もしもオネストが綺麗だったのなら   作:クローサー

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漫画版幼女戦記を20巻まで読んで、モチベが出てきたので再始動。
予定ではそんなに長くならない…筈。何だかんだでこの作品は書き切りたい。
幕間的な感じでShort peaceも書けたらなー…

2021/3/13
番外編:War of Empiresの更新を停止します。詳細は下記の活動報告をご覧下さい。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=277103&uid=56685


番外編:War of Empires
蜂起/開戦


──平和とは、次の戦争の準備期間である──

 

 

 

 

 

帝国東部にある巨大都市、キュロク。

豊富な地下資源による有数な経済力を持ち、近年勢力を拡大している新興宗教「安寧道」が本拠を置いており、宗教施設が建設されている。これらの要素により、帝国の中でも有数の経済都市と高い治安を併せ持つ都市となっていた。

 

 

…そう、()()()()()

 

 

「…これだから宗教は嫌いだ」

「少なくとも今は、同意見だな」

 

そう吐き捨てる特務隊諜報部隊員達。

アジトの建物の窓から見下ろす景色は、安寧道による武装蜂起によって暴れる安寧道の信者と扇動された市民達。暴徒と化した彼等は鎮圧の為に出動した帝国警察を圧倒し、領主や地主の蔵を襲って物資を奪っていく。

 

「連絡は?」

「終わってる。Dr.の技術の多くが重要機密指定になる訳だ。これ(『無線通信機』)があるだけで、革命的な速度で此処から帝都への相互連絡を可能にしているんだから」

「今は俺達(特務隊)が独占保有してるが、帝国軍に標準装備されればかなりの威力を発揮するんだろうにな」

「そこら辺はお上が考える事だ。で、だ。話を戻そう。街の状況はどうだ?」

「最悪だな。帝国警察じゃ到底抑えきれてない、鎮圧には軍の出動が必要だろう。仮に鎮圧したとしても、暫くの間はキュロクの戒厳令は不可避。結果として市民の不満は溜まり続け、そして戦力の拘束にもなる訳だ」

「安寧道の武装蜂起の原因は掴めたか?」

「まだ断定は出来ない。が、革命軍か異民族が煽ったと見ていい」

「もしくはその両方…って所か。…奴等に一歩先を行かれたな」

「反省は後でも出来る。今は情報収集を優先するぞ。これで終わりな筈が無い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼等の懸念は、最悪の形で的中する事となる。

キュロクの安寧道武装蜂起を発端として、良識派の善政が届ききれなかった帝国辺境を中心に、次々と腐敗派の圧政に不満を募らせていた帝国臣民による暴動が発生。それに呼応して革命軍の工作員が暴動を煽り、反乱へと助長させていく。

この事態に対応する為、帝国軍戦略予備の第7軍、第8軍、第10軍を反乱地域へと派遣。早期の反乱鎮圧を目指し作戦行動を開始する事となる。

 

2日後、更に事態が急変する。

帝国の敵対国である3つの異民族国家が一斉に帝国への侵攻を開始。

西からは100万以上、南西からは20万以上、北からは50万以上の大軍勢を持って、帝国領土に侵入。

しかし彼等の侵攻は、国境線から10kmの地点に沿って建設された超巨大要塞線「神の盾(ウォール・イージス)」によって足止めされる事となる。

高さ10mの城壁の各所に設置された、多数の砲台による砲撃とトーチカからの弾幕射撃によって有効射程圏内に入る敵軍を次々と粉砕し、自軍の数倍もの物量をものともせずに多くの地点で一時的な撃退に成功する。

しかしウォール・イージスはその巨大さ故に防御力が完成しきれていない箇所も存在している。当然敵軍は侵攻によって露出した弱点に向けて軍を押し寄せ、ウォール・イージスの突破を図る事は確実だろう。それに対応する為、帝国軍も弱点部を補う為に部隊を弱点部に多く振り分け、場合によっては熾烈な白兵戦も辞さない姿勢を取っている。更に帝国軍戦略予備の第11軍、第12軍、第13軍、第14軍が数的不利を緩和させる為に各地の戦線に急行している。

だが、帝国軍は反乱の鎮圧と異民族侵攻の対処の為、戦略予備の殆どを出し切ってしまった。恐らく奴等は、これを狙っていたのだろう。

 

