魔法少女花騎士☆マギカ   作:繭浮

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バッタ討伐とフリーの傭兵 1-3

「調整屋さんの話は、かえでちゃんから聞いたんです。チームリーダーのももこさんに連れられて行ったそうなんですけど……」

《ももこさんかあ。こうしてかこちゃんのチームと仲良くなれたし、せっかくだからかえでちゃんのチームメンバーとも会ってみたいわね》

 

 トウコの調整後、ななか組が調整を受け始めた。その間待ちのななか組メンバーと雑談し、さらに親睦を深めた。

 

 最初はすでに友人だったかことの会話が主だったけど、他の3人とも結構仲良くなれた気がするわね。

 

「私は自身の髪色もあってか、赤系統の花が好きですね。最近はアンスリウムがお気に入りですわ」

「あのツヤと小さな花が可愛いですよね!」

 

 特にななかは、カドーとかいう花を使った芸術家の娘とかで花に詳しく、特にこのみと盛り上がっていた。

 

「なので、トウコさんの固有魔法は「花騎士デンドロビウムの力が使える」というものになっています。具体的に言えば「気功」の力を用いた格闘術、でしょうか」

「気功! いいね、いかにも強そうだ! 是非手合わせしたい!」

「実に興味深いネ」

 

 あきらとメイユイは、格闘家だからかデンドロビウムと意気投合していた。

 

 デンドロビウムが会話に加わってることから分かる通り、カトレアとトウコに私達花騎士が入っていることは端的に話した。それくらいの情報なら隠す必要もないわよね。

 

「魔力の波長が十人十色なのは分かるわよね。その波長と自分の波長をどれだけ早く合わせられるかで、調整速度も精度も上がるわ。具体的にどうすればいいかは……」

「はー……なるほどねぇ……」

 

 ついでに全員の調整を終えたみたまには、ミズウォルムを見せたのと調整屋としてのプライドを傷つけたお詫びもかねて、調整のコツ的なものを教えてあげたりもした。

 

 

 

 

 さて、そんな感じで再び和やかな雰囲気になりつつ、現在。私達はソファに座り、ブロッサム組とななか組とで対面していた。

 

 調整屋は魔法少女の仲介役とかもしているらしく、今回の交渉の場として快く貸してくれた。ななかからの頼み事だから、ななかに料金要求してたけど。

 

「すっかり日が暮れてしまいましたが、お時間は問題ありませんか?」

「ああ、大丈夫だ。ブロッサムを手伝った日はもう少し遅くなることもあるしな」

 

 という訳で、トキワななかの頼み事とやらを聞くことになった。

 

《な、なんかこういうのって、面接みたいで緊張しちゃうね……》

 

 このみがソワソワした声色の念話を飛ばしてきた。というか実際体をモジモジソワソワさせている。可愛い。

 

《このみが気にすることないでしょ。実際に交渉するのはトウコなんだし、かこが信頼してる人物なんだし》

《そうよこのみさん。燈湖に任せておけばなんの問題もないわ》

《カトレアはもう少し緊張感持ちなさい。それと、トウコにおんぶに抱っこはほどほどにしときなさいよ?》

《はーい》

《……ふふっ》

 

 私とカトレアの緊張感のないやり取りに、このみの緊張も解れたようね。

 

 それを見計らったかのように、ななかが話を切り出した。

 

「すでにお気づきかもしれませんが、私達はとある魔女を追っています。その魔女を確実に葬り去るため、出来るだけ多くの魔法少女の協力と、あなた達のような強力な魔法少女の助力を求めているんです」

「ふむ。かなりリキを入れてるようだが、それだけ厄介な相手ってことか。ななか組の同盟は、その魔女の被害者の会ってとこか?」

「……やはり鋭い方ですね。はい、その通りです」

 

 トウコの予想に、感心したように頷くななか。

 

「どんな被害を受けたか聞いても?」

「はい。対策を練る上で必要な情報でしょう」

 

 そうしてななか達はそれぞれどんな被害を受けたかを話してくれた。

 

