もしもオネストが綺麗だったのなら   作:クローサー

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あらすじのように、「もしオネストがマトモな精神持ってたらどうなってたんだろ?」というアイデアを元に作りました。
どのくらい続くかは分からない。


2021/3/24
書き直しに於いて、オネストの転生要素が邪魔になった為、転生要素を除去して再投稿しました。(第2話の一部描写や後書きの設定もこの後修正します)
それに伴いタイトル名を改名、タグの一部を変更します。


本編
誠実(honest)であれ


千年帝国。

それは、その名の通り千年前に建国し、今も尚強大な国力と軍事力を誇る帝国。

始皇帝が現在を遥かに上回る権威を以って制作された48の超兵器「帝具」は始皇帝が亡き後も強大な軍事力の礎となり、現在までの存続を可能とした。

 

しかし、五百年前の内乱によって半数の帝具は居所不明となり、そして千年の繁栄は千年の蓄積された汚れを生み出し、腐り、帝国を腐食させていった。

 

やがてそれは革命の機運を生み出し、そして千年帝国を倒す礎となる…筈だった。

しかし、この世界では都合が少し違っていたのだ。

 

 

「…また異民族との国境紛争ですか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の生まれた国は、既に末期的だった。

 

私の生まれは帝都。家はまぁ、帝国の官僚として働く、一般市民寄りのエリートといった具合。簡単に言えば裕福な一家だ。

故に私は不自由無く育てられ、父の官僚を継ぐ為に政治の勉強を幼い頃から始めていた。運良く私は頭の回転や要領が良かったようで、父曰く「スポンジのようにあらゆる知識を吸い取っていった」らしい。

だからこそ、私は幼い頃から帝国の違和感、歪さを感じ取っていた。それを知る為に、私は自主学習で帝国の現状や情勢も調べ始めた。最初は幼い事もあって全くもって上手くいってなかったが…歳を重ね、経験と知識を積み、理解を重ねて行った。そうして私は帝国を知った。

 

そして、確実に破滅の道を歩んでいる帝国の現状に唖然とした。

 

 

広がる貧富の差。地方から容赦無く搾り取る重税。帝国臣民と異民族の差別。周辺国…否、異民族との途絶えぬ紛争。帝国内部に根付く腐敗。

 

 

…当時の子供の私でも理解していた。このままでは帝国は滅ぶと。

しかし父の地位は官僚の中でも低く、父に相談しても帝国そのものを動かす事は出来ないし、そも子供の言い分をそっくりそのまま採用するかと言えば、無理だろうとも理解していた。

そして官僚である父は、「妥協」していた。自分達の生活が平穏であればそれで良いと。自分が死ぬまで帝国が平穏であればそれで良いと。確かに、自分が関わらない所に自分から首を突っ込まなければ余計な問題などは生まれない。余計なリスクは生まれない。平穏を求めるならそれが一番だろう。

 

だが、私の心はそれに否と応えた。

ノブレス・オブリージュ(高貴さは義務を強制する)。言葉の意味は違えど、しかし国を導く者ならば、其れ相応の覚悟と義務は背負わねばならない。父は、其れには相応しくなかった。

 

そして、私は決心した。

私も父と同じく政治の世界に飛び込む。しかしそれは、父の地位のままに留まらない。いずれ帝国の大臣の席に座り、そして帝国を少しでもマトモにしてみせると。

その道が困難であることは容易に想像出来た。私は明確に腐敗と敵対する立場になる。その腐敗が、腐敗を取り除こうとする私を放っておくはずが無い。いつか必ず私を殺しにかかり、そして私の立っていた場所には都合の良い人物に差し替えるだろう。仮に帝国大臣になれたとしても、今度は帝国全体の問題の解決がある。詳細は調べなければ分からないが、それでも膨大かつ困難な事になるのは既に分かりきっていた。

 

手段を選ばないのなら革命軍に与した方が良いかも知れないが、それでは多大な流血を生み出してしまう。進んでそれをするよりは、時間が掛かってでも流血が少ない方をやってみたい。それで駄目なら…

 

