魔法少女花騎士☆マギカ   作:繭浮

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増える花騎士系魔法少女2-4

「ほら、早くいきましょ」

 

 いつまでもその場に突っ立っていても時間の無駄だから、神浜ミレナ座――調整屋に入ることをみんなに促す。手早く報告を済ませてブロッサムに言って、早くこのみの顔を見たいしね。あとついでにカレンの顔も。

 

 

 

 

 チリンチリーン……

 

「調整屋ー、片付いたぞー」

 

 私達が声をかけるより先に、ももこが討伐完了の報告をして、そのまま奥に行く。

 

「チームフラワーナイトも、依頼完遂よ」

 

 遅れて私も一声かけてから奥へ入ると、

 

「あらぁ〜、みんなお疲れ様〜!」

「お疲れ様です。結構強そうな魔力反応でしたが、かなり早いですね。みたまさんから話を聞いていましたが、俄然手合わせしてみたくなりました。ワクワクです」

 

 みたま以外に誰かいた。魔力を感じるし明らかに魔法少女衣装だし、調整を受けに来た魔法少女なんでしょうけど……うーん、どこか見覚えがあるような?

 

《花騎士エノテラ!?》

《だな》

「そうですね、容姿も戦闘衣装――魔法少女衣装も、傭兵エノテラとまったく同じに見えます」

「あー。見覚えあると思ったけど、それね」

「フムフム、幾人か花騎士のキャラに似ている人がいるとは思いましたが、やっぱりあなた達も花騎士プレイヤーですか。こんなところで同類に会えるとは、世間は狭いですね」

 

 ……どうやら、私達が魔女の結界に入るのを見ていたらしい。8人でゾロゾロ入っていったから、大丈夫と見てそのままスルーして調整屋に行ったんでしょうね。

 

「傭兵魔法少女をやっているエノテラです、以後お見知り置きを」

 

 そう言ってソファから立ち上がりペコリとお辞儀する、エノテラを名乗る魔法少女……だけど、うーん。

 

《……どうしたの、女王様?》

 

 私の様子が少しおかしいことに気付いたカトレアが尋ねてくる。

 

《いや、ね……彼女、見た目完璧に花騎士エノテラじゃない?》

《そうね。見た目も雰囲気も話し方も、ほぼエノテラね。それがどうしたの?》

《彼女からは、世界花の加護を感じないのよ》

《え?》

《……言われてみれば、確かにそうですね》

 

 デンドロビウムも会話に加わり私に同意してくれる。

 

 私はスプリングガーデンで面識なかったからなんとも言えないけど、見た目は完全にゲームの花騎士エノテラと瓜二つに思える。自身もエノテラと名乗ってはいるし、花騎士をプレイしているらしい言動もしていたけど……

 

「あなた、普通の魔法少女よね?」

「……? 何をもって普通とするかはわかりませんが。エノテラは渡りの傭兵をやっている意外は、多分普通の魔法少女ですよ?」

 

 やっぱりね。つまり彼女は――

 

「花騎士エノテラの記憶を持ってたりする?」

「……ああ、花騎士エノテラにそっくり過ぎますからね、そういう発想も理解出来ます。ですがエノテラの一人称は傭兵の時に名乗っている偽名なだけで、そんなのまったくナシナシです」

 

――花騎士魔法少女ではない。

 

 まあ、見た目も言動も花騎士エノテラとほぼ同じみたいだし、テンナンショウと同じでスプリングガーデンでのエノテラに当たる人物なのは間違いないでしょうけどね。私達が来るまでワインを飲んで寛いでたみたいだし…………え?

 

「あなた、未成年……よね?」

「ああ、やっぱりそこツッコミ入りますよね」

 

 我関せずと再びソファに座り、ワイングラスに注がれた赤ワインをちびりと口に含む。

 

「ちなみに私も大人に間違えられがちだけど、ピチピチの17歳で未成年、現役女子高生よぉ♡」

 

 みたまがウインクしながら何か言ってるけど無視する、というか知ってる情報だし。

 

「同じ花騎士系魔法少女です。これも何かのご縁でしょうし、特別に話してあげましょう。エノテラが、なんと願って魔法少女になったか」

 

 同志に出会えて気分が良いのかお酒が回って来ていて上機嫌なのか、エノテラは唐突に自分語りを始めた。

 

「どうかしました? あれ、この人まさか……」

「花騎士エノテラ……新しい花騎士魔法少女……?」

「うーん? なんか赤ワインみたいなアルコール臭がする様な」

 