「そ、そんな魔女がいるなんて……」

《かこちゃんの願い自体に、その魔女が関わってるとはね》

《……予想以上に厄介な魔女ですね》

「居着いた場所を貪り喰らってから強力な分体を残して移動し、再び食い荒らし移動先に分体を生み出す。その極めて厄介な性質から、私達はその魔女を「飛蝗」と呼んでいます」

「ヒコウ?」

「バッタによる災害、と言えば分かりやすいでしょうか」

「蝗害のような災厄を振り撒く性質の魔女ってことか」

 

 バッタ、バッタね……私的には、バッタ型害虫が頭をよぎるけど。

 

《カトレア、コウガイって何かしら? ニュアンス的に、バッタによる大規模な災害?》

《そんな感じで合ってるわ。えっと……ミズウォルムはミミズ型じゃない? アレが全部バッタ型になったって想像してみて。バッタが大集団で移動して、草木を食い尽くしてからまた移動して……て感じの災害があるのよ》

《なるほどね》

 

 カトレアが蝗害について分かりやすく解説してくれる。この世界の虫はだいたい人間より小さいようだけれど……大きかろうと小さかろうと、やっぱり数の暴力は侮れないってことね。

 

「大体理解した。でだ。具体的には、アタシ達に何を期待している?」

「ずばりお聞きします。私達のチームに加入してはいただけないでしょうか?」

 

 そう来たか。まあ確かに私達2人が入れば、だいたいの魔女を狩れる自信はあるけれど。

 

「アタシらにとってのメリットは?」

「メリット、ですか」

「アタシらは現状でグリーフシードには困っちゃいない。その状況で、通ってる学校も住む地域もバラバラなお前達のチームに入るメリットがない」

「確かにそうね。同じ学校なのは、かこだけだし」

「それは、そうですが……」

 

 突き放すようにも取れる台詞に、かこが残念そうに呟く。かこはどちらかというと、私達が友達だから入って欲しいって感じかしら。

 

 でも、そもそもななかのチームは盟約によって結成したと言っていた。

 

「それとだ。わざわざ盟約を結んでまでして飛蝗の魔女を探してるってことは、お前達全員と深い因縁があるってことだろ? 手伝うだけならまだしも、そんなチームに部外者を入れるのはどうなんだ?」

 

 そうなるわよね。私達にはその魔女に、彼女達のような因縁はない。

 

「私は、目的の魔女が倒せるなら、それで……燈湖さん達なら、信頼出来ますし……」

「ボクも、燈湖さん達なら大歓迎だよ!」

「お前達はそうくるだろうがな」

「まあボクだけは、まったくの無関係ではないけど、深い因縁ってほどのものはないんだけどね……」

「そういや、お前はななかが追ってる魔女の使い魔にやられかけただけだったな。となると……魔法少女になっても、相変わらずトラブルシューターやってるみてぇだな」

「あはは、正解」

 

 困ったような、でもどこか誇らしげな顔で言うあきら。

 

 どうやら彼女は、頼み込まれたら断れないタイプみたいね。で、ななかにそこをつけ込まれた、と。

 

 まあなんにしても、2人は私達がチームに加わるのに異議はないようだけど。問題はもう1人の訛ってる娘、メイユイの意見だ。

 

「……ワタシが知ってるは、今聞いた情報だけヨ。だからワタシがこの目で見るまで、信用まではいかないネ」

「だそうだぜ。アタシらを加えたいなら、最低でも仲間全員の了承を得た上で、アタシらのメリットを提示してもらわないとな」

 

 友人のあきらとかこへの情に乗せられない、徹底してリスクを避けたがるトウコらしい判断ね。

 

「うーん、やっぱり燈湖さんは手強いな、色んな意味で」

「確かに。美雨さんの意見については、実際にあなた達の戦闘を見るか手合わせするしかありませんが……それはともかく。メリットさえあれば、加入を検討していただけるのですね?」

「ああ、考えといてやるよ」

「ええ、今はそれで十分です。では……」

 

 そう言ってから、ななかはしばし瞑目する。どう交渉すれば私達が乗り気になるか黙考しているのかしらね。

 

