帝国特務隊とは、帝国に於ける最精鋭部隊である。
何故
しかし軍隊の戦闘能力ではなく、
帝国特務隊は、大きく区別して2つある。
一つは諜報部隊。帝国内部に潜む腐敗派根絶の為の腐敗調査。異民族国家及び革命軍に対する諜報、防諜、工作活動を主に行なっている。その詳細は帝国の最上級機密に位置されており、諜報部隊の詳細を知る者は、創設者であるオネスト大臣と帝国特務隊の他には存在していない。
一つは前衛部隊。
帝国特務隊を語るには外せない存在であり、革命軍や異民族国家が
前衛部隊の中から更に区別すると戦闘部隊、護衛部隊、駆除部隊の3つとなる。
戦闘部隊は、創設期の初期目的達成…つまり腐敗派の殲滅及び帝国の治安改善の為に諜報部隊と共に作られた、所謂雛形の部隊だ。現在では対革命軍及び異民族国家部隊としての活動及び規模拡大も行われており、帝具使いに対抗する為に高火力兵器の配備も少しずつ進んでいる。他の部隊にも言える事だが、帝国特務隊は並外れた
護衛部隊はその名の通り、特定の目標を隠密的に護衛する事に特化された部隊となる。*1それ故に、部隊規模や各隊の武装は戦闘部隊より軽装となっている。創設のきっかけは、腐敗派による薬物強化の暗殺部隊育成が発覚し、当時の帝国特務隊の総力を以って該当施設を全て殲滅した際に救助された数十名の少年少女達。その後薬物を抜く為の治療は過酷を極め、生き残ったのは僅かに数名。うち一名…クロメは帝国特務隊に入隊したが、他は一般臣民として失われた日常の中へと戻っていった。*2しかし、その一件に関わる腐敗派の一部が彼等の抹殺に動く可能性はゼロでは無い。その為、極秘裏に腐敗派から守る為の部隊…護衛部隊が創設されたのだ。
駆除部隊は護衛部隊とは逆。戦闘部隊よりも重武装高火力を突き詰めた、現在に於ける帝国特務隊の最大火力部隊。その火力は凄まじく、対危険種戦闘に於いては、一個分隊で通常帝国軍部隊の一個中隊にも匹敵し得る殲滅力を保有しているとも言われている。
それ程の火力を保有している理由は、そも駆除部隊の攻撃対象は
今回は、駆除部隊の活動を少し見ていくとしよう。
…
帝国南西部に存在するマワヤ荒野。其処は危険種が数多く生息する危険地帯であり、民間は兎も角帝国でさえもマトモな開発は出来ていない。当然人の立ち入りは無く、手付かずの自然が広がっている。
だが今は、駆除部隊による危険種漸減作戦によって銃声や砲声の大音量が響く戦場となっていた。
『ゼータ4、弾薬残存が3割切った。補給の為そろそろ後退する』
『了解だゼータ4、後退用の予備弾薬以外は全弾バラ撒いてやれ』
『ゼータ2、ジャギィの群れが接近中。数が多い、支援を求む』
『イオタ2よりゼータ2、座標を送れ。ありったけの迫撃砲弾をくれてやる』
『助かる、座標は───』
『イオタ1、砲弾残弾3割を切りそうだ。後1回の砲撃支援で後退する』
『ゼータ5、「リオレイア」の巣を発見した。繰り返す、リオレイアの巣を発見した。居眠り中の巣の主に加えて卵もある。増援をよこしてくれ、座標───』
『ベースからゼータ5、了解した。近くのゼータ3を送る。ついでだ、「パイロマスター」も出そう。指揮はゼータ5が取れ』
『パイロマスターもか?大判振る舞いだな、他の所は大丈夫か?』
『今の所は問題無い。応援が到着次第、巣を丸ごと焼き払ってやれ。尚パイロマスターはファイアーラビットを使って移動する。誤射に注意しろ』
彼等が持っている、現在の世界に於いても希少な通信機には、兵士達の声が次々と入り、スピーカーに出力されている。
