魔法少女花騎士☆マギカ   作:繭浮

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バッタ討伐とフリーの傭兵 2-3

 私がトウコから頼まれたのは、エミリーとアスカの固有魔法の効果を体験することだった。

 

「あきらによると、衣美里の固有魔法は「相手を自分に惹きつける」、つまりは魅了だ。そして明日香は「規律厳守」、明日香の言ったルールを強制的に守らさせられるらしい。つまりは両方「精神干渉系」だ」

「ふむ。それで、なんで私が体験する必要があるの?」

「百聞は一見に如かず、百見は一触に如かず。体験した方が、対応策を生み出しやすいだろ?」

「生み出す……なるほど、精神干渉に対抗するための魔法を構築してくれってことね」

「そんなところだ」

 

 という訳で、精神干渉系の魔法がどんな感じなのかを体験することになったのだ。カトレアが今、ソウルジェムに引きこもって外界からの情報を絶っているのも、今回の任務が関係している。

 

 トウコに頼まれた内容を思い出しながら、エミリーの返答を待つ。その間エミリーは、何やら眉をひそめてこめかみに指を押し当て、うんうん唸っていた。

 

「……あーしの「魅力」の魔法、魔女とそのパシリちゃん以外に使ったことないから、人に使うとどうなるかわかんないんよねー」

「つまり?」

「ちゃけば、あんまし人に使いたくないってゆーか。ガチ恋されちゃうかもじゃん? あーしを好きになってもらうんは嬉しいけど、魔法でってのはどうよ?って思うんだよねー」

 

 ……要するに、魔女との戦闘以外では使いたくないってことよね。つまりは断られた、と。

 

「いやー、こういう相談は初めてだわー。とりまごめんね、女王様」

 

 苦笑いで顔の前で手を合わせて、軽くペコペコするエミリー。さっきからなんか仕草があざと可愛いわね。

 

 それにしても。

 

(グイグイ距離を詰めてくるわりに、あんまり不快感が湧かないのよね……これもしかして、「魅了」?)

 

 エミリーからほんのり魔力の放出を感じるし、エミリーは無意識に弱めの「魅了」を使っているんじゃないかしら。ちょっと苦手なタイプなのに不快じゃないのは、それが理由なんだろう。

 

(……まあ、オンシジュームで慣れてるっていうのもあるだろうけど)

 

 ともかく、この「不快じゃない感」が「魅了」なら、実質私はエミリーから魔法を受けた事になる。なので、とりあえずエミリーへの相談は置いておく事にした。

 

「無理にとは言わないから、構わないわ。じゃあ、他に心当たりないかしら?」

「他って?」

「精神に干渉して相手の動きを制御する系の固有魔法の使い手、ね」

「燈湖さんにも聞かれたけど、なるほど、カトレアさんにそれ系を体験して貰いたかったからか。それなら、燈湖さんにも話したけど、そこの明日香の魔法が該当するよ」

「はい?」

 

 ささらと一緒にこのみから花騎士の説明を聞いていたアスカが、名前を呼ばれて反応する。

 

「……そうだね。「規律厳守」は、確かに精神干渉って感じよ」

 

 そしてささらは、なんか気落ちしていた。傭兵チーム名の由来が期待してたのと違って、がっかりしているのかしらね。

 

「それは僥倖。アスカ、その魔法を私に使って貰えない?」

「はい、構いませんよ!」

 

 エミリーと同じく断られるかもと思ったけど、こっちは快諾してくれた。というか深く考えないで返事してる感じね……考えなし過ぎて、超慎重なトウコがいたらツッコミ入りそうね。

 

「さて、ではどんな規律を設けましょうか」

「分かりやすいのは、やっぱりジャンケンよね」

 

 さっそく規律の内容の話に入ったようだけど。

 

「その前に、「規律厳守」がどういう魔法なのか、説明して貰えないかしら。結構強力な魔法だろうし、使用の際の条件とか制限とかあるでしょ?」

「そうですねー。まずこの魔法は、一度に指定した一体にしか使えません。なので使い魔が大勢いる状況などでは、なかなか使い所が難しいです。それと、キチンと口に出して相手に聞こえていなければ効果は出ないので、激しい戦闘中に咄嗟に使う等の応用力もないです」

「ふむ。強力な分ピーキーってことね」

「相手がこっちに気づいてない内に近寄って、て使い方が主かしらね。この娘猪突猛進だから、そんな機会は滅多にないけど」

「はうぅ……」

 

 ……どうやら現在、宝の持ち腐れ状態らしい。

 

「そ、そんなことより! 早速使わせていただきます!」

 

 アスカが魔法使う宣言をしたので、近くにいたささらとこのみが少し離れる。

 

「カトレアさん! あなたはジャンケンで「グー」を出してはいけません!」

 

 アスカの私を指差す指先から魔力が迸り、私に直撃する。と、精神の一部を緩く縛られたような感覚。

 

「これで私は、アスカの魔力が尽きるか解除するまで、グーは出せないのね? ……絶対に?」

「絶対に、です! ではその状態で、ジャンケンしてみましょう!」

 

 絶対らしい。ふふ……そうまで言われたら、抗いたくなるものよね。

 

「それじゃあこのみ、ジャンケンしてみましょうか。必ずパー出しなさいよ」

「うん。ってそれじゃ私絶対勝てないよ……」

「ふふ、冗談よ。さて――」

 

 確かに精神干渉された感覚はあるのだけど、私が感じたのは、緩く縛られた印象だ。「何がなんでもグーを出す」と思っていれば、出せる気がする。

 

