今現在ボク達は、みとさんれいらさんせいかさんと雑談しつつ魔女捜索を、あっ逆です逆です、魔女を捜索しつつ、御三方と雑談しています……どっちでもあんまり変わらないような……いえ、新人研修とはいえれっきとした傭兵業だし、やはりメインは魔女捜索、ですね!
ちなみに、主に会話が弾んでいるのは、みとさんとれいらさん、ですね。せいかさんは人見知りで緊張しやすい性格なようで、今日出会ったばかりだからどうしても口数が少ないですし、りつさん……今は傭兵業中だからデュランタさんですね。デュランタさんは話題を振ればキチンと返してくれますけど、基本無口ですからね。
とはいえ、基本無口で聞き専なデュランタさんですけど、無表情に近いながら見守るような優しい視線を下さっているので、仲間外れ感はありません。料理もですけど、その見守る視線が柔らかで好きなんですよねー、えへへ。
さて、そんな和やかな雰囲気で大東区周辺を捜索していると、
「――っ! 見つけた……!」
大型スーパーの近くで、いち早くデュランタさんが魔女の結界を発見した。
「……ふむ、ちょっと待ちなさい」
早速乗り込もうとしたところで、カトレアさんから待ったがかかり、カトレアさんが結界入口に手をかざす。なんだろ……?
「んー……魔力反応的に、それなりに育ってそうな魔女よ。デュランタとステラにもわかりやすく言うなら、さっきの羊が弱めの大型害虫くらいなら、これは強めの大型害虫極限級一歩手前くらい、かしらね」
結界前で軽く集中するだけで相手の力量がわかるなんて、さすがカトレアさん、魔法のスペシャリストです!
「どうしますか? 新人研修の相手としては、少々ハードルが高めになってしまいますが」
うーん……極限級上位レベルを3人を守護りながらデュランタさんと2人で、とかだとさすがに少しキツイですが……
ちら、とデュランタさんの顔色を伺います。するとボクの視線に気付いたデュランタさんが、僅かに微笑みます。
つまり。デュランタさん判断ではイケる、ということ。
「強めの魔女なら、なおさら早めに退治しないと! やってやりますよー!」
「うん、ボクも大丈夫……問題ないよ……」
予想通り、デュランタさんも同意してくれます。
「よろしい。私達は他の魔法少女の邪魔が入らないよう結界前で見張っていますので、どうぞ安心して魔女討伐に集中して下さい」
あれ、研修だから戦闘も見られるかと思った……いえ、これはボクらの実力を知っているデンドロビウムさんの信頼! 張り切って魔女をぶっ飛ばしてお星様にしてあげましょう!
「それじゃあ……ボクとステラが先に入るから、3人はその後間を置かずすぐに入ってきて。あまり時間をずらすと、魔女の結界によっては少し離れた位置に飛ばされることもあるらしいから……」
「「はーい!」」「あっは、はいっ……!」
1人気合を入れていたら、デュランタさんが話を進めていました。むぅ、相変わらずマイペースな人です。
まぁとにかく、魔女の結界に突入です! 蹴散らしてやります!
★
「これは……どこかの高い建物の屋上、のような……」
「この結界! 私達が初めて団地で倒した魔女と同じヤツだ!」
「うん……!」
「えっと、確かなぎたんから聞いた名前は……通称屋上の魔女!」
屋上の魔女、ですか。結界風景からして屋上にいるかのようですし、なんかそのまんまな名前ですね。
どうやら、みとさん達が魔法少女になって初めて退治したのと同型らしく、みとさん達から魔女や使い魔の行動の特徴をアドバイスされました。護衛対象?からアドバイスされるというのもなんだか奇妙な気分ですが……まあ、経験者の意見はありがたいので気にしない、気にしない!
なんにしても。奥から届いてくる魔力からして油断しなければ普通に倒せそうですし、さらには経験者からのアドバイス。負ける要素がありませんね!
