もしもオネストが綺麗だったのなら   作:クローサー

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今回でnext storyは締めとなります。

ちなみに、アカメの傷痕に関してなんですが…分かりやすいイメージを挙げると、鬼滅の刃の風柱な感じです。もうちょいマイルドではありますが。


精算

ナイトレイド急襲作戦から数週間後。

 

帝都某所に存在する大監獄。

その最深部の廊下を、オネスト大臣とクロメ、そして大監獄の刑務官が歩いて行く。

通り過ぎる牢屋の中には、何も居ないところがあれば、凶悪犯や政治犯など、通常の牢獄には投獄出来ない者達が此処に投獄されているところもある。だがオネストとクロメの目当ての人物は彼等では無い。

 

最深部の最奥。必要最低限さえも内部の手入れがされていない汚れた牢屋の前に立つ。

 

 

「…こうして会うことになりたくはなかったです、ナジェンダ元将軍」

「…大臣」

 

 

其処に居たのは。囚人服の下にある身体の至る所に包帯を巻き、右腕の義手を外されたナジェンダ。

 

「手短に言いましょう、貴女の処刑の日が決定致しました。今から2週間後、帝都大闘技場にて公開処刑が行われます」

「…待て。私に拷問や尋問もせずに、処刑するというのか?」

「ええ、そうなりました。帝国元将軍という裏切り者のレッテル、そして帝国の民が恐れたナイトレイドの首領。帝国の自浄能力を証明する為、そして民達に安心を与える為に、公開処刑が最適と判断しただけの事です。何より、貴女は拷問や尋問で口を割るような人物ではない事はよく知っています。その上、貴女の価値は貴女が思っているよりも低いものです」

 

「貴女が何故帝国を裏切ったのか、何故革命軍へ寝返ったのかという「理由」には興味がありません。我々(帝国)が求める貴女の価値は、凶悪な暗殺組織の首領として首を落とされる事だけです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、帝国特務隊本部の一室。

 

「そろそろ決まったの、私の処遇?」

「ああ」

 

其処にあるソファでグータラしていたマインをよそに、特務隊隊員がテーブルの上に袋を置く。ガチャリと置かれたそれを、マインは手に取る。

 

「お前の証言は全て真実だった事が完全に確認された。それに加え、お前の証言によってナイトレイドを完全な殲滅を追い込む事に成功した。この二つを考慮し、お前の要求は条件付きで受け入れる事になった」

「…その条件っていうのは?」

「まず革命軍がお前の生存に気付いた時の保険に、目立たない形で護衛が付く。更に暫くの間、帝都外の行動禁止を設けさせてもらう」

「それ、私の気のせいじゃなきゃ幽閉って言わない?」

「でなければお前の安全を確約する事が出来ない。これはお前の要求を受け入れるのに必要な最低条件だ」

「…ま、牢屋にぶち込まれないだけマシね。OKよ。それで、この袋の中身はっと…」

 

軽く動かすだけでもジャラジャラと音を立てる袋の封を開けると、その中には大量の金貨が顔を覗かせる。

 

「情報に対する謝礼金と、取り敢えずの生活資金だ。小さい家も用意出来ている。仕事は良識派の息が掛かっている所を斡旋してやるが、多少時間が掛かる。それまではその金を大事に使え」

(…一連の事に関する口止め料も込み込みね、これ)「ありがと。兎にも角にも生活の目処があるなら、私から何か言うことも無いわ」

 

(ええ、何もない。十分な金も手に入れて、家も持って、完全に足を洗って安全な稼ぎが出来る。随分と形は変わったけど、これも「勝ち組」の一つの形としては十分)

 

 

(私は、勝てる)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2週間後、帝都大闘技場。

帝都警備隊と帝国特務隊によって、周囲を完全に警備された其処の観客席は満員になっており、今日一日のメインイベントであるナジェンダの公開処刑の時を待っている。

 

闘技場の中心部には処刑台が用意されており、処刑執行人が斧の最終点検を行なっている。

 

「…」

「…」

 

──ギュ。

 

「…」

「…」

 

──サクッ。サクッ。サクッ。

 

「…」

「…」

 

──サラ。サラ。

 

「…ねえ、お姉ちゃん」

「何だ?クロメ」

「ちょっとだけ、くすぐったいかな」

「そうだったか、ごめん」

「ううん、謝らなくて良いよ」

 

