で、でもまあ7時27分投稿はあくまで予定ですし、告知の予定は27日中に、だからセーフ! ということで許して下さいナズナ=サンなんでもはしませ……グワーッ!
あ、ちなみに、後半朱々と初雪視点があります。
その後しばらく、鶴乃ちゃんも交えて魔法少女の話や花騎士の話などを含めた雑談をして、その日は解散となった。
「フェリシアさんの性格、というか魔女への恨みによる暴走は、抑えようとしても簡単には抑えられないでしょう」
「まあなー。魔女は早く倒してぇし、目の前にしたら我慢なんて出来ねー、ていうかしたくねー」
まあ、燈湖(デンドロビウム含む)とフェリシアちゃんは、魔法少女として傭兵としてどうすればいいかの話に集中していたので、こっちの会話にはほとんど混ざっていなかったけど。
「なので、逆に考えましょう。簡単に言ってしまえば――暴力です」
「なるほど、暴力か!」
「圧倒的暴力で速攻で魔女を潰してしまえば、周りへの被害も最小限に抑えられる、というわけです」
……なんか時々物騒な単語が飛び出てたけど。まあ、教育者のデンドロビウムがフェリシアちゃんにも理解出来るように単語を選んだ結果でしょう。何も問題はないわ……多分。
まあ実際、噛み砕いた表現で魔力の扱い方とか、より武器に魔力や感情エネルギーを乗せる方法を教えてたっぽいし。少なくとも、今後のフェリシアちゃんの傭兵としての評価は多少改善されるでしょうね。
ちなみに。ユキが燈湖を師匠呼びした件については、鶴乃ちゃんにフラワーナイトガールのゲーム画面、図鑑のデンドロビウムを見せながら解説したら納得してくれた。期待してたのと全然違う理由だったからか、ちょっと残念そうだった。
☆
それから数日後の夕刻。ブロッサムの手伝いをしている最中、カラスウリ……じゃない、朱々から電話がかかって来た。
「カトレアよ、何か――」
『お願いしますカトレアさんっすぐに来てくれませんか!? ユキの様子が異常なんですっ!』
おかしい、じゃなくて異常と来たか。となると考えられるのは――ついキュゥべえと契約してしまったか、あともう1つ。
「落ち着きなさい、具体的にどう異常なの?」
『目が虚ろで、いつもの比じゃないくらいネガティブな事を呟いてます!』
ふむ、もう1つの方か。
《魔女の口づけの方ね……そういえば、それに関しては話してなかったわね》
《そうね……うっかりしてたわ》
魔法少女の契約は慎重に、するなら絶対に私達の前で、てことを伝えるのに気を割き過ぎてて、つい伝え忘れていた。まあ魔法少女でない限り口づけを避けるのは難しいらしいから、伝える優先度は低かったけれども。
さて。今日は平日中日、特にイベントごとのある時期でもないから、客が大挙して押し寄せる可能性はかなり低い。
要するに、お店の方はブロッサムのベテランアルバイターのこのみさんに任せておけば大丈夫。
「このみさん、知り合いが魔女に襲われたみたいだから、今日は抜けるわ」
「ええっ大丈夫!? 私も行こうか?」
「このみさんは店番の方をお願い。ただ華恋は連れてくわ、花騎士関連だから」
「わかりました、カトレアさん!」
というわけで、私と華恋は朱々が指定した場所へと急行した。
私は朱々と通話を続けて原因や対処法を端的に話し、華恋には燈湖への連絡を頼む。
朱々と初雪がいるのは新西区の外れの方、神浜ミレナ座とブロッサムの中間くらい。魔法少女脚力で走れば10分くらいかしら。
華恋には燈湖の次に、りつとステラにも連絡してもらった。2人は南凪だから距離があるし厳しいかもだけど、花騎士関連だから仲間外れにはしたくない。
『えっうわなにコレ!? カトレ――』
――ザザップツッ
と、朱々との通話が突然切れた。
《……多分魔女の結界に取り込まれたわね。カトレア、代わるわよ》
《了解、任せたわ!》
女王様の方が魔力探知は圧倒的に上だ。即了承して代わってもらう。
▲ ▽
カレンと一緒にシュシュ達がいたと思われる方向へ駆け抜けること、数分。魔女の気配を感知した。まだ数分かかるけど、シュシュ達を引き込んだ魔女の確率は高い。
ペースを落とさず走り続けると、住宅街にある小さな公園っぽいスペースに魔女の結界を発見した。
