魔法少女花騎士☆マギカ   作:繭浮

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 新章です。


増える花騎士系魔法少女1-1

 昏倒事件が完全に決着した週の日曜日。私達は華恋と連れ立って雷電家を訪ねていた。

 

「2人ともいらっしゃい。お変わりありませんか?」

 

 玄関を開けて出迎えてくれた燈湖……じゃないか、口調からしてデンドロビウムね。

 

「おはよう、私はいつも通りよ」

《おはよ、同じく変わりないわ》

「おはようございます、デンドロビウムさん。ここ数日少しバタバタしてましたが、昨日ようやく落ち着きました」

 

 華恋は新しい施設「つつじの家」へ引っ越したのと、週明けに私達の学校に転校するための手続きやら準備やらで、休む暇もなかったらしい。金曜夕方にブロッサムへ顔を見せたのは、息抜きも兼ねてだとか。

 

 疲れた様子で来たから少し心配したけど、普通に忙しかっただけらしく、今度の施設の人はみんな親身になって接してくれる優しい人達ばかりで精神的負担はほぼ無いらしい。

 

 というわけで。華恋の現状報告、それに燈湖への労いもかねて、雷電家に集まったというわけだ。

 

 このみさんも一応誘ったのだけど。昏倒していたから仕方ないとはいえ、数回ブロッサムを欠勤してしまった埋め合わせをしたいからと、今日も花に囲まれて笑顔を振りまいている。

 

 ……多分埋め合わせとか関係なしに、ブロッサムで働きたかっただけよね。つまりはいつものこのみさんだ。

 

 ちなみに昏倒期間中のことは、「女の子の日が重かったのと同時に、風邪まで引いて数日寝込んでいた」ということにしたらしい。

 

「それで、燈湖は起きてるの?」

《……おう、一応起きてるますよー……》

「……まだ本調子じゃなさそうね」

 

 普段の口調で話そうとしたけど丁寧口調が混ざりかけたような、奇妙な返事が返って来た。燈湖のことだし、自然にデンドロビウムっぽい口調で話せるように沢山練習したんだろうし、それの影響でしょうね。

 

 燈湖は「小舟華恋の謝罪&お披露目会」の翌日から、更紗……んー……飛蝗討伐に全速前進突っ走った影響で、燃え尽きモードに入っていた。ので、精神回復するまではデンドロビウムが体担当をするらしい。

 

「玄関先で立ち話もなんですし、中でお話ししましょう」

「ん、お邪魔しまーす」

《お邪魔するわよ》

「失礼致します」

 

 一言挨拶してから上がる。勝って知ったる親友の家、デンドロビウムがキッチンの方向に行くのを視界の端に収めつつ、私はリビングの方へ向かう。

 

 華恋は私の二歩後ろくらいをついて来ている。なんか従者っぽいわね、という感想を抱きつつリビングへ入ると、

 

「ん? よう。今の来客はカトレアだったか」

 

杏子が寛いでいた。言い終わると同時、市松模様の白黒クッキーを摘んで口に放り込む。

 

「あら、杏子も遊びに来てたのね。私のスマホにも連絡くれたらよかったのに」

「サクサク……こくんっ。いやあ、今までスマホなんて持ってなかったからさ、まだ操作に慣れてなくてな」

 

 そう言ってスマホを取り出し、フリフリ動かす。飛蝗討伐の時に燈湖が預けたヤツだ、そのまま杏子にプレゼントしたらしい。スマホ世界花の実験のために複数台購入してたのは知ってるけど、華恋にも一台あげてるし……太っ腹ねぇ。

 

「んで、後ろのメガネは……例の綺麗な更紗帆奈かい?」

「あ、初めまして……では、正確に言えばないですが」

「そもそもあの時も顔を見ただけだし、今が初対面みたいなもんだろ」

「まあ、そうですね……では改めて自己紹介を。小舟華恋です、よろしくお願いします」

「あたしは佐倉杏子、よろしくね」

 

 お互い自己紹介を終えると、杏子は立ち上がって私と華恋に赤いパッケージの棒菓子(たこ焼き味)を渡してきた。基本雷電家はお菓子も手作り派だから、杏子が手土産に持って来たものだろう。

 

「ん、ありがと」

「あ、ありがとうございます」

「おう」

 

 感謝を告げて受け取ると、満足したのか笑顔で頷き、元の位置に座り直す。

 

「そういや、華恋はカトレア達の学校に転校する……したんだっけ?」

「転入は月曜なので、正確に言うならする、ですね」

 

 杏子の問いに、私達の分のお茶を注いで持ってきてくれたデンドロビウムが答える。

 

「ふーん……同じ学校、か」

 

 ……いつか見た、遠い目をして呟く杏子。本来杏子も年齢的には中学校に通っていただろうし、一匹狼を気取っていてもやっぱり学校は気になるのだろう。

 

「キョウコさんも、私達の学校に通いますか?」

「ええ!? そんなん出来るわけ……出来ちゃうんだったな、あの親父さんなら。常人離れした戦闘力といい、ほんと規格外な人だよな」

「ですね。ただキョウコさんの年齢的に、さすがに同じクラスというか、同学年は難しいでしょうけれど」

「いやいや、学校行きたいなんて言ってねえし、何よりそこまで世話になる気はねえよ。基本1人気ままな方が性に合ってるしね」

「まあ、無理にとは言いません。ですが、その気になったらいつでも相談して下さい」

「んまぁ、気が向いたらね……燈湖と親父さんとは気が合うけど、デンドロビウムはどうにも苦手なんだよな……」

《そう言いつつ、顔を赤らめてるあたり満更でもなさそうじゃない?》

 

