The Division Dolls' Frontline   作:はもごろフーズ製ツナ缶 S/N10329

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前回の投稿から時間がアホほど空いてしまいました、申し訳ございません。


Ep.3 Establish base of operation

最悪のスタートだった。ヘリは爆破されるし、味方のエージェントは私たち以外全員が死亡して状況は絶望的だった。

 

 

 

桟橋に着陸したヘリから少し歩けば、そこら中に黄色いテントが設営されていたが、しかし、状況はあまり良くないようで、ドクターと思われし人達があちこち慌ただしく走り回っていた。

 

「おい誰か来てくれ!手が足りないんだ!」

 

「無理だ!こっちも手一杯なんだ!」

 

負傷者や病人が至る所で市場の魚のように横たわっているそこは、まさに地獄のような場所だった。

 

「おい!おいおいおい!しっかりしろ!な?落ち着くんだ!」

 

「落ち着けるわけないだろ・・・!見たかアレを!もう嫌だ・・・殺してくれ・・・!」

 

「JTFの俺らが弱音を吐いてどうする!しっかりしろ!」

 

JTF達もこの状況に身体的にも、精神的にも疲労しきっている状況であった。

そんな中を俯きながら歩くことしかできなかった。

ある程度進めば周りのテントより一回り大きな施設の目の前に着いた。その施設の中に入り、更に奥へと進む。

中では全身を黄色の防護服で固めたスタッフが作業をしていた。

そのうちの1人がこちらに気づくと防護マスクを外して、こちらに近寄ってきた。

 

「あんた達が例のディビジョンか、話は聞いてるよ、とんだ災難だったな。奥に進んでこのテントを抜けたらそのまた奥にここのオフィサーが居る。そいつから状況を聞いてくれ」

 

「あぁ、すまない、ありがとう」

 

『ニューヨーク・ジョイント・タスク・フォースから連絡です。AからS地区までの緊急医療スタッフはレベル2防護服とDS3相当の防護マスクを装着し、次のエリアの対応に当たってください』

 

「お呼び出しのようだ。それじゃあ頑張ってくれよ」

 

スタッフは再び防護マスクを装着して、ポンポンと肩を叩いて、先程、放送があった場所に急ぎ足で向かっていった。

 

「おじさん、私たちこれからどうなっちゃうんだろう・・・」

 

「・・・わからない」

 

わからない、そう答えることしかできない自分の無力さを感じながら、トボトボと施設の中を歩く。

さっきのスタッフの指示通り、施設の外に出ると、目の前の柵に星条旗がかけてあった。その星条旗の下には火のついたロウソクや警察帽、防火帽、その他にもドッグタグ、花束が置かれていた。

JTFのベストを着た神父らしき男の前には、哀悼の意を捧げる人々で溢れかえっていた。

 

「我らに罪を犯す者を、我らが許すごとくく、我らの罪をも許したまえ。我らを試みに会わせず、悪より救いだしたまえ。アーメン」

 

その光景に思わず愕然して足を止めてしまった。しばらく足を止めて、その光景に釘付けになっていると服の裾をクイクイっとナインに引っ張られて、ふと我に返った。

 

「おじさん、早く、行こう?」

 

「あ、あぁごめん」

 

そのナインの声はブルックリンにいた頃とは比にならないくらい弱々しくてどこか悲しみを帯びていた。

 

「あ、あそこだ!おじさん早く早く!」

 

それを誤魔化すようにJTFオフィサーのテントに走っていった。

机に向かって書類を見つめた女性に声をかける。

 

「すみません、あなたがここのオフィサーですか?」

 

女性はいきなり声をかけられたことに驚き、ペンを落としつつもこちらに顔を上げる。

 

「ええそうよ、ようこそ、ハドソン・ビアへ。あなたが政府のエージェントね、話は聞いてるわ。それよりも疲れてるみたいね。でも仕事はまだまだあるわ。私が無線の任務を任されてるのは、坐骨神経痛だからなの。でも必要な状況はちゃんと流すから、頼りにしてね」

 

