けどそれ以上に「書く事がこんなにも楽しいんだから別にヨシ!」と叫んだ自分が圧勝した。
やっぱり書くのに当たってモチベーションは一番大切。
帝都近郊に、ギョガン湖と呼ばれる湖がある。
山間部に存在するその湖自体にそれと言った特徴は無いが、問題はその付近に山賊の砦が作られていると言う事だ。
その砦はギョガン湖周辺、そして帝都から逃れた犯罪者達の駆け込み寺として機能しており、その規模は拡大しつつあった。更にタチの悪い事に、数百年前に建設された砦が最近再利用され始めた事と、険しい崖などと言った自然の要害という二つの要因が合わさり、帝国特務隊もギョガン湖周辺に犯罪者の砦の存在こそ把握していたが、詳細な位置と規模は把握されていなかった。
そして砦も、規模は小さいながらも城壁も築かれており、生半可な戦力では返り討ちにしてしまう防衛力を有していた。
「…ふぁ〜」
そんな砦の城門の見張り番2人の片方は、眠気に耐える為に大欠伸をかいた。
満月が浮かぶ夜。気温も程良い暖かさで、立ち寝するには最高の環境に置かれている。
眠気を覚ますついでに小腹を満たそうと、懐から干し肉を取り出し、一口含もうとしたその時。
その門番の眠気は、もう片方の門番と共に永眠する事で叶う事となる。
ドサリと、首を切られて即死した2人の門番の身体が崩れ落ちる。
その間に、1人の少女が立っている。右手には血が伝う刀、左手には門番が食べようとしていた干し肉が握られている。
「…」
刀の血を振り払い、干し肉の状態を軽く確認して一口。その一口で干し肉を全て頬張り、咀嚼。
素早く飲み込んでこれからの運動の腹ごしらえを手っ取り早く済ませ、少女は城壁を見上げる。
そして、跳躍。当然一度の跳躍で城壁の上に届いてしまう程少女の跳躍力は無いし、城壁も低くは無い。しかし、城壁にも自然劣化による僅かな足掛かりはある。其処に足の先端を掛け、再び跳躍。それで少女の身体は容易く城壁の上まで到達した。
しかし、城壁の上にも当然複数の見張り台が存在しており、其処から少女の姿は丸見えだ。
「…邪魔だな」
そう言って、少女は見張り台の監視員の排除を開始。城壁の上を走り、見張り台へ移動し監視員を辻斬り。ものの数十秒で城壁を一周、3人の監視員を排除して城壁の上を確保。
悠々と城壁内の様子を偵察を開始。城壁内には建物が一つ。窓から見えるだけでも10数名が見えており、建物の外には8名ほど。
「…」
少女は躊躇無く城壁から飛び降り、内部に着地。同時に薄めていた気配を戻す。すれば当然、着地音と気配に付近の者は振り向き、そして侵入者の少女に気付く。
「侵入者だ、皆集まれ!!」
1人が叫び、他の者は適度に距離を取りつつ武器を構える。ある者は剣を抜き、ある者は銃を抜き。そして建物から数十名の山賊が飛び出し、少女の周辺を囲い込む。
「おいテメェ、いったいどっから入って来やがった!!」
「生きて帰れると思うなよ、あぁ!!」
「いやいや待てよテメェら、相手は1人。それも
「おぅ、良いねぇ。一斉に飛び掛かれば手も足も出ねぇだろ」
ある者は威嚇し、ある者は殺意を向け。ある者は少女の容姿に目を付け、ある者は捕獲を意識して。
その油断を、少女は。アカメは存分に利用する。
縮地。何者にも見抜けぬ程の速度で大地を駆け、接敵。刀型の帝具「一斬必殺 村雨」を使い、乱舞。一瞬の時を刻む毎に数人が村雨の斬撃を喰らい、斬撃の深さによって即死か村雨の呪毒によって数秒後に即死していく。
「ッ殺れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
数秒で20人近くが殺され、包囲網は機能しなくなった。その光景に誰かが叫び、皆が正気を取り戻してアカメへの攻撃を開始。それは捕獲などは考えない、全力攻撃。
しかし、アカメを止める事はできない。乱戦の状況を支配しているのは山賊では無くアカメだ。彼女は全く躊躇無く山賊の集団に再突入。山賊を切り刻みながら人の塊を外側から解体し始める。多数の方向から斬撃や銃撃が飛んでくるが、これを悉く対処。村雨で攻撃を兼ねた防御を行い、身体を捻って回避し、一瞬先を予測して対処する。だが次々と同時に飛んでくる攻撃を全て回避出来るという訳では無い。
徐々に身体に擦り傷が増えていく。だがそれを遥かに上回るペースで山賊は死んでいく。
故に。この時点で、彼女の勝利は確定された事象となった。
…
およそ10年前。帝国の諜報機関に潜んでいた腐敗派は、極秘に一つの暗殺部隊を設立した。
その暗殺部隊は、大きく分けて2つのグループを仕分けた。
