魔法少女花騎士☆マギカ   作:繭浮

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バッタ討伐とフリーの傭兵 2-5

《あーあ、出会っちゃったわねー……だからフラグになるって言ったじゃない》

《会ったことのない娘の魔力波長なんてわからないもの、しょうがないじゃない。それにあのままじゃ魔女にやられてただろうし、さすがに見捨てたら後味悪いでしょ?》 

《あはは……まあ出会っちゃったものはしょうがないよ》

《これも何かの縁って、女王様が言ってたわねー》

《ああもう、カトレアうるさい! トウコに言われた通り、早めに切り上げればいいだけでしょ!》

 

 とはいえ、グリーフシード渡そうとしてる時点ですでに親睦を深めたようなものよね……あーもう、こんな失敗するなんて!

 

「な、なんか急に機嫌悪くなってない? アタシ何か気に障ることしたかな……」

「あっと……な、なんでもないわ、気にしないで」

 

 ついハヅキに怒りのこもった視線を向けてしまっていた。別に彼女に落ち度はないのだし……ふぅ、とにかく落ち着こう。

 

 まったく……それもこれも飛蝗のせいよ。早く捕まえないと。

 

「それよりほら。早くソウルジェム浄化しちゃいなさい」

「ん、そうだね。じゃあ遠慮なく、いただきます!」

 

 こころが受け取り自分に使用してから、まさら、ハヅキの順で回して使用すると、グリーフシードに穢れがギチギチに溜まる。

 

「これはもう使えないね、キュゥべえ見つけて回収させないと」

 

 よし。使ったのを確認したし、このまま去りたい……ところだけど、この流れで離れるのはさすがに不自然よね。

 

(軽く、ほんのちょっとなら、大丈夫よね……?)

 

 ということで、軽く雑談してから去ることにした。

 

「ハヅキは制服違うけど、3人は即席チームなのかしら」

「そうだね。こころさんとまさらさんはチーム組んでるらしいけど、アタシはチームメンバーじゃないよ。今日はたまたま一緒してただけ」

「そもそも葉月さんとは、ついさっき出会ったばかりだしね」

「そういうあなたはカトレアって名乗ってたけど。もしかして2人は、傭兵のフラワーナイト?」

 

 あら、ハヅキも調整屋帰りだったみたいね。

 

「ええ、私はそのカトレアよ」

「あ、私は春名このみって言います。フラワーナイトの2人とはお友達だけど、私はデンドロビウムさんじゃないです」

「ふむ、お互い即席チームってことかな」

「ちょっと違うかな。私は傭兵はやらないけど、普段は……」

 

 流れで親しげに会話を始めるこのみ。このまま話し込んじゃいそうな雰囲気ね……適当なところで流れを切って引き上げましょ。

 

「このみ、気持ちはわかるけど、時間的にそろそろ帰らないと予定ギリギリになるわよ」

「え? あっ……そ、そうだったね。色々お話ししたいんだけど、ごめんなさい遊佐さん!」

「あはは、葉月でいいよ!」

「私もこころで良いよっ!」

「……好きに呼んでくれていいわ」

「ん、了解。それじゃあまたの機会にね」

「ま、またねー!」

 

 そう言って急ぎ足で去ろうとしたところ、

 

「あっそうだカトレアさんっ! 最後にひとつだけいいかな?」

「……何かしら?」

 

 最後と言われたので仕方なく立ち止まり、急いでいることを表すように顔だけ振り返ってハヅキに尋ねる。

 

「カトレアさんの強さは本物だ。だから相方のデンドロビウムさんも、同じくらい強いんだろうね」

「まあ、そうね」

「でもさ、傭兵稼業はここ数日始めたばかりでしょ? なら知名度はまだゼロに近いはず。みたまさんに宣伝頼んでるみたいだから直に広まるだろうけど、直接実力を目の当たりにした魔法少女の口コミがあれば、もっと早く広まると思わない?」

「ふーん、あなたが宣伝してくれるってこと?」

「端的に言えばね」

 

 ……キチンと振り返り、ハヅキの目をまっすぐ見据える。

 

