魔法少女花騎士☆マギカ   作:繭浮

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増える花騎士系魔法少女4-3

 ハツユキのせいで若干締まらない空気になったけど。私達はキュゥべえも交えて、シュシュの契約の前にハツユキに花騎士ハツユキソウの魂が降臨しなかった理由の考察を始めた。

 まあ、今日は平日の夕方で、この後にはシュシュの契約もあるから手短に、だけど。

 

「……魔法は、魔力に感情が乗っているかどうかで、効果が変動するよ。だから、早く治れって気持ちを込めてやれば、治りも早いよ」

 

 ちなみにハツユキは、りつ達にレクチャーされながら治癒魔法を自分の足の小指にかけている。赤く腫れてたけど、まあ魔法少女衣装の一部である頑丈な雪靴?的な奴の上からだったし、折れてはいないでしょ。

 

「ボクは、花騎士のゲームを熟知している最高レアリティの花騎士の同一存在に該当する少女なら呼び出せる。そう予測して実験をしていたんだけれど。どうやら魂を呼び出せてしまうのは、他にも要因がありそうだね。それがわかっただけでも収穫はあったかな」

 

 どうやらキュゥべえ自身も、ハツユキソウの魂が来なかったのは予想外だったらしい。

 

「他の要因……時間帯か? アタシらの時はもう少し遅い時間だったが」

「キュゥべえが☆6花騎士ばかり狙っていたから、☆6でないとダメって思い込んでたんじゃない?」

「そもそも、本当に花騎士本人の魂を呼び出せているんでしょうか? 真っ当に花騎士になりたいと願ったのに、今回は兆候すらなかったですよね?」

 

 色々と意見は出たけど。これ以上机上の空論を並べ立てても答えは出そうにないわね。

 

「……まあ、時間の余裕もあまりない。考察は後でゆっくりやることにしようぜ」

 

 トウコはまだ何か言いたそうだったけど、平日夕方にシュシュ達中学生組をあまり長時間拘束するわけにもいかない。

 

 というわけで、今度はシュシュの番だ。ハツユキの時と同じく花騎士アプリインストールスマホを6台身につけてもらって、私達はグリーフシードを手に持ち待ち構えて、準備完了。

 

「……ボクの同一存在らしい花騎士とやらの力を得られれば、即戦力になれるって聞いた。だから願うよ――ボクは、花騎士カラスウリになる!」

 

 願いを宣言してすぐ、ハツユキの時と同じくシュシュの身体から魂が抜き出される――だけでは終わらなかった。

 

(この力の感じ――世界花の加護!)

 

 それを感じ取った一拍遅れで、シュシュの魂の横にどこからともなく同じ光の玉が現れた。多分あれが、花騎士カラスウリの魂……!

 

「今回は当たりみたいだね」

 

 そう言ってからキュゥべえが前足を魂に向かってかざすと、二つの魂は互いに引き合い接触し、1つになろうと融合を始めた。

 

「うっぐ――ああああああああ!!!!

「し、朱々さんっ!?」

 

 直後、シュシュが腕で身体を掻き抱くようにして、喉から血を吐きそうな叫びをあげて激しく苦しみ出した。

 

(今すぐキュゥべえを潰してやりたいけど、あれはまだ剥き出しの魂のまま。最低でもソウルジェムとして完全に結晶化するまでは我慢、我慢)

 

 キュゥべえへの怒りを堪えつつ、しばらく静観する。ハツユキはすぐにでも駆け寄りたかったからか、足の治癒を中断して靴を急いで履こうと四苦八苦している。

 

 十数秒見守っていると、ついに煌めいていた魂は明確な色を帯びてソウルジェムとして結晶化する。

 

「ああああ……あ、あ……」

 

 叫び声は収まってきたけど、弱々しく膝を付いて小さく呻き続けるシュシュ。意識が朦朧としているのだろう、手からこぼれ落ち床に転がった彼女の熟したカラスウリの実のような朱色のソウルジェムは、秒ごとに澱んでいく。これが穢れの異常蓄積……!

 

「朱々さぁん!!」

 

 靴を履き終えたハツユキが駆け寄って、朱々を支えるように抱きしめる。

 

 ある一定まで穢れが溜まったソウルジェムの方は、

 

「ん、世界花の加護の反応が強くなったわね」

 

それ以上穢れさせまいとするかのように、世界花の浄化機能が作動した。それ以降は拮抗するかのように、澱みが濃くなったり薄くなったりを繰り返すソウルジェム。

 

「世界花の浄化は問題なく働いてるみたいね……グリーフシードを押し当てれば、もっと気分が楽になるはずよ」

「ほら初雪、使え」

「はっはい! ありがとうございます!」

 

 せっかくだから友達にやって貰った方が嬉しいだろうと判断したのだろう、トウコがハツユキに転がったシュシュのソウルジェムとグリーフシードを渡す。

 

「さあ朱々さん、グリーフシードですよ」

 

