The Division Dolls' Frontline 作:はもごろフーズ製ツナ缶 S/N10329
「All clear! Fire in the hole!! 3! 2! 1! 」
「そこだ!行け!援護は任せろ!」
カウントダウンと共に爆音を轟かせ、入口のドアが煙を帯びて奥へ吹き飛んでった。
そうすると先程まで固く閉ざされていたドアは無くなり、降りてあったシャッターもひん曲がる。
「ここで援護する。お前たちが医療スタッフを連れ出したら俺たちが護衛する!」
入口付近には医療用ベッドが散乱していて奥に進めばロビーが広がっていた。
『エージェント、中には多くの敵がいる。医療棟を機能させるには、人質に取られたドクター・カンデルとスタッフを基地に連れ戻さなければならない』
さらに先のエスカレーターからは先程の爆発音を聞きつけ、確認しに来た暴徒がぞろぞろと降りてくる。
「なんださっきの音は?入口の方からだ!」
すかさず機器が積まれているワゴンに身を隠す。
「敵3、まだこっちに気づいてない。やるなら今だよ」
相手は警戒はしているものの、まだ余裕を見せて気を抜いている状態だ。不意打ちなら今しかないだろう。
ナインとアイコンタクトを取り、攻撃のタイミングを伝える。
そして2人は隠れたワゴンから勢いよく銃を出し、敵を目掛けて発砲する。
「なんだテメェら!?」
「2名排除、1人は逃した。そこのカウンターの裏に隠れてる」
しかし、暴徒は3人だけでなく、2階の吹き抜けからこちらを撃ち下ろしてくる暴徒もいるようだ。
「ナイン、あの裏に隠れた奴は任せた。僕は前のカウンターまで移動する」
「わかった、援護するね」
敵の銃撃が止まった隙を見て、前のカウンターにスライディングで飛び込む。
その数秒後にカウンターには無数の弾丸が撃ち込まれた。
「ナイン!フラッシュバン投げれる!?」
「もちろん!どこに投げればいい?」
そう言ってナインはポーチからスタングレネードを取り出した。
「エスカレーターの上!2階に投げ込んでくれ!」
ナインは安全ピンを引き抜き、大きく振りかぶって投げてみせた。
「これでもくらえ!」
バンッと大きな破裂音と閃光が撒き散らかされると、敵にクリーンヒットしたようで、暴徒は足元がおぼつかない状態でエスカレーターから転げ落ちた。
「2階の敵は全員排除。おじさん、次に進もう」
ロビーを制圧した。
『セキュリティーに繋いでくれれば、カンデルの位置が分かるかもしれない』
「了解、セキュリティー室に向かってみる」
フェイにマディソン野戦病院のセキュリティーシステムに侵入させるために前方のエスカレーターを駆け上がり、セキュリティー室を目指す。
部屋の前に到着すると中には無数の監視カメラの映像とそれを映すモニターがズラリと並んでいる様子が目に入った。
横には大型のサーバーのようなものが置かれている。
「わぁ〜すごいカメラの数だね」
ナインは、モニターを近くで見るために室内に入った。
「えっと、これを操作すればいいかな」
操作盤の前にあったキーボードをナインが叩いて、フェイに、ここのセキュリティーシステムのデータを送信する。
「どうだフェイ、ハッキングできそうか?」
『・・・侵入した。見つかるといいけど・・・カメラの映像は見えてる?カンデルとスタッフは負傷者の手当をさせられている。だからまだ殺されていないんだ』
データを送って数秒でフェイはセキュリティーにハッキングしてみせ、目の前のモニターに治療をしているドクター・カンデルとそれに銃を向けて脅している暴徒が映し出された。
『何してる!?痛がってんじゃねぇか!』
映像の中の暴徒が声を荒らげるとドクターに向かって銃を突きつけた。