途中襲い来る頭部が緑色の手になっている珍妙なデザインの使い魔のちょっかいを交わしたり倒したりしつつ、だいたい体感10分程度で最深部と思われる場所まで難なくこれました。
「ふむむぅ……新人魔法少女って聞いてたけど。2人の戦い方、なんていうか安定してるね!」
「うん……戦い慣れてるっていうか……強者の貫禄を感じる……」
「流石、デンドロビウムさん達が推すだけはあるね!」
「あはは、ありがとうございます!」
「ん、ありがと……でも、本番はここから……」
「ですね……この先から禍々しい魔力をビンビン感じます!」
さあ、いよいよ魔女戦! いくぞぉー!
★
最深部と思われる屋上の扉のようなモノを開けて突入すると、大量の使い魔が待ち構えていて、一斉にこちらに突撃して来ました。とはいっても、接敵まで数秒はかかります。冷静に周囲を観察です。
ざっと確認すると使い魔達の奥、複数のバルーンのようなモノで吊るされた巨大なカメオのような……多分あれが屋上の魔女でしょう。
「いくよ」
ボクが魔女の姿を確認し終えるのとほぼ同時に、デュランタさんが敵陣に突っ込み、使い魔達のほとんどがそちらに殺到します。
デュランタさんが得た固有魔法は、花言葉からとられたようで「目を惹く容姿」。なので必然的に、魔女の意識も使い魔の意識もデュランタさんに集中しているので、単独での突貫は普通に考えたら危険極まりない独断行動、なんですが!
「うわああああ!!」
ピカ――!!
デュランタさんに少し遅れて敵に駆け出しつつ、気合を入れて叫びながら強めに全身を光らせる。
花騎士から引き継いで、ボクの固有能力――固有魔法は「発光」。ただ、花騎士魔法少女になってから、少しだけ効果が変わった、というか追加された。
――!?!?
ボクが目立つように強く全身発光させると、一時的に魔女と使い魔の目?というか意識がこちらに向きます。ボクの「発光」も、デュランタさんのように常に効果のあるものではありませんが、一瞬だけ魔女や使い魔の意識――ヘイトをこちらに強制的に向けさせる効果が生えたみたいなんです。普通の人や魔法少女にとっては、ただ眩しいだけみたいなんですけどね。
要するにボク達の固有魔法、効果が若干被ってるんですよね。だからこそ、そこを逆手に取ってヘイト調整して、意図的に相手の隙を作れるんです!
「隙だらけ、これあげる」
いつでも冷静沈着なデュランタさんがその隙を見逃すはずもありません。
シュシュッ――ザクザクザクザクッッ!!
僅かな風切り音の後、一瞬とはいえ棒立ち状態になった使い魔達に、太く鋭い金の針の様な暗器が突き刺さります。それで半数近くの使い魔が力尽きて消滅します。
デュランタさんは間を置かず、時には暗器を投げ時にはすれ違いざま突き刺し、あっという間に使い魔達を抜けて魔女本体に肉薄しています。さすがです!
もちろんその間、ボクも観察していただけではないですよ!
ボクは、デュランタさんが止めを差しきれていなかった使い魔をモーニングスターで殴り倒したり、バッティングセンターでならした球打率で使い魔が投げつけてくる鍵束を打ち返したりして、みとさん達に攻撃やヘイトが向かわないよう動きつつ、お星様
「ふぅ、こんなもんかな。さぁてと」
近場の使い魔をあらかた片付け終えたので、デュランタさんの様子をうかがいます。
デュランタさんは現在、屋上の魔女に暗器を投げ付けたり直接突き刺したり、魔女の正面(どこが正面かイマイチわからないですが、多分カメオっぽいのがそうでしょうか)で止まらないように縦横無尽に動き回り着実にダメージを与えていきます。
さらに、ただ間断なく攻撃しているだけではないです。魔女の周りには、魔力を込めた暗器が囲う様に突き立っています。あれはデュランタさんのスキル、「ナーデリーラ[シェリル]」の前準備!
ちら、と一瞬デュランタさんがこちらに視線を向けた気配。準備は完了してるから合わせて、てことですね! ふふふ、こちらも準備万端です!
「これで……やっつける!」
キュドドドド――!!
デュランタさんが魔力を流すと一瞬デュランタさん自身が浮遊し、魔女の真下から無数の極太金暗器が吹き上がるように飛び出し貫いていきます!
