魔法少女花騎士☆マギカ   作:繭浮

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 ※捏造技が登場します。あらかじめご了承下さい。


増える花騎士系魔法少女1-2

 スマホ世界花の実験諸々で出費の激しいトウコさんですが、本日は短期で高額な収入が見込めるバイトをするため、タメジロウさんに連れられ風見野市という神浜からだいぶ離れた都市に向かいました。

 

 今回のバイト先は、何と言いますか……ぶっちゃけて言ってしまうと、国営でありながら一般庶民には公開されていない半非合法の賭博施設での出稼ぎです。なので少々複雑な心境ではありますが……まあ、一応は国営なので目を瞑りましょう。今の私は日本国民としての発言権のない異世界人ですし。

 

 そんなわけでトウコさんは、秘密の地下闘技場で小遣い稼ぎのためにエントリーし、見事最後まで勝ち抜き賞金をゲットしました。具体的な額は伏せますが……相手の生死を問わない文面通りのデスマッチでしたので、15、6才の少女が手にする金額としては過ぎたる額と言えますね。

 

 ちなみに今回の闘技会でトウコさんは、魔法少女になったことで得た身体強化能力以外、つまりは魔法少女の魔法は一切使っていません。つまりは己の肉体のみで戦い抜きました。

 

 それでも決勝の相手選手とはなかなかの激戦だったので、やはり魔法少女であろうとなかろうと人体が秘めているポテンシャルを最大限に引き出した者は存外存在するものです。

 

 それはそれとして、死合いはやはり心が踊りますね。私はこういう「闘争」を見るのも参戦()るのも大好きなので、それだけでここに来た甲斐はありました。大満足です。

 

 さて、そこまでは予定通りだったのですが。

 

「あ〜〜っっもう我慢できねえっっ!!」

「っておいおい、親父ぃ……」

 

 賞金授与中に、突如タメジロウさんが闘技スペースに乱入しました。

 

「燈湖よぉ。さっきまでの試合……消化不良もいいとこだろぉ? お前とはしばらく死合()ってなかったしよ……ここいらで父ちゃんに、今の燈湖の実力を……「本気」を見せてくれよぉぉ!!」

 

 そう言ってタメジロウさんが身体全体をぐるんぐるん動かすと、バキバキ音が会場に鳴り響きます。溜まってる、というヤツなのでしょうね……

 

「……ま、確かに身体が温まった程度で物足りなさはあるけどな……けどよぉ。公衆の面前で父親が実の娘に昂るなよなー……この変態親父め」

 

 最初こそ呆れ顔でそう反論したトウコさんですが、すぐに彼女の方も嬉しそうに微笑み死合()る気マンマンな様子で身体をほぐす様に動かします。

 

 トウコさんとは同じ身体を使っているため、その内心の昂り、高揚感の程がダイレクトに私に伝わって来ます。実に楽しそうで、それ自体はなによりですが……まったく、しょうのない戦闘狂親子ですね。

 

 ……まあ、特等席でそれを拝める事に悦びを感じている私も大概ですが。

 

 

 

 

 そうして急遽取り決まったエキシビションマッチですが、その内容は凄惨を極めると言っても過言ではないのもでした。

 

 お互い致命傷になりうる急所を狙うのは当たり前。「顔や髪は女の命なんだから大事にしろ」と教育しているタメジロウさんも容赦なく頭部に打ち込もうとしますし、トウコさんも男性の最大の急所、いわゆるタマタマを積極的に砕きに行っていました。それはもうお互い狂気的な笑顔ではしゃいで、嬉々として殺しに行ってましたね。

 

 そんな大人気ない?親子喧嘩ですが、急遽差し込まれたイベントなので会場の都合もあり制限時間が設けられていましたので、敢えなく時間切れによる引き分けと相成りました。とはいえ、トウコさんも魔法無しとはいえ全力全開を出せた様で、両者とも見るも無惨なぼこぼこ状態ですが実に満足気で会場を後にしたのでした。

 

 ちなみに、お二人共失った血や体力はともかく、怪我は魔法で見た目はあらたか綺麗に治っています。魔法様々ですね。

 

 

 

 

 その後医務室にて小一時間程休憩し、その後ファミレスで小腹を満たしてからホテルへと向かいました。

 

「いやはや、燈湖が予想以上に強くなってて、父ちゃん嬉しかったぜぇ!」

「だからってはしゃぎ過ぎだぜ、親父。普段なら顔と髪は狙わねえのに、初っ端から思いっきり掴みに来やがって」

「殺し有りの死合いにルールなんざ無用だろ。そんくらいしねぇと、今の燈湖を倒せないと判断したからだぜ?」

「まあ、文句があったわけじゃねえんだけどさ……だだ、なんていうかさぁ……アタシも一応女子なわけだからよ。実の娘相手に股座をいきり立たせて襲いかかる父親なんて見たくなかったぜ……人として恥ずかしくねえのか、って話だよ」

「愛する我が子の成長を悦ばねえ親はいねえ、大目にみろや」

「だから娘相手に「悦」の字を使うんじゃあねえって」

 

 そんな感じに雑談しつつ、予約していたホテル付近に近づいた時です。

 

