴徒に向けて援護射撃する。

 

「行け行け行け!あの物陰に向かって走れ!」

 

助走をつけてスライディングでカバーに滑り込む。

 

「右に敵!」

 

「了解!対応する!」

 

どんどんと敵を倒して奥へとライアップする。奴らが今までやってきたようにこちらもラッシュで距離を詰めていく。

 

「そのまま詰めろ!!行け行け行け!」

 

「私の邪魔をしないで!消えちまえ!」

 

暴徒たちは激しい銃撃に晒され、室外機やダクトの裏に隠れた。

 

「このままじゃ奴らに押されちまうぞ!ボスを呼べ!」

 

『警告、敵の増援を検知』

 

ISACの警告が飛んできたら、奥の扉が開いた。

 

「アイツだ!暴徒どものリーダーが出てきたぞ!」

 

ひと目でわかった。リーダーはそこら辺の暴徒とは全く違う。なぜなら拳銃やマシンピストルではなくAKを持っている、厄介な相手になるだろう。

 

「ハハッハ!『撤退だ!覚えてろ!』ってな!逃げ出したマヌケJTF共だ!野郎ども殺っちまうぞ!」

 

「ヘッヘッヘェ!!ボスが来たぞ!」

 

「後悔しやがれクソ野郎!」

 

ボスが来たことによって下っ端の暴徒たちは士気が上がったようで、めんどくさい事になってしまった。

 

「周りの雑魚どもから殺せ!いいか?リーダーは後回しだ!」

 

「わかった!」

 

「了解!」

 

しかし勢いはこちらも負けていない。たとえ4人だろうとアイツらを倒すことには変わりはない。

 

「おいルーカス!弾をくれ!」

 

「こっちも残りわずかだ!大切に使え!」

 

マガジンを滑らせて弾薬を渡している。JTF兵達もやる気のようだ。

周りの暴徒を始末しつつ、リーダーにも弾を当てるが、あまり効いていない。どうやら中にボディーアーマーを着込んでいるようだ。恐らく武器庫から奪ってきたのだろう。

 

「ちくしょう!弾が入らねぇ!」

 

「銃弾が効かないならアーマーごと吹きどばしてやる!フラグアウト!」

 

ポーチに入っているありったけのグレネードを敵に投げつける。

 

「クソ!グレネ───

 

パァンと甲高い音に続けて重たい音が後から聞こえた。

グレネードの破片によりドラム缶の可燃性ガスが爆発を起こしたのだ。

 

「リーダーが吹き飛んだ!」

 

「ありゃもう生きてねぇな!あとは残党狩りだ!このまま押すぞ!」

 

全員一斉にカバーから飛び出して残りの暴徒たちを無力化し、全滅させた。 警察署にはもう暴徒は残っていない。

 

「ありがとう、お前達がいなかったら結果も変わっていたかもな」

 

「あんた達に助けられてばかりだったな。この借りは必ず返す。さ、行くぞサム」

 

JTF兵達は背中を見せながら手を振り、警察署内に戻って行った。

 

「僕達も降りよう。ちょうどそこにロープがあるし、そこから降りれそうだ」

 

屋上から降りるためラペリングのロープを垂らし、専用の用具をロープに装着して二階部分の屋根に降りる。

 

『見事だエージェント。ブルックリンは安定を取り戻した。マンハッタンは・・・別問題だが、現場で確かめてみよう。新たにエージェントが加わった。エージェント・ラウと一緒に向かおう。指揮官チャン、アウト』

 

下にトラックがあるので1度荷台に飛び降りてから地面に降りた。そして後ろを振り返り、ナインに降りれるか気遣いの声をかけた。

 

「降りれるかい?」

 

「へ〜きへ〜き、このくらい大丈夫だって〜」

 

元気よくトラックの荷台から飛び降りて見せ、何気に向けてきたドヤ顔が地味に腹が立った。

 

「おじさん、早くヘリポートに行こう?」

 

「何もそんなに急がなくても・・・ってもう行ったのか」

 

橋は封鎖されているためマンハッタンへはヘリで向かうことになっている。

ヘリポートに走っていったナインを歩きながら追いかけ、ヘリポート入口のフェンスの扉を押して中に入る。

奥に進んでいくと、エンパイア・フルトン・フェリー州立公園へようこそ!と書かれた看板が目に入った。かつてはここも多くの人で賑わう公園だったのだろう。今となってはすっかり臨時のヘリパッドがでかでかと書かれている。

空を見上げると、辺りはすっかり暗くなっていて、雪が深々と降り積もる。雪を見るとここに来たことを思い出す。

まだ他の仲間や指揮官は来ていないようで、そこに居るのはヘリパッドの中心に立っているナインだけだった。

 