「カレン、ちょっと待ってなさい」
「え?」
すぐに入ろうとするカレンを静止させる。焦りは禁物、大怪我のもと。まずいつも通り結界に向けて手をかざし、魔女の魔力値を測る。
「……ふむ」
幸い?魔力からして大して強くはなさそう、というかむしろ弱い方でしょうね……魔女になりたての使い魔かしら。
ま、これだけ判れば十分、カレンもいるしトウコ達を待つ必要もない。
「いいわ、入りましょ。最優先は、シュシュとハツユキの確保よ」
「はい!」
という訳で、急いで結界に突入した。
★
結界風景は、見慣れた感のある砂場の魔女のものだった。
結界に入ってからは、念話機能を駆使して2人を探す。キュゥべえの中継なしのオリジナルのこれじゃあ雀の涙レベルの距離しかわからないけど、闇雲に探すよりは遥かにマシなはず。
捜索に意識を割いている間、何度か使い魔の襲撃があったけど、それらは全てカレンに任せた。弱い魔女の使い魔だし、ただ魔女討伐するだけならこの娘だけでも十分ね。
そうして急足で進む事数分後、使い魔が群がっている光景が目に入る。まさか――
《シュシュ!》
《カ、トレアさ……ぐうっ!》
繋がった念話と同時、使い魔が体当たりしシュシュが痛ましい声を上げる。どうやら嬲られているようね……
《ハツユキは?》
《だ、大丈夫……かすり傷、程度だよ……》
ふむ、どうやらハツユキを庇いながら、使い魔の攻撃を身に受けて守っていたらしい……ふふ、魔法少女でも花騎士でもないのに根性あるじゃない。嫌いじゃないわ。
「退きなさい」
――ボッ!!
2人に群がる使い魔のうち端にいた一体を少し派手に燃やし尽くすと、驚いた使い魔達が一斉に飛び退く、その瞬間を見計らっていたのかカレンが2人に一番近い使い魔に飛びかかり叩き潰す。
私は冷静にザッと一度周囲を見渡して使い魔の位置を確認、延焼して2人に燃え移らないように火力を調整した火炎弾で一体一体確実に燃やす。
そうして数秒後、私達の見える範囲の使い魔の殲滅は完了、安全を確保した。
「……なるほど。話には聞いていましたけど、確かに瓜二つレベルですね」
2人とは初顔合わせなカレンがそんな感想と共に、
「見たところ、初雪さんは軽傷、朱々さんは……酷い怪我ですが、命に別状はなさそうです」
手早く2人の怪我の具合を分析をする。
「いてて……その言い方だと、話も出来ないくらいの重症者、みたいに聞こえて、ふぅ、なんか嫌だなぁ……」
「酷い怪我には違いないんだから、無理して喋らない」
私が魔法少女のデフォルト魔法の一つ、治癒魔法でシュシュを治癒し始める。
とはいえ、治癒魔法は魔法少女なら一応全員使えるだけあってか、個人差もあるし燃費も治癒速度も微妙で、完治させるとなるとかなり時間がかかってしまう。魔女の結界内で完治までやる余裕はあんまりない。
だからまあ、これはあくまで応急処置。とりあえず今は、我慢すれば歩ける程度にまで治しましょ。
「はぁ……ありがと、少し楽になって来たよ。すごいね、魔法」
「私は治癒系は苦手な方よ。固有魔法が治癒系なら、こんなものじゃないくらい劇的な効果があるでしょうね」
「へえ、固有魔法……魔法少女の魔法も色々あるんだね」
ちなみにカレンにはこの間、魔女の口づけの影響でどう動くか予測のつかないハツユキの監視と、使い魔が近くにいないかを見張ってもらっている。
ついでに今のハツユキの状態だけど、
「……自分がちょーっと不幸な目にあったからって、誰かの不幸をちょっとでも願っちゃった報いですー……だから私なんて生きる価値ないんで、えっと……とりえず利き腕の指の骨全部折りましょうかねー……」
《……なんか、アカバナスイレンが混ざったみたいになってるわね……》
「ちょ、何言ってるの! 女の子は自分を大切にしなきゃダメだよ!」
うわ言のようにネガティブなことをブツブツ呟き続けていた。とはいえ魔法少女の適性が高いからか、まだ自傷行為には至ってはいない。しそうにはなってるけど。
「鬱です死にたーい……あーでも痛いのはヤダなー……」
にしても、このままだと若干鬱陶しいしわね……なんかもうメンドクサイわ。
というわけで。
「カレン、任せたわ」
「当て見」
パァン!
