そんなこんなで、次の土曜日。燈湖の情報をもとに、参京区にある水徳商店街の一角に無料で開いている、「エミリーのお悩み相談所」とやらに来ていた。
なんでも、ここの相談役である
いわゆるギャル系の性格の娘らしく、私としてはちょっとだけ苦手意識があるけど……まあ、ひとりじゃないし多分大丈夫。相談する時は女王様に代わる必要があるしね。
今日は燈湖は一緒していない。なんでも為次郎さんと出かける用事があるとかで、神浜市内にすらいないので、応援も期待できない。
代わりに、というと失礼かもだけど、今日はこのみさんが一緒してくれていた。
「いつも燈湖ちゃんに任せきりだったから、私もちょっとでもお役に立ちたかったの! 私、学年的にも魔法少女としても先輩だもん!」
普段バイトに勤しんでいるから仕方ない部分もあるけど、このみさんは魔法少女の先輩らしいことがあまり出来ていなかった事を気にしていたらしい。張り切るこのみさん可愛い。
「えっと、入る前に確認しよっか。今日の目的は、エミリー相談所の相談役のエミリー先生と、よく相談所にいる
「はい、それで合ってます」
《さて。じゃあ予定通りに代わるわよ。カトレアも、不安はあるだろうけどキチンと遮断してなさいよ》
「ん、了解」
△ ▼
「代わったわよ、このみ」
「うん、その口調と雰囲気、間違いなく女王様の方のカトレアちゃんだね。じゃあ早速、お邪魔しまーす!」
「お邪魔するわよ」
扉を開けて一声かけ、入室する。
「自害します〜〜!!」
「「何事!?」」
いきなり修羅場?に遭遇するのは予想外過ぎた。
「気にしないでね。この娘の「自害します」は、恥ずかしい失敗をした時の口癖みたいなものだから」
「お、お騒がせ致しました……」
「穴があったら入りたい、みたいな意味かな?」
「かしらね。でもそれで自害はさすがにどうなのよ」
なんにしても、修羅場でもなんでもない日常の一コマらしい。
「私は
「竜城明日香です!」
あら、いきなり目的の一人目に会えたわね。
「私はカトレア。よろしくね」
「春名このみです!」
とりあえず自己紹介されたので返す。
このまま本題に入るのもありだけど……エミリーの相談所に来たのだし、まずは先にエミリーに挨拶するのが筋よね。
「ところで、今はお二人だけですか? ここの相談役の木崎衣美里さんは?」
「あー、タイミングが悪かったね。ほんの数分前に休憩しに出かけちゃったのよ」
このみが話を進めてくれるけど、どうやらすれ違ったらしい。
「あれ、そういえば。看板、不在中になってなかった?」
「なってなかったわよ」
「そうだね、「誰でもカムカム!」とか書いてあったね」
「ふむ、あきらが替え忘れるなんて珍しいね」
「そういえば、昨日今日とあきらさん、妙にテンション高めでした。そのあたりが原因かもしれません!」
トウコの話によると、あきらはエミリーの助手的な事をしているらしい。エミリーとアスカの固有魔法情報も、あきらから聞いたんだとか。
「……あきらちゃんがテンション高めなのって、やっぱり燈湖ちゃんが魔法少女になってたからかな?」
「それもあるだろうけど。傭兵としてとはいえ、バッタ討伐を手伝う約束をしてくれたからじゃないかしら……」
ここであえて、魔法少女の話題を念話ではなく二人にギリギリ聞こえる程度の小声で話す。魔法少女が初対面の魔法少女を一方的に知っていると、変に警戒される恐れがあるからだ……トウコの入知恵だけど。
「ん? ……今魔法少女って言わなかった?」
「はい、確かに聞こえました! あきらさんの事を知っているようですし、もしやあなた方も……!」
「あなた方、も?」
「もしかして、ささらさんと明日香さんも……?」
「その反応、それにその指輪……」
「おおー! まさか、こんな偶然があろうとはー!」
まあ、知ってて来たから偶然じゃないのだけどね。偶然を装った方が警戒されにくいらしい(これもトウコの入知恵)から、このまま通す。
「今日来たのは、あきらにここを紹介されたから?」
「まあ、そんなところね」
「エミリー先生に相談すれば、どんな悩みも即解決!って聞いたから、ちょっと興味があって来たの!」
「あきらさんも、なんだかんだで宣伝して下さっていたようですね! これはエミリーお悩み相談所がますます盛り上がりますねー!」
「だね」
「ところで、件のエミリー先生は、どのくらいで戻りますか?」
「そうだね……季節限定みつ豆があるとかで食べに行ったのよね。20分も待ってれば戻ってくるかな?」
「でしょうかね?」
「と思わせてぇ、すでに戻ってるくね?」
「いやいやそんな、あきらさんとダベり?ながらでしょうから、最低でもそれくらいはかかるかと……うん?」
なんか、さらっと会話に加わって来た第三者がいたのだけど……
声がした方をみると、そこには長い金髪をツインテールにした少女が、満面の笑顔で後ろ頭をかいていた。
「いやー、サイフを忘れて愉快なサーさん状態でまじうけるー!」
「ボクが奢るって言ったんだけど、財布に割引券あるからやっぱり取りに行くって飛び出しちゃってね」
そして後から、困り笑顔であきらが入ってきた。
「ああ、カトレアさんにこのみさん! 早速来てくれたんだね!」
「一昨日ぶりね、あきら」
「お邪魔してるよー」
「おお? ほーほー、あきらっちの知り合いであーしの話してたってことは、さっき言ってた、魔法、しょう……」
「?」
なんでか私を見た瞬間から、言葉が尻すぼみになるエミリー……ていうか、目がハートになってない……?