しかし、それにドクターは微動だにせず、むしろ銃口を掴んで刃向かってみせた。
『よく聞いて、私は6年医大に通ったの。あなたが実家の地下室でどんなドラマを観ながらマスかいてたかは知らない。でも接骨は簡単じゃないの。友達を治して欲しいなら、その銃はどけなさい!』
グイグイと銃を押しのけて暴徒に説教をしている。しかし、その言葉に腹を立てたのか暴徒も黙っていない。
『脅してんのかこの野郎!』
再び銃を突きつけたが、パシンと払いのけて治療に専念し始めた。
『正直に言っただけよ!』
モニター映っていた一部始終をナインと2人、呆然と見入っていた。
「おじさん」
ナインが声を掛けてきたのでモニターを観ながら返答をする。
「なんだい」
「このドクターの人、すごい度胸だね」
「奇遇だねナイン、自分もそう思ってるところだった」
このドクターは度肝が備わっている。それどころか銃を向けられているのに微動だにしてなかった。強すぎる
「はっ!こんなことしてる場合じゃなかった!おじさん!早く助けに行こ?」
その言葉でふと我に返り、入ってきた所とは別の扉からセキュリティー室を出ると、機材などの搬入用の坂道を通って上のバスケットコートを目指す。
『上のレストランに人を集めているようだ。敵は多い。でも遮蔽物を上手く使えば敵の標的にされず片付けられるはずだ』
フェイの言う通り、コートには医療機材やベッドなどが並べられており、その陰を通っていけば敵に気付かれずに側面を取れそうだ。
すかさず
脅威6
幸いにも敵は真ん中のバスケットコートの真ん中に固まっている。
「おじさん、わたしが左に展開するから正面から敵の気を引いてくれない?」
「オーケーだ」
ナインが定位置に着くのを確認して、セレクターをセミからフルに切り替え、奥の敵めがけて乱射する。
そうすると思いどうり、敵の気はこちらに向き、自分のいるカバーには銃弾の雨が降り注ぐ。
作戦は順調だ。あとはナインが側面から叩けば完璧のはずだ。
しばらくすると、敵の銃声とは違うサプレッサーの音が左から聞こえた。
1人また1人と着実に数を減らしていく。
相手も困惑している様子で、撹乱しているようだ。
ナインに確認のため無線で呼び出す。
「ナイン、今敵を撃ってるのは君かい?」
『ううん、ポジションには着いたけどまだ撃ってないよ』
じゃあ誰がと音のする方、観客席を見ると、見慣れたリング状のオレンジライトが光っているSHDの腕時計。肩にはISACの端末にSHDのパッチ。
ディビジョンエージェントだ
しかし、ヘリコプターでフェイに伝えられた言葉を思い出す。
顔を確認しようとするがキャップを深く被っておりよく見えない。わかるのは桜色の髪にポニーテールだけだ。
『警告、敵の増援が接近中』
ISACが敵の接近を知らせる。
とりあえず今は敵に集中することにした。
『ナイン、さっきの発砲音は味方だ、味方のディビジョンエージェントだ。敵じゃない』
『え!?ディビジョンエージェント!?でもフェイがエージェントは行方不明か死んだって、二波のエージェントもわたしたちだけのはずじゃ・・・』
確かにそうだ、それは自分も聞いた。だから頭がこんがらがっている。
『そうだ、でもありえないことが起きた。まずは協力して敵を倒そう。それからだ』
『わかった、気をつけて』
マガジンを抜いて残弾数を確認した。まだ余裕があるので再び銃に装填し、敵に向けて弾を発射する。
『警告、敵の増援が接近中』
「クソッ・・・まだ来るのかよ」
床に落としたマガジンを蹴飛ばし、新しいマガジンをマグポーチから取り出して装填する。リリースレバーを叩き、敵を叩く。
着々と敵の数を減らし、暴徒達を殲滅、無力化した。
『オールクリア、おじさんそっちはどう?』