駆除部隊の重装部隊「ゼータ」、砲撃部隊「イオタ」、焼却部隊「ラムダ」による漸減作戦は順調。作戦開始から既に3週間経過しており、補給や疲労回復の為の休止を挟んでも、既に数百の危険種が葬られている。しかしこの荒野から危険種を消し去るにはまだまだ足りず、そして殲滅し切るには弾薬が足りていない。
故に「漸減」。少しずつ危険種の総数を減少させ、この荒野を解放させる。無論、危険種が危険を感じて移動する事になっても、間違って帝国の村や街に行かぬよう、作戦進行は北東方向から覆い包むように進められており、逃走経路は南西部…つまりは
…但し、一級危険種以上となればそんな余裕は無い。やはり種別によって左右されるが、一級危険種以上になるとたった一頭の存在が人類領域に入り込めば容易く村や街を完全に破壊し得る暴力性を持つ。
先の通信会話にて言及された「リオレイア」も、そういう類の特級危険種だ。ドラゴン種の一つとして確認されているリオレイアは、空を飛ぶ事が出来る故に行動範囲は広大。そして巨体の重量、鋭い爪や牙、火炎攻撃能力等と言った高い戦闘能力により、リオレイアによって壊滅した村や街は帝国のみならず異民族国家にも数多く存在する。故に、リオレイアの巣の発見、そしてリオレイア本体とその卵の発見が報告された
合流地点として指定された場所には、巣を発見したゼータ5と応援に駆けつけたゼータ3、合計24人が合流。後は距離のある
そんな彼等は、危険種の素材を利用して作られた「強化外骨格」に身を包んでおり、そのおかげで通常の人間を超えるパワーを振り回す事が可能。それ故に彼等が今メンテナンスしている武器も強化外骨格を着ていない者では、ごく一部を除いて到底扱いきれない兵器となっている。
そんなこんなで他愛の無い話をしながらパイロマスターの到着を待っていると、遠くから大型生物の足音が聞こえて来る。かなりの速度でこちら側に接近して来ているようだ。
『パイロマスターよりゼータ5及びゼータ3へ。お待たせしました、間もなく合流地点に到着します』
「ゼータ5了解。ちょうどいいタイミングです」
無線機からパイロマスターの通信が届き、警戒のためにその方向へ銃口を向けようとしていた隊員達の動きが止まる。十数秒後、岩壁の後ろから巨大な、耳と尻尾の部分から炎が吹き出している危険種「ファイアーラビット」が飛び出し、彼等の前で止まる。そしてその背から、拘束衣とガスマスクを身につけ、巨大な火炎放射器を背負った1人の大男が降りて来た。
「パイロマスター、これよりゼータ5に合流します」
「合流を歓迎します、パイロマスター」
「パイロマスター」と呼ばれる大男の名は、ボルス。
火炎放射器の帝具「煉獄招致 ルビカンテ」を持つ帝具使いであり、帝国特務隊特別隊員。
元は焼却部隊の隊員だったが、その焼却部隊が帝国特務隊の駆除部隊の一つとして吸収される際、ボルスは希少な帝具使いであるという事から、特別隊員として任命され、焼却部隊からは離れる事になる。
とはいえ、ルビカンテの大火力は対危険種戦闘に於ける相性はとても噛み合っており、特別隊員になってもやってる事は焼却部隊と変わっていなかったりする。
ボルスが合流し、巣の攻略要員が揃った所で1箇所に固まり、ブリーフィングが開始される。巣の攻略作戦の説明を始めるのは、指揮を取る事になったゼータ5の隊長。
「さて、問題のリオレイアの巣は此処から南に100m、あそこの窪みの底にある。今の所リオレイアは巣の中で睡眠中だ、寝てるうちに一気に叩く。左正面に我々ゼータ3が、右正面にゼータ5が射撃準備。正面からパイロマスターがルビカンテで焼き払い、同時にゼータ3、5が射撃を開始。炎に呑まれて暴れるだろうリオレイアを銃撃で拘束し、焼き殺す。何か質問は?」