「め、めこっ……」
「「メコノプシス?」」
エミリーの呟きを聞いて思わず出た疑問のセリフがこのみと被った。まあ、私は花騎士、このみは普通に花の名前を言ったのだろうけど。
「あははっ二人とも息ぴったりだ。仲良しなんだね」
「まあね」
「めっっっっちゃんこ可愛いーー!!」
「うわびっくりした!」
唐突なハイテンションな叫びに、私もつい大声を上げてしまった。
「しかもなんかエッッロ! うわやっば、超可愛いうえに超エロカワとかそれもう超最強じゃん!!」
「ってちょっと! 凝視しないでよ!」
私の胸を見ながらの無遠慮な声に思わずツッコむけど、エミリーは止まらない。
「あーしが小悪魔ならあなたは大悪魔? んーそれだとあんまカワイイ感ないしそれに莉愛様バリにカリスマ感もあるから、でも姫ってより……女王? 女王様?」
なんかブツブツ(大声)言ってたけど、結論が出たらしい。
「女王様ー! あーしとユニット組もっ!」
「え、ユニット……?」
どうやら、私のことは女王様と呼ぶ事に決めたらしい。一人で考えた末でその呼び方を選ぶとはね……直感で、私が世界に愛されているって気づいたのかしら?
それはそれとして。
「ユニットって、要するにチームよね。ごめんなさい、私はもうこの娘と組んでるから、お断りするわ」
「わわっ! え、えへへ……カトレアちゃんと組ませて貰ってる、春名このみです!」
そう言ってこのみの肩に手を乗せて引き寄せ、このみと仲良くやっているアピールをする。照れて赤くなっちゃって、可愛いわね。
「んーそっかー。莉愛様とトリオの最カワユニット組んだら最強だと思ったんだけどなー。このっちのチームと掛け持ちNGな感じ?」
「実家の花屋の手伝いもあるし、最近は傭兵も始めたのよ。すでに二足草鞋以上だから、これ以上の兼任はさすがにね」
「まじかー、ざんねん!」
とはいえまあ。私と組んだら最強になれると瞬時に気づくとは、エミリーはなかなか見る目があるわね。ふふ、気分が良いわ。
「あれ、傭兵? それでカトレアって……」
「もしやお二人は、先程みたまさんに聞いた新進気鋭の傭兵チーム、フラワーナイトのカトレアさんとデンドロビウムさんなのでは!?」
あら、ささらとアスカは調整屋に行った帰りだったみたいね。みたまがキチンと宣伝しているようで何より……まあ、傭兵稼業は昨日の今日始めたばかりで依頼はまだ一件も来てないから、若干盛ってるのが気になるけど。
「あはは、カトレアちゃんは合ってるけど、残念ながら私はデンドロビウムさんじゃないよ。今日は用事があるとかで一緒してないけど、普段は私とカトレアちゃん、デンドロビウムさんの三人でチームを組んでるの」
「なるほど、そうでしたか」
「それよりも!」
いきなりささらがグイと迫って来た。ずいぶん真剣な様子だけど、何か気に障ること言ったかしら。
「フラワーナイトのナイトって、夜って意味? それとも……騎士?」
ああ、チーム名が気になったのね。確かに、フラワーナイトガールを知らない人にとっては、字面だけじゃあどっちか分からないわね。
「騎士の方よ」
「じゃあ、あなた達も騎士を目指してるの!?」
ああ、この娘そういう……物語の騎士に憧れて魔法少女になった口かしらね。
さて、どう説明しようかしらね。あれは総称であって、花騎士の8割方は騎士らしい立ち居振る舞いをしているとはとても言えないわよね……
んー。意味が通じるか分からないけど、面倒だしそのまま伝えましょ。
「
「……加護? 害虫? ……固有魔法と魔女の事?」
まあ、そうなるわよね。
フラワーナイトガールのゲーム設定について詳しく話せるカトレアと代わりたいところだけど、今は引きこもってもらってるし……何より、これ以上説明するの面倒。
「このみ、説明お願い。私よりは詳しいでしょ」
「えぇ……私の花騎士知識、女王様よりは知ってるって程度なんだけど……」
「お役に立ちたいんでしょ?」
「しょうがないなぁ、任せて!」
このみも結構チョロいわよね。チョロ可愛い。
という訳で、ささらへの説明はこのみに任せて……私の方は本題に入りましょうか。
「今日ここに来たのは遊びに来たんじゃなくて、エミリーに相談があったからよ」
「まあ、エミリーの相談所なんだから、当然だね」
「おけまる〜! さぁさぁなんでもドンとこいやー!」
な、なんか妙に気合の入った相談役ね……まあともかく、相談だ。
「エミリーの固有魔法。確か「相手を魅了する」、だったかしら。それを私に使ってもらえないかしら?」
「え?」