 あ。思ったけど言わないでいたのに、女王様ったら。

 

「う、うっせえよ!」

《ふふふ》

「ふふっ」

「ふ、2人して茶化しやがってー……」

 

 女王様に釣られて、つい私も笑みを溢す。うーん、平和。

 

「あ、そういえば年齢で思い出したんだけど。華恋って、年齢的には本来中三なのよね」

「あ、はい、そうです」

 

 華恋の「デンドロビウムさん達と一緒がいい」という希望を考慮して、同じ学校の同じクラスになれるよう手配したうえ、戸籍上の年齢も実年齢より一歳上で登録したらしい。

 

「しばらく学校に行っていなかったですし、一年生とはいえ高校なので、多少不安はありますけど……が、頑張ります」

「まあ、燈湖は成績優秀だし教えるのも上手いから、学力の差はその内埋まるでしょ」

 

 一歳なら肉体年齢で言えば誤差程度だし、今の華恋は真面目で努力家だから、問題はないはず。

 

「そういや、今日の夕飯は? 昨日は小洒落た感じのスパゲティだったけど、たまにはああいうのもいいもんだな」

「まだ午前中なのに、お昼じゃなくてお夕飯のこと聞くんですね……」

 

 杏子の台詞に華恋がさらりとツッコミを入れ……ってちょっと待って。

 

「杏子、もしかして昨日からいるの?」

「ん? ああ、四日前からいるよ。デンドロビウムが組手相手をしてくれてたから、腕も鈍ってないよ」

「思ったより長期滞在してたわね……」

 

 ていうか、四日前なら華恋の謝罪お披露目会の日じゃない。あの場にはいなかったけど、どうやら雷電家にはいたらしい。

 

 まあ、雷電家に泊まるの自体は前もしてたからいいとして。

 

「その口ぶりからして、雷電家の敷地から出てないみたいだけど。そんなに縄張りを留守にして大丈夫?」

「あの時狩ったのと燈湖からの報酬で、グリーフシード余ってるくらいなんだよ。だから、しばらく狩る理由がないんだよね」

 

 あー、なるほどね。あの時の魔女達のほとんどがグリーフシード落としたし、私(と女王様)が倒したの含めて全部杏子にあげる契約だったからね、それは余る。

 

「見回りはしなくて大丈夫? 魔女狩りしなかったせいで魔女の被害者と思われる人が風見野で大勢出たら、さすがに後味悪くない?」

 

 杏子は正義の魔法少女って柄じゃないのはわかってるけど、一応聞いておく。まあ私も正義感とかはあんまりないけど。

 

「んー」

 

 杏子は口にクッキーを放り込んでしばらく咀嚼しながら、ちょっと考え込むように上を向き、こくりと飲み込んでから理由を話す。

 

「最近風見野で、白ずくめの魔法少女をちょくちょく見かけるんだよな。だからまあ、しばらくあたしが見回らなくても多分大丈夫。縄張り奪われても、いざとなったら神浜(こっち)に移せばいいしね。顔役とやらに面通しもしてるしな」

「ふーん。問題なさそうでなにより」

 

 一応、いざって時のこともキチンと考えて行動してるのね。考えなしではないと知れて、ちょっと安心した。せっかく友達になれたのだし、出来るだけ嫌な目にはあって欲しくないものね。

 

 

 

 

 その後しばらく一緒にまったりティータイムを楽しみ優雅に時間を潰す中、先日女王様と話していた「私達以外にも花騎士魔法少女がいるかもしれない」件についての話題になったのだけど。

 

《デンドロビウムは、私達以外の花騎士魔法少女の噂とか、何か知ってる?》

「知ってるといいますか、風見野で遭遇しましたよ?」

「《へ?》」

「ああ、あん時の二人組な」

 

 ……まさかの「もう出会ってる」発言に、女王様と一緒に唖然とした。けどふと、燈湖が風見野から帰ってきた時辺りの発言を思い出す。

 

「あー! 燈湖が「絶対に話さないとならない」とか言ってたのって!」

「……そういえば、まだお話し出来ていませんでしたね。失念してました、ごめんなさい」

 

 デンドロビウムが申し訳なさそうな顔で謝罪してくる。

 

《気にしないでいいわよ。昏倒事件にカレンの教育にと、大忙しだったじゃない》

「あー……なんか、すみません……」

 

 それを聞いて、華恋が申し訳なさそうにペコペコする。

 

「華恋が気にすることないじゃない、あれは今は亡き更紗帆奈が起こした事件なんだから」

《そうよ。腰が低いところまでシンビジュームを模倣することないわ》

「……そうですか? お心遣いありがとうございます」

 

 さて、それはそれとして。昏倒事件は綺麗に片付いたのだし、もう後回しにする理由もない。

 

「それじゃ燈湖、詳しく聞かせてくれる?」

《おー…………デンドロビウム、任せた……》

 

 燈湖はまだまだ省エネモードか。これは今日いっぱいはダメそうね。

 

「もう、仕方ないですね……まあ、沢山頑張ったから大目に見ますが。ということで僭越ながら、私から話させていただきます」

 

 代わりにデンドロビウムが話してくれるらしい。こういうのも、一つの身体を共有している利点よね。

 

「そうですね……その日はキョウコさんと出会った日でもあるので、まずはその辺りから話しましょうか」

《その前に。キョウコは2人って言ってたけど、その2人とも花騎士魔法少女ってことで良いのよね?》

「その通りです」

《その日何してたか気になってたから、語ってくれるのは嬉しいからいいけど。花騎士の誰と遭遇したのかは、先に教えてくれない?》

「あ、それもそうですね。私達が出会った花騎士魔法少女は――ステラさんと、デュランタさんです」

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