甘い日常(短編集)   作:小椋屋/りょくちゃ

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初手からフルスロットルで甘さガン積みしていきます。




甘え、甘えられ、古鷹編

 「……おはようございます、提督。」

古鷹と至近距離で目が合う。明るい菊色の左目。ハイライトに富んだ栗色の右目。オッドアイの彼女の瞳は、いつ見ても美しい。

 「提督?」

おはようと返さず、黙りこくったままの自分に不信感を感じたのか、顔をグイッと寄せ、こちらを覗き込んでくる。その仕草がたまらなく愛おしくて

 「ひゃっ!?て、提督!?」

思わず力強く抱きしめてしまった。両手の中にある暖かい感触が、幸せを増幅させる。そうしてしばらく抱きしめたあと

 「おはよう、古鷹。」

 「おはようございます、提督。」

そう挨拶を交わし、一日が始まった。

────────────────────────

遠征や哨戒任務に送り出した後、静まり返った鎮守府では、提督と秘書艦の古鷹が黙々と書類を進めていた。

 

 「ふぅ…。やっと一息だな。」

 「ですね。今、お茶を淹れますね!」

山積みにされた書類に一区切りついた所で古鷹が鼻歌交じりに席を立ち、緑茶を淹れてくれる。

 「どうぞ、提督。」

 「ありがとう、古鷹。」

いつも通り美味しいお茶に、ホッと一息着いていると、古鷹が椅子を右隣に持ってきて、くっつくように座る。少しタイミング見計らって、そっと頭を撫でる。

 「んん………。」

少し曇った、可愛らしい声がする。右隣の時は、甘えたい時。左隣の時は甘えて欲しい時。2人だけの暗黙のルールになっていた。

 「提督と一緒にいると…すごく、落ち着くんです……。」

ゆっくりと頭を撫でていると、いつも以上にゆったりとした声でそう言う。親に手を引かれて家に帰っていく子供のように安心しきった表情の彼女は、いつも以上に幼く見えた。

 

 

 「ふぅ…。休憩終了です。提督、湯呑みをお下げしますので………。はい。ありがとうございます。」

古鷹がそう言って席を立った合間に、彼女の椅子を書類机の前に戻す。据え付けられた小さなシンクに湯呑みを置き、戻ってきた彼女を正面からハグをする。古鷹もそれはわかっていたようで、ひしっと抱き締め返してくれる。

 「ありがとう、古鷹。」

 「どういたしまして、提督。」

この一言で、全てが足りていた。

────────────────────────

 「提督、お疲れ様でした。」

 「あぁ、お疲れ様、古鷹。」

書類が全て片付いたタイミングで古鷹の方からハグをしてくる。それに返すように自分も抱きしめ返す。仕事終わりの強ばった体に、温かさがじんわりと染みこむ。

 「……古鷹。」

少し離して、生真面目な顔をしてそう呼びかけてみる。

 「なんでしょうか?提督。」

一瞬で仕事モードに切り替えて古鷹が答える。そんな切り替えの良さも真面目さも、普段のコロコロとした笑い方も、自分にだけ見せてくれる甘えたがりで寂しがり屋な所も、

 「……大好きだ。」

顔と顔とがピッタリとくっつくくらいの至近距離で、そう呟く。

 「ふふっ、ありがとうございます。私も、大好きです。」

そう、クスッと笑いながら言う。

そのまま、そっと重ねるようにキスをする。一瞬にも、数時間にも感じられるような時間が過ぎていく。それから、ゆっくりと離れる。寂しそうな顔をすると共に「はっ……。」と小さな吐息が、彼女の口から漏れる。慈しむように頭を撫で、それから古鷹の左頬に手を添える。そしてもう一度、唇を重ねるだけの、キスをする。

先程よりも長く、それでいて一瞬の時が流れ、ゆっくりと離れる。ゆったりと甘い空気が、二人を包み込んでいた。

────────────────────────

 「今日も一日、これといった問題もなく、終わったな。」

 「今日の業務も、終了ですね。お疲れ様でした。」

遠征や演習の結果報告を受け終わり、名実共に、艦隊業務を終了とした。

 「じゃあ…帰ろうか。」

 「はい、提督。」

執務室を出て、手を繋ぎながら鎮守府の端にある私室へと向かう。

 「提督、ちょっとまっててくださいね。すぐお夕飯を準備しますから。」

古鷹が部屋に入り、パチパチと電気をつける。2人だけの部屋は2人の色に彩られていた。

 「古鷹、俺も手伝うぞ?」

 「いえ、今日の当番は私なんです。提督もおつかれでしょうから、待っててください。」

そう言いながら夕飯の準備を始める古鷹にそっと近づき、バックハグをする。

 「ひゃっ!?て、提督!?」

 「古鷹だって疲れてるだろう?手伝わせてくれ。」

 「……わかりました。じゃあ提督は鍋にお湯をお願いします。」

 「わかったよ。」

離れた瞬間、古鷹が名残惜しそうな顔をする。離れ難いのを自分も我慢して離れ、古鷹に言われた通りに鍋に火をかける。

その後も古鷹の指示通りに手伝う事十数分。豆腐の味噌汁に焼き魚、春野菜の温サラダと簡単な物ではあるができた。

 