ここのJTFのオフィサーはヘイゼン巡査とは違い、一般の中年女性、いわゆる役所のおばちゃんにしか見えなかった。

どうやらナインもそのように見えていたようだ。

 

「おや?2人とも私の事疑ってるでしょ?これでも若い頃はアフガンに従軍していたんだけどね」

 

疑っていることが相手に伝わったのか図星をつかれてしまった。

 

「「えっ!?」」

 

思わず驚きの声を上げてナインとハモった。しかし驚かずには居られなかった。

彼女がJTFのベストをまくり肩を見ると先任曹長のワッペンをつけていた。

 

「!?これは大変失礼致しました!」

 

慌てて姿勢を正し敬礼をすると、それに従いナインも右手を上げる。

 

「ふふふっ、そんなに堅くならなくていいわよ2人とも。それに私はもう退役してるの。今は階級なんて関係ないわ」

 

そう言って彼女は微笑むが未だ緊張は解けずにいる。

恐らく、無線係を任されたのは坐骨神経痛が理由ではなく間違いなく曹長クラスの指揮能力を持っているからであろう。そうに違いない。

 

「ところで本題なのだけど、医療物資の投下が昨日あったんだけど、紛失してしまったの。ここの人達にはそれが必要なの。お願いだけど見つけてきてくれない?」

 

「まっかせてー!」

 

ナインは胸を張ってみせた。どうやらいつもの調子が戻ってきたようだ。

 

「そう、そしたらマップに情報を送るわ。よろしくお願いね」

 

マップに情報が送られて、ここから0.4kmとそう遠くない距離だ。

 

「ブルックリンよりも気を引き締めて行こう、ナイン」

 

「うん!」

 

目標地点へと歩き出すついでに、出口付近にあった状況ボードをISACに読み込ませ、目標を更新する。どうやらやることはまだ沢山あるようだ。

 

『報告、チェルシー地区に進入、マップを更新します』

 

思わず足を止めるほど圧巻される光景。目の前には団地や商店、その奥には高層ビルが連なっている。

 

「ここがマンハッタン・・・!おじさん!45姉が見つかるといいな!」

 

「あぁ、そうだね。それじゃあサプライドロップを探しに行こうか」

 

「うん!」

 

意気揚々とした足取りでナインは走り出していく。

サプライドロップの推定落下地点に向かう道中で何名か市民に遭遇し、有力な情報を得れた。

 

「あの人たちが言っていた場所的にはこの辺だよね・・・あ!あったよおじさん!発煙筒が上がってる!」

 

ナインが示す先には街灯に引っかかった黄色のパラシュートと赤く発光し、モクモクと煙を上げている発煙筒が確認できた。

 

「1つだけか?」

 

「わかんない、でもこの周辺を探せばまだありそうだよ」

 

「とりあえずそいつにビーコンを取り付けてJTFに送ろう」

 

救援物資にビーコンを取り付けて発信した矢先だった。

唐突の発砲と共に、隣にあった放置車両のボンネットに穴が空く。

すかさず近くの遮蔽物に身を隠した。

 

『警告、多数の敵が接近中』

 

「バンディット!」

 

「了解、JTFに応援要請するから時間を稼いでくれ!」

 

「わかった、でも早くしてね!」

 

「こちらディビジョン・エージェント、サプライドロップの確保に成功。しかし、現在暴徒に襲撃を受けている。場所は9番街西21番通りの交差点、敵の数は不明。応援を要請する!繰り返す、応援を要請する!」

 

『こちらJTFパトロール、応援要請を確認した。そちらに向かう、アウト』

 

応援要請をキャッチしたJTFパトロールから無線が入り、どうやらこちらに向かってくれるようだ。

しかし、敵の攻勢は絶えず、弾丸が飛び交っている。

 

「ナイン、今要請をした!すぐ来るそうだ!」

 

「じゃあそれまで耐えればいいんだね!」

 

「そういうことだ!」

 