『こっちも大丈夫だよ、とりあえずあのエージェントにコンタクトを取ってみる』
観客席に居たエージェントは静かに銃を下ろしてじっとたたずんでいた。
戦闘時はキャップと銃で顔が隠れていたが、今は顔が良く見える。
キャップからはみ出ている桜色の髪。整った顔に美しい碧眼。それは思わず見とれてしまうほどだった。
しばらく見つめていると、相手はこちらの視線に気が付いたのかこちらにハンドサインを送る。
どうやら上の階に来いと言いたげに指は上を指している。
「お〜い!さっきはありがとう〜!」
いつの間にか横に来ていたナインが大声で感謝を述べて手を大きく振ると彼女は小さく手を振った。
「・・・いい人だね、あの人」
「今のでわかるの?」
「な〜んとなくだよ〜、ささ、あそこのエレベーターで上の階にいこ〜?」
グイグイと服を引っ張ってくるナインを制止してフェイにあのエージェントのことを報告をする。
「フェイ、自分たち以外にもエージェントが居た。恐らく第一波のエージェントだろう」
『ええ、聞いていた。まさかエージェントがいただなんて・・・とりあえずカンデル達はまだ上だ。コビーズのキッチンに隠れてる。話はスタッフたちを救出してから聞くことにしよう』
「了解、作戦を続行する」
「も〜!はやくはやく!」
ナインは地団駄を踏み、さらに引っ張る力を強めた。
『それにしても酷く荒らされてるらしい。父がこの有様を見たら悲しんだだろうな。昔ここで一緒に試合を見たのよ』
「ここのスタジアムで?」
どうやらこの場所はフェイにとって思い出のある場所らしい。
エレベーターが到着するとピンポーンと音がなりドアが開く。中に入り上の階のボタンを押す。
「上へ参ります」
エレベーターの中は今の状況とは真逆で陽気なジャズミュージックが流れている。
『そう、両親が生きてたら、こんな目に遭ってたかと思うと・・・ でも、全力で前に進もうとする人たちはまだいる・・・』
「そうだね」
『ええ、私たちはそういう人たちのために戦っている。やろう』
「5階です」
エレベーターの自動音声と共に扉が開いた先は集中医療室だろうか、先程まで通ってきた場所とは明らかに雰囲気が違う場所だった。
『コビーズに行くには、汚染エリアを通らなければならない』
やはり、重度の感染者がここで治療を受けていたのであろう。
続けてフェイは話そうとするも、発言をためらったのか、少し詰まり気味になりながら話を続ける。
『・・・前はそこで多くの人が治療を受けていたがみんな奴らに撃ち殺された・・・気を付けろ』
よく見れば死体こそは無いものの、ベッドや地面には血溜まりができていて、足がすくんだ。
そんな時、奥からは観客席から援護してくれたエージェントの彼女がこちらを向いて歩いてきていた。
「さっきは助けてくれてありがとう。驚いたよ、自分たち以外にエージェントがいたなんて」
「私はコルトAR-15よ。ええと・・・ごめんなさい、あなた達は?」
「わたしはUMP9!第二波のエージェント、ナインでいいよ!さっきは助けてくれてありがとう!」
「同じく、第二波のエージェントのエドワードだ。よろしく、えーと、なんて呼べばいいか・・・」
彼女の右手を取り握手を交わす。ナインは左手を握りブンブン振っている。
「第二波の・・・エージェント・・・?」
AR-15と名乗った彼女は不思議そうな顔をしている。
「そう、第二波のエージェントだよ!第一波のエージェントがみんな行方不明か死亡って聞いてたからびっくりしたよ!」
ナインがそう告げた途端彼女の顔は真っ青になった。
「そんな・・・うそ・・・」
反応から読みとるに、恐らく彼女は知らなかったのだろう。第一波のエージェントの状況を。
「あっ・・・ごめんなさい・・・」