 「完成、です。提督、食べましょ!」

 「あぁ、そうだな。いただきます。」

手を合わせてそう言うと古鷹も後に続く。

 「いただきます。どうですか?提督。」

箸を口に運んだと同時に、ちょっぴり不安そうな顔で古鷹が首を傾げながら聞いてくる。

 「あぁ、美味しいよ。古鷹の料理はやっぱり最高だ。」

 「そうですか!それなら良かったです!」

返答に対して顔をほころばせる。

 「間宮さんや鳳翔さんには及びませんけど、提督に喜んでもらえて嬉しいです!」

 「いや、俺的には、間宮さんや鳳翔さんの料理よりも、古鷹の料理の方が美味しくて好きだな。」

 「そ、そうですか?ありがとうございます!」

より一層笑顔になった古鷹を見ていると、こちらも段々と笑顔になってくる。

 「ほんとに、古鷹の作ってくれるご飯は美味しいよ。」

 「なら、私が毎日やりましょうか?」

 「いや、順番の方がいい。毎日食べられるのは魅力的だが、家事は分担しないと。」

 「…了解しました!」

 「わかってくれて嬉しいよ。」

古鷹の料理に舌鼓を打つのだった。

 

食べ終わり、古鷹が食器を片付け終わったタイミングを見計らって、もう一度バックハグをする。

 「提督………。」

 「名残惜しそうな顔を、してたからな。」

抱きしめている自分の手に、古鷹の手が重なり、ぎゅっと握られる。それに合わせて抱きしめる手にも力がこもる。「んっ……。」という心地良さそうな声が漏れると同時に、頬を真っ赤にしながら

 「ずっと、離さないでくださいね、大好きな提督。」

そう呟くのが聞こえた。

────────────────────────

 「提督には、休暇を取っていただきます!」

大淀がすごい剣幕で机を叩きながら言ってきた。その後ろには艦隊総旗艦を務める長門や木曽達の姿もあった。

 「え、いや…まだ仕事が……」

 「いいじゃないですか、提督。仕事は私たちでやっておくので、たまには休んでください。ね?」

秘書艦の古鷹にまでそう言われてしまうと、何も言い返せない。

 「いえ、古鷹さん。あなたもです。」

 「ふぇ?わ、私もですか?」

 「提督と夫婦水入らずで、どこかに出かけるといい。艦隊業務は任せておけ。何かあったら連絡は入れる。」

 「ふ、夫婦………////」

そう言いながら長門さんが業務に必要なファイルを棚から取り出し始める。

思わず古鷹の方を見ると、顔を真っ赤にしながらこっちの様子を伺っていた。じっと見ているとますます顔を真っ赤にさせながら、俯いてしまった。

 「あーもう!人前で惚気てなくていいですから!早く出てってください!」

思わず 可愛い。 と呟いた直後、顔を赤くさせた大淀に2人揃って、追い出されてしまった。

耳まで真っ赤に染め上げた古鷹の頭をそっと撫でながら

 「……出かけるか。」

と声をかけると、蚊の鳴くような声で

 「はい…//////」

と返ってきた。

────────────────────────

2人で支度を済ませ、ある場所へ向かうため、電車に乗った。

古鷹の私服は、彼女の髪色と同じ、栗色を基調とした落ち着いた色に整えられており、古鷹の纏うのんびりとした優しい雰囲気を増幅させる。

くっつくように座っている古鷹の体温と、カタンコトンという心地よい揺れが、眠気を誘う。

 「いいですよ、提督。お休みになられてください。到着しましたら、起こしますので。」

耳元で囁くように聞こえる古鷹の声が、より一層、夢へと誘う。そんな甘い誘惑に耐えきれず、古鷹に身を預けるように、眠りに落ちてしまった。

 

 

 

 「……とく。ていとく。提督。起きてください。もうすぐ、到着ですよ。」

耳いっぱいに、古鷹の優しい声が響く。

 「っぁ………。………おはよう、古鷹…。」

いつの間にか古鷹に膝枕をされていた。

 「おはようございます、提督。よく眠れましたか?」

 「…あぁ……古鷹のおかげでな。」

隣に座り直し、伸びをしながら答える。程よい人肌の暖かさが、疲れを完全に癒していた。

 「古鷹のそばだと、よく寝れる。安心感が違うからな。」

 「私の膝で良ければ、何時でもお貸ししますよ。」

こちらを見ながら、ニコッと微笑む。

 「あぁその時は、頼んだ。」

 「えぇ、喜んで。」

それに答えるように頭をそっと撫で、電車を後にした。

────────────────────────

 「1年ぶり…だな。」

 「えぇ……。」

小高い山の山頂にある展望台から海を眺めながらそう呟く。

眼下に広がる街の夜景と秋の満月とを背景に、古鷹に指輪を渡したのはちょうど1年前の今頃だった。

 「…古鷹は、この1年…どうだった?」

 「………とっても、幸せでした。ずっと、提督のそばにいられたから……。」

そう答えながら、ぎゅっと抱きついてくる。

 「俺も、幸せだったよ。古鷹が、そばにいてくれたからな。」

ゆっくりと頭を撫で、それから思い切り力を込めて、抱きしめる。それに負けじと、古鷹の腕にも力が加わる。

 「大好きだよ、僕の古鷹。」

そう、耳元でそっと囁く。そしてゆっくり、甘い口付けを交わした。




もはや何も思い残すことは無い。

古鷹さん大好きです。

一生愛し続けます。
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