「はい、じゃあ音頭取るね。最初はグー」

 

 いきなりあきらが仕切り出した。慌ててグーを――

 

「……あら」

 

――出したつもりだったのに、出たのはチョキだった。

 

 ちなみにこのみは音頭通りグーを出している。私の負け?だ。

 

(グーを出そうとした瞬間、縛りが強烈になった感覚ね。なるほどこれなら、規律を厳守させるのに魔力効率が良いわね。それに……ふむ、これが精神干渉系魔法か……)

 

 まだ一回だけだから、どういうタイプの対策魔法にすればいいかは掴めてないけど……

 

「とりあえず、最初はグーはなしでお願い。それじゃ、あと何回か対戦しましょ」

「はいはーい、次はあーし!」

 

 

 

 その後、計10回相手を変えてジャンケンをしたけど、どうやってもグーを出せなかった。グーを出そうとすると、必ず手がチョキかパーになってしまうのだ。

 

 なるほど、これはハマれば強力だわ。魔法を使う隙を作るより相手を倒してしまう方が色々と早い、という点を除けば。

 

 なんにしても、精神干渉系がどういう魔力パターンで発動してるかは、十分確認出来た。対策魔法も、まだ完成はしていないけど、現在構築中。

 

 ということで。そろそろもうひとつの検証をしましょうか。カトレアも退屈してるでしょうし。

 

「まだやる?」

 

 ひとりで手をグーパーしていると、あきらがそう尋ねて来た。

 

 ちなみに、対戦相手がいなければ――ジャンケンの体をなしていなければ、普通に握り拳、グー状態には出来る。

 

「んー、そうね……あと3回やるわ。ちょっと待ってなさい」

「ほ〜い!」

 

 意気揚々と前に出て来たエミリーを静止させて、呼びかける。

 

《お待たせカトレア。出番よ》

《……退屈過ぎて一人しりとり初めてたわ》

《あっそう。それで状況だけど》

《女王様つめたい》

 

 無視する。

 

《今はジャンケンしてるんだけどね。代わったら、必ずグーを出しなさい》

《ん、了解》

 

 

 △ ▼

 

 

 交代したら目の前で、金髪ツインテールの美少女が、何故か手をピースにしたままシャドーボクシング的な動きをしていた。まあ多分、私のジャンケンの対戦相手なのだろう。

 

 見た目の特徴からして、この娘が木崎衣美里さんかしらね。相談役っていうから勝手に年上かと思ってたけど、どうやら年下だったらしい。

 

「お待たせ。それじゃあジャンケンしましょ」

「りょ〜!」

 

 いきなりギャル語で返事されてちょっと面食らうけど、

 

「はい、それじゃあ見合って〜……」

 

あきらちゃんが音頭を取り出したので、気を取り直す。

 

「ジャンケン、ポン!」

 

 あきらちゃんの掛け声に合わせて手を出す。女王様に言われた通り、私はグーを出した。

 

 対する衣美里ちゃんは、シャドーボクシングの時のまま、チョキ。

 

「え」「お?」「はい?」「あ、今カトレアちゃんかぁ」

 

 事情を知っているこのみさん以外が、驚きのリアクションを取る。

 

「明日香、なんで魔法解除したのよ?」

「し、しておりませんよ!?」

「だってカトレアさん、グー出せてる」

「そ、そうですが……な、なんで出せるんですかー!」

「どーどーあすきゃん、落ち着いて〜? そんな時もあるさ!」

「私が失敗したみたいに言わないで下さい〜!」

 

 本人が言っているように、竜城明日香さん(だと思われる娘)は、固有魔法を解除したりはしていないのだろう。そして恐らく、彼女は魔法で女王様に「ジャンケンでグーを出してはいけない」とでも規制したのだろう。

 

 じゃあなんで、私はグーを出せているのか。それは当然、「固有魔法を受けたのは女王様であって、私ではない」からだ。

 

「規律厳守は、魂の一部を縛ることで行動制限する魔法だろう。だから、魂を認識されさえしなければ、影響から逃れられるはずだ」

 

 という燈湖の予想のもと、私は女王様に呼ばれるまでソウルジェムに引きこもっていたのだ。

 

 さらに、引きこもっている間は外界の情報をすべてシャットダウンしていたので、女王様と交代してから女王様が見聞きした情報を、今の私はまったく知らない。

 

 これも精神干渉魔法への対策のひとつで、

 

「精神干渉の発動条件が「命令を音声認識させた奴を強制的に従わせる」「目を合わせた相手の精神を操る」の場合、ソウルジェムに引きこもって外の情報を完全に遮断して置けば、効果の対象から外れるはずだぜ」

 

との燈湖の予想からだ。

 

「も、もしや、私の魔法の穴を突いたのでは!?」

「あー、えっと。まあそんな感じかしら」

 

 明日香さんが涙目で詰め寄って来た。まあ、あながち間違いじゃないわよね。私と燈湖にしか出来ない芸当って点を除けば。

 

「会って間もない人に突ける程の大穴があるのに、絶対などとのたまうなど大恥を晒したようなもの……! こ、これは自害するしかっ!」

「自害!?」

 

 いくらなんでも重く受け止め過ぎ! なんなのこの娘……

 

「ノー自害、ノー自害よ」

「気にしないでカトレアさん、よくある展開だから」

「あすきゃんのアレは、ファッション自害だかんね〜」

「そ、そう……」

 

 どうやら、いつもの事らしい。でもさすがに自害発言はどうなのよ。

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