魔法少女花騎士☆マギカ   作:繭浮

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増える花騎士系魔法少女1-4

 さてこれでようやく一段落、かと思いましたが……まだまだやるべきことはたくさんありそうですね……とりあえず、先に私達の回復からです。

 

「キョウコさん、結構危険域寸前ですよ」

「え? あ、あぁ、サンキューな……」

 

 そう告げてから、少し強引にキョウコさんのソウルジェムにグリーフシードを押し当てます。先程怒りを爆発させましたし、さらに澱んでいます。

 

 しばらく押し当てて、キョウコさんのは十分綺麗になりましたが、まだ一回は使えそうなのでついでに私(トウコさん)のも綺麗にして……これで限界。

 

「ふむ……」

 

 キュゥべえが去って行った方向にグリーフシードを放り投げると、一瞬現れて回収する白いの。やはりギリギリ見えない位置で観察してましたか。まあそれは置いといて。

 

「て、あれ〜……ここどこだろ〜……」

「大丈夫ですか?」

 

 魔法少女の変身を解いてから、別の茂みでフラつきながら起き上がった、魔女の口づけの被害者――花騎士テンナンショウさん、の瓜二つさんに近づき、背に手を当てて身体を支えます。

 

「あ、ありがとうございます〜。うん、多分大丈……(きゅるるる)あっ」

 

 ……可愛いらしいお腹の音が鳴ります。私は先程小腹は満たしましたので、テンナンショウ(仮)さんからです。恥ずかしそうに頬を赤らめてお腹をさすります……まさか空腹で気を失っていただけで魔女の口づけは関係ない、とかではないでしょうね……

 

 まあともかく。空腹時に申し訳ないですが、デュランタさん(仮)のご友人である可能性は極めて高いので、いまだ気を失ったままの少女達の方へ導きます。

 

「こちらにもお二人倒れていたのですが、お知り合いだったりしませんか?」

「えーと……あっ! りっちゃんにステラちゃん!」

「近くで倒れていたのでもしやと思いましたが、やはりご友人ですか」

 

 というか、日本での名前もステラさんはステラさんなんですね。

 

「うん、そうなんだ〜……あっそういえば助けてもらったのに、お礼も自己紹介もまだだった〜!」

 

 身体を支えて差し上げただけで大袈裟な、とも思いましたが、結果的に魔女を倒したから救えた命なので、まあ間違いではありませんか。

 

 本当に命を救われたとは知らない彼女ですが、居住まいを正し、お辞儀をしつつ自己紹介をされました。礼儀正しい良い方です。

 

「私の名前は天南星(てんなんしょう)。天空の天に南でテンナン、名前が夜空の星で、ショウって読むんだ〜」

「テンナン、ショウさん、ですか……」

《……まさかのスプリングガーデン(むこうの名前)と丸かぶりとはな。まあ言い間違え無くて済むから良いけどな》

《まあ、女王様とカトレアさんも丸かぶりですし、私とトウコさんのフルネームもどことなく想起させる響きですし。こういうのも因果なのでしょうね》

《かもな》

 

 私達が念話で意見交換している間も、紹介は続く。

 

「それで〜。こっちの薄い茶髪の娘が、私の実家のお隣さんの娘さんで、名前は針麿(はりま)りつちゃん。とってもイイコで、とっても料理が上手でね〜? よく私のために料理作ってきてくれるんだ〜。私にとっては、本当の妹みたいな娘かな〜」

「ふむ。ハリマ、リツさん」

「水色の娘は、千野星(ちのステラ)ちゃん。漢字で「星」って書いて、「ステラ」って読ませるんだって〜」

《星でステラ読みか。いわゆるキラキラネームだが、キラキラが好きなあっちのステラ的にはむしろ嬉しい名付けられ方だろうな》

「りっちゃんが中学入ってから仲良くなって、私とは最近知り合ったんだけど〜。ちょっと引っ込み思案な感じだけど、この娘もとってもイイコだよ〜。仲良くなったキッカケは、私と同じで名前が漢字一文字で「星」だったから、とか言ってたな〜」

 

 ……聞いてないことまでスラスラ話してくれますね。それだけお二人の事が好きなのでしょう。

 

 それ自体は、微笑ましいものなので良いのですが……私もキョウコさんも、リツさんもステラさんも体力的にも精神的にもソウルジェム的にも余裕がありません。

 

