私にとって、「裏切り」は生きる為の手段の一つに過ぎない。
私にとって、「他人」は這い上がる為の道具でしかない。
帝都の裏町の通りで、ストリートチルドレンとして過ごしていた時から、ずっとそうだ。
異民族の血が通っているだけで、異民族と帝国民のハーフだからという理由だけで、他者から侮蔑され、差別され、弾圧され、嬲られた。
誰かに助けを求めても、その手を誰かが掴んでくれる事も無ければ、その声に応えてくれる事も無かった。
結局、自分の身は自分自身でしか助けられない。自分の事は自分しか見てくれない。自分の価値は、自分自身で作り上げるしか無い。
そうしないと、自分はこんな薄汚い場所で惨めに死んでいくしかない。
皆が私の事を色眼鏡を付けて見るなら、勝手にそうすれば良い。その腐った目で私の事を見続けていれば良い。お前等が其処で腐ってる間に、私は這い上がってやる。こんな薄汚い場所から、お前達を見下せる場所まで。勝ち組になってお前達を侮蔑してやる。お前達が先に死ぬまで生き残ってやる。
そう決意してから、私はどんな事でもやってきた。
空腹を満たす為に、捨てられたゴミの山から残飯を漁った。良い物を手に入れる為にひったくりや盗みもした。自分の身を守る為に人を殺したりした。金が無ければ
他人に媚びる為に「
他人に取り入れられる為に「
他人を裏切る為に「
他人になる為に「
髪型を変えた、服装を変えた、雰囲気を変えた、口調を変えた、性格を変えた、人格を変えた。
生きる為に、そして這い上がる為に。私は「どんな
その為に他者を蹴落とし、裏切り、その価値を陵辱する事も躊躇らわない。
チンピラから犯罪組織まで多種多様の組織に取り込み、裏切りながら這い上がり、時には先に裏切られて死にかけた時もあった。そんな時に私の身を守ってくれたのは、一丁の拳銃。今になって見ればよく暴発しなかったなと思う程に、整備が行き届いてなかったその拳銃は、私の唯一の暴力装置として働き続けてくれていた。
そんなこんなで裏社会に寄生する一人として過ごしていたある時、ひょんな事から革命軍の息が掛かった組織に入り込む事が出来た。
──これは今までにないチャンスだ。その時の私はそう思った。
今までのヤクザなクズの巣窟とは違う、帝国を股に掛けると言って良いほどに大きな勢力に育ちつつあった、裏社会の一大勢力の一つ。其処で成り上がる事が出来れば、こんな所よりも遥かに高い勝ち組になり、そして私が生き残る事が出来る。
その時から私は「マイン」として、革命軍の一人として活動を続けた。
「
初めてまともに見る、私のルーツの一つになった人種。
彼らを見て、人種という括りに「馬鹿馬鹿しい」と強烈に思った事を今も覚えている。そして彼等の血を半分持っている私に向ける目が、妙に他の奴等よりも優しかった事も。
異民族と革命軍の姿を見ているうちに、革命軍は思ってたよりも泥舟化しつつある事に気付いた。
裏切る事に慣れたからこそ、分かる。
さてどうするか、となったけど。幸い沈むまではまだ時間はあるし、そもそも沈む前に粉々に壊されるかもしれない。ならそうなる寸前までしがみついて取れる物は全て取り、その瞬間に
その後は順調を通り越して絶好調。段々と存在感はアピールしていたけど、まさか私が帝具使いになれる日が来るなんて想像していなかった。お陰様でナイトレイドの初期メンバーとして抜擢され、この調子で貯蓄すれば暫く贅沢して過ごす事だって夢じゃなくなってきた。
そう、夢に見た「勝ち組」としての一つの形が作り上げられつつあった──
…
なのに。
「…最っ悪…」
ああ、本当に最悪。
簡単な任務だった。後はアジトに帰って、任務完了の報告をするだけだった。なのに、何でよりにもよって帝具使いなんかと遭遇するのよ。しかも強いし。
(…あー…)
シェーレも
さて、どうしましょ?このままシェーレを見捨てて逃げようとしても、さっきのダメージが結構大きい。仮にノーダメージだったとしても、あの足の速さじゃ逃げ切れる気がしない。かと言って殺そうと思ってもねぇ…生物型帝具のせいで頭数は一緒。オマケにシェーレは帝具を取られて戦力としてあまり役に立たないから、実質アタシだけでどうにかしなきゃ行けないわけで…
(…………………)
裏切った方が良いわね、これ。
今なら手土産にアタシと彼奴の身柄、ナイトレイドの情報、2つの帝具が用意出来る。うん、悪くない。正直言ってこんなタイミングで裏切りたくなかったけど、このままじゃ私が死ぬ。なら此処でドロップアウトしてリスタートした方が良い。その為には…
「あー………いったいわね」
「加減はしなかったんだが、そんな身体で存外頑丈だな」
「それはこっちの台詞っての。
「…ほう?なら、隠す理由も無いな。奇襲出来れば御の字だったが…」
「これが、帝国の技術の最先端。素晴らしいだろう?」
「…狂ってる」
「その身体を手に入れる為に、アンタは達磨になったっての?」
「私の四肢を捨てるだけでお前達を叩きのめし、数多くの子供達の未来と家を守る事が出来る。十二分な対価交換だ」
…成る程ね?帝国特務隊の帝具使いって訳か…
本当に都合が良い。特務隊は大臣直属、つまり
「…そういえば、一つ聞きたい事があったわ。アンタ、警備隊員じゃなくて特務隊でしょ?そんな事を警備隊員ができる訳無いし」
「それがどうした?そんな事をお前達が知った所で、戦う事は何も変わらない。死ぬか、それとも捕縛されるか。その2択だけだ」
悪いわね、シェーレ。アンタのことは別に嫌いじゃなかったわ。けど、もうアンタは要らない。
『────』
現在は「マイン」という偽名で通っている、元ストリートチルドレン。本名は無い。
幼少期の頃から「生き残る為」「勝ち組になる為」に他人を裏切り、蹴落とし、時には這い上がり、時には蹴落とされてきた。その最中に一丁の拳銃を手に入れ、それ以降お守り代わりに身に付け続けている。
現在では革命軍の組織の一つ「ナイトレイド」に所属していたが、セリューとの戦闘で「負け組」になった事を確信。自分自身が生き残る為、そして再び勝ち組として這い上がる為にシェーレ、ナイトレイド、革命軍を裏切る。
尚、彼女の裏切りによって直接的、もしくは間接的に被害を被った人間の数は幾万にも及ぶ。
マインの過去設定に関する