兵器切望シンフォギア 作:Mr.エゴイスト
夢を見ている。
2年前の、あのライブの惨劇。
それから何度か見たあの夢を。
黒い砂嵐と建物の瓦礫の中で、一人歩いていく人の夢。
ゆらゆらと、ふらふらと。
風にあおられても、倒れそうになりながらも、それでも前を向いて進んでいく。
山のように積まれた暗い灰を見て、次の時には振り切るように視線を切る。
時折現れては消える黒い靄を周りに一瞥し、口元を緩めながらも足取りは変わることなく。
進み続けて、いつの間にかその人の周りは何もなくなり、まるで待ちかまえるかのように光だけが歩む先に存在する。
地面を踏みしめ、現れた光に向かってそのまま――。
「立花さん!!」
「はいっ!?」
鋭く飛んだ呼び声に思わず声が大きくなる。
教室。眉の吊り上がった担任教師。呆れた様な隣からのため息とクラスメートの訝しんだ視線。
やってしまった、と思うには何もかもが遅かった。
「はぁ~、もう災難だよぉ…」
「何言ってるの。授業中に居眠りしちゃう響の自業自得でしょ」
「それはそうなんだけど~…」
私立リディアン音楽院。
小中高の一貫教育を掲げた音楽系の女子高。
その食堂のテーブルで私は未来からお小言をもらっていた。
先生からお説教もあったのにもうちょっと優しくしてくれてもいいと思うの。
「それで、授業に集中しないで見てたのはやっぱり?」
「うん。あの夢、あの人の夢」
未来にもあの夢のことは話してある。
2年前にツヴァイウィングのライブを襲ったノイズ災害。
多くの死傷者が出た痛ましい事故。
当事者だった私も、命の境を彷徨った。
あの時、呼びかけてくれた声がなかったら、もしかしたら私も…。
「…だからって、授業中に寝る言い訳にはならないと思うけど」
「っそ、そんなのじゃないよぉ!」
半目でこちらを流し見て、お茶を手に取る未来につい声が大きくなる。
食堂みたいな人の集まる場所でそんなことをすれば人目を引くわけで。
「あ、翼さん」
「えっ?」
凛とした佇まい。青い髪。
未来の視線を追って振り向いた私は、こちらを見ていた憧れの人にしっかりと見られてしまっていた…。
「あ~、どうしよう絶対変な子だって思われた~!!」
お昼からの授業も碌に耳に入らず、寮の部屋に入るなり大の字で転がってしまう。
そんな私の姿を見る未来の目線は冷ややかで。
「間違ってないだから仕方ないんじゃない?」
「そんなぁ…」
「落ち込むのもいいけど」
優しくしてくれない幼馴染の無情を嘆きながら続いた声に顔を向ける。
「言ってたCD、今日販売だけど行かなくていいの?」