胸のポーチからマガジンを取り出して、M4A1に挿入したら、ボルトリリースボタンを手のひらで勢いよく叩く。カチンッと金属音が鳴ると同時に大きな破裂音を立て、敵の眉間に目掛けて撃つ。慎重に狙いをつけて確実に射殺する。

 

「これでも喰らえ!」

 

ナインはカバーから飛び出して暴徒に銃弾を放って多くの弾を命中させるが、敵はよろめきはするものの、アーマープレートを着込んでいるのかなかなか有効打を与えれない。

 

「こいつら、ブルックリンにいたヤツらとは全く違う!アーマープレートのせいで私の銃じゃ貫通できない!」

 

ナインはカバーに隠れて引き抜いたマガジンを地面に叩きつけた。

 

「わかった!アーマープレートを装着してる奴は任せろ!」

 

カバーから銃を出してポリスベストを着たやつにありったけの弾をぶち込むと、案の定、敵は糸が切れた人形のようにその場に倒れる。

どうよ、とナインに自慢げに見せつけるとウザそうな顔をされた。

 

「なんかウザイ」

 

素で傷ついた

 

『こちらJTFパトロール、現場に到着した。これより敵と交戦し、せん滅する』

 

交差点の向こう側ではJTF達が暴徒の背後から発砲を開始する。上手いこと背後から不意をつけたのクロスファイアであっさり敵を倒すことができた。

暴徒の全滅を確認すると交差点の中央でJTFのリーダーと落ち合い、握手を交わす。

 

「エージェントのエドワードだ。応援に感謝するよ。ありがとう」

 

「ありがとね!」

 

「あぁ、困った時はお互い様だ。ところでサプライドロップは1つだけか?報告では3つ落ちたはずなんだが」

 

周囲を見渡してみるがなかなか見当たらない。

 

「あ、そことあそこにあるね」

 

ナインが残りの2つのボックスを指さしたので、指す先を見てみると、ここから少し離れた駐車場に1つ、もうひとつは歩道橋の上に落ちていた。

 

「おお、あんなところに落ちてたか。目がいいね。嬢ちゃん名は?」

 

「えへへ〜でしょ〜?名前はね、UMP9!ナインでいいよ!」

 

「UMPナイン・・・?こりゃまた変わった名だ。とりあえず、これからよろしくな、ナイン」

 

JTFリーダーとナインが固い握手をしているうちに、いつの間にか他のJTF兵は展開して物資の回収作業をしていた。

 

「さて、ここから先は俺らの仕事だ。君たちディビジョンもやることはいっぱいあるだろう。またあの婆さんから連絡が入ると思うよ」

 

それじゃ、と背を向けて仲間の元へと向かっていった。

 

「助けてくれてありがとね〜!」

 

リーダーを見送ったあと、オフィサーから連絡があった。

 

『エージェント?忙しい?問題が発生したのよ。誰かのせいでアンテナがおかしくなってる。あなたなら、アンテナにも詳しいわよね?賢くて教養があるから。このレディーのためにも直してくれない?』

 

「りょうか〜い、今すぐ直すね」

 

『ありがとう、助かるわ!マップに座標を送ったわ、それじゃあよろしくね』

 

マップが更新されたので見てみると、目標地点はここからそう遠くない。北に3ブロックほど進んだ場所にあった。

 

「アンテナの修理って、完全に雑用だね」

 

自分が文句をたれているとナインがしかめっ面をして何か言いたげな顔をしてジト目でこちらを睨んでくる。

 

「あ〜!そんなこと言うんだ〜!今は信頼を得るために頑張らないといけないんだよ!」

 

「ハハッ、ソウダネ〜」

 

アニメや漫画ならプンプンと擬音が出ていそうな怒り方をするナインを適当にあしらって目標地点に向かった。

 

「さて、到着したのはいいけれども」

 

ISACの示すアンテナの位置は目の前にある倉庫のような見た目をした屋上にある。

 

「どうやって登るんだ・・・?」

 

建物のを見上げて、屋上に登る方法を考えていると、ナインがいきなり建物の横に付けられたトラックの荷台から建物に飛び移った。

 

「ここから登れるよ〜おじさん!」

 

