はぁい、あたし小舟華恋。ちょっと前まで更紗帆奈だった魔法少女だよーっと。
改心して喋り方も変わったんじゃないかって? 表向きはデンドロビウムさんの指導のおかげで品行方正って感じに振る舞えてるけどさ、この性格で十数年生きてきたんだ、いきなり内面まで全部を変えることは出来ないよね。
でもまあ……最後の最後でやっと出会えた、信頼出来る大人――デンドロビウムさんに見放されたくないし、頑張って小舟華恋を演じるよ。
といっても、あの人結構わがままなとこあるし、ちょっとやそっとじゃ見放してはくれなさそうだけど。そこが好き。
何にしても、期待には応えないとね……応えたいと思える人だから。
いやぁ、それにしても。混沌の中で果てることを願った私が、こんな穏やかな気持ちになれるなんてね〜……しかもそれを実現してくれた人が魔法少女どころか異世界人だなんて、奇妙なものよね。しぶとく生き抜いてみるものだね。
あぁ、内心っていうか心の声は相変わらずこんなだけど、デンドロビウムさんと燈湖さんの「教育」のお陰で、他人を不幸にするような遊びをする気はなくなったよ。うん、やっぱ教育って大事だねー。
……一部詳細を思い出そうとすると体が勝手に震え出すけど。優しくも厳しい「教育」だったからね、仕方ないね。
振り返ってみると、ほんと濃い一週間だったわ……1日って30時間だっけ?て思える程度に濃密で過密だった。
そんな「教育」を受けてたもんだから、一週間以上経った気がして、カトレアさんに出会い頭お久しぶりですって言っちゃったくらいだよ。笑える。
……んー? 怖いけどもうちょっとだけ具体的に「教育」について聞きたいって?
そうだねー……親からの虐待とか、魔法少女になりたての時とかに「あーこれは死ぬかも」て思ったことはあるけど。ハッキリと「あ、死ぬ」て思ったのは初めてだったね。
結局あたしは、解った気になってただけで、本当の「極限」を知らなかったわけよ。正直舐めてたわ、スプリングガーデンマジ魔境。それを生き抜いたデンドロビウムさんマジ師匠。
あ、体が勝手に震えるようなトラウマも植え付けられた「教育」だったけど、もちろんそれだけじゃあないよ。飴と鞭ってヤツ? 厳しかったのと同じくらい、存分に甘やかされたりもしたよ。
デンドロビウムさんのナデナデ、さいこー……静海このはさんが遊佐葉月さんと三栗あやめちゃんにしてたわしゃわしゃ、あの時は冷めた目で見てたけど。実際に愛情を込められてナデナデされて良さがよくわかった。
百見は一触にしかず、だっけ? 何事も体験してみないと本質は理解出来ないってことを、デンドロビウムさんには沢山「教育」されたよ。ほんと、この人には頭が上がらない。でも好き。
……さっきからデンドロビウムさんのことばっか話してるけど、勿論燈湖さんにも感謝してるよ。燈湖さんが魔法少女にならなければ、あたしはデンドロビウムさんと出会えなかったんだしね。
ちなみに「教育」は、燈湖さんも参加していたよ。色々と
それと、カトレアさんね。今でも世界から愛されてて羨ましいなー妬ましいなーって気持ちは多少あるけど、燈湖さんとデンドロビウムさんの話を聞いてからは、尊敬する気持ちもあるんだ。
なんでって? そりゃ勿論……あたしも受けたデンドロビウムさんの「教育」を、一部とはいえ受けて耐え抜いたってんだもん、そりゃ尊敬もするよ…………あ、ああああ拳が! 拳が!