一つは、上位7名による少数精鋭の「選抜組」。
一つは上位7名を除いた、最初期の実力選定に於いて生き残った者達による「強化組」。
常用される薬物は強化組にとって特別扱いされる選抜組に追い付く為の道具であり、腐敗派にとっては強化組を己の手の内に縛る為の「
要は、選抜組は「代替の効かない主力」で、強化組は「代替が比較的効く、いざとなれば使い捨てが出来る脇役」という事だ。
アカメも妹と共にこの暗殺部隊に売られ、実力選定によってランク7のアカメは選抜組へ。ランク8の妹は強化組へと仕分けられた。
その後の選抜組と強化組の育成は、其々の手法で順調に進んでいた。この調子で育成が進めば腐敗派の思惑通り、良識派を追う形で腐敗派にも十分な実力部隊が生まれていただろう。
しかし暗殺部隊の育成段階にて、事態が動いた。
強化組の教育施設が
つまり、アカメの妹は。
その知らせを聞いたアカメは、甚大な精神的ショックを負った。数年の過酷な訓練や忍耐も、この世で一番大切な妹と再び出会う為に頑張って来た。しかしもう、妹はこの世に居ない。二度と出会う事が出来ない。信じたくなかった、信じられなかった。余りのショックに塞ぎ込んでいたアカメだったが、教育係だった「ゴズキ」の言葉が、彼女を立ち上がらせた。
『妹を殺したのは革命軍だ。奴等が居なければ、妹が殺される事も無かったし、もう一度元気な姿で会えるかもしれなかった。奴等が家族を、妹を永遠に奪っていったんだ』
『いいか。革命軍という癌は、こうやってこの国を壊していく。こうやって皆んなから幸せや家族を奪っていく。奴等がこの国を乗っ取ってしまったら、こんな物じゃ済まされなくなる』
『革命軍を赦すな、異民族を赦すな、帝国の敵を赦すな。帝国の平和を乱す者は、この世から抹消しなくちゃいけない。その為に俺達が居るんだ』
それからのアカメは、妹を奪われた悲しみと怒りをエネルギーにして、病的な程に鍛錬を積み、余りにも鋭い程に実力を高め、誰よりも敵に無慈悲な暗殺者として育っていった。
しかし、暗殺部隊として活動していく最中に帝国の闇にも気付いてしまったアカメは、最早帝国の事を…いやそれどころか他人の事を何一つとして信じる事が出来なくなってしまった。
やがて彼女は暗殺部隊から離脱し、孤独の道を歩み始める。
帝国を信じられず、そして妹を殺した革命軍も信じる事は出来ない。仲間の皆を裏切り、味方は誰一人として存在しない彼女には、その道はとてつもなく険しいものだった。死にかけた事も一度や二度でも無い。身体に永遠に刻み込まれた傷跡も幾つもある。何度自らの身体に村雨の刃を突き立てようとする衝動に駆られた事か。
だが自らの手で命を絶つ事は、アカメ自身が許さなかった。
そんな事をすれば、果たして家族同然だった仲間達を裏切り、殺した「意味」は何だった?切り捨ててでも手に入れたかった「価値」は、
違う、違う、違う!
私が切り捨ててしまった大切な物の価値以上に見合う何かがある筈だ。こんな
それを見つける事が出来るまで、それを証明する事が出来るまで、彼女は
だから────
…
「ヒィッ、やめて、やめて下」
最後の1人を切り捨てて、漸く終わる。
返り血と己から流れる血で身体の一部が赤色に染まったアカメの周囲には、山賊だった者達の残骸が転がっている。
「…」
村雨に付いた血を払い、納刀。此処で残されたやるべき事は、物資と資金の調達。どうせ此処にあるのは薄汚い方法で集められた物。それを少女1人が適量をくすねていっても、誰も文句は言わないし、
「…ん」
建物の方を見た時、建物の影に誰かが居る。山賊は全て斬り殺した。なら、誰だ?いやアカメはすぐその正体に辿り着いた。
アカメはその人物の名を、
「…うん、また悪人達をやっつけたぞ。クロメが出来なかった事まで、私は頑張っていくからな」
「大丈夫だ。このくらいの傷、どうって事ない。皆の傷と比べれば、無いようなものだ」
「ああ、そうだな。まだ私は死んじゃいけない。私はまだ見つけていないからな。これからも頑張って行くぞ」
「…もう行くのか。そっか、それじゃまた今度会おう。次はもっと綺麗な場所で会えると良いな」
彼女は今日も、「己が生きている意味」を探し続けている。
アカメ
原作主人公の1人。原作では帝国の暗殺部隊に所属し、その後革命軍に寝返ってナイトレイドのエースとして活躍していく。
今作では
尚、暗殺部隊から脱走の際に重傷を負って生死の狭間を彷徨っていたが、持ち前の並外れた生命力と学んだサバイバル術の応急手当で何とか一命を取り留めている。その際の傷跡は、今も身体にハッキリと残り続けている。