軽い身のこなし、まるでパルクールをするかの如くどんどんと建物を登っていく。

少しは"おじさん"を労わって欲しいものだ。

 

「今行くよナイン・・・」

 

渋々トラックの荷台によじ登り建物の2階部分に上がり、室外機やダクトを伝ってさらに上を目指して腕に精一杯の力を入れる。

そして、ようやく屋上に着いたと思ったら9がハンドサインを出し、ダクトに隠れるよう指示した。

訳も分からず指示されたの疑問を持ってもう一度、ナインに目をやるとダクトの向こう側、暴徒を指していた。

 

「ケッヘッヘッ!アンテナをぶっ壊してやったぜ!」

 

「これで小賢しいJTF共は混乱するだろな!」

 

「アレ?アンテナの調子がおかしいぞぉ?ってなぁ!」

 

「「「ギャハハハハ!!」」」

 

あぁ、なるほどそういう事かと納得の様子で暴徒を睨んでいるとナインが早速攻勢に出た。3人固まっているとこに弾をばら撒き、敵を薙ぎ払い、一瞬で蹴散らした。

 

「邪魔者はいなくなったし、アンテナを直すにはっと・・・このボタンっぽい?」

 

ピカピカと赤色に点滅している分電盤のスイッチをナインが押すと、止まっていた電源が再び入る。

するとISACから操作盤の位置を示されたので、ナインに行ってもらうことにした。

保守点検用のハシゴを登りアンテナの下にある操作盤を操作して復旧を試みる。

 

『システム起動、施設を再起動します』

 

「お、なんかできたっぽいよ〜」

 

こちらに大きく手を振り全身で表現する。

 

「これでアンテナは復旧できたかな?」

 

『すごいわね!見事な働きだったわ。おかげですっかり直った!あーあ、ベニーもこんなに器用だといいのに』

 

「お易い御用ですよ」

 

「おじさん、なにもしてないじゃん」

 

「スミマセン・・・」

 

自信げに言ったがナインに正論を言われてぐうの音も出なくなった。

自分は咄嗟に話を誤魔化すように話題を変えた。

 

「さ、さてと、これからどうする?またそこら辺でもぶらつくかい?」

 

「う〜ん、一旦ハドソン・キャンプに戻らない?」

 

今後どうするか方針を2人で悩んでいた時だった。

微弱ながらISACの無線が電波を拾った。耳を澄ますと、どんどん鮮明に声が聞こえてくる。

 

『・・・路から複数の敵が来る!追い詰められた!援護はどこだ!?』

 

『送れるものは残っていない。負傷者もいるし、中には敵側に寝返った連中も、誰も送れない・・・!すまない!』

 

『そんなのどうでもいい!無線を置いてお前が来い!突入されてるのに人が足りないんだ!』

 

急いでISACに情報処理をさせて、救援要請の発信源を逆探知捜索する。

逆探知が完了してマップに位置が表示され、その場所は中央郵便局、JTFの作戦基地本部となっていた場所だ。

フェイから無線が入る。

 

『マディソン・スクエア・ガーデンを占拠している犯罪者連中に作戦基地が包囲されている。数は不明、リーダーはいない模様。しかし、JTFは危うい状況にある。これは最優先事項だ。エド、ナイン、まずは基地を取り戻すところから始めましょう、オーバー』

 

「エージェント了解」

 

「了解、今すぐに向かう!」

 

ISACのナビゲーションに従い、中央郵便局を目指して北上する。

 

『通知、現地のJTF無線に侵入中』

 

ISACが無線に割り込み、JTF無線に繋いだ。

無線の向こう側から激しい銃撃音が音割れ気味に響きわたっている。

 

『ユニット43?ディビジョンエージェントがこれから現場の応援に向かう』

 

『やっと応援を呼んだか!今すぐ寄越せ!』

 

『フォスター、階段で助けが必要だ。マルチネス、側面に回り込め!行け!行け!行け!』

 

