調整屋付近まで来たところで、
「――! 魔力反応!」
魔女の強い魔力を感知した。方角的に……ちょうど向かう先、調整屋、というか神浜ミレナ座の方ね。ていうか、いきなりフラグ回収するとは思わなかった。はあ……
《この距離で魔力感知出来るなんて、カトレアもかなり成長したわね。それはともかくカトレア、代わるわよ。遠めだから多分だけど、魔力的にかなりヤバいレベルにまで成長した魔女よ》
と、ここで女王様からの交代コール。女王様がヤバいって感じたってことは、最低でも極限級害虫レベルはあるでしょうね。
《ん、了解。気を付けてね》
《ええ、ありがと》
▲ ▽
「カトレア、いや、女王様に代わったか。魔力反応はどこからだ?」
「目的地周辺だから、このまま進むわ」
「アタシらも交代しといた方が良いな」
《ええ、それがいいですね》
というわけで、お互い花騎士の魂メインに代わり、小走りで神浜ミレナ座への方へと向かう。突然の小走りに軽く動揺しつつも少し遅れて5人も付いてくる。
「さってと……おや、誰かと思えばチームフラワーナイト!」
魔女結界の前には、ちょうど魔法少女衣装に変身したももこが結界に侵入しようとする寸前でいた。
「ももこ、ちょっと待ちなさい。遠めでも強力な魔力を感じたから、1人は危険よ」
「おっと、そうなの? 確かに強めな気配はしてたから、しばらく精神集中してたんだよね」
会話しつつ、手をかざしておおよその敵の魔力量を測定する…………うん、やっぱり止めて正解だったわ。
「一言で言えば、ベテラン複数人で挑むべきレベルでしょうね。デュランタとステラにもわかりやすく言うなら、最低でも極限級上位レベルはあるわね」
「ひえ〜……そこまでですか」
「とにかく、かなり強力に成長してるからももこ1人では危険すぎるわ。私達も協力させてもらうわよ」
「そいつはありがたい。強すぎるって評判のチームフラワーナイトと一時的にとはいえ組めるなんて、光栄だな。是非よろしく頼むよ」
私達の提案にももこは快諾してくれた。
「……にしても、この魔力パターン。また羊の魔女ね」
《よね……羊肉食べてから、羊の呪いにでもかかってるのかしら》
「ふふ、かもしれませんね。ですがここにきて強力な羊の魔女が来たということは、羊の恨みの集合体なのかもしれません」
《つまり、こいつを倒せばその連鎖を断ち切って終了ってことだな。逃さず確実にしとめようぜ》
そんな感じに軽口で緊張を解しつつ戦意を高めながら、魔法少女に変身して結界前に立つ。
「と、その前に。少しだけ講義の時間です」
気合十分、なところで、唐突にデンドロビウムが別の話題を振って来た。
「私達とももこさんはすでに知っているでしょうけれど。みなさん、マギアとコネクトはご存知ですか?」
デュランタやみとたち新人魔法少女向けの話みたいね。でもまあ、「コネクト」の話をし始めたってことは、「試したいこと」についての話の前振りね、これは。
「えーっと。マギアは、魔力を溜めてから放つ超強力な攻撃のことですよね? さっきのりつさんの地面からババババッて針が突き抜けていったヤツとか、ステラちゃんのでっかい魔力球――」
「お星様ですっ!」
「そうそう、あのお星様落としとか! いわゆる必殺技的なヤツ!」
「コネクトは、他の魔法少女から魔力を渡してもらって一時的に能力を上昇させる技術、でいいんでしたっけ?」
「うん……だから、コネクトしてからスキル……マギアを使うと、より効果的……」
「みなさん正解です。上手く連携出来ても倒せそうにない、格上だけど引くことも難しい状況などでそれらを上手く使えるようになれば、みとさん達の魔女戦での安定感や勝率も格段に上がるはずです。よく覚えておくように」
「「はーい!」」「はっはい、師匠……!」
デンドロビウムの講義に、元気で素直な返事を返すみと達3人……なんかせいかだけ気合の入り様が違うわね、何気に師匠呼びしてたし。
まあそれはともかく。本題はここからね。
「さて、コネクトについてですが。実は、現状私とカトレアだけが出来る、特殊なコネクトを発見しました」
「師匠と、カトレアさんだけ……あ、もしかして、もう1人の魂……?」
「せいかさん、正解です」
……一瞬ギャグかと思って吹き出しそうになった。まあ狙った訳じゃないだろうけど。
あ、ちなみにだけど。ソウルジェムの秘密――ソウルジェムが魔法少女の本体だって知っている娘の中で、信頼出来ると思った魔法少女には、私達が二つの魂を持っていること――花騎士の魂と魔法少女の魂とで1つの肉体を共有していることは教えていたりする。