「配置に付く前に気付かれた場合はどうする?」
「その場合は即時攻撃を開始。兎にも角にもリオレイアに空を飛ばさない事…いや動かさない事に我々は専念し、最終的にルビカンテで焼き殺せば我々の勝ちだ」
「考え辛い事ですけど、攻撃が遅れて飛び立ってしまった場合は?」
「我々が対空戦闘を行い、リオレイアを叩き落とします。叩き落としたら直ぐに火炎放射でトドメを刺してください。リオレイアは巣に卵がある以上、子供を置いて逃げる事は出来ません。イニシアチブは我々の手の中です」
その後も細かい質問が幾つか飛び、作戦の詳細をより精密に詰める事数分。
「他に質問は?………無いな」
「行くぞ、初弾装填」
その言葉を合図に、ボルスを除いたゼータ3及びゼータ5の構成員が一斉に、持っている対危険種大型兵器「大口径機関砲 パトリオット」の装填レバーを力強く引き、初弾を薬室に送り込んだ。
…
「…」
不要な物音を立たぬように注意しながら窪みの先端に辿り着いたゼータ3、5とボルス。
其処から覗き込むと、窪みの底には特級危険種のリオレイアの巣。そして昼寝をしているリオレイアと側にある卵を確認出来る。
(作戦開始、接近する)
ハンドサインで合図。25人が数回に分けて窪みを慎重に降り、ゼータ3は巣の左に、ゼータ5は巣の右に、そしてボルスは巣の正面に向けて接近していく。全員の銃口はリオレイアに向けられており、しかし不慮の発砲がないように引き金からは指を離し、トリガーガードに引き金を引く指を添えている。
数分かけて、彼等は予定位置に無事到着。リオレイアは危険な状況に気付いておらず、今も眠りこけている。
万が一の同士討ちが起こり得ない場所に各自が立っている事を其々が確認し、ゼータ3と5の隊長はボルスにOKのハンドサインを送る。
ボルスもそれに頷き、ルビカンテを改めて構え直し、リオレイアに照準。引き金に指を掛ける。ゼータ3と5もそれに続く。
ルビカンテの引き金が引かれ、焔が放たれる。
それは、言うなれば地獄の業火。千数百度からなる赤い業火は、ルビカンテという「帝具」の能力により、強烈な消火方法を用いなければ自然鎮火以外で消える事は無い。そして放たれた業火は巨大。ルビカンテの銃身から放たれた炎柱の射程は百数十メートル、その太さは十数メートルで、寝ていたリオレイアを覆い隠した。
当然リオレイアにとっては寝耳の水、どころか寝耳の
24のパトリオットから放たれる「12.7mm対危険種弾」の嵐。元々貫通力に優れた対危険種用の弾頭種類。12.7mmという通常ではまず考えられない大口径の弾丸の威力。そして
この4つの要素が合わされば。それは特級危険種をも葬れる強靭な牙となる。
ドカドカと重い銃声と共に、銃口から次々と飛び出していく巨大な弾丸。それらはまずルビカンテから吐き出されている業火の中に飛び込み、超高熱に晒される。そのままの状態である程度の時間が経過すれば融解が始まっていただろうが、超音速で空中を飛んでいる今は関係の無い話。業火の流れによって弾道の影響を受けつつも、次々とリオレイアの身体に命中。最初の2、3秒は大口径の対危険種弾でもリオレイアの燐の防御によって弾かれたり食い止められてしまう弾丸があったが、しかしルビカンテの火炎放射によって燐の融解が始まれば、その防御力は皆無も同然。次々と融解しつつある燐を抉り、その先のリオレイアの肉体に食らいつき、抉り、蹂躙していく。
そして
「撃ち方止め!」