JTFは既に襲撃を受けているようで、無線越しに爆発音と銃声が響き渡っていた。

中央郵便局はもう目と鼻の先だ。目の前で激しい銃撃戦が繰り広げられ、暴徒とJTFの攻防が続いていた。

 

「ナイン、散開だ。僕は左から回ってJTFを支援する。そっちは敵の側面を突いてくれ」

 

「了解!」

 

それぞれ左右に別れて、発砲を開始する。

JTF兵がいる所まで走って、カバーに滑り込んだ。

 

「お前らが無線で言ってたディビジョンか!!」

 

「ああそうだ、無線を聞いて助けに来た!」

 

「見ての通り状況は最悪だ!まずはあいつらを片付けないとならない!」

 

そういってJTF兵は少しだけ頭をカバーから出して暴徒たちを確認した。

 

「フォスター!敵が来るぞ!」

 

「了解、カバーする!」

 

「よし今だ!撃て撃て撃て!」

 

こちらに攻勢をかけている暴徒を一斉に迎え撃つ。

クロスファイアを組んだナインも敵を釘付けにして敵の側面から攻撃している。

 

「ターゲットダウン!」

 

「ラインをあげるぞ、目の前の黒いバンまで移動する」

 

「了解!」

 

JTF兵が前線を上げるのに連れて自分も後について行くが、敵の弾が数センチ前を通り過ぎた。

奥にはアサルトライフルを乱射して、制圧射撃を行っている暴徒がいる。

 

「ナイン、敵の制圧射撃が激しい。そちらから攻撃できないか?」

 

「わかった、側面に回って攻撃する」

 

ナインは先程まで居たカバーから低い姿勢で別のカバーへと移動していく。

 

「側面に回った、今から射殺する」

 

ナインがAKを乱射していた暴徒の側面に回った瞬間、敵がぶっ倒れた。

 

「よくやったナイン」

 

しかしナインは浮かない顔をしてこちらを見る。

 

「わたしは撃ってない」

 

その言葉にこの場に居た全員が驚いた。ナインが撃っていないなら誰があの暴徒をやったのか、郵便局前は一気に静まり返った。

少し間を開けて1人のJTF兵は察しがついたようにビルの屋上を見た。

 

「あぁ、アイツだよ。一匹狼のスナイパーさ」

 

ビルの屋上には石竹色の長髪に自分の背丈より倍はあるであろうライフルを持った女性がこちらを見下ろしていた。

 

「おい、ダネル!助かった、感謝するぞ!」

 

JTF兵は大きな声で感謝を伝えるが、彼女は興味無さげに室内に戻って行った。

 

「まったく、いつもアレだ。無愛想だが腕は確かなんだ」

 

「無駄な馴れ合いはいらないって感じッスよね」

 

オフィサーが肩の無線機を手に取って状況報告始める。

 

「管理官?外の状況は統制下にある。公式報告?ディビジョンに尻ぬぐいしてもらった、オーバー」

 

『ブラボーチーム、報告ありがとう。注意しろ、油断は禁物だ。無事で良かった、アウト』

 

『よくやったエージェント、これから作戦基地を立て直す。中を見て回って、やっと移動手段を確保したから、私もそっちに向かってる。これからだ』

 

「あぁそうだな。先に作戦基地を見て回るよ」

 

「フェイも気をつけてね」

 

『ありがとう、すぐに向かう』

 

通信を終えて作戦基地の入口へと向かう。

中に入ると長い廊下には消毒施設があり、そこを通ると消毒液がミストで体に吹き付けられる。

 

『空間換気浄化システム稼働。汚染レベルが低下』

 

『ISACは基地各部のマップを表示して、それぞれの進歩を同期できる。これで全体像の把握が可能。基地が安定すれば街の状態も良くなる』

 

廊下の消毒施設を抜けると大きなホールが目の前に広がった。

 

『エージェント、基地を機能させて人々に街を取り戻してるんだってことを示さないと。作戦基地もポテンシャルはあるけど、現状は、人で不足でまったく役に立ってない。ここを機能させるには、すぐにでも相応の人員が必要よ』

 