更に数日後、帝国南部にて革命軍(売国奴)が蜂起。その軍勢は、100万を超える。

しかもその軍勢の中には帝国警察だった者や帝国軍だった者まで紛れており、革命軍の思想が想像以上に根深く侵食している事を表している。

革命軍の蜂起によって、帝国南部が事実上陥落。帝国の兵站にも一部支障が発生するなどこの時点で防衛戦略に影響が発生し始めている。しかし、革命軍の狙いは帝国軍の兵站の崩壊では無い。千年帝国の打倒であり、民の為の理想国家(永遠なる異民族の属国)の建設だ。すぐに革命軍が帝都に向けた侵攻を開始するのは目に見えている。

 

つまり帝国は、最低でも250万もの大軍勢が四正面で侵攻してくるという前代未聞の危機を迎える事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…以上が、現在の帝国の状況となります」

「…………」

 

帝国宮殿の玉座の間にてオネストは、急変した帝国の情勢を幼き皇帝に報告していた。

一連の報告を聞いた皇帝は息を呑み、表情を固くしていた。良識派によって真っ当な教育を受けていたからこそ、帝国の状況がどれほどに危機的なのかを正確に理解しているが故だった。

 

「…大臣、率直に聞こう。余の軍は、帝国はこの危機に打ち勝つ事が出来るか?」

「…この時の為に、我々は準備をし続けて参りました。腐敗の浄化も、裏切り者達の粛清も、軍の改革も、民への善政も、神の盾(ウォール・イージス)の建設も、特務隊の創設も。全ては、次なる千年の繁栄を護る為に作り上げて参りました」

 

「ただ一言、御命令を。皇帝陛下」

 

普段接していた「優しき大人(教育者)」としてではなく、「愛国者(政治家)」として、オネストは皇帝と相対する。

皇帝は目を閉じてゆっくりと深呼吸し、決意を固めてオネストと視線を合わせ、言葉を紡いだ。

 

 

「帝国の敵を撃滅せよ。我等に刃を向けた事の愚かさを、奴等に教えるのだ」

「御意のとおりに」

 

戦争が、始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「現時点を以て帝国全土に戒厳令を発令。敵の工作への警戒を厳に」

「大臣、こちらの手が足りん。第15軍を借りたいが、可能か?」

「構いません。寧ろ話が早くて助かります。其方の支援に回す予定でしたので。第15軍の上位指揮権を貴方に一時貸与します」

「感謝する。第15軍は近衛兵と連携して最終防衛線を構築。賊軍の侵攻に備えよ」

エスデス軍(第9軍)に防衛戦に於ける自由軍事行動を許可。敵を叩き返して下さい」

「革命軍の侵攻状況を随時確認、報告を。彼等の侵攻速度が速ければ速いほど、防衛戦略の完全破綻のタイムリミットが縮まります」

「特務隊は直ちに第一種出動態勢に移行。対軍武装で出撃準備を整えるように。特別隊員も直ちに招集を」

「ではブドー大将軍。これ以降の帝都周辺の防衛は其方にお任せします」

「分かっている、貴様も皇帝陛下の為に全力を尽くせ」

「ええ、そのつもりです。そも貴方方近衛軍が戦場に立つ事が最悪の状況。取り越し苦労で終わるのが一番ですから」

 

「さて…今日から忙しくなりますね。盛大に歓迎致しましょう、異民族」

「そして遂に姿を表してくれましたか、革命軍(売国奴共)。随分と民を惑わしてくれましたね…」

 

我々(政治家)の戦争は終わり、ここからは彼等(軍人)の戦争です」




キュロク蜂起
原作10巻の始まりにて言及されている「安寧道」による宗教武装蜂起。ナイトレイドが安寧道に潜入していた帝国のスパイを暗殺した後に発生し、これを引き金として、西の異民族の侵攻と革命軍の蜂起が開始。二正面作戦によって帝国の打倒に至った。
本作ではナイトレイドが壊滅してしまったが、同時に帝国のスパイも居なかったため、結局蜂起が発生。
原作よりも緻密な連携が為されている事により、南西と北の異民族も大軍で侵攻を開始。四正面作戦を帝国に強いる事となる。

皇帝
原作では極悪なオネスト大臣の傀儡。本作では真っ当な教育を受けている為、幼いながらもちゃんとした判断や決断を出来る。

オネスト
皇帝の命を受け、帝国に侵攻してくる異民族と革命軍を撃滅する為に行動を開始。

ブドー
帝国の大将軍であり、皇帝に仕える武人。帝都周辺を防衛する精鋭の「近衛兵」を率い、防御を固める。
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