攻撃が停止し、其処にあったのは残り火の中に残された黒焦げのリオレイアだった物と、巣だった物の残骸のみだった。
万が一を考え、ゼータ3の隊長は頭部辺りに弾丸を1発叩き込み、確実に死亡している事を確認。それを終えて通信を入れた。
「ゼータ3よりベースへ。リオレイアの排除を完了。巣も焼き払った」
『ベース了解、よくやった。ゼータ3、ゼータ5は作戦継続。パイロマスターはまたベースに戻って予備兵力として待機してくれ』
この地から危険種が排除され、危険種の領域から帝国の領域となるのも、そう遠くはない。
ボルス
原作では焼却部隊からイェーガーズに所属。優しい気質と性格だが、家族の為に仕事と割り切って、あらゆる目標をルビカンテで燃やし尽くす仕事人。革命軍に協力してた街一個を焼却した事で革命軍の標的となり、ナイトレイドの戦いに於いて、チェルシーによって暗殺されてしまう。
今作では焼却部隊が帝国特務隊の駆除部隊として編入され、ボルスは特別隊員に異動。危険種駆除の為に日々奮闘している。
実は見た目に反して既婚者であり、妻と子供は共に美人という勝ち組。帝都にてその円満夫婦っぷりをたっぷりと見せつけられる帝国特務隊の隊員達は、ボルスに嫉妬してるとか何とか。
帝国特務隊特別隊員
特務隊の帝具使いが任命される、特務隊の中でも特別な者達。帝具という強力な戦力を1部隊に固定させず、柔軟に対応させる為にこの枠組みが作られた。現時点ではクロメ、セリュー、ボルスがこの特別隊員として任命している事が確定している。
尚、チェルシーは諜報員としての活動に特化させる為、例外的に諜報部隊に所属している。
強化外骨格
帝国特務隊のみに配備されている装備の一つ。危険種の素材を利用しており、並外れたパワーの出力によって常人では扱いきれない武装の利用を可能としている。
見た目はインクルシオやグランシャリオのような鎧に近い。
大口径機関砲 パトリオット
帝国特務隊 駆除部隊を中心に配備されている対危険種兵器。見た目としては、銃身を少し切り詰め、腰撃ち出来るようにトリガーと取っ手を取り付けたブローニングM2重機関銃。
ちなみに巨大な予備マガジンは強化外骨格の太腿に2つ、背中に1つ、二の腕に2つをポン付け出来るように、強化外骨格側で設計されている。
尚、強化外骨格やパトリオット等は、Dr.スタイリッシュが設計協力している。原作でもレーダーやミサイルとか作ってるし、この位は簡単だろう。
ついでに、現時点で立場が変わったと明言されているキャラの一覧を載せてみる。
オネスト→事実上の良識派の大黒柱として活動中。
シュラ→そもそもこの世界に存在していない。(オネストが子供作ってない)
クロメ→オネストと帝国特務隊によって腐敗派から助け出され、帝国特務隊の特別隊員に入り、姉のアカメを探し続けている。
セリュー→性格がマイルドになり、帝都警備隊から帝国特務隊特別隊員に。
チェルシー→オールベルグから革命軍に、其処で革命軍の情報をスッパ抜いて帝国側に寝返る。以後は帝国特務隊諜報部隊に。
リヴァ→帝国の将軍の一人として活動中。
ブラート→帝国軍に変わらず所属中。
タツミ→サヨ、イエヤスと共に無事に帝都に到着。帝国軍に入隊する。
アカメ→腐敗派の暗殺部隊から脱走後、革命軍に流れず、一人で帝国を彷徨い続けている。
ボルス→焼却部隊から帝国特務隊特別隊員に。その後は対危険種戦闘で活躍中。
…ナイトレイド、この時点で初期メンバーの約半分が居なくなってるね。そして原作と比べて救われているキャラが多い中、アカメだけが原作よりもハードモード。クロメを救うタイミングが早過ぎて、アカメがその代償を背負ってしまった…