ナインが気づいたのかしゅんとなって謝罪をする。
「いえ、いいの。いずれはこうなると思っていたから・・・ さっき、
AR-15は持っていた長い銃を再び構えてコビーズに続くドアの前に立った。
ドアの割れたすりガラスの隙間からキッチンの方に目を凝らす。
「変な真似はするなよ!わかったか!?動くなってんだろ!」
「わかった!わかったから撃たないでくれ!」
どうやらスタッフを人質に取っているようだ。何人かが集められているが、その中にドクター・カンデルが居るかはわからなかった。
「いい?ドアを開けたら
「わかった」
「奥のテーブルだな、了解した」
AR-15は一呼吸置いてドアと少し距離をとり、そして力一杯にドアを蹴破った。
「今よ!行って!」
ドアがぶち破られた瞬間に脚に全力の力を入れて走り込む。後ろではAR-15、ソファーの裏に隠れたナインがもう撃ち始めていた。
「クソッタレ!もう上がってきやがったか!野郎ども!アイツらを始末しろ!」
敵も黙って見ていない。すかさず撃ち返してくる。
弾がヒュンヒュンと前後を掠めて飛んでいく中を走っているせいで、アドレナリンがドバドバと出る。
テーブルの影に飛び込むように隠れた。
「お前はそいつらを見張ってろ!お前らは馬鹿どもにありったけの弾をぶち込んでやれ!」
テーブルの上に置いてある花瓶や食器、ワインボトルがバリバリと割れる。
少し顔にワインがかかったがそんなことは気にしていられない。
ナインと
「クッソ!あの野郎!」
「誰が野郎ですって!?私は女よ!」
そう言ってAR-15は敵の横にあったガスボンベを撃ち、爆発させる。
それからも次々と敵を倒していく彼女に圧巻された。
まさか1人でほとんどの敵を倒すとは思ってもいなかった。
「コビーズは向こう岸よ!そこのドアから中に入れるわ。行きましょう」
AR-15の指すドアを開けてコビーズに入る。そこには数名の医療スタッフとドクター・カンデルの姿があった。
「やった・・・?やった!助けが来た!」
「やっと助かったのね・・・このまま死ぬかと思った!」
監視カメラに映っていた女性に声をかける。
「あなたがドクター・カンデル?」
「ええそうよ、あなたたちが誰かは知らないけど助かったわ」
『注意、敵が接近中』
『まずい、敵が接近している。なんとしてもカンデルと医療スタッフを守れ』
「全員頭を低くして、静かにするのよ!」
カンデルはすぐさま危険を察知して周りの医療スタッフたちを落ち着くように指示をした。
すると、バットを持った敵が4人ほど奥の扉から出て来てこちらに向かって走ってきた。
「こっちに突っ込んでくる奴から撃つんだ!」
優先的に肉薄攻撃をしてくる暴徒を射殺する。
「リロード!」
床にマガジンを叩きつけマグポーチから新しいマガジンを取り出す。その時にマガジンが残り僅かで、1本しか刺さってないことに気がつく。
弾薬管理がザルだった。
「エドワード!」
AR-15から呼ばれたと同時にマガジンが2本床を滑ってこちらのカバーに渡される。
彼女が滑らせたマガジンだ。
「すまないありがとう!」
咄嗟に拾い上げてポーチに突き刺して、まだまだ来る敵の増援に備えて再びカバーから銃を構えた。
スタンスタンと軽快なリズムを取るようにAR-15は敵を次々と無力化する。
『護衛部隊が屋根から攻撃を受けてる。屋根に登って敵を排除するまで、身動きが取れない。すぐに当たれ』
JTFとの無線からはザザザと聞こえるノイズと激しい銃声が聞こえた。
『身動きが取れない。誰かが敵の攻撃を止めてくれないと生きて渡るのは不可能だ!』
「了解、すぐさま対応する。アウト」
「エドワード、ナイン、屋上へはこっちよ。ついてきて」
カンデル達はすぐさま立ち上がり護衛部隊の元へと向かう。