つまり今ここにいる全員、ソウルジェムの真実を知っているのよね……みと達が知っていたのはかなり意外だったけど、それを承知で魔女退治や鍛錬を続けられるとは、なかなかメンタルの強い娘達ね。だからこそ、私達花騎士魔法少女の秘密を教えてもいいと思えたのだけど。
「私達は、それぞれ私こと花騎士デンドロビウム、女王様こと花騎士カトレアが身体側の主導権の魂、そしてトウコさんとカトレアさんはソウルジェムが本体で、私達が許可した場合のみお二人に身体を貸し出す感じなのですが。この、身体に花騎士の魂、ソウルジェムが魔法少女の魂の状態の時のみ、己自身にコネクトをする事が可能なんです。要するに、トウコさんから私に、カトレアさんから女王様に、と言うことですね」
「ほー、つまりはある意味自分1人だけでコネクト出来るってこと? ……なんかそれちょいとズルくないか?」
《そうは言われてもねぇ。これ多分、魂が二つあるって言う特殊な状況の私達にしか出来ない芸当だし》
「うーん……それじゃあ、魂が合体しちゃってるボク達には、無理そうだね……」
「ですねぇ」
「まあ、普通のコネクトしか出来ないでしょうね」
《ちなみにアタシ達は、この特殊コネクトを「デュアルコネクト」って呼んでる》
さて、私達の特殊コネクトについての説明も終わったことだし。
「今から討伐にあたる魔女は、カトレアの見立て通りなら恐ろしく強力に成長した個体です。ですが、私達が新たに編み出したデュアルコネクトを駆使すれば、苦戦まではしないのではないかと踏んでいます」
「要するに、全力で当たればまず負けないわ。さっさと片付けちゃいましょ」
「ああ、そうだね。もとよりアタシはそのために来たんだし!」
私とデンドロビウムとももこが気合を入れ直して、いよいよ魔女の結界に突入することになった。
「あ、最後にひとつ。百聞は一見にしかず、見ることもまた勉強であり、自己鍛錬になります。あなた達年少組も、5人のチームで動けば問題ないはずなので、希望するなら私達の後に続いて突入してもかまいませんよ」
「うーん……どうしよっか?」
「私は行きたーい! 強い魔法少女さん達の全力戦闘、得られるものはかなり沢山だと思うし!」
「わ、私も、賛成……」
「……ボクは、どっちでもいい……だから、みと達が行きたいなら、いいよ……」
「ボクも、デュアルコネクトとやらに興味がありますから! 是非見学したいですっ!」
どうやら、ここにいる全員で突入することになりそうね。強力とはいえたった一体の魔女に対しては少し大所帯な気はするけど、極限級レベルの害虫なら複数パーティでの作戦は普通だし、まあいいでしょ。
「話はまとまったようですね。では――総員、突入!」
★
羊の魔女の結界内に入ると、いきなり大量の使い魔の出迎えが待っていた。
「さぁて。最初に結界を見つけて入ろうとしたのはアタシだ。なら一番槍はアタシにやらせてもらおうか」
そう言って、独特の形状をした得物、湾曲した片刃の大剣を振りかざして、使い魔達に突っ込むももこ。
「うおおらああっっ!!」
気合一閃、炎をまとい豪快に振り回した大剣が、複数の使い魔をまとめて斬りとばす。その勢いのまま回転し、もう一閃、ニ閃と刃が踊る。
「へえ、ももこ、なかなかやるじゃない」
《魔法少女の身体強化があるとはいえ、あの大剣を自在に扱えてるのは大したものよね》
「ナナミさんとチームを組んでいたこともあるようですし、彼女もベテランの域に達していると言っていいでしょう。今度是非お手合わせ願いたいですね」
《だな》
周囲を警戒しつつ雑談していたら、ももこだけでだいたい6割方使い魔の集団を片付け終えていた。これは思ったより楽できそうね。
とか考えていたら、ももこがバックステップでこちらの近くに戻ってきた。別にピンチになって退いたとかじゃなさそうだけど。
「1人で殲滅出来そうな勢いだったけど、どうしたの?」
「いや、せっかくだから、後輩達にノーマルなコネクトも見せといた方がいいかなって思ってね」
そう言って、私に手を差し伸べてくるももこ。私とコネクトしたいらしい。
それにしても、ふむ。コネクトねえ。
「実は私、普通のコネクトしたことないのよね」
「えっそうなの?」
「だって、だいたいの敵はそんなことしなくても倒せるし。デンドロビウムと一緒なら尚更ね」
「……調整屋が誇大広告並に持ち上げてるなとは思ってたけど、やっぱり実力も本物ってことか。で、する?」
「ま、せっかくだからやってみましょうか」
という訳で、ももこから魔力譲渡――コネクトしてみた。
「そんじゃいくよー。コネクト!」
差し出したももこの手を取ると、その手を伝って私の全身がももこの魔力で包まれたかのような感覚。なるほどこれは……かなり有用ね。
「吹き飛ばしてあげる!」
数秒魔力チャージしてから、いつも通りの感覚で火炎弾を撃ちまくる。
ぼぼぼぼぼぼ!!