 遅れて入って来たりつ達も加わり、私達は酔っ払――傭兵魔法少女エノテラの魔法少女ストーリーを聞くことになった。

 

 

 

 

        ――――――――――

 

 

 

 

 エノテラは、幼い頃からアルコール臭が大好きでした。

 

 

 

 

        ――――――――――

 

 

 

 

《ちょっと待った。幼い頃の話なら、まだその時は花騎士はサービス開始してないし、その一人称はおかしいだろ》

 

 気にはなったけどあえてツッコまなかった部分にツッコミを入れるトウコ。

 

「そうはいっても、本名で語ったら個人情報を明かすのと同義です。エノテラの本名を知りたいなら、そうですね……このワインに合いそうな何かを今すぐ要求します」

 

 意外と安い個人情報ね。とはいえ今すぐとなると――

 

「……このチーズクッキーはどうかな? 解散する時に、みんなにお土産として渡そうと用意してたんだけど……」

「ああ、チーズにワインは合いますね。はい、交渉成立です」

 

――りつがたまたま用意していたものであっさり解決した。チョロいわね。

 

 早速綺麗にラッピングされたチーズクッキーを紐解き、1つ摘んで齧るエノテラ。

 

「サクサク……チーズの濃厚な香り、アクセントにピリリと胡椒も効いていて、実にいい感じです。ワインが進みます、グビグビ」

「……本当は帰りに渡そうと思ってたけど。みんなもどうぞ……」

「わーい!」

 

 という事で、りつ特製チーズクッキーを摘みながら話の続き(一行くらいしかまだ話してなかったけど)を聞くこととなった。

 

 ……りつの手作りなら、多分カロリー爆弾よね。食べ過ぎないように気を付けましょ。

 

 

 

 

        ――――――――――

 

 

 

 

 傭兵魔法少女エノテラこと私、月見(つきみ) 陽咲(ひさき)は、幼い頃からアルコール臭、特にワインなどのフルーティー系なものが好きでした。

 

 けれど当然、日本で幼女がアルコール飲料を飲み買い出来るわけもありません。シクシク。

 

 なので成人するまでは、主に消毒用アルコールの香りや濃い目のブドウジュース、親に赤ワイン煮込みなどのアルコールを飛ばした料理をねだることで我慢していました。

 

 ですが数ヶ月前。陽咲は白い悪魔に出会いました。

 

 いかにも愛らしい姿で油断させその個人にとって魅力的過ぎる条件で契約を促し、年端も行かぬ少女に命のやり取りを強制させる、魔法少女なら皆さんご存知、やり手詐欺師のキューちゃんです。

 

 ですが、相手が悪魔だろうと関係ありません。契約すれば幼い頃からの欲求をすぐにでも満たせるようになるんです、キューちゃんと契約を結ぶ以外の選択肢はありません。

 

 もちろん、うまい話には裏があります。契約する気はマンマンでしたが、契約したらどうなるか、魔女とは何かなど、契約内容については思いつく限り根掘り葉掘り聞き出しました。陽咲は出来る女なのです、フンスフンス。

 

 ところで、根掘り葉掘りの「葉掘り」ってどういう事なんでしょうかね。積もった落ち葉や腐葉土のことでしょうか。まあどうでもいいですけど。

 

 

 

 

        ――――――――――

 

 

 

 

「まあそんなこんながありまして。陽咲はキューちゃんと契約しました。その際の願いは、「お酒を買ったり飲んだりしても年齢確認をスルーして欲しい」です。そのおかげで陽咲は自由にアルコール飲料を飲み買い出来るようになったので、成人してからの計画だった「旅をしながら各地方の地酒・地ワインを堪能する」ため、あっちへフラフラこっちへフラフラ、流れ流れて神浜です」

「命懸けの戦いよりも飲酒を優先ですか。なるほど、自由人なエノテラさんらしいですね」

「ちなみに旅費は、元から計画していたのでその貯金を使いつつ、傭兵魔法少女エノテラをして稼いでいます。一ヶ所にはだいたい半月、長くてひと月くらい留まるのですが……神浜は新興都市なだけあって広いですし、地酒も多いようなので、それなりに長期間位着くつもりです。というわけで、改めてよろしくなのですよ、皆さん」

 

 そう言って、ワインの瓶を抱えつつペコリとお辞儀をするヒサキ……うーん、自らエノテラを名乗ってるし。私はエノテラ呼びの方がしっくりくるからそっちにしましょ。

 