(ふむ……芯の通ったいい目ね。こちらの悪評を広めたりはしそうにないわね)

 

 宣伝自体はありがたい、のだけど。問題は、宣伝したがっているのが飛蝗に現在進行形で狙われているだろう魔法少女のうちの1人、ということだ。彼女自体に非はないけれど……うーん、ややこしいわ。

 

《燈湖がいたら、緊急念話会議ものね……》

《宣伝は嬉しいけど、してもらったら葉月さんと親しい間柄だって大々的に言ってるようなものだよね……うーん、悩めるー》

《よね……けど、明確な理由もなく善意を蹴るのもね》

 

 さて、どうしたものかしら。よく考えて答えを出したいけれど、急ぎの用があると言って去ろうとしたので長考は出来ない。

 

 あーもう、さっきから裏目ってばかりだわ……こういう時は、直感よ!

 

「ま、世界に愛された私の魔力を肌で体感したのだもの、当然の反応ね。いいわ、あなたの好きなように私の超最強っぷりを宣伝しなさい」

 

 自信満々に、そう頼んだ。対抗魔法も構築してあるし、まあ大丈夫でしょ。

 

「あははっすごい自信だ。まぁあの強力な魔女を不意打ちとはいえ一撃で倒しちゃえるんだし、当然か」

「あっ私も! いろんな娘に宣伝しちゃうよっ!」

「ん……まあ、機会があれば、私も」

 

 ハヅキに便乗して、こころとまさらも宣伝を約束してくれた。ふふ、予定外の展開だけど、失敗どころかこれはむしろプラスなんじゃないかしら。

 

 

 

 

 △ ▼

 

 

 

 

『駄目だな』

 

 このみさんと別れて自宅に帰宅後、自室で燈湖に今日の報告をしたら、ダメ出しを食らった。予想はしてたけど、第一声がそれでさすがにちょっとヘコむ。

 

『遊佐葉月に会っちまったのは仕方ねえ。魔女討伐を手伝ったのも、グリーフシードをあげたのもまあいい。だが雑談はすべきじゃなかったな。多少不自然でも切り上げて帰るべきだったと思うぜ』

《むー、別にいいじゃない。私はなにも悪くないわ》

 

 スマホ越しの燈湖の声に、むくれたような声を私の脳内に響かせる女王様。念話じゃあ電話の向こうへ声を届けられないから、不満の感情はすべて私にぶつけられる。なんとなく理不尽。

 

『それと、魔法反射結界だがな。それも駄目だ』

《ぇえ!? なんでよ!》

 

 せっかく構築した魔法をダメ出しされて文句を言いたくなるのはわかるけど、私の脳内にじゃなくて交代して自分の口で言って欲しい。

 

『精神操作魔法が暗示をかけて操るタイプだと、暗示内容によってはピンチになりかねない。「後先考えずに暴れまくれ」って暗示をかけて来てそれを反射しちまった場合、目も当てられねえことになりそうだな……』

「あー、なるほど……捕まえたいのだし、無敵の人になられても困るわね……」

『どんな対抗魔法にするかは女王様の裁量に任せたんだが、もう少し細かく伝えるべきだったか……無効化系か打ち消す系で頼む』

《なるほどね。ん、了解したわ》

『……おう』

 

 ……女王様は念話で言ってるから燈湖には聞こえてないはずなのに、なんで会話が成立してるテイになってるのかしら……私の気配から読み取ってるとか?

 

 まあ燈湖だし。深く考えても仕方ないか……それよりも。

 

「ところで燈湖、なんか声に疲れが滲んでない? なにかあった?」

『まあな。今日は色々あってな……正直しんどい。早く休みてえ……』

「あらら」

 

 燈湖がこんな疲労困憊な声を出すなんて珍しい。確か今日は、風見野市のとある施設に野暮用があるとかなんとかで、今は風見野にあるホテルを取って、そこで一夜を明かしてから帰るらしい。

 

 ちなみに、為次郎さんとは部屋は別らしい。いくら父親と仲が良くて男勝りな燈湖でもやっぱり女の子、一緒の部屋は嫌みたいね。

 