《……トウコさん、魔力反応を感知しましたが、どうしますか?》

《おっと……魔女の結界か?》

《恐らくは》

 

 タメジロウさんとの楽しい語らいと殺し合い同然の事をした精神疲労から、トウコさんは気づかなかったようです。ここまで疲労が溜まっているトウコさんに、今から魔女退治を促すのはどうかと思いましたが……

 

《……ここでスルーして、翌朝ホテル付近で遺体が発見されでもしたら、後味悪過ぎるよな》

《今のトウコさんの精神疲労を鑑みると、それも選択肢の一つです。仕方のない犠牲、私は咎めませんよ?》

《気遣いありがとな。だがその精神疲労は「雷電燈湖」のもんだ。アタシの今の精神状態じゃあ危険と判断したら》

《……ふふっ、魂が二つある利点ですね。お任せ下さい》

 

 今日の私は良い試合観戦が出来たことで絶好調、むしろ持て余しているくらいです。悦んで前線に立ちましょう。

 

「急にだんまり決め込んだかと思えば、ずいぶんと愉しそうな顔してるじゃねえか。なんだ、魔女でも見つけたか?」

「ああ、すぐ近くにな。てなわけで、親父は先に部屋で寛いででくれ」

「おう、わかった……俺も見えれば嬉々として参戦(あばれ)るんだがなあ」

「女子用の玩具だと思って諦めな」

「だな……ま、とりあえず。つまんねぇ勝ち方すんじゃあねえぞ」

「当然、大手を振って凱旋するさ」

 

 死地に送り出すにはずいぶん軽い言葉ですが、トウコさんの強さを信頼しているからこそでしょう。素敵な親子愛です。

 

《……普通の、とは到底言えませんが》

《ん、何がだ?》

《いえ、個人の感想です、気にしないで下さい》

 

 

 ★

 

 

 さて、そんなわけで魔女の結界に突入したわけですが……そこは鉄骨のオブジェと砂山で形成された、見慣れた結界風景でした。

 

「こいつは……まさか神浜外でこの魔女と遭遇するとはな」

《砂場の魔女、ですね……しかしこれは、マズいですね……》

「ああ。神浜からかなり離れたここにいるってことは、神浜から流れてきてここまで討伐されなかった――つまりは強力に成長した個体ってことだからな」

 

 俯き、僅かに逡巡するトウコさん。ですがさすがトウコさん、精神が疲労困憊でも冷静で慎重です。

 

「……デンドロビウム、任せた」

《了解しました》

 

 普段は日常生活も魔女戦もトウコさんがメインですが、今回ばかりは私がメインです。自身の実力では死力を尽くしても勝てないかもしれないと判断したのでしょう。

 

 

 ☆

 

 

「さすが、強力に成長しているだけあってっはあっ! 下手をしたら使い魔ですら、並の魔女レベルはありそうですねっふっ!!」

 

 迫り来る使い魔を殴り飛ばし蹴り飛ばし華砕拳・一心で潰し飛ばしながら最深部へ突き進みます。

 

《やっぱデンドロビウムは強ぇなあ……アタシはまだまだヒヨッコだわ》

「卑下することはありませんよ。トウコさんは出会った当初から、この平和な国の中ではあり得ないくらいの強さを持っていましたし」

《この激しい戦闘中に雑談出来るデンドロビウムに言われてもな。ほんと規格外過ぎるぜ……追い付きたいよなぁ》

「追い付けますよ、トウコさんなら。まあ、追い越させはしませんけど」

《変なとこでわがままだな、おい》

 

 雑談しつつ敵を蹴散らしつつ前進を続けること数分。最深部と思われる場所に着きましたが……

 

《先客がいる様だぜ》

「そのようで。ですが、苦戦しているようですね」

 

 砂場の魔女と対峙していたのは、赤髪をポニーテールにした槍付き多節棍という変わった得物を操る魔法少女。

 

「クッソ! とんだ貧乏クジだぜっ! 撤退すらできねーほど強ぇ魔女なんて初めてだっ!」

 

 悪態をつきながらも冷静に攻撃を捌けているので、恐らくはかなりの手練れ、ベテラン魔法少女なのでしょう。ですが身体は傷だらけで、どう見ても防戦一方な様子。

 

 そこに、さらに悪い報告が入って来ます。

 

《デンドロビウム。魔女以外の魔力反応が、アタシらを抜かして全部でみっつある。内2つの魔力反応が弱い。どこかに死にかけてる魔法少女が2人いるみてえだ》

 

 周囲を索敵していたトウコさんからの報告。

 

 さあ――どうしましょうか。死にかけている魔法少女を優先して保護するとなると、もうあまり持ちそうにない赤髪の少女を見捨てる事になるかもしれない。二兎を追う者は一兎をも得ず。

 

 短く逡巡。答えはすぐに出ます。

 

「魔女を瞬殺して安全を確保し、余裕を持って死にかけの魔法少女を探し出し処置します。トウコさんは死にかけ魔法少女の位置把握を」

《了解!》

 