全くもってその通りだ、中には人が少なくて周囲を見るもここが作戦基地かと疑うほどにガランとしている。

 

『例えば医師、マディソン・スクエア・ガーデンの野戦病院をウイルス研究者が仕切ってる、今はまだ滅茶苦茶だけど、彼女さえいれば医療設備を稼働できる。でもいないと・・・』

 

奥には医者がいない廃墟同然の医療棟

 

『JTFの指揮官ベニテスらが戦場で連絡が途絶えている、連れ戻して。警備棟を機能させるには彼が必要よ、みんなの士気もかなり上がるはずだわ』

 

横は指揮官不在の警備棟

 

『基本的な設備も修復しないと。まずは電力、それと情報ネットワークね。その対応をしていた人員は、途中でトラブルに巻き込まれたみたい。彼がいないと、光はない』

 

2階は技術エンジニアのいない技術棟

 

この3つの棟を再建しなければニューヨークは復興は夢のまた夢で現実にはならないだろう。

 

「これからだね、おじさん・・・まず、各棟調査をしよう?状況把握は大切だからね!」

 

「それもそうだ、じゃあまず警備棟から調査しよう」

 

ホールのすぐ右にある警備棟に足を踏み入れた。

所々にランタンが光っているのと、ワークショップに装備がぽつんと置かれているだけで後はがらんとしている。

 

『警備棟に必要なのは愛情とベニテス隊長。彼の人気は大したものよ。街から敵を排除するのに必要な情報と武器を提供してくれるはずよ』

 

「まずは、ベニテス隊長を見つけないね」

 

次に技術棟、2階へつながる階段を登るとゴミが散乱していて無造作にダンボール箱の壁が出来上がっていた。

 

『技術棟はひどいことになってる。でもローズがいくつかの秘策を持ってるみたい。復帰ができればだけど、元PMCよ。多分あなた達が想像してるより物事をよくわかってる。きっと役に立つ。』

 

最後は1番荒れ果てていた医療棟に踏み込んだ。言葉を失う程の激臭とそれの発生源と思われしき様々な薬液が混ざった水溜まりが足元にできている。

医療用ベッドはぐちゃぐちゃに、資料や薬品が入っている棚は強盗が入ったかのように荒れていた。

 

『現状、医療棟は使い物にならない。ウイルス研究者を迎え入れたら、ウイルス発生源の調査が可能になる。それに私たちが使う物資も、もっと調達できるようになる』

 

一通り全ての棟を見て周り、入口付近に戻ってラウの到着を待機していると、JTF兵のドクターに肩を借り、脚を引きづりつつもラウが到着した。

組んでいた肩を離れて、自分の力で目の前に立った。

 

「フェイ、大丈夫かい?」

 

「ええ大丈夫。それより、最悪よ。足がこんなことになったから悪いけど現場には出られそうにない。でもやれることはやる、ここからね」

 

そう言うと作戦基地(ここ)に指を指した。

 

「どれほど現場に出たかったなんて分からないでしょ。こんな時のために、生涯を通して訓練してきたのに・・・」

 

あの爆発に巻き込まれた時の脚を見れば巻かれている包帯に血が滲んで、余計に痛々しく感じてしまう。

 

「でも想像してたよりひどいわ。私たちは人と親密になってはいけない。いざと言う時に邪魔にならないように・・・ 私もそうした、けど無理だった。情が移ったの。好きなの、人も街も必ず取り戻すわ」

 

立っているのもやっとのラウは話が終わった途端、足の力が抜けたのか倒れかけると横のドクターがすかさず肩を組む。

 

「おい、大丈夫か、無理するな」

 

「ええ、ありがとう、ありがとう・・・」

 

再び強い眼力でこちらを決心がついたように見つめてくる。

 

「頼りにされてる、絶対に失望はさせられない」

 

そう言い残して、奥の椅子に腰掛けた。

 

「信頼・・・か・・・」

 

「ん〜?そんなに深く考える事じゃないでしょ。悪い悪党達をぶっ殺して街を取り戻せばいいんでしょ?」

 

思わずナインの口の悪さに綻びの笑みが漏れる。

 