「……フラワーショップ・ブロッサム」

「「《えっ?》」」

「……」

 

 黙考後の一言に、このみとかこ、それにカトレアの声が被る。トウコは、話の続きを促すように沈黙している。

 

「私の目算では、フラワーショップ・ブロッサムがある土地も、比較的狙われる確率が高い。ここ最近は鳴りを潜めていますが、飛蝗はいまだ健在です。ゆえに、飛蝗の影響で操られた人達がまた動き出すとも限りません」

 

 確かに、その魔女の性質からして、ブロッサム周辺が狙われる確率は低くない。とはいえこれは……

 

「そんな……これは他人事じゃないよ、カトレアちゃん!」

《ええそうね。手伝いましょ、燈湖!》

「ふむ……」

 

 ……そうなるわよね。ブロッサムの危機とあっては、カトレアとこのみが乗せられるのも必然。やるわね、ななか。

 

「どうでしょうか、十分メリットのある話ではないかと。ブロッサムに魔の手が及ぶ前に、共に討ちましょう。それに――害虫討伐は、花騎士の十八番でしょう?」

 

 あら。ここで私達花騎士に声がかかるとは思わなかった。

 

「まあ、害虫も魔女も人類に仇なす存在になったって意味では、似たようなものだけどね」

「ええ、その通りです。特に飛蝗は動き出すと被害が甚大になりかねません。出来るだけ早く討たねばならない魔女と言えます」

 

 ……ふむ。トウコに倣って軽くカマかけしてみたけど、そこには反応しないか。結構聡いから真実に気づいてるかと思ったけど、そうそうトウコレベルな娘はいないか。

 

 それはともかく。トウコはどう判断するかしら。

 

「ちょいと気になったんだが。なぜお前は、飛蝗の魔女が「いまだ健在」と断言した? 「動くかも」と言ったからには、今は捜索中の段階のはずだろう?」

「……本当に鋭い。やはり燈湖さんに下手な交渉は悪手ですね。手札を隠したままでの交渉は無作法、ですか……」

 

 そう言って小さくため息をついて、意を決した瞳で語り出すななか。

 

「私の固有魔法は、「自分の敵を感じ取る」というものなんです。この力を得たからこそ、私は敵の気配を――敵が健在であると察知出来る」

「……なるほどな、合点がいった。むしろそれで訊ねたいことが増えたが」

「なんでしょうか?」

「お前達が直接受けた被害以外で、飛蝗の気配を感じた事件はあるか? わずかに感じ取れただけでもかまわない」

「わずかに、ですか……」

 

 そう言い、再び黙考を始めるななか。表情からしてどちらかと言うと、言おうかどうか迷ってるって感じかしら。

 

「……魔法少女昏倒事件」

「昏倒……それも魔法少女の、か」

「少し前にあった事件です。収束はしましたが、犯人はいまだ見つかっていません。その事件の捜査中に、「敵」の気配を感じ取りました」

「ちょと待つネ。そんな話、ワタシは聞いてないヨ」

「ボクも初耳だね」

「んっ……」

 

 ななかの報告に、同盟メンバーの方から声が上がった。

 

「申し訳ありません。わずかに感じただけで確信は持てなかったので、お伝えしていませんでした。みなさんには出来るだけ、確定情報だけをお渡ししたかったんです」

「ああ、それで良かったと思うぜ。なんでもかんでも情報を渡したせいで、真実にたどり着くのに大幅な遠回りをしちまってたってこともあるだろうしな」

「はい。私も燈湖さんと同じ考えでした」

「だが、アタシにとっては良い情報だぜ」

 

 ニヤリと笑ってそう告げるトウコ。何か面白いことに気づいた時にする顔ね。

 

「では――!」

「ああ、カトレアとこのみも乗り気だしな。その魔女を討つのに、アタシらもかかわらせてもらうぜ」

「ありがとうございます……!」

 

 笑顔で感謝を述べて、お辞儀モーションに入るななか。

 

「だがチーム入りは断る」

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