《トウコが疲れてる様子なんて、想像出来ないのだけど。いったい今日一日何してたのかしら》

《そうね。予想としては……為次郎さん紹介の危険なバイトをしたり、為次郎さんと殺し合いレベルの手合わせをしたり、その後強力な魔女と戦った、とかじゃないかしら》

《えぇ……》

 

 女王様には現実味のない予想のように聞こえただろうけど、雷電家ならあり得る展開だから笑えない。事実は小説よりも奇なり、だ。

 

『てなわけでだ……続きは明日ブロッサムでな』

「ええ。ゆっくり休んでね」

『ああ。んじゃ――』

『――おーい燈湖ー、ほんとにルームサービスなんでも頼んでいいのかーい?』

「《!?》」

『ああ、好きに食ってくれ……どうせ親父持ちだしな……』

 

 なんかスマホ越しに聞き覚えのない少女の声が聞こえて来た!

 

《あらあら。浮気かしらねー?》

《いやいや……別に燈湖とは親友であって、恋人として付き合ってるわけじゃないからね?》

 

 変な茶化しをして来たわね……とはいえまあ、気にはなる。

 

「なによ、誰と一緒にいるの?」

『ん? あー……ちょい限界だから、任せた…………こほんっ。代わりました』

 

 途中から声色が変わった。デンドロビウムと交代したらしい。

 

『トウコさんの精神疲労が限界になって寝落ちしてしまったようなので、私が説明しますね。まあ、肉体的にも疲れているので、私もちょっと辛いですが……』

 

 ほんと、一日何してたのかしらね……

 

「無理しなくていいわよ。明日まとめて説明してちょうだい」

『……ありがとうございます。ですがせっかくなので、今の声についてだけ軽く説明しますね』

《デンドロビウムは相変わらず律儀ねー》

「ん、じゃあお願いします」

『はい。えっと……風見野で魔女の結界を発見したんですが、先に戦っていた魔法少女がかなりの苦戦をしていまして、お手伝いしました。だいぶ消耗されていたので、私達が取っていたホテルが近かったこともあり、その少女をご招待した……とまあそんな感じです』

「そんなことが……って、招待して先に寝ちゃって大丈夫? それに、その娘の親御さんとか……」

『詳しくは聞いていませんが……彼女はこことは別のホテル住まいのようです』

「ふむ……」

 

 声の感じからして、成人はしてない……と思うけど。天涯孤独なのかしらね……まあ、ここで推測しても仕方がない。明日詳しく聞こう。

 

『他にも色々お伝えしなければならないことがあるのですが……』

「ん、お疲れ様なのよね。重要な話なら燈湖と一緒にしたいし、明日ね」

『はい、ありがとうございます……ふぁ』

《あら、眠そうな声。ふふっなかなか貴重なもの聞いちゃったわ》

「では、おやすみなさい」

『はい、お先に失礼致します……』

 

 そう言ってからやや間を置いてから、通話が切れる。

 

「色々伝えたい、ね。風見野だし、飛蝗とはあまり関係なさそうだけど」

《でもまあ、魔法少女関連ではあるんでしょうけど》

「――カトレアー、お夕飯出来たわよー」

「はーい、今行くわー」

 

 お母さんの呼ぶ声が聞こえて来たし、いい匂いにお腹がくぅと鳴ったので、会話を打ち切り食事へ向かった。

 

《今日は何かしらねー。どんな匂いしてる?》

《今日は和風ね。お味噌汁の香りに……鶏肉があったし、焦げた醤油の香りからして鶏肉の照り焼きかしら》

 

 こうして、昼間にちょっとした波乱も起こりかけたけど、特別大きな事件もなく1日を過ごせた。

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 翌朝。ブロッサムの開店作業を手伝っていると、お店にこのみさんの親御さんから連絡があった。

 

「……なんでもこのみちゃん、いくら体を揺さ振っても全然起きる気配がないらしいのよ。一昨日は元気いっぱいだったのに、いきなりどうしちゃったのかしら……」

 

 ……このみさんが昏倒した。

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