もしもオネストが綺麗だったのなら   作:クローサー

18 / 32
そろそろ一度、締めくくりに入りましょう。
今回は結構短いですが、キリを良くする為に。


更ける夜

「ん〜愉快愉快…やめられないな♡」

 

 

 

その日、帝都の民達は震え上がった。

前日の夜中に、首を切断されて死亡しているカップル2名が発見されたのが始まりだった。最初こそ猟奇殺人として帝国警察及び帝都警備隊が初動の指揮を取っていたが、連日首の切断死体は次々と発見され、遂には夜間警戒を行なっていた帝都警備隊隊員の首切り死体まで発見され始めた。

尋常ならざる事態に帝都特務隊も出動に向けて動き出していた時、漸く犯人の目撃情報が入った。それは現場を偶然目撃して、必死に隠れて見つかる事なく難を逃れた幸運な女性から手に入れた、貴重な情報。

 

その情報を元にたどり着いた犯人の名は、「首切りザンク」。

前監獄処刑人の一人であり、帝国の腐敗の被害者。

先代大臣の指示によって死刑囚()()()()人物の首を切り落とすことを仕事とされ、命乞いをする人間の首を何年も掛けて次々と落としていった。やがて「首を切る行為」そのものに快感を覚え始め、遂に監獄署長が保管していた帝具を奪い、殺害。帝国を離反して辻斬りとなった。

その後の行方は中々掴めず、各地で首切り死体が不定期的に見つかるのが唯一の手掛かりだった。しかし今回、帝都で突如その動きを活発化させた。それも尋常ではないレベルで。

 

 

結果、現代大臣オネストは帝都特務隊の全力配備を決定。

特別隊員(帝具使い)を筆頭に、戦闘部隊アルファチーム及びベータチーム全部隊が帝都各所に配備され、更に諜報部隊の一部も偵察要員として転用された。これは首切りザンクが「帝具使い」であることが判明している事が大きく影響された決定だ。

 

しかし、オネストの判断と特務隊の努力も虚しく、ザンクは発見される事なく次々と被害者は増えていく。帝都そのものが広大な事に加え、ザンクが持っている帝具「五視万能 スペクテッド」による遠視能力によって帝国軍人は容易に発見され、捜索の隙間を縫って移動している事は明らかだった。

かといって警察や警備隊の人員を増やしても、偵察要員を削る為に首切りザンクが襲い掛かって殺されており、既に帝国警備隊及び帝国警察の死者はおよそ3割を占め、その割合は増えつつある。

 

状況は膠着、されども死者は増えつつある。そんな苦しい状況が続くこと、およそ10日。

 

 

それは、突然の事だった。

 

 

 

『緊急、アルファ4-3より全部隊へ──』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

満月が照らす夜。

首切りザンクは帝都のある区画に存在する時計台の上に立ち、周辺を見下ろしていた。

 

「んーっ…辻斬りにそれを追う軍隊、それに加えて殺し屋と来たもんだ…いやはや、帝都は物騒な街だねぇ…愉快愉快」

「さぁて、今日はどの首から斬っていこうかなぁ…?」

 

帝具の性能は素晴らしい物だ。スペクテッドの場合は「洞視」、「遠視」、「透視」、「未来視」、そして奥の手による5つの能力を自在に操り、適応者に多大な情報のアドバンテージを与える。それが例え、首切り殺人犯であろうとも。

当然適応者であるザンクも、存分にその力を利用する。「遠視」で周辺にいる帝国警察、帝都警備隊、帝国特務隊の隊員を発見し、「洞視」で各員の心の中を読んで捜索の隙間を見つけ、切りたい獲物を見つけ出す。それがザンクが行うローテーションだ。

 

それに則って今回も周囲を見渡し、獲物を探っていた。

 

「…?」

 

ふと、違和感。

()()()()()()()()()()()()()

 

「何だ…?」

 

周囲を見渡すが、此方を見ている者は見えない。当たり前だ、此処に辿り着くまでに何十人もの帝国の人間の心を読み、確実に捜索の隙間を縫って此処に居る。故に、現段階で帝国の人間に見つかる可能性は確実に零だ。

そう、()()()()()()()()

 

 

 

 

「──葬る」

 

 

 

 

未来視。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()をスペクテッドは見せた。

 

「!!!!?」

 

咄嗟に後ろに飛び、時計台から最寄りの建物の屋上に飛び移ったのは、ザンクにとって人生最大の幸運だった。

未来視が見せた動きの通り、突如目の前に現れた刀身が、上から振り下ろされる。それは凄まじい速度で回避行動を取ったザンクの眼前を通り過ぎ、時計台の床…石材に叩きつけられ、その周囲の石材が爆発したかのように粉砕された。

 

「…これはこれは…」

 

近くの建物の屋上に着地して時計台を見上げるザンクは、思わずそう呟いた。

 

「………今のを避けるか」

 

つい先程までザンクが居た時計台の頂点。其処には、刀…否、帝具「一斬必殺 村雨」を振り下ろした姿勢で、ザンクを見下ろしているアカメが、いた。

 

「決めた。今日の獲物は、君にしよう」

「…やってみろ。お前にそれが出来ればな」

「ああ、やってみよう。…けど、此処は少し場所が悪いな」

「…逃すか」

 

次の瞬間、2人は建物群の屋上を駆け始めた。

そして突如発生したこの状況を、彼等が見逃す筈が無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『緊急、アルファ4-3より全部隊へ。目標を確認。更に目標の至近に「ミセバヤ」を確認した。繰り返す、目標及び「ミセバヤ」を確認した。状況はコード-ブラック。両対象は座標────を東進中。凄まじい速さだ』

『アルファ1よりアルファ4-3、了解した』

『…スズラン、了解。これより、アルファ1と共に目標へ急行します』

『ベースよりアルファ4-3、目標への狙撃は可能か?』

『…無理だな、移動速度が速過ぎる。とても当てられない。更に言えば、ミセバヤへの誤射の可能性を否定出来ない』

『了解した。アルファ4-3、観測を続けてくれ。…スズラン、応答せよ』

『…スズラン、感度良好』

『よし、そのまま聞け。これより君に特別任務を与える。特別作戦目標は、「ミセバヤの確保」だ』

『…!?』

『これは()()()()()()()()()()()。繰り返す、特別作戦がスズランの最優先目標だ。現時刻より、特別作戦の達成に全力を挙げろ』

 

『そして必ず作戦を達成し、アルファ1と共に帰還せよ。それ以外は許可しない』

 

『…了解!これより特別作戦を開始します!』

『幸運を祈る、通信終了』




仲間を切り捨てて自由を手に入れた少女と、死刑囚(冤罪人)と民達を殺戮していく男。
2人は立つ位置は違えど、思想は違えど。しかし共通点は存在している。

それ故に、少女は。


次回、「彼女の旅の終わり」(仮名)。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。