…いや。こんな事を考える前に、まずはスタートラインに立たなければ意味が無い。大臣では無くとも、何かしらの権力を掴まなければ内側からボロボロになっていく帝国を変える事は出来ない。

 

 

まずはより一段と勉強だ。この国の事を、政治の事を、異民族の事を、可能な限りに知り尽くす。

次に身体を鍛えよう。この国を変える事を阻止せんとする者達から身を護る為に。

そして政治の舞台に上がっていく。この国の膿を取り出し、洗浄し、次の千年の繁栄と平穏の礎となる為に。

 

 

やる事は無尽蔵だ。時間は有効に使わなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は経ち。

 

「…これで、最後ですね」

 

帝都の宮殿の一室…帝国大臣となった私の執務室にて今日一日の書類の山の処理、最後の一枚の内容を精査した後に私の署名を入れ、横の紙束に重ねる。これで、書類関係の仕事は終えた。

長時間座っていたせいで、身体が多少の凝りを訴えている。それを解す為に席を立ち、軽く身体を動かして凝りを剥がしつつ、窓から見える帝都を見下ろす。

 

(こうして見る限りでは、とても平和なんですけどね…)

 

その実態は逆。こうして見下ろしている今も、複数の犯罪組織が麻薬や人を売り捌き、私腹を肥やし、その金が政治の腐敗を生み出し、そして政治がこの国を腐らせる悪循環。

先代皇帝と皇妃が崩御し、あの子供が現在の皇帝の座に付いた。それと同時に私は、次期大臣の座に就こうとしていた腐敗派の官僚を何人か蹴落とし、次期大臣の座につくことに成功した。しかし大臣の座に付いて、帝国全体の事をより詳細に知れるようになって、私は帝国の腐敗っぷりを少々甘く見ていた事を自覚する。

 

先代皇帝と先代大臣は腐敗に対して有効的な手を打てていなかった。いや正確に言うと、先代大臣が先代皇帝にその腐敗の一部を隠蔽していた、と言うべきか。自分達に都合の良い関係が無い腐敗は粛清し、自分達に都合の悪い関係が有る腐敗は隠すリスクマネジメント。先代皇帝には腐敗という膿を取り出した()()()()を提供し、自分達の私腹と権力を募らせていた。正直先代大臣が急病で倒れなかったら、腐敗派を大臣の座から引き摺り下ろす事は出来なかった。

腐敗派は今も尚、帝国の中では強大な規模と権力を誇る。油断すれば、大臣である私でさえも喰らうだろう。

 

(良識派、腐敗派、革命軍、ブドー将軍、エスデス将軍…)

 

それでも、私は何とかここまで来れた。

帝国を少しでもマトモに出来るか、革命に倒れるか、それとも腐敗が進行するか。何処かを間違えれば誰もが不幸になる。

だがやらねばならない。1人でも多く不幸な運命を変える為に。1人でも多く救う為に。

逃げる事は許されない。投げ出す事は許されない。

 

 

「…ストレスで食欲過多にもなりますよ、全く」

 

 

 

私は、何よりもこの国を愛しているのだから。




オネスト大臣
今作中では良識派の事実上の大黒柱であり、腐敗官僚(腐敗派)や犯罪組織と完全に敵対。大臣になってからは精力的に治安改善や腐敗摘発に努めている。
ストレス発散で食欲過多になっているが、腐敗派の暗殺に備えて定期的に鍛錬している為に結構スリム。そして暗殺に備える為に子供も作っていないので、シュラの存在がこの世から抹消。ワイルドハントの結成と何人かの死亡フラグが既に消失している。



お待たせしました、書き直しの始まりです。
各種設定も最低限は固まり、後はストーリーの構築のみです。正直スケールが明らかに長編でやるべきだとは思いますが、取り敢えず短編で「最低限此処まで纏めたい」という所まで書いて、其処から改めて長編に移行する(出来る)か否かを考える事にします。
…いきなり書き直しすると言って3話以降を予告無しで削除したので、十中八九大幅な評価減少やお気に入り減少が起こるだろうと思っていたんですが、ほぼほぼ変わってなかった…寧ろ、ごく僅かながらも上昇傾向が続いている事に衝撃です。

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