 シュシュの手にソウルジェムを持たせつつグリーフシードを押し当てるハツユキ。穢れの移行と共に、シュシュの苦悶の表情が和らいでいく。

 

 それからは、限界まで穢れを移したら新たなグリーフシードをハツユキに手渡して限界グリーフシードをキュゥべえに放り投げて、を繰り返すトウコ。一度経験しているからか、手慣れてる感あるわね。

 

 

 

 

 グリーフシードを当て続ける事、約十分。

 

「……ハツ、ユキ……?」

「朱々さん、意識が……!」

 

 穢れ異常蓄積はまだ続いているけど、苦しそうながら覚醒したシュシュが瞳を僅かに開く。

 

「はいっ私です! 安心して下さい、その苦しいのもじきに治りますからっ!」

「……そっ、か……あり、がと……」

 

 とはいえ、一時的な覚醒だったのだろう、未だ意識は混濁しているようで再び瞳を閉じるシュシュ。

 

「……まぁ……ハツユキ、ソ……が、無事で、良かっ……」

「えっ?」

 

 そう口にしてから再び意識を落とし、再び小さく呻き出した。

 

「……ねえトウコ。今ハツユキ、じゃなくて、ハツユキソウって言ったわよね?」

「みたいだな。半ば無意識にだったみたいだが、アタシもそう言ったように思う。カラスウリの意識の方の発言なんだろうが……しかし、「無事で良かった」、か……」

「意味深な発言よね。もしかしたら私達と違って、こちらに来る直前の記憶も持ってるのかしら……」

 

 デュランタとステラ含めて、私達花騎士魔法少女は全員、この世界に呼び出される直前の記憶が曖昧だ。

 

 ただし、共通している部分もある。それは皆、「コダイバナ辺りにいた気がする」だ。

 

 ゲームのフラワーナイトガールメインストーリー最終章。舞台はコダイバナでのブラスベルグ決戦。

 

 私達自身の記憶は曖昧だけど、ゲームの通りフラスベルグとの決戦が決死の覚悟で挑んだ激しいものだとしたら――死亡者が出ていてもおかしくはない。

 

(もしかしたら……私達の身体は――)

 

 と、しばらく思考の海に沈んでいる間に、シュシュの穢れ異常蓄積は治まった――要するに魂が安定したようね。

 

「ん……んんっ……あ〜〜……き、気持ち悪かったぁ……りつちゃん達の言ってた通りで、死ぬんじゃないかと思ったよ……」

 

 それとほぼ同時にシュシュの意識も回復した。光沢のある朱色のソウルジェムは、今は一切の穢れもなく美しく輝いている……うん、綺麗なソウルジェムだわ。やっぱり私は赤色系統が好きらしい。

 

「朱々さん……もう、大丈夫なんですか?」

「あー。随分心配させちゃったみたいだね……うん、大丈夫だよユキ。今はむしろ気分が良いくらいだ」

 

 本当に問題ないのだろう、優しく微笑んでハツユキを安心させようとするシュシュ。

 

「さて。聞くまでもないとは思うが――お前は誰だ?」

 

 トウコは最終確認として、シュシュにそう問いかける。

 

「当然、ボクは瓜生朱々だよ。そして――花騎士カラスウリでもある」

 

 いつかデュランタが言っていたような返答をする。やっぱり、シュシュとカラスウリが完全に1つになった存在なのね。

 

 さて。気分が良いとは言ってるけど、あれだけ苦しみ呻いていたのだし、疲労はあるでしょう。けれど、これだけは聞いておきたい。

 

「シュシュ、いえ、カラスウリへ聞くわ。神浜に呼ばれる直前、自分が何をしていたかは覚えてる?」

「……直前かぁ、何してたかな……騎士団の新人歓迎パーティーの手伝いを……いや、バナナオーシャンで防衛線に参加して……プリン……いや」

 

 浮かんだ記憶をいくつか呟いた後。最後に言ったのは、

 

「荒野……ブレーメンかな。多分、コダイバナの荒野が見渡せる場所にいた、ような気がする」

 

やっぱり、私達と似たような場所にいた記憶だった。

 

 

 

 

 シュシュが完全に落ち着いたところで、中学生組には帰宅してもらうことにした。魔法少女だから心配は少ないとはいえ、親御さんに心配させないためにも暗くなりきる前に帰らせたかったからだ。

 

 というわけで、残った私達は再びの考察タイムだ。キュゥべえは潰して退場させたい気分だったけど、このみにショッキングなモノはあまり見せたくなかったから自重しておいた。

 

 まあ、それはそれとして。

 

「ほれ、約束していた高級コニャックだ。()りねぇ」

「では、遠慮なく……えーと。新たな魔法少女が無事誕生した事を祝して。いただきましょう」

 

 中学生組が帰って早々、なんか保護者役のタメジロウさんが、もう大事にはならなさそうと判断したのかエノテラと共にお酒を飲み始めていた。

 