「みんな急いで!来た道を戻るのよ。ここを凌げば、護衛部隊と一緒に出られるわ。さぁ急いで!」
人質の誘導を始めるカンデルを尻目にAR-15の後に続いて屋上へと続くはしごを登る。
スタジアムの天井裏のキャットウォークを進み、さらにはしごを登り外へ出ると、外は雪が降っていて、足元には雪が積もりつつあった。
そしてヘリコプターのローター音と銃声が鳴り響いている。
『護衛ブラボーチーム、屋根にエージェントを送った。カンデルとは合流できたか?』
フェイがJTFブラボーチームに確認をとった。
『ああ、彼女とスタッフは到着した。屋根の敵がいなくなれば、安全に移動させられる』
「わかった、今すぐ片付けるね!」
咄嗟に室外機に身を隠して敵の動向を探る。どうやら屋上に近づいてくるヘリコプターを撃っているようだ。恐らくカンデルを保護しに来たJTFのヘリコプターだろう。
「全員が上を向いている隙に攻撃よ・・・今!撃て!」
彼女の合図で上空のヘリに釘付けの敵に総攻撃を仕掛けて、反撃の余地も与えず排除するが、奥にはLMGを持った敵がまだ残っている。
『警告、敵の増援が接近中』
「まだ来るぞ!」
増援が来た途端にJTFのヘリコプターはテイルローターからもくもくと黒煙が発生して動きが怪しくなっている。
『こちらJTF148、敵の攻撃により接近不可!テイルローターに異常発生、出力が落ちた!これ以上は危険とみなし退避する』
「何しに来たのよ!本当に約立たずね!」
何もせずにただ敵に撃たれただけのJTFヘリにAR-15は怒りをあらわにする。それもそうだろう、彼女は第一波のエージェントとしてJTFとは協力体制にあったが、JTFがマシであればこんなことになっていないはずだ。
「あそこのLMGがヘリに見とれる隙に前進するわよ」
身を隠していたダクトに身をのりあげて飛び越え、さらに奥のダクトへと前進して、様子を見るが、あのLMG野郎はまだヘリの方を見ている。
しかし、まだまだ他の敵は出てくる。
「うぉぉぉぉぉ!!」
けたたましい叫び声を上げて敵が接近戦を仕掛けて来たので、すかさずホルスターからハンドガンを引き抜いた。
照準をあわせてトリガーを引いたが、驚いたことに相手がサイドステップで弾を避けた。
「嘘だろ!?」
「死にやがれボンクラ!」
振りかざされたバットを間一髪のところで回避し、相手の側面に回り込む。
そして胸に向けて3発撃ち、敵を排除する。
地面に倒れた暴徒を少しの間見て油断していると、敵のLMGがこちらに気が付き、おびただしい数の弾幕を浴びせられるので急いで物陰に隠れた。
「なにボサっとしてるの、しっかりしなさい!」
敵に接近されて、オマケに殺されかけたことをAR-15に咎められてしまった。
「敵のLMGが接近中!」
「アイツは撃つしか脳がないの!?」
AR-15は影からアイツを睨みつけながらリロードする。
「ねぇおじさん、さっきみたいに左右に展開するのはどう?」
「それがいい、早速だがナインは左にAR-15は右に自分はここで援護する」
「おっけー!まかせて!」
「右ね。了解」
それぞれが所定の位置につくために移動を開始する。それを援護するために敵に制圧射撃をかけた。
「位置についた、射撃を開始する!」
AR-15は早速敵に目掛けて発砲を開始するが、敵はすぐさまそちらに弾幕を浴びせる。
「こっちがガラ空きだ!」
ナインは敵がAR-15を狙っている隙を見て反対側のカバーから攻撃を仕掛けるも、敵は余程警戒心が強いようで銃をぶん回して乱れ打ちを始めた。その様子を見て自分も攻撃を開始したが、ヤツは途端に室外機の裏に隠れてしまった。しかしその理由は明白だった。