けれど、さすがにカトレアさんが極限級一歩手前レベルと評した魔女、ボロボロになりながらもまだ消滅はしていません。ですが想定済みです!
「ステラ!」
スキルを打ち終えすぐさまバックステップで魔女と距離を取るデュランタさん。魔女は――諦めたかの様に静止しています。いえ、恐らく諦めたのでしょう。
魔女の頭上には、お星様
「これが! ボクのっ輝きっですぅ!」
ゴッ!!
お星様を落とすのと同タイミングでジャンプし、無意識に大股開きで着地、同時に着弾した巨星に飲み込まれ、消滅していく屋上の魔女。
ふぅ、と勝利の確信と共に息を吐き、視線を上げると、歪む景色。魔女の不愉快な魔力も一切感じません。
「やりましたぁ! 煌めきの勝利! あはははっ!」
「うん、勝った……お疲れ様、ステラ」
デュランタさんと勝利のハイタッチをし、キラッと決まった快感で思わず笑い声を振り撒きます。
「すっごーい! 2人とも、ほんとすっごい強いねー!」
「息もあってたし、まったく危なげを感じなかったよ。なるほど、あれがそれぞれの持ち味を生かした連携かー」
「……か、かっこよかった……」
と、いつの間にか魔法少女衣装を解いていたみとさん達が、三者三様の意見を下さいました。
「はいこれ、グリーフシード……やっぱり強めの魔女だと、落とす確率高いね……」
デュランタさんはすでにいつもの冷静モードで、グリーフシードを拾い上げてみとさん達に差し出しています。相変わらず切り替えが早いですねぇ。
「お疲れ様でした、皆さん。予想より早いくらいですね」
「お疲れ。だいたい15分くらいかしら。2、30分くらいを予想してたから、まあ悪くはないわね」
デンドロビウムさんとカトレアさんも近づいて来て、労いの言葉をかけて下さいます。表情や雰囲気からして、高評価なようです。研修は大成功、ですね!
☆
なんの危なげもなく新人研修も終わったし、予想以上に早く終わってみんな時間を持て余しているということで、近くのファミレスで研修終了の祝勝会もかねて軽食を取ることになった。もちろん団地組の3人も、付き合ってくれたお礼も兼ねて一緒している。
「実はボク、こう見えても結構人見知りなんですよね……なので、みとさん達から話しかけて来てくれて、ちょっと助かりました」
「えー、そうなの? ぜんぜんそんな感じしなかったよー?」
「こちらから話しかけるのが苦手なタイプなので、話始めちゃえば、なんとか……」
「そうなんだ……いいなぁ……」
「あはは、せいかだったら緊張で顔を鬼みたいにしちゃうしね」
すっかり打ち解けた4人を、ほっこり気分で眺めながらアイスティーをストローですする。デュラ……今は傭兵中じゃないからりつか。りつも無言ながら、微笑みを浮かべつつ4人のやり取りを暖かな目線で見守っている。うん、いい感じね。
「デュラ……じゃなかった。りつさんは趣味とか、得意なものとかある? もちろん戦闘以外で」
「ボク? ボクは……趣味も特技も、料理かな……」
「あっそうなんだ! お菓子とかも作る?」
「うん、作るよ……メインにもオヤツにもなるようなのは、割とよく作るかな……」
終始無言かと思ったら、れいらちゃんがりつが反応する話題を振ってからは、5人仲良く雑談し始めた。
「平和ねー」
《まったくもってね。私的にはもうちょっと刺激があってもいいけど》
「だな。さっきの羊も雑魚もいいとこだったし」
《確かに、もう少し歯応えのある相手と出会いたいですね。試したいこともありますし……》
「ちょっと、せっかく平穏を噛み締めてるんだからわざわざフラグ立てないでよ」
でもまあ、新人研修も無事終わったし、しばらくゆっくりしたら調整屋に寄って報告と解散。その後は、このみさんの顔を見たいからブロッサムに顔を出して……後は帰宅するだけね。
よし。流石に今日はもうこれ以上イベントも起きないでしょ、多分。