観客席中央段の一席に座り、クロメを太腿の上に乗せて抱き締め、ふにゃりとした表情を浮かべているアカメと、いつもと違って小ぶりな菓子袋から菓子を摘み出して食べているクロメの姿がある。

こんな2人だが、クロメは大真面目にある仕事をこなす為、此処で待機している。…アカメはクロメの温かさを堪能するついでに仕事しているが。

因みに八房と村雨は布に包まれており、大衆の目からは隠されている。が、八房の柄だけは僅かに露出しており、その露出部をクロメの左手が握っている。

 

兎も角、そんな2人から下方向に離れた席…最下層の席に、変装した護衛部隊 ラムダチームの護衛を受けたマインが居る。彼女も当然変装しており、革命軍に気付かれないよう対策を施している。

 

(…)

 

観客達の騒めきが周囲を包んでいたが、急速にその騒めきは小さくなっていき、やがて静けさが周囲を改めて包み込む。

 

「…来る」

「頑張れ」

 

僅かに眉を細めたクロメと、両手で改めて抱き締めたアカメがそれぞれ発した一言から、少しして。

開放されたゲートから、2名の処刑執行助手と、両足と左手に枷を付けられてゆっくりと連行されてくるナジェンダの姿が皆の目に入る。

 

 

ナジェンダの拘束は枷に加え、目隠しや口枷まで付けられており、とことん何かしらの抵抗も出来ぬようにされている。

鎖が擦れる音が響く中、ナジェンダは処刑台を上がり、2人の処刑執行助手によって断頭台に首を添えるように抑え込まれた。

 

其処で漸く、目隠しと口枷が外される。

 

その時、変装したマインとナジェンダの目線が、合った。

マインはそれに対して小さく右手を振り、満面の笑みを浮かべた。ナジェンダはマインの変装に気付いていないのか、反応はない。それどころか、濁った瞳は、何も映し出しているようには見えない。

 

そうこうしている間に、両手で斧を持った処刑人が断頭台の横に立ち、斧の刃をナジェンダの首に据える。

狙いを確認し、そして。斧を大きく振り上げ。

 

 

 

──ズバァンッ!!

 

 

 

振り下ろされた斧によって、ナジェンダの首は呆気なく切断され、床に落下した。

身体から切り離された頭部を処刑人が手に取り、分かりやすく高く掲げ。

 

ワッと、一斉に観客達の歓声が上がった。

 

「…ふぅ」

「お疲れ様、クロメ。完璧だったぞ」

「ありがと、お姉ちゃん。練習した甲斐があったよ」

 

その歓声の中、静かにアカメとクロメは会話を始める。大声量の歓声によって遮られる事により、2人以外に全く聴こえる事はない。

 

「しかし、あの状態で「使える」のか?身体中がボロボロで片腕が無くなったのに、頭も無くなったぞ」

「そこは大丈夫だよ。()()()()()()()()、他の人形さんから左手を移植して、首を繋げる為の材料を抽出すれば完璧に再生出来るからね。折角パンプキン(帝具)を使える元将軍様を、皆が頑張って捕まえてくれたんだから。死んでも使い倒してあげなくちゃ

「ああ、そうだな。クロメがもっと強くなれるんだ。文字通り肉片の一片まで使ってくれて、彼奴もあの世で感謝してくれるさ」




ナジェンダ
一般的には公開処刑によって処刑された事になっているが、実際はその前にクロメによって殺害され、骸人形の1人となっていた。
つまり公開処刑時のナジェンダは、クロメによって遠隔操作されている骸人形。この後は頭部と右腕が再生され、浪漫砲台 パンプキンを持たされる事になる。

マイン
護衛という名の監視付き、帝都から外に出る事は出来ないなど制限は多いが、特務隊の保護と大金を掴み切った事により、闇の世界からドロップアウト。
今後は隙を突いて、帝都の複数箇所に隠したヘソクリの回収を狙っていく事になる。

アカメ
長い間欠乏していたクロメニウムを補給中。
補給中に声を掛けられると、ふにゃりとした表情から一変して能面の表情となる。怖い。

クロメ
ナジェンダを殺害し、公開処刑の際には骸人形の遠隔操作でナジェンダの死を偽装した。

クロメニウム
アカメだけが感じ取れる、この世ならざる物質。常時クロメから放出されている。
接種方法:直接接触、吸引。
効能:麻薬以上の幸福感。(アカメのみ)
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