 さてそれよりも。傭兵をしているというなら、この神浜には調整屋公認の傭兵がすでにいる。つまりは私達だ。

 

「流れの傭兵をやっているって言ってたけれど。神浜にはすでに、私達チームフラワーナイトがあるし、個人で傭兵を名乗って活動してる娘もいるらしいわ。そしてどちらも、命のやり取りを代行するのには到底見合わない低価格でやっている。そんな環境に来て、あなたはどんな価格設定をするつもりなのかしら?」

 

 多分、これまで留まってきた他の地では万単位は取っていたはずよね。自身の命が文字通りかかっているのだもの、そうでないと本来は割りに合わない。

 

「それは当然、郷に入っては郷に従え、です。若干安過ぎる気はしますが、エノテラは神浜の、あなた達の料金設定に倣います」

 

 すでにみたまから傭兵チームフラワーナイトについて聞いていたのだろう、特に気にした様子もなくすぐに了承してくれた。

 

「何より、傭兵は半分趣味みたいなものなので、安くても料金を払って貰えるなら問題ないのですよ。旅費は貯金で十分ありますしね。エノテラは魔女をコロコロ出来ればそれで満足です」

 

 らしい。何にしても、揉め事にならなくて何より。

 

《……やっぱり、性格もエノテラそのものよね》

「ですねぇ……本当に花騎士の魂が混ざってないのか不思議なくらいですねっ」

「……ワインに合う料理……」

 

 私達が感想を言い合ってても、やっぱりりつだけ考えてる事が違うのよね……彼女のプニプニへの執念は計り知れないわね。

 

《アタシから質問だ。白ダヌキと契約した具体的な日時を教えてくれないか?》

 

 何やらトウコが妙に真剣な声色でそう聞いていた。何かしら……?

 

「日時、ですか。確か……」

 

 エノテラが語った契約日時は、私達――というか、カトレアとトウコが契約した数日後だった。となると、一応私達が魔法少女としては先輩なのね。

 

《それで? 何でそんなこと聞いたの?》

《いやな……恐らく陽咲――エノテラも、りつとステラみたいに白ダヌキの実験に巻き込まれかけてたんだろうな、と思ってな。まあ、エノテラの強かさと願いからして、上手く回避出来たようだが》

「あー、なるほどね」

 

 となると、キュゥべえは割と早い段階で、花騎士魔法少女即魔女化実験をしていたことになる……そう思うと、怒りがフツフツと湧いて来たわね、あの害獣……!

 

「質問はもういいですか? ワインのおかげでフワフワいい気分なので、そろそろ調整を受けたいのですが」

「ああ、調整まだだったのか。ていうか調整屋、リラックスしてる状態が一番調整がスムーズに行くとはいえ、お酒飲むのを許すのはどうなんだよ?」

「だってぇ〜、エノテラちゃんがほろ酔い状態じゃないとリラックス出来ないって駄々こねるんだもの〜」

 

 あ、一応みたまも咎めはしたらしい。というか彼女の願いの「お酒を飲み買いしても咎められない」は、どうやら魔法少女相手には無効らしい。ふむ、なんでも願いが叶うとは言っても、やっぱり穴はあるのね。

 

《最後に一ついいか? 魔法少女衣装が花騎士エノテラと同じみたいだが、武器もか?》

「はい、あの特徴的な十字のヤツです。グルグルブンブンして戦います」

《ほんとに、記憶とか世界花の加護がない以外、ほぼエノテラなんだな……そこまで花騎士エノテラと同じだと、偶然とは思えないんだよな。そうなったキッカケっていうか、原因に心当たりないか?》

「んー……あー。キューちゃんは契約を迫る時「花騎士エノテラになりたいと願えば、その力もお酒を飲みたいという願望も叶えられる可能性がある」、とか言ってました」

「あ! それっぽいことボク達も言われました!」

「……花騎士になりたいと願えば、即戦力な力が手に入る可能性がある。そう言われたから、ボクもステラもショウちゃんを助けるためにそう願ったんだよね……」

「エノテラはそれに何やらよからぬモノを感じたので、予定通りの願いにしました。お二人はどうやら、酷い目を見た様ですね」

「それはもうっ!」

「……危うく死にかけた。キュゥべえ許すまじ……」

「おお、コワイコワイ。キューちゃん恨み買いまくりですね。それはともかく、キューちゃんにそう言われていたので、願う際に花騎士エノテラの事が頭の片隅にありました。それが花騎士エノテラと同じ武器や衣装になった原因かと思いますよ」