あいつの弾も無限ではなくバックパックからはみ出ていた弾帯は切れてしまっていた。
「隙あり!これでもくらえ!」
すかさずナインは敵の眉間に弾をぶち込むと、先程までやかましかった銃声は止み、屋上は静寂に包まれて雪が降り積もる。
「・・・ターゲットの沈黙を確認、屋上は制圧した」
『こちらブラボーチーム。医療スタッフを無事に移動させられた。カンデルと全スタッフを確認。負傷者はいない』
どうやらカンデル達は無事にブラボーチームの所へ退避でき、ブラボーチームも屋上からの攻撃から晒されることはなくなったようだ。
『いいスタートだな、エージェント。私も援護できれば良かったが、これはこれで素晴らしいチームだ。基地に戻ったらカンデルと話してみよう。彼女は力になるはず』
「あぁわかった、すぐに戻るよ」
「ふぅ・・・とりあえず医療棟の目標は達成だね!」
ナインがワイワイと喜んでいる横ではAR-15がただただ呆然と雪の降る曇り空を見つめていた。
「AR-15」
そんな彼女に声をかけると真っ直ぐ空を見つめながら返答をする。
「・・・基地に戻ったらあなた達の話、詳しく聞かせてほしい」
「もちろん、それにAR-15には是非とも協力してもらいたい」
「私もそう思う!仲間は多いほうがいいし!」
ウキウキとナインは先程のやったようにまたAR-15の手をギュッと握りブンブンと振り回す。
「ちょっ、ちょっと離しなさい!さっきから馴れ馴れしいわよ!」
キツい言葉を吐いているがそこまで嫌そうにしてないのを見て思わず微笑みがこぼれた。
「あ、あなたも気持ち悪い顔しないで早くコイツを止めなさい!」
(き、気持ち悪い顔・・・)
サラッと毒を吐かれた自分はショックで表情が微笑みから苦笑に変わる。
そんなに顔変かなぁ・・・?
耐えきれなくなった自分は無理やり話を捻じ曲げて別の話題を出すことにした
「と、とりあえずだ、作戦基地に戻ろう!話はそれからだ」
「お、それもそうだねおじさん!」
ナインがやっと手を離して、エレベーターに向かう。
AR-15は肩を痛そうに揉んでいた。
そんなに振り回されたのか・・・
「よーし!作戦基地にしゅっぱーつ!」
そう言ってエレベーターのボタンを押してドアが開いた瞬間、目の前にはワイヤーが1本下に垂れているだけだった。
「・・・アレ?エレベーターは?」
ナインは困惑してこちらを見つめるがこっちも理解が追いつかないので見られても困る。
「ラペリングで、降りるんじゃない?」
警察署で使った専用の用具を取り出してワイヤーにガッチリと噛ませる。なんとか下には降りれそうだ。
AR-15もラペリング装置を持っていたようでしっかりとワイヤーに装着させた。
下まで降りると1階部分のドアに着き、そこから出れば最初に入ってきた大きなロビーに繋がっていた。
「よう、お疲れさん。人質達は無事確保して作戦基地に送ったよ」
ブラボーチームの1人が出入口付近に待っていたようで、カンデル達はもう作戦基地に到着したことを伝えてくれた。
作戦基地はそれほど遠くない。ここから歩いて数百歩と近いのだ。なんなら目の前にある
『注意、これよりセーフエリアに進入します。測定値によるとここは安全です』
長い廊下を抜けてホール左奥にある医療棟を訪れてみると早速、診察室の端末を忙しく操作しているカンデルが居た。
そしてこちらに気が付くと診察室から出てきた。
「誰かと思えば!ガーデンの件はありがとう。ひどい職場環境には慣れてるつもりだったけどね・・・まぁ、この場所も褒められたものじゃないけど」
確かに、今は廃墟同然の建物である。
「設備は古臭くて、人手不足なのに、患者は列をなしてる・・・どうにもならない」
彼女が指をさした先は治療待ちの患者で溢れている。