「まだ誰も来てないみたいだね」

 

ナインに声をかけるが反応はせず、対岸のマンハッタンの街並みを静かに見ていた。

そしてゆっくりと振り返り口を開いた。

 

「実はさ、第一波のエージェントに私のお姉ちゃんがいるの。でも、第一波のエージェントの通信が途絶えたって聞いた時、とても怖くなった。お姉ちゃんが死んじゃったんじゃないかって」

 

僕は驚きを隠せなかった。まさか目の前にいる9のお姉さんが第一波のエージェントだったなんて。

 

「でも、第二波のエージェントに選ばれた時は嬉しかった。あそこに行ってお姉ちゃんを探せるから」

 

ナインは真っ直ぐマンハッタンを見つめる。その視線には様々な思いが込められているのがわかる。

 

「ナインはお姉さんのことが大好きなんだね」

 

「大好きなんてものじゃない、もっと大切なもの」

 

「大切なもの?」

 

「うん、だって大切な・・・家族だから」

 

「家族・・・か。僕もお姉さんを探すのを手伝うよ。名前はなんて言うんだい?」

 

「本当?ありがとう!名前は45姉、UMP45」

 

名前を聞いて失礼ながら笑ってしまった。

 

「ふっ、ふふ!君たち姉妹は奇妙な名前をしてるんだね?」

 

「ぶぅ〜それは言わない約束だよ?」

 

「ふふ、そんな約束した?」

 

2人とも大声で笑った。

そしてナインはもう一度対岸へと目をやった。それにつられて自分も奥のビル群を見る。 高層ビルの窓からこぼれる灯りがやけに幻想的に思えた。

 

「あそこよ」

 

声のする方を振り向くとフェイがこちらに歩いてきていた。

 

「あのビルの裏にバーがある。世界一のウィスキーサワーを出す。街を取り戻せたらあなた達に1杯おごるわ。いいえ、絶対に取り戻す!さあ、来たわよ!」

 

フェイが見上げて指を指す方にはヘリコプターが大きなローター音を響かせながら近づいてくる。

 

「残りの仲間がヘリに乗ってる。ついにこの時が来たなんて!」

 

ヘリがギアを出して降下しつつゆっくりと目の前に降りた。 ハッチが開き、指揮官が出てくる。

 

「そろそろだね。おじさん」

 

「そうだね」

 

「さぁ、エド、ナイン、行くわよ!」

 

まさか、次の瞬間こんなことが起ころうとは誰も予想しなかった。

 

「よく来た──

 

一瞬で閃光と爆炎に包まれる。何が起きたか理解できないまま視界が暗転し、酷い耳鳴りがする。

ドォォンと大きな爆発が起こり、ヘリに乗り込もうとした三人はその衝撃で吹き飛ばされた。

ピィーンと激しい耳鳴りが続く中、次に目を開けた時は火の粉が舞い散る空を見上げながらぼーっとしていた。

 

「うぅ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 

いつの間にかフェイが激しい呼吸をしてこちらに這い寄って来ていた。

そして仰向けになった自分の元にたどり着くと、体に腕を通してそのまま引きずって炎上しているヘリから遠ざける。

 

「クソ!足が・・・!」

 

ぼやけつつフェイの足を見た。右脚には異常はない。そして恐る恐ると反対側の脚を見れば、ズボンにはべっとりついた血、何よりも痛々しく抉られた脚だった。

ヘリのローター音が聞こえたので上を見るとまたヘリコプターが飛んでいた。しかし、今度はさっきのオスプレイのような軍用機ではなく、民間のニュース局ヘリだった。

そのヘリはもう片方のヘリパッドに着陸すると、パイロットの男が降りてこちらに走ってきた。

意識が朦朧とする中、フェイがパイロットに肩を組んで補助されながらヘリに乗り込んだ姿が見えた。

そういえばあの子は・・・ナインはどこだ・・・

周囲を見渡してナインを探す。

自分からちょうど真後ろの辺りに9が倒れ込んでいるのを見つけた。

 

「ナイン・・・!大丈夫か・・・!起きろ・・・!!ケホケホッ!!」

 

痛む体を無理やり動かして目の前に横たわっているナインの肩を揺さぶる。見た感じでは吹き飛ばされただけで特に目立った外傷はなかった。

 

「うっ・・・うぅん・・・」

 

揺さぶり続けた結果、ナインは目を覚まし起き上がり、そして周りの光景を見て愕然とした。

 

「一体なにが・・・?はっ!!それよりおじさん!大丈夫!?」

 

吹き飛ばされたことを思い出したのか僕の体を見る。

 