 二兎を得たいなら、それ相応の覚悟と実力があればいい。そして、自惚れと言われようが私にはなんとかそれを成せるだけの実力がある。ならば二兎を追わない理由がない。

 

 さて。ベテランの赤髪少女が防戦するしかない相手を、どうやって瞬殺するか。その答えは――私が「花騎士魔法少女である」という点にあります。

 

 簡単に言えば。私には「世界花の加護」の力と、これまで十数年以上自身が練り上げて来た「身体能力」「格闘術」「気功」。さらに今は魔法少女としての「魔力」があります。

 

 それら持てるすべてを拳に凝縮し一気に解き放つ拳打は、必滅の一撃としてあの強力に成長し過ぎた砂場の魔女ですら屠れるでしょう。

 

 ですが、放てて一撃。予想しうる威力や範囲から放てばどうあっても当たりますし倒せますが、力を溜めるまでの時間が必要です。

 

 それにはどうあっても、彼女の――赤髪の少女の協力が必要不可欠です。

 

 それに、瀕死の魔法少女の位置次第では――

 

《瀕死の魔法少女は、魔力反応からして魔女とは真逆の位置みたいだぜ。つまりは射程外だ》

 

 今度は吉報。なら残るは、赤髪の少女の反応と協力次第。

 

 さて、どう転びますか――

 

《助太刀に来ました、伏せて!》

《ナニ!? うおっ!》

 

 突然の念話に驚いたようですが、大した隙を見せることなく私の咄嗟の指示に上手く反応してギリギリ攻撃を回避してくれました。やはり目算通りベテランでしたか、なんとか最初の賭けには勝てたようです。

 

《はあっ助かったぜ。2人がかりでならなんとか逃げるくらいは》

《いえ、倒します。倒せる算段もついています》

《マジかよ!?》

《マジです。が、それにはあなたの協力が必要です》

《協力……》

 

 魔女の攻撃をなんとかいなしながらも、考えを巡らせる赤髪の少女。

 

《あたしが協力すれば、確実に倒せるんだな?》

《ええ、確実に》

《はあ……チームプレイはもうすることもないと思ってたんだけどねぇ》

 

 何やら呟いて、一拍置いて。

 

《あたしは佐倉杏子。あたしは何をすればいい?》

《デンドロビウムと申します。私が力を「溜め」ている間、私に向かってくる攻撃を受け流し続けて下さい。1分、いえ、30秒、お願いします》

《おう、りょーかい!》

 

 こうして私達は、一時的な協力関係を結ぶ事になりました。

 

 

 

 

 ……そこからの砂場の魔女の猛攻は、まさに砂嵐のごとくでした。ですがキョウコさんも奥の手があったようで。

 

「あんまり使いたくないんだけど! 死んじまったら意味ないしね! 『ロッソ・ファンタズマ』!!」

 

 力ある言霊と共に魔力が迸り、キョウコさんが4人に分身します。恐らくはあれが彼女の固有魔法なのでしょう。

 

――ギャザザザザザ!?!?

 

 これまでになかったであろうキョウコさんの行動に、さしもの砂場の魔女も困惑したような声を上げます。

 

(世界花の加護を現状の限界まで引き出し、自身の気の力と融合――これに今回は魔法少女の魔力も。精神を研ぎ澄まし、拳に一点集中――)

 

 分身し猛攻を仕掛けるキョウコさんですが、強力に成長した砂場の魔女はすぐさま気を取り直し猛反撃、あっという間に再び防戦を強いられるキョウコさん。それだけでなく、受け流しきれなかった攻撃が私を掠めます。

 

 掠めただけなのに、ヤスリで削られたかの様な激痛。無視して力を練り上げる。後約10秒。

 

「「「「うおおりやああああああああっっ!!!!」」」」

 

 喉から血が出るのではないかと言うほどの雄叫びと共に、キョウコさんが猛攻を凌ぎ続けます……完成!!

 

「退避を!!」

「おうよ!!」

 

 退避を叫びつつ下がり切るのを待つ事なく、キョウコさんの前に飛び出し力強く地を踏み締めます。

 

 ドゴオウ!!

 

 自身でも感じたことのない威力の震脚に膝が折れそうになるのを必死に耐え、視線は砂場の魔女を一心に見つめ――全霊の拳を放ちます!!

 

 花騎士として、魔法少女として研鑽し続けた、現状での最高の一撃! 名付けて!!

 

 

「極・華砕拳『破城』ッッ!!」

 

 

  ゴ ワ !!

 

 

 あえて擬音で表すならこうでしょうか? 放った巨大な気の拳が通り過ぎた後には、砂がハラハラと舞うのみでした。魔女の姿は跡形もありません。

 

(ここまで威力が出るとは――ぐぅっ……とはいえこれは、奥の手中の奥の手、ですね……)

 

 ソウルジェムは黒ずみ、スマホは煙を上げて今にも爆発しそうになっています。全身がガクガクと震え、体力的にも精神的にも魔力的にも限界寸前……とても実用的とは言えない、火事場のなんとやらな一撃必滅な技に、もう使う機会が訪れないことを願うばかりでした。これ以外思い付かなかったとはいえ、少なくともぶっつけでやるべきものではありませんでしたね……

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