「最前は尽くしている、ドクター・カンデル。もし意見があれば喜んで聞くわ」
後ろから突然現れたのはフェイだ。
「分かってるわ。文句ばかり言うなってことも、でも
「じゃあ1つ情報を」
フェイが手に持っていた青色のファイルを差し出し、それを開くと全員それに目を落とす。 それにはある男の写真と情報がのっていた。
「ドクター・ゴードン・アマーストがアウトブレイクに関与してると、
「ゴードン・・・?なんて?」
ナインはキョトンしているが正直自分も誰かを知らない。
「なんてこと・・・あのクズ!」
カンデルはゴードン・アマーストと呼ばれる人物を知っていたようで、机に置いていた拳を強く握りしめ、今にも殴りかかりそうな勢いだった。
「・・・彼の研究発表は暴動を招きかねないものだった。関与してるなら、話をすべきね。メモやPC、近い友人、彼に関するあらゆる情報が必要よ。生態サンプルや抗体についても話すべきね」
ペラペラとめくってファイルを閉じる。
「忙しくなるわよ」
「あなたは?」
「分析するわ。命を救うの。じゃあ早速取り掛かるわ」
そういいカンデルは奥の部屋に戻っていくと再び器材を触りだした。
「まだまだ忙しくなりそうねエージェント」
フェイも自分のデスクへと戻って行った。
「これからどうする?」
ナインは少しはマシになった医療棟を見回す。
「そうだね、今日の活動はこれで終わりかな。次の目標についてはまた明日詳しく考えよう」
「わかった!」
「了解」
「それじゃ各自解散!」
解散と同時にナインはどっかに走っていってしまった。まだまだ元気だなぁ
「・・・ねぇあなた、いえ、エドワード」
AR-15はこちらに声をかける。
「エドでいいよ」
「じゃあ、エド。これまでの事、全部教えてちょうだい。第一波のエージェントのこと、あなた達第二波のことも」
「もちろん、むしろこっちも第一波の話を聞きたかった」
いつかは聞こうと思っていのでちょうどいい。情報は多くて損は無い。
「ここじゃなんだし場所を移しながら話すよ。まずは自分たちが来た目的は・・・」
AR-15に自分が知っていることを全て話した。第一波のエージェントが行方不明または死亡ということ、第二波はそれらを探し出して街の復興を支援するという目的のこと、ヘリが唐突に爆破され指揮官を失いフェイが代理だということも。
「そう・・・あなた達も大変なのね」
「いや、キミに比べればまだマシなのかもしれない」
「それどういう意味よ」
彼女は帽子を脱ぐとよく見えなかった顔が今はしっかりと見える。その顔には笑みがこぼれていた。
何かと初めて見た彼女の笑顔。その笑顔はどこか優しく、それでも凛々しかった。
「AR-15の話も聞きたいな」
「そうね、それじゃあ私たちがマンハッタンに派遣された時の話・・・」
AR-15の話は聞いていて衝撃だった。パンデミックが発生してからの初期対応の遅れやJTFの怠慢、それらの要因に離反していくもの達もいたそうだ。 その結果今の状況を招いてしまった。
「なるほど、ところでAR-15は1人で行動してたのか?」
「いいえ、私の小隊には私以外に3人居たわ。でも、この騒ぎのせいではぐれてしまった。そしてそのまま連絡が取れずにいるわけ」
第一波のエージェントは他にも多く居るようで彼女みたいに連絡が取れない者もいるのかもしれない。
「そうか、色々話してくれてありがとう」
「こちらこそありがとう、それとこれからよろしく」
自然と前に手を出すと彼女は強く、堅く握りしめた。
その手を離さまいと。
Ep.4 END
いやぁ、ほんとつかれた、つかれた
新しく無線の部分は分かりやすくするために色付けしました。
オレンジはISAC、緑はJTF、青はその2、赤はPluseです
変だったら戻します