「あぁ、ああ・・・大丈夫だ・・・それよりナインは大丈夫かい・・・?」

 

「だ、大丈夫だよ。それよりもおじさんは・・・!」

 

「待ってろ!今すぐ運んでやるからな!」

 

フェイをヘリに乗せ終わったパイロットがこちらに戻ってきた。

 

「起きていきなり悪いがキミも手伝ってくれ!」

 

「うん!」

 

「よし、いくぞ!123!」

 

カウント共に体が持ち上がりヘリに運ばれる。そしてイスに寝そべらされた。

自分を乗せるとヘリはすぐさま上昇して、地面から離れていく。

ブルックリンがどんどん遠のいていき、大きなマンハッタン橋が見えた。

そこでまた視界が歪み暗転した────

 

 

 

──────必要なの!!戻ってきて!!

 

 

──────ねぇ、しっかりして!

 

 

 

「ねぇ!持ちこたえて!」

 

揺さぶられて声をかけられることに気がつきはっと目が覚めた。目の前には心配そうに覗き込んでいるフェイと9が視界に入る。

フェイは血が滲んでいる包帯を頭に巻いていた。 だがしかしまだ意識は朦朧としている。

そしてフェイがカバンから何か取り出してそれを腕に刺された。そうすると体に力が入り起き上がることができた。

どうやらまだヘリの中みたいだ。

 

「よかった。もう大丈夫そうね。私なんかよりよっぽどマシよ。」

 

フェイは爆発でボロボロになった体を手で押さえながら話を続ける。

 

「クソ、あの爆発で指揮官を失ったわ。でも仕事はある。中止なんてできない。ただ・・・」

 

「あと1分で着陸だ。右側に見えてくるだろう」

 

パイロットが遮るようにこちらに告げる。

言われた通りに右を向けばハドソン・ビアの黄色いテント群が見えた。

 

「第一波について少しだけわかったわ。全員死亡または行方不明。つまり私たちだけ。結束する必要があるわ、今、すぐにね」

 

「JTF68から管制塔。ハドソンを確認。ええ、ディビジョンのエージェントが3人搭乗。爆発は彼らが乗り込んだ時のものです」

 

フェイがホルスターからハンドガンを取り戻し、マガジンを入れた。そのハンドガンをこちらに手渡してきたのでそれを受け取る。

 

「了解、JTF68。これより着陸体制に入る」

 

ヘリはゆっくりと右旋回してやがて高度を下げていく。

 

「人が信頼できるかどうかの判断には時間がかかる。でも時間はない。あなた達に賭けるわ。それしかない、間違いじゃないといいけど!」

 

ハンドガンをホルスターに収めてヘリから降りる。

ヘリパッドには誘導員とメディックが立っており、着陸したと同時にこちらに向かってくる。

 

「フェイ、降りれるかい?」

 

先に降りた僕とナインでラウの肩を支えて補助をする。

メディックも協力してゆっくりとラウをヘリから下ろす。

 

「ええ大丈夫よ、ありがとう」

 

誘導員がローターの音に声がかき消されないように大声で話かけてきた。

 

「ハドソン・ビアへようこそ。何をしに来たかは知らないがゲートの向こうは地獄のような交戦地帯だ!」

 

フェイも大声で質問をする。

 

「ここの指揮官は誰?」

 

「ベニテス隊長だ。マディソン・スクエア・ガーデンでの退却を指揮してたんだが、今朝彼の分隊との連絡が途絶えた。明日までに無線が繋がらなければ移動する」

 

フェイを治療していたメディックが答える。どうやらJTFの指揮官は不在のようだ。

 

「誰も撤退はしない。街を取り戻すのよ!必要なものを揃えて。すぐに後を追うわ」

 

「わかった、ナイン、行くぞ」

 

「補給係に会うといい、ゲートのすぐ内側にいる。」

 

「幸運を祈る!きっと運が必要になる。おい誰か担架を持ってきてくれないか?」

 

誘導員に背中を叩かれて送り出される。

 

「わかった、ありがとう。フェイを頼む」

 

そう言い残し、ゲートに向かって歩き出す。こんな最悪な始まり方があってたまるか。そんな思いで拳をグッと握りしめた。

 

「これから大変になりそうだ。ナイン、覚悟はできてるかい?」

 

「もちろん。覚悟がないとここには居ないよ」

 

 

ここについてからはやけに足が重たかった。

 

 

Ep.2 END




本編が思いのほかシリアス(?)になっちゃったのでおまけを書こうかなと考えております。基本的に内容は前回の物語を少しもじってキャラクターを別の誰かに変えたりとかしようかなと思っております。なお、シリアスとは全く関係ない、ネタ系になりますのであしからず。
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