世界が繋がるまであと五分   作:ミヤムラゾロ

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第1話

 ――久々のクソゲー以外のVRゲームで身体が思い通りに動くわバグらないわで調子に乗っていたら、諸々あって何の変哲もないMobにやられたのはどこのどいつだい?

 俺だよ。

 フェアカスをクリアした(刑期を終えた)俺は、岩巻さんから薦められた大衆が諸手を挙げて万歳三唱を繰り返すレベルで認める文句なしの神ゲー『シャングリラ・フロンティア』をプレイしていた。

 初期装備は効率重視で幸運補正の入る『彷徨う者』で使い勝手の良さそうな『二刀流の傭兵』。資金的な意味と羞恥心的な意味で鳥頭に半裸という、事情を知らない人からすれば『特殊Mobかな?』となる変態ファッションで開始したのがそもそも悪かったのか。

 同じ初心者(ビギナー)と思われる三人組のプレイヤーと鉢合わせした際に攻撃されてしまい、回避した先にいた包丁構えた二足歩行の兎に刺されて南無阿弥陀仏。

 そして俺は『ファステイア』という一番初めにプレイヤーが訪れる『はじまりの街』で目が覚めたのである。

 あ、ちくしょう。なんとなくそんな気はしてたけど、やられる前までにあったアイテムも装備も経験値も全部リセットされて初期装備に戻ってやがる。

「夢落ち扱いかよ。返せよ俺の二時間半…」

 流石にこれはちょっと愚痴る。

 いやまあチュートリアルを済ませないでフィールドを彷徨ってた俺が悪いんですけどね。さっさとファステイア行けばいいだけの話だったんですけども。

 けどそれにしたってアイテム全損はちょっとなぁ…。

 せめて経験値は引き継がせてくれたってバチは当たらんと思うんですけど…。

 出鼻を挫かれた、というより事前の情報収集を怠ったツケを虚無へと消えた時間で清算し、『まあクソゲーならセーブデータがいきなり全損がデフォだし』と傷口に塩を塗り込んでメンタルリセット。リセット出来てるかコレ?

「さっきまでいた銅像みたいな白騎士かっこよかったよなぁ」

「な。どれだけやりこめばあんなの作れるんだろ」

「装備がガチ感ハンパなかった。絶対生活捨ててるだろ中の人」

「エンブレムあれクランの『黒狼』だろ? 確か七つ最強種の一体である『夜襲のリュカオーン』討伐狙ってる上位クラン」

「なんだってそんなのが初心者のエリアにいんだよ…なんかユニークイベでも解禁されるのか?」

「知らね」

 ファステイアの街中を散策していると、度々聞こえてくる『白騎士』だの『黒狼』だの『夜襲のリュカオーン』だの『ティーアスちゃんを着せ替え隊が出た』という具合に様々な会話が到る所から耳へ届く。いや待て最後。最後なんだよ。

 プレイヤーの分母が三〇〇〇万人もいるならそりゃ一定数そういう連中がこの神ゲーのプレイヤーの中にいてもおかしくないんだろうけど、なんでそんな連中が初心者エリアにいるんだ…。

 いやプレイヤーじゃなくて特殊イベ用のNPCとかそういう連中なのか? 怖いもの見たさでエンカウントしたいようなしたくないような…。

 戦闘方法に関しては虚空へ消えた時間で理解したので、ファステイアの街をぐるりと眺めながらとりあえず必要になりそうな回復アイテムと、流石に半裸はプレイヤーやNPCからの視線が辛いので最安値で投げ売りされてた一式装備を購入で半裸回避。

 初期装備売った金で初期装備以下の装備を購入という回りくどい方法だが、序盤の金策はどのゲームにおいても大変だからな。

 金はあって困るものじゃないのだ、なくて困る事の方が多いからな。

 日本が誇る永世究極英雄福沢諭吉大明神を崇めよ。

 

 

「……………………『死鋼の魔術師』(デスメタルマジシャン)サンラクくぅん……?」

 

 

「――――は?」

 

 世界が繋がるまであと零秒。

 

 すれ違いざまに紡がれたその声で、かつての記憶が蘇る。

『スペル・クリエイション・オンライン』と呼ばれるゲーム(世界)に終焉を招いた魔神と、魔神に抗いし者の死闘の記憶が。際限なく脳内に溢れ出す。

 千変万化に声音を。声質を。声量を。

 声帯を変幻自在に操るあの元凶が、いま眼前に立っている。

 

 ――崩壊した世界の残滓が。残渣が。悠久の停滞から鳴動する。

 

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