「お三方が大変仲良しなのは結構なのですが。見ての通り気を失って倒れていたのを介抱していましたので、雑談はまた今度余裕のある時にお願いします」

「あっご、ごめんね〜……(きゅる〜……)あう。そういえば私、3人でお食事に出かけようとしてたんだよ〜。夕方に出たのに、なんで夜になっちゃってるかな〜」

「あー。とりあえず、これ食うかい?」

 

 そう言ってキョウコさんが、テンナンショウさんにチョコバーを差し出します。

 

「わ〜、ありがと〜。もうお腹ペコペコで〜、また気を失うかと思ってたの〜! うん、おいし〜!」

 

 他人を疑う事を知らなさそうな朗らかな笑顔で受け取り、早速食べ始めるテンナンショウさん。本当に心から美味しいと思っているのでしょう、ゆっくりモグモグしつつ頬に手を当ててじっくり味わう顔は、実に幸せそうです。

 

 さて、今のうちに、ステラさん達のソウルジェムの浄化です。危険域ではないとはいえかなり澱んでいますし、キュゥべえの言を信じるなら魂は安定しているらしいですが、なかなか目覚めない理由は穢れの影響かもしれません。やはり穢れは目に見えて溜まってきたらすぐに浄化すべきですよね。

 

 とはいえ、手持ちのは先程私とキョウコさんのを浄化したヤツで最後です。まあ、あくまで「手持ち」ですが。

 

「親父、緊急事態だ。アタシの部屋のグリーフシード持って来てくれ」

『おう』

 

 スマホでタメジロウさんに連絡し、すぐに持って来てくれるように手短に頼んで切ります。

 

 慎重過ぎなトウコさんは遠出にあたり、手持ち以外にも、ホテルの自室にグリーフシードの入ったアタッシュケースを持って来ていました。

 

「さっきかなり使ったよな? あたし達のを浄化したので最後かと思ったら、あんたどんだけグリーフシードストックしてんのさ……ていうかスマホ、煙を上げてて明らかにぶっ壊れてなかった?」

「ふふふ。こんなこともあろうかと、備えあれば憂なし、というヤツです」

 

 スマホも当然複数持ち歩いています。とはいえ二つ持っていて両方起動状態にしていると両方とも世界花機能が発動してしまうので、常に起動しているのは一台だけですが。

 

 ちなみに、トウコさんやカトレアさん協力の検証の結果、スマホ世界花の機能が個人で同時に発動するのは全部で6個までのようです。スプリングガーデンで現在健在な世界花の数と同数ですね。

 

「ほらよ」

「あっ! あ、ありがとうございます」

 

 ホテルからタメジロウさんが出て来たのが見えたかと思ったら、その位置からアタッシュケースを投げ渡して来ました。小型のとはいえ私まで結構距離があったので、不覚にも一瞬ギョッとしました。まあ、正解なコントロールだったのもあって問題なくキャッチ出来ましたが……

 

「はは……すげぇ親父さんだな。ていうか筋肉すげえ、まるで漫画のキャラみてえだ」

 

 タメジロウさんの異様とも言える体躯に若干引き笑いするキョウコさん。まあ、彼は魔法少女レベルで普通ではありませんからね、仕方ありません。

 

 さあ、そんなことよりグリーフシードです。手早くダイヤルロックを合わせて解錠して開け、5つ取り出して2つキョウコさんに手渡します。

 

「キョウコさんは再度デュラ……ハリマリツさんの浄化を。私はステラさんのを浄化します」

「それはいいけどよ。浄化だけならひとつで十分だろ、なんで2つ?」

「それは当然、先程の魔女戦での共闘への感謝に彼女の浄化にと、適切に動いてくれましたから」

「つまりもうひとつはあたしへの報酬って訳か」

「リツさんのを浄化し切ってもあと一回くらいは使えるでしょうから、そちらも差し上げます」

「ははっ、なかなか気前いいじゃないの。それでいて打算的なとこがあるの、あたしは嫌いじゃないぜ」

 

 おや、ただ気前が良すぎるだけではなく裏があるのに気づかれてしまいましたか。ふふ、勘の良い方は好きです。

 