「ゴフゥ!? ふ、ふこうで……ガクリ」
私の一声で察したカレンがハツユキに腹パンし、律儀にギャグチックな声を上げてから気絶するハツユキ。この手に限るわ。
それにしても、いい音したわね……それでいてあまり痛がってないようだし、意識だけを刈り取る絶妙な力加減のようね。デンドロビウムと燈湖の教育の賜物ね。
「うわあ……気持ちはわからないでもない状態だったけど、女の子には優しくしないと」
「緊急事態に呑気なこと言ってるんじゃないわよ。その娘に自殺なんかされたくないでしょ?」
「じ、自殺!?」
「魔女の口づけっていうのは、そういうものなのよ」
さて、説明は面倒だし口づけした魔女を倒せば万事解決だし。
「カレンはこの場に留まって、使い魔が襲って来たら守ってあげて。来ないようなら魔女の口づけの説明でもしてあげてなさい」
「あっはい。それじゃあカトレアさんは――」
「当然――魔女を速攻で探し出して、速攻で蒸発させてあげるわ」
返事は聞かず、杖に乗って急発進する。地を這い回る使い魔を無視してぶっちぎり、強めの魔力を探しつつ背に炎の翼も生成してさらに加速。
――ザリザリ……
数十秒後、せっせと砂の城を作っている魔女を発見。
「蒸発なさい」
――ズバンッ!!
すれ違い様に炎の翼で斬り裂くように轢くと、魔女の体が真っ二つになった上に燃上し、すぐにカタチが崩れて結界が消失する。
「ふむ、予想以上に弱かったわね」
《いやいや……まあ確かに弱い方だったとは思うけど……今の女王様の特攻、かなりエゲツナイわよ? 何よあれ新技?》
「そうかしら? ……まあそうだったかも。思いつきでやってみただけなんだけどね。技名付けたかったら好きに付けていいわよ」
それよりグリーフシードは…………うーん、見当たらないわ。やっぱり出なかったみたいね、弱かったし。倒すこと自体が目的だったからまあいいか。これでハツユキは正気に戻るでしょ。
「そんなことよりカレン達のところに戻るわよ。えーとあの娘達は……ん、発見」
十数メートルくらい離れた場所に、別れた時と同じような姿勢でいるのを見つけた。
《エンゼル・プロミネンスの派生技みたいなものだから、エンゼルカッター? うーんしっくりこない……》
私は魔法少女姿を解除してから、カトレアが新技?の名前についての独り言をBGMに、ゆっくりとカレン達のもとへと歩き出した。
☆
ボクはこれまで、男の人に負けないように、負けたくないという思いで生きてきた。
男兄弟ばかりの中で唯一女の子で、溺愛したくなる気持ちは、まあわからなくはない。でもやっぱり、過保護にされるのはあまり好きじゃなかった。
あまりに過保護なのが原因で、反発したり喧嘩になることもあった。と言ってもボクの一方的な感情が原因で、兄貴達は大して気にしていないようだった。それが情けない気持ち、悔しい感情に拍車をかけてたように思う。
さらには「朱々も反抗期かー」とか言われて、とても情けない気持ちになった。それはつまり、ボクの感情を理解してくれていないということだったから。
そんなわけで。ボクが若干男嫌いの気があるのは、間違いなく兄弟の影響だ。
だから、ボクはボクなりに、男の人に頼らないでも大丈夫だと主張したくて、筋トレしたり、護身術の本を読んで兄貴達に実験台になってもらったりして自分を鍛えた。まあ、男嫌いで女の子扱いされるのは嫌だけど、ガチガチに鍛えて筋肉モリモリになるのもなんか嫌だったので、適度にだけど。
だから、大して鍛えていない一般男性程度に遅れを取る気はしなかったし、実際電車で痴漢された時には撃退して駅員さんに突き出したりもした。
あ、冤罪じゃないよ、触られた瞬間もスマホで撮ったしね。咄嗟にだったけど、ボクがどちらかというと美少女に分類される以上こんなことも想定はしてたからね、スムーズに出来た。
……まあ。鍛えてきたのが無意味と思えるくらい、魔女の使い魔とやらにはボコボコにされちゃったけど。
ほんと、情けない、悔しい。ユキを庇いながらとはいえ、こうも一方的にやられるなんて……いや、言い訳はしない。
ボクは結局、普通の女の子で、弱かった。それが事実だ。
「カトレアさん、凄いなぁ……」
ボクが使い魔に袋叩きにあっていた時間は、体感何十分も経っていた気がするけど。カトレアさんが飛んで行ってからは1分もかかってないんじゃないな、と、景色が現実の小さな公園に戻る中そう思い呟いていた。
「カトレアさんは、世界に愛されていますから」
カレンさんは誇らしげに、でもどこか若干羨まし気にそう呟く。世界に愛されている……多分、魔法少女として特別強い、みたいな意味かな。
カトレアさんはすぐにボクらを見つけ、得意気な顔で近寄ってくる。それを見て、ボクは強く思った。
(ボクも、強くなりたいな……)
カトレアさんは世界に愛されてるレベルらしいから、さすがにそこまでは無理だとしても。
(魔法少女になったら、少なくとも鍛え抜かれた筋肉を持つだけの一般男性よりは、強くなれるよね……あはは、若干我欲が混じっちゃってるな)
リスクは聞いた。危険性は十分理解出来ている、つもり。だけどそんなことより。
(ボクも、友達を……ユキを、守れるようになりたい!)