「・・・ッフフ、口は悪いけど確かにその通りだね」

 

「一言余計だけど特別に許してあげる」

 

軽い談話を交わしていると、先程、一緒に戦っていたブラボーチームが戻ってきた。

 

「あっ!ブラボーチームの人達だ!」

 

「やぁ、エージェント。さっきは助かったよ」

 

「恩に着る。この借りは必ず返すよ」

 

「ほら、ダネル。お前もなんか言え」

 

ダネル、そう呼ばれる彼女の方に目をやるが素っ気ない態度をしていて、さっさとどいてくれと言わんばかりのオーラを放っていた。

そんな彼女がやっと口を開いた。

 

「馴れ合いなど必要ない。さっさと退いてくれないか、正直邪魔だ」

 

ギロリと睨まれて思わず一歩下がってしまった。

しかし、分隊長はそれを許さなかった。

 

「馬鹿者、こっちは助けて貰った立場なんだぞ」

 

ゴツンとヘルメット越しにゲンコツを食らって痛そうにしているのを見て少し笑ってしまった。

 

「ダネルって言ったね。僕はディビジョン・エージェントのエドワード、エドワード・ディケンズ。横にいるのは同じくエージェントのナインだ」

 

「どうも〜!」

 

「さっきの狙撃は凄かったよ。助けてくれてありがとう」

 

彼女の目の前に手を差し出して握手を求める。

 

「エドワードとナイン・・・そうか、覚えておこう」

 

分隊長のゲンコツを食らって少し反省したのか、渋々ながらちゃんと握手をしてくれた。

 

「ところで、エドワードとナインはこの後どうするんだ?」

 

いきなり質問を投げられたが、ついさっき作戦基地を取り返したばかりなので何も考えていなかった。

 

「俺らにも手伝えることがあればできる限りやらせてもらうよ」

 

「そうだな・・・1番近い向かいのマディソン・スクエア・ガーデンはどうだ?」

 

「あそこは野戦病院だったが暴徒たちに乗っ取られてる」

 

マディソン・スクエア・ガーデンは、2万人収容のスポーツアリーナと、5千人収容のシアターなどで構成されている建物で、アウトブレイク時には野戦病院としてCERA(セラ)とJTFが運用していた場所だ。

 

「エージェント、暴徒たちはCERAの医療スタッフを人質に取っている。彼らが必要だ、特に現場を指揮していたウイルス研究者のジェシカ・カンデルが。彼女を見つけて基地に送り、残った敵を片付けて」

 

後ろの椅子に腰掛けていたフェイが端末で情報を調べてくれた。

 

「それじゃあ決まり! 次はマディソン・スクエア・ガーデンの確保と医療スタッフ達の救出だね!」

 

「了解、そうと決まれば早速行くか」

 

「だな、俺らもついて行くよ」

 

ブラボーチームを連れ、作戦基地を出て向かいのマディソン・スクエア・ガーデンの入口の前まで移動する。

しかし、入口は固く閉ざされており、バリケードが重なっている状態だ。

 

「おい、爆薬をもってこい。ここをこじ開けるぞ」

 

「わかった、今設置する」

 

工兵がドアに爆薬を設置してワイヤーをカバーの裏側まで引いてくる。

 

「爆破準備完了、いつでもいける」

 

「これから突入する、全員準備はいいな?」

 

「もちろん!いつで大丈夫!」

 

「こっちもだ」

 

「俺らもだ」

 

全員準備は整った、後はドアを爆破するだけ。カウントダウンが始まる。

 

「All clear! Fire in the hole!! 3! 2! 1! 」

 

爆音を立ててドアが物凄い勢い吹き飛ぶ

 

「そこだ!行け!援護は任せろ!」

 

 

 

作戦基地の再建はまずここからだ。

 

 

Ep.3 END




ナイン以外に初めて戦術人形を出してみましたが、まぁ難しい。
さらにあまり自分が知らない人形ってだけでキャラ崩壊が起きてるかもしれません。これに関してはご指摘等いただけたら幸いです。
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