 さてそれはそれとして。ステラさんとデュランタさんのソウルジェムにグリーフシードを当てて…………よし、今度こそ完全浄化です。ステラさんのソウルジェムは瑠璃、デュランタさんのは藤を思わせる色でとても綺麗です。

 

「ん……あれ、ボクいつの間に寝て……へ? ウエエエデンドロビウムサン!? デンドロビウムサンナンデ!?」

「ああ、やはりステラさん本人なんですね……ピカピカ光って目立ってますよ」

「うえ!? あああすすみませんっ! 予想外の人がいたからちょっと驚いちゃいましてっ!」

 

 身体から光を放つステラさんがすぐさま深呼吸をすると、気持ちの落ち着きと共に光も収まります。急激な感情の起伏があると身体が発光してしまうのは相変わらず、というか、花騎士魔法少女になってもですか。

 

「ええ〜なになに今の〜! ステラちゃんそんな特技あったんだ〜!」

 

 明らかに超能力的な感じでしたが、テンナンショウさんの感想はちょっとズレたものでした。天然は強いですね。

 

「ん、テン……ショウちゃん、ステラにそんな微妙な超能力、なかったはず」

「び、微妙ってなんですか〜! しょうがないじゃないですか、花騎士になっちゃったんですから〜!」

 

 ……ああ、誘導尋問などする必要もなく勝手に情報を吐き出してくれて助かります。これで確定ですね。

 

 つまり。

 

「お二人は、完全に一つになっているんですね。能力も記憶も――魂も」

「はい。ボクは、日本生まれ日本育ちの千野星と、スプリングガーデン生まれベルガモットバレー育ちの花騎士ステラの魂が完全に混ざり合った存在です」

「うん、ボクもそう……ボクは針麿りつであり、花騎士デュランタでもある」

 

 予想通りではありますが、お二人の口から直接聞けました。

 

「ソウルジェムについての情報は?」

「……これが自分の命そのもの、てことには、気付いてる」

「魂が混ざり合ったせいなのか、キュゥべえに聞いてはいないけどなんとなく理解出来てます」

「ふむ……必要最低限のことは理解しているようなので、今はこのくらいにしておきましょうか。もうすぐ夜の7時です、食事に行かれることをお勧めしますよ」

「へ?ってああ! 暗いと思ったらもうそんな時間!? ってなんかスマホの電池がギリギリなんですけど!?」

「……ああ、通りでお腹空いてると思った」

 

 ステラさんは私の知っているステラさんそのものな反応ですね。デュランタさんは……独特の間があるといいますか、かなりマイペースな方のようです。

 

「テンナンショウさんも空腹に耐えかねているようですし、詳しいお話はまた後日にしましょう。私も疲労の限界近いですし」

「うん、もうペコペコ〜。赤い娘がチョコくれたから、ちょっとは持つけど〜」

「うーん、それもそうですね……わかりました!」

「うん、ボクも異論はないよ……ショウちゃんのぷにぷに維持は最優先」

 

 そう言って、お互いスマホで連絡先を交換してから、

 

「それからこれは餞別です。花騎士魔法少女なら問題はないとは思いますが、手持ちゼロは流石に心配ですから」

 

お二人に一つずつグリーフシードを手渡す。

 

「ありがと……デンドロビウムさんは良い人だね」

「あ、ありがとうございますー! それではまた後日!」

 

 そんな感じで、新たな花騎士魔法少女とは一時お別れとなったのでした。

 

 

 

 

 去っていく3人をしばらく見送り、だいぶ離れた時点で話を切り出します。

 

「お疲れ様でした、キョウコさん。本当に助かりました」

「それはこっちのセリフだよ。あんたが来なけりゃ全員オダブツだったろうしね。大きな借りが出来ちまったな」

「私としては、同じ花騎士魔法少女の危機を救ってくれた時点で貸し借りゼロのつもりなんですが」

「それだって、使ったグリーフシードの半分以上はあんたの手持ちからじゃないか。なんにしても、とても返せたとはいえないね。というわけで、疲労困憊のとこすまないけど、もうちょっとだけあたしの都合に付き合ってもらうよ」

「ええ、私も元よりそのつもりでした。キョウコさん、というか神浜外のベテラン魔法少女と運良く出会えたら、色々と尋ねたいことがあったんです」

 

 

 

 