「うわ」
明らかにいつもより高火力な火炎弾が発生し、半分くらい残るかと思ったら全滅してしまった。つよっ。
「コネクト、と言う必要は必ずしもありませんが、コネクト時には先程のように魔力を渡したい相手に直接触れる必要はあります。コネクトは有用ですが、無理にコネクトしようとすれば隙を生みかねません。使うタイミングはよく見極めるように」
デンドロビウムはいつの間にか年少組の側にいて、講義していた。教育者の鑑ね。
それはともかく。この調子で最深部を目指しましょ。
相手が強力とはいえ、流石に私達3人の快進撃は止められず、約5分くらいで最深部と思われる牧場の柵のようなものに囲まれた領域まで来た。世界に愛されてる私にかかれば当然だけど、それでも予想以上に早く辿り着いたわね。
「さて、魔力も気力も十分、相手としても極限級レベルで申し分ありません。思いっきり叩きのめしましょう」
「そうね。最近雑魚相手ばかりで溜まってた鬱憤、解放させてもらうわ」
「デンドロビウムさんとカトレアさんの本気……あ、あれっ? 何故だか寒気が……」
私達の実力をスプリングガーデンの時から知っているステラが若干怯えてるけど気にしない。
「さあ、お仕置きの時間です」
「少しは楽しませてよね!」
気合の声を上げ、柵を飛び越えて最深部に突入すると、いきなり羊の魔女が突進して来ていた。せっかちねぇ。
ま、それはそれとして。いよいよ試す時ね。
《デュアルコネクト!》
私達より先にトウコ達がコネクトしたようね。さすが、燃え尽きモードになってさえいなければ戦闘狂の常在戦場、一切の油断がないわ。
《私達も! デュアルコネクト!》
一歩遅れぐらいで、カトレアもコネクトしてくれる……うん、さすがもう1人の私、ももこの魔力も結構相性良かった気がするけど、それ以上にしっくりくるわ。
「はあああああ!!」
デンドロビウムは両手に気を溜めており、拳のラッシュのように連続で華砕拳を放っていた。正直ちょっと驚いた。
ドゴドゴドゴドゴ!!
「うわつよ」
……流石はデンドロビウム、相手の突進を止めるどころか相手が浮き上がるくらいのタコ殴りだ。コワイ。
《凄まじいな……名付けるなら、「華砕流星拳」てとこか》
なんかトウコが命名していた。言い得て妙ね。
さて、それじゃあ私も、カトレアに技名を命名されるくらいに強力なの、ぶっ放しちゃいましょ!
「塵一つ残らないくらいに蒸発させてあげる!」
いつも通り、上空に巨大な火炎球を生み出す。サイズも同じくらいだけど、炎の色が青みがかっていることから、火力は倍以上でしょうね。
「派手に散りなさい!」
ボゴウッッ!!
デンドロビウムにボコられ中の魔女の頭上から、極高熱を落とすと、ジュッと肉が焼け焦げるような音がしてから少しして、景色が歪み結界が崩壊してミレナ座前に出る。文句なしに完勝ね。
さて。花騎士のゲームでは私の大技は、確か「スーパーノヴァ」とか名前付けられてたけど、カトレアはどんな風に呼ぶかしら。
《女王様も、流石の一言だわ! あの技は名付けるなら、えーと……スーパーノヴァが超新星のことだから、確かその上の……極超新星! 「ハイパーノヴァ」ね!》
「ふむ。スーパーからハイパーか。シンプルだけど悪くはないわね」
《ふふ、ありがと!》
と言うことで。デュアルコネクト後のマギア――花騎士的にはスキルだけど。デンドロビウムのは「華砕流星拳」、私のは「ハイパーノヴァ」と命名された。
さぁて。厄介な魔女も倒し終えたし。
「そろそろ本来の目的地、調整屋に行きましょうか……うん?」
……気が付いたら、私達意外の6人は、ぽかーんとした顔をしていた。
ふふん、これはあれね。私達のデュアルコネクト+マギアの圧倒的強さに呆然となっちゃったってヤツね。ま、世界に愛されてる私達のとっておきだったんだから、当然の反応ね。
「あー……いやはや。ベテラン数人でかかるべきって言っておいて2人で瞬殺しちゃうもんだからさ。さすがチームフラワーナイトだなって感心してたんだよ。にしてもやっぱり、1人でコネクト出来ちゃうのはズルいよなあ、普通のコネクトでは避けられない隙がないわけだし」
「あはは……ボク達も一応チーム入りした訳ですけど、あのレベルは無理ですねー……さすが、ウィンターローズ最強格のお二人です!」
「うん! 強すぎて参考にならなかった!」
「だねー」
「……華砕流星拳、ハイパーノヴァ……カッコイイ……」
「……羊……」
それぞれが今の魔女戦?の感想を言ってくれる。デュランタだけ感想なのか不明な呟きだけど……多分あれ魔女戦とは無関係な、羊肉料理のこととか考えてそうね。