……ふぅ、取り乱しかけた。あー大丈夫大丈夫、あれもデンドロビウムさんの愛だって理解してるから。細胞に恐怖心が叩き込まれてて思い出そうとすると勝手に体が震えたりはするけど、恨みはないよ。お陰で恐怖に対して鍛えられたから、感謝すらしているよ。
あ、そうそう。今上書きしてる水波レナさんの変身魔法についてだけど、これは早めに伝えといた方が良いよね。
この変身魔法だけどね。レナさんの話では、なんと知り合いの魔法少女に変身すれば、その魔法少女と同じこと出来んだって! ホンモノと比べるとどうしても威力とかは若干落ちるらしいけど、よく知ってる魔法少女なら固有魔法まで使えちゃうらしいのよ!
あー、安心して。あたしは今後、小舟華恋――「花騎士シンビジューム」以外に変身する気はないから。どうしてもこの魔法を捨てて別の魔法を上書きしないとな状況でも訪れない限り、更紗帆奈の姿に戻るつもりはないからね。
だってこの世界には、「更紗帆奈」はもう存在しないんだから。
つまり、あたしが瀬奈に変身して暗示を使うことはないと思っていいよ。そんなことしたら、見捨てられないとしてもデンドロビウムさんをがっかりさせちゃうじゃん。それは嫌だから、絶対しない。
……ちょっと話逸れたね、本題はまだだから戻すよ。
この魔法、変身してからそれを維持し続けるのに魔力を消費し続けるんだけど。その消費量がかなり燃費良いし、穢れの溜まりもかなり遅いの。
それでもまあ、常に変身してないとだから魔力消費し続けるわけだし、普通に生活してるだけでも穢れが溜まりやすい……はずだったんだけど。
変身魔法は、魔力切れ寸前になると自動で変身解除されるらしいんだけどね。戦闘してないせいもあるとはいえなんか全然魔力切れする気配ないし、穢れもあんまり溜まらないのよ。その代わり、スマホの電池が一日で100%から30%以下になってんの。
ちなみにスマホはこれね。燈湖さんに余ってるからってプレゼントされたヤツ。
あ、それで勘付いた? そ。このスマホ、花騎士のアプリがインストール済みなのよ。
つまりつまり! あたし、小舟華恋こと花騎士シンビジューム(偽)は、世界花に花騎士認定されました! だからどっちかっていうと、(偽)ってより(レプリカ)って言った方が良いかもしんないね。
なんでそんなことになったか、理由はハッキリしてないんだけどね。燈湖さんとデンドロビウムさんの予想では、「花騎士シンビジュームの魂」もこっちに引っ越して来て、花騎士魔法少女になる可能性があるからじゃないか、だってさ。
えーと。素の状態で話しときたかったことは、だいたいこんなもんかなー。
あ、最後に……こほんっ。花騎士シンビジュームはカトレアさんの使用人だから、今後は出来るだけカトレアさんの手伝いをするように、と言われています。
つまるところですね……新しい環境にある程度慣れたら、ブロッサムでバイトさせて貰えれば、と思っています。なので今後は、バイト仲間としてもよろしくお願いしますね。
☆
……更紗帆奈を小舟華恋として紹介された、その週末金曜日。このみさんと私を尋ねてブロッサムに来た華恋から、念話でこんな感じの内緒話をされた。
《そっか。シンビジュームもこっちに来るかもしれない、もしくは神浜にいないだけで、すでにどこかで花騎士魔法少女をしてるかも知れないのね……》
《……女王様、シンビちゃん探したい?》
《近隣の都市にいる、とかの情報でも聞かない限り、こっちの世界にいるかどうかもわからない娘を探すのは現実的じゃないわよ》
《まあ、そうよねー。花騎士は海外プレイヤーもいるかもだから、日本ですらないかもだしね》
《んー、でもそうなると……》
《うん? 何か他に気になる?》
《シンビジュームかどうかはともかく。トウコ達の予想通りなら、私達以外にも花騎士魔法少女が誕生する可能性があるってことよね》
《あー……そうかもね》
《どっちにしても、確証がない限り面倒だから探しに行ったりなんかしないけど》
《あはは、まあね。今はまだ神浜で傭兵魔法少女やるので手一杯だしね》