決意は固まった。ボクは、魔法少女になる。
☆
「アイタイ! えっ今度はなんですかぁ!?」
頬に突然の衝撃を受けて無理矢理覚醒させられました、奈雪初雪です。
「ごめんなさい初雪さん。カトレアさんにすぐに起こせと言われたもので」
「だって、気絶してる人間って重たいんだもの。てトウコが言ってたから」
「なんで責任の押し付け合いしてるのさ……というか、女の子は大切に!」
お三方に囲まれていますが、心配そうに見下ろしてくれているのはお友達の朱々さんだけです。
まあ、カトレアさんとは顔見知り程度ですし、もう1人のシンビジューム似の人とは初対面ですし、仕方ないですけど。
「えっと……腹パンやらビンタやらはまあ、応急処置として仕方がないですから。不幸だーとは思いましたが、理不尽な暴力という訳ではないですし、怒ってはいませんよ」
大変なご迷惑をおかけしたんですから、文句は言いません。朱々さんの言ったように女の子は大切に、要するにもう少し優しくして欲しいなーとは思いますけれども。
「そうは言っても……うん? あれ、ユキ記憶が……」
朱々さんを含め、みなさんが不思議そうな顔をされてます。まあ、理由は私もわかってますので説明します。
「カレンさんが言ってましたけど、魔女の口づけ中の記憶は残らない、でしたっけ? でも、私の魔法少女としての適性がかなり高いからなんですかね? なんでか魔女に操られてる間の記憶、普通にあるんですよねー。まあ言動はまったく制御出来ませんでしたけど」
というわけで、自分の鬱発言の内容とか、カレンと呼ばれていたシンビジューム似の方の恐ろしく早い腹パンも覚えています。あっ思い出したらちょっと身震いが……
「ちょっとキュゥべえ? 近くにいるのは気付いてるから出て来て説明しなさい」
と、カトレアさんが唐突にあの白い不思議生物を呼び始めました。すると数秒後、ぴょこぴょこと駆けながら姿を現すキュゥべえ。
……やっぱり人畜無害そうにしか見えませんけど、地球の少女達の天敵みたいなことをしてるんですよねー。
ぼーっと考え事をしていたら、キュゥべえの予測という名の説明が始まっていました。
「過去に、魔女に操られて自殺した少女が、とある魔法少女の願いによって復活したのだけど。その復活した少女にも魔法少女の適性があって、魔法少女の契約をしたら魔女に操られて自殺した時の記憶が戻った、という例があるよ。だから、魔法少女として高い適性がある奈雪初雪なら、覚えているのもあり得ないとは言い切れないね」
どうやら、とっても珍しい例ではあるけど絶対有り得ないということはない、とのことです。
まあ、その情報自体は大して重要じゃないです。
……朱々さんが、お団子をつなぎ合わせたようなイモムシのような何かにボコボコにされているのを、私は見ている事しか出来ませんでした。あまつさえその間、私はただただ死にたがりな気分になってて鬱発言を繰り返すばかりの操り人形。
これまで私は、どちらかと言えば不幸体質で、恥ずかしい思いや自分は間抜けで情けない人間だなーと思ったことは何度もありました……けど。今まで生きてきた中で、今日ほど情けなくて悔しくてたまらないと思ったのは、初めてでした。
もっと強い言葉で表現するなら――屈辱です。私は私が許せないくらいの怒りと屈辱を感じていました。
(魔法少女なら、魔女の口づけは自動でレジストされるらしいです……私がもっと早く魔法少女になっていれば、朱々さんが大怪我を負うこともなかったのに……!)
後悔先に立たず。もっと早くに魔法少女に――ハツユキソウになりたいと願わなくても、魔法少女になってさえいれば、と強く思う出来事でした。
だから私は――魔法少女になろうと思います。
まあですが。私のスタイルはあくまで「長い物には自ら巻かれにいく」です。カトレアさんや燈湖さんに頼りまくるつもり満々ですけどね! キュゥべえは即魔女化の実験を止めたりはしないでしょうし、頼らない理由ないですよねー。
話によれば、りつさんとステラさんの即魔女化は阻止出来たらしいですし。なんとかなるなる、お任せすればきっと大丈夫!
……ですよね?
次回の投稿予定は、2021年12月7日(火)を予定しております。