 そんな訳でその後、キョウコさんには私と共に私達のホテルの部屋へ行き、情報交換をしました。

 

 ちなみに私達花騎士魔法少女の説明と自己紹介も兼ねて、メイン魂はトウコさんに変わっての情報交換会になりました。

 

「つまり、雷電燈湖の願いの結果で、別人格というかゲーム世界の登場人物の魂と同居することになった、と」

「アタシら花騎士魔法少女に関してはそんな感じだな。キュゥべえの実験とやらのせいで、デュランタとステラはまたちょっと毛色が違いそうだがな」

「キュゥべえか……あの白ダヌキ野郎め……」

 

 色々と情報交換しましたが、その話題以降キョウコさんが主に聞いて来たのは、魔法少女に関する真実について――ソウルジェムがなんなのか、穢れが限界まで溜まるとどうなるかなどの、キュゥべえお得意の「聞かれなかったから言わなかった」事について聞かれました。

 とはいえ、先程のデュランタさんのソウルジェムの状態やキュゥべえの台詞からだいたいは察していたようですが。要するに再確認でしょう。

 

 そしてトウコさんが主に尋ねたのは、神浜外の魔法少女事情。縄張りや一地域当たりの魔法少女率、魔女の発生率や強さ、後は調整屋について知っているか――だいたいこんなところでしょうか。

 

「……アタシが聞きたかったのは、だいたいこんなもんだな……くあ……」

「かなりお疲れのようだな。あんな無茶な大技やったうえに、ちょっと前に親父さんと殺し合いレベルの喧嘩までしたんだろ? 寝るには早い時間だけど、早めに寝ないと明日に響くぜ?」

「んー、ま、そだなー……」

 

 もういつ寝落ちしてもおかしくないような状態でしたが……

 

「んじゃ、あたしはこの辺でお暇しようかな。なかなか有意義な時間だったよ」

「いや、もう8時近いぜ。杏子だって疲れ切ってんだ、今から宿探すの面倒だろ。せっかくだからこの部屋泊まってけよ」

「いやあ、そこまで世話んなる訳にもなあ。また貸しが――」

「その貸し借りについても話し合いたいからな、出来るだけ早く、明日の朝一には決めたいから、泊まってくれると助かる。それに腹も減ってるだろ? この高級ホテルのルームサービス、最高に美味いぜ?」

「しょうがねえなー、一晩だけだぞー?」

 

 ……ルームサービスの食事について話したら瞬時に了承されました。キョウコさんは「食べること」にこだわりがあるようですね。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

「……とまあそんなことがありまして。ついに私達が肉体的にも精神的にも限界も限界になったところで、カトレアさんから電話が来た感じです」

《……予想以上に波瀾万丈な1日だったようね》

「あ、でも半分くらいは私の予想通りだったわね。非合法のバイトとか為次郎さんとの親子喧嘩とか」

「……あたしの知ってる限り、親子喧嘩の事を殺し合いとは言わない気がするんだけど」

「あはは……そこはまあ、戦闘狂の燈湖さんと親父さんですから……デンドロビウムさんは止めるどころか嬉々として対戦を進めたでしょうし」

 

 これほんとに日本での出来事?とツッコミたくなるような内容だったけど。まあかなり楽しめたからいいか……て考えちゃうあたり、私もトウコやデンドロビウムに毒されてるなあ、とかしみじみ思うのだった。

 

 ……ていうか、今回の思い出話で得られた新たな花騎士魔法少女の情報、地球の花騎士デュランタと花騎士ステラにあたる少女の日本名くらいよね。まあ、直後に第二次魔法少女昏倒事件が起こされちゃったから仕方ないけど。




 今回登場した花騎士魔法少女の日本名について。

 デュランタは、和名が玻璃茉莉(はりまつり)なので、それを文字って「針麿りつ」になりました。

 ステラは、まあなんといいますか……見た目が某チノちゃんに似ているのでそれを名字に、名前はキラキラが好きなステラなので、キラキラネームで星と書いてステラにしました。一応実在するキラキラネームらしいです。

 花騎士魔法少女ではありませんが、テンナンショウの名前はそのままです。要するに、植物のテンナンショウは漢字表記で天南星です。

 ちなみに、今回新たに登場した人物の名字は、3人とも実在する名字です。
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