《なるほど、それが原因っぽいな》

「……もういいでしょうか。リラックスし過ぎて眠くなって来ました。ネムネムです」

「あっ完全に眠られちゃうと調整難易度上がっちゃうから! 終わるまで我慢してちょうだい!」

 

 みたまが少し焦った声でそう言って、エノテラの頬を軽くペチペチする。

 

 ふむ、これ以上の会話はみたまの調整の邪魔になるわね。日も傾いて来た時間だし、れいらとせいかは大東団地住まいだから、そろそろ出ないと着く頃には暗くなっちゃうわよね。

 

「それじゃ、私達はそろそろ帰るわね」

「ああ、お疲れさん。強い魔女の討伐を手伝ってくれて、ほんと助かったよ」

《エノテラ、今度会ったらお茶でも飲んで、ゆっくりお話しましょ》

《傭兵活動するのは構わないが、くれぐれも恥をかかないでくれよ。アタシらの信用にも響くかもだからな》

「あなたの言動からして、腕に自信があるご様子。あなたもお望みのようですし、その内お手合わせ願いますね」

「それじゃみんなバイバーイ! まったねー!」

 

 それぞれが去り際に一声挨拶して、私達は調整屋を後にした。

 

 

 

 

 みととれいらとせいかは3人でチームを組んでいるけれど、みとだけは大東団地には住んでいない。元々は同じ団地住まいの幼馴染でチーム結成も団地だったらしいのだけど、みとは家庭の事情で引っ越して、現住所は通っている学校、神浜市立大附属の近くらしい。要するにご近所さんだ。

 

 つまり、調整屋がある神浜ミレナ座は新西区の外れにあるので、みととはしばらく私達と帰宅ルートが被る。まあ、その前に私はこのみの顔を見てから帰りたいから、ブロッサムに寄り道するのだけど。

 

「うんうん、女王様の気持ち、私もわかるー! 花に囲まれたこのみさんの笑顔、とっても素敵だもんね!」

 

 ちなみにみともついて来ている。この娘もブロッサムの常連だしね。

 

 トウコ&デンドロビウム、りつとステラとはすでに解散している。

 

 トウコ達は今日得た情報を早くまとめたいからと帰途を急いで、りつ達はれいら達と同じような理由で、南凪のわりと端に家があるらしく、れいら達程ではないけどそれなりに距離があるので早めに帰った。

 

 というわけで、みとと一緒にブロッサムに顔を出しに行ったのだけど。

 

「ありがとうございましたー!」

「こちらこそ、ありがとうなんだよー!」

 

 ちょうど店内からお客の少女が元気の良い声で挨拶しながら退店して来た。

 

「あら? 今の娘どこかで……」

 

 ってこのパターン、さっき調整屋であったような……でも今の娘からは魔力を感じなかったし……

 

《女王様も気付いたみたいだけど、とりあえずこのみさんに聞いてみましょ》

「……そうね」

 

 ちなみにみとは、すでに店内に入ってこのみとカレンに挨拶をしている。

 

「あ、おかえりカトレアちゃん!」

「カトレアさん、おかえりなさい。傭兵活動、お疲れ様です」

 

 店内に入ると2人はすぐに私に気付いて、笑顔と労いの言葉をかけてくれる。癒されるわね……まあ、今はそれよりも。

 

「ちょうど今、店内から出て行った娘なんだけど」

「あー、やはりカトレアさんも気付かれましたか」

「だよね……魔力は感じなかったけど、瓜二つレベルだもん」

《こちらには気付かなかったし、花騎士プレイヤーじゃない可能性もあるけど。燈湖曰くの並行世界の同一人物でしょうね》

 

 ある程度意見を出し合ってから、同時に結論を告げる。

 

「「「《今の娘は、花騎士ポーチュラカ》」」」

「ふぇ? なになに?」

 

 やはり全員同じ結論に至っていたらしい。みとは花騎士に詳しくないから戸惑っているけど。

 

《最近妙に花騎士系少女によく出会うわね……》

「ええ、そうね。何かの事件が始まる前兆じゃなければ良いけど」

《だからフラグ立てるのやめてってば》




 エノテラ(日本での姿)の日本名について。

 エノテラは、和名がヒルザキツキミソウなので、それをちょっといじって昼咲をもじって陽咲(ひさき)、月見草から草を取って、それを並べ替えて月見 陽咲、といった感じです。

 ちなみに、月見という名字は実在する名字です。
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