「ん……んふ……ほふぅ。これは、実にいい葡萄ですね……」

「ああ、樽もいい……こいつには安物のキャンディーが合うぜ」

 

 エノテラの願いのせいでエノテラを咎められないとはいえ、それでいいのか保護者、と思わざるを得ない。

 

《ま、まあエノテラさんは本来別件で家に来たので、あまり強く言うのもどうかと。とりあえず、2人は考察者として必須ではないので、始めてしまいましょう》

「……そうね」

 

 まあ、保護者役と言うならデンドロビウムもそうだし。気にせず進める事にした。

 

「まず確認して置きたいことだが。キュゥべえは、☆6花騎士と同一存在なら因果の量が大きい傾向がある、つまり異世界の花騎士の魂を呼び出せる類の願いでも叶えられる素質があるから標的にしていた、だよな?」

「やはり燈湖の理解力は素晴らしいね。その通り、だからボクが基本接触した花騎士と同一存在と思われる少女は、☆6、最高レアリティの娘だけだった」

「だが今回は、☆6のハツユキソウは何もなくて、☆5のカラスウリの魂だけが来た。要するに今回判明したのは、☆5花騎士は呼び出せる可能性がある、てことだ」

「そうなるね。背負った因果の大きさで叶えられる願いの質に変化が出るから、☆4以下の娘はやっぱり無理だと思うけどね。なんにしても、実験対象の幅が広がってなりよりだよ」

 

 あーやっぱり潰したい、燃やしたいわぁ……イライラ……っと、我慢我慢。

 

「ともかく。予想していた☆6花騎士であるハツユキソウの魂は来る気配すらなかった。そうだな? 女王様」

「ええ。カラスウリの時はすぐに気付いたから、ハツユキソウの時に来る気配が全くなかったのは間違いじゃないわ」

「これはボクも完全に予想外だったよ。つまり花騎士の魂が来る条件は、因果の量や願いの内容以外にも要因があったということだね」

「ああ、そうだ。そして、こっちに来た花騎士の曖昧な記憶の中で、唯一共通している点は――「コダイバナにいた気がする」。この情報と、さっきの朱々……カラスウリの無意識のうちの発言――フラスベルグの攻撃からハツユキソウを庇って重傷を負ったと思われる呟きから推察するに」

 

 そこまで言い切ってから、一旦言葉を切り私達の様子を伺うようにこちらを注視するトウコ。

 

 私、とデンドロビウムを気遣って言葉を選んでいるんでしょうけど――私達は花騎士。日々害虫と命のやり取りをして来たのだ、覚悟はとうの昔に出来ていたのだから、直球でかまわない。

 

《花騎士の魂が呼び出される条件は――向こうの身体が死んでいて、魂の状態になっている花騎士のみ。そう考えられます》

「まぁ、本当に死んじゃってるかはともかく。最低でも、生死の境を彷徨うレベルの重体には、なってるんでしょうね」

 

 カラスウリは、ハツユキソウの無事を確認出来て安心したように呟いた。つまり……カラスウリがハツユキソウを庇って意識を失う程の重傷を負ったのは間違いないでしょうね。

 

「ああ、アタシもそう予想している」

《女王様……》

「そ、そんな……」

 

 私達のセリフに、一様に暗い雰囲気で呟く神浜の友人達。そうなる覚悟の上で戦い続けてたんだから、気にしなくて良いんだけれどね。

 

《あっ、でっでも! ゲームでは犠牲者が出たなんて表現一切なかったし!》

「だな。それを匂わせるテキストがなかったことから、意識不明の重体者はいたとしても、死亡者はいないと思われるな。モブ花騎士含めてな」

「それに、女王様……カトレアさんとデンドロビウムさんが死ぬ姿が全然思い浮かばないもん! だから絶対大丈夫だよ!」

 

 気にしなくていいのに……まったく。こっちで出来た友人達は、揃いも揃ってお人好しで身内に甘くて……優しい娘達よね。

 

「ん……そうかもね。ありがと、みんな」

《となると……花騎士のゲームで確認した限り、フラスベルグの攻撃はかなり激しかったようですし。重体で一時生死の境を彷徨っている間にこちらに呼ばれ、向こうの身体は死んでいないけれど魂がないせいで意識が戻らず植物状態、と考えるのが妥当でしょうか》

「それが1番可能性が高い状態だろうね」

 

 もしデンドロビウムとキュゥべえの予想通りなら。花騎士の魂をスプリングガーデンに帰すすべが見つかって帰れたら、身体がなくてさまよう魂になってしまう可能性は低い、ということね。

 

 まあ、あくまで予想だけど。前向きな予想が出てなによりだわ。

 

 さてと。今回の契約会で判明したこと、出た予想をまとめましょ。

 

 希望的観測を含む形だけど。フラスベルグ決戦がゲームの通りの誰が死んでもおかしくはない程の激戦だったのだとしたら、語られていないだけで、死んではいなくても瀕死の重症、意識不明の重体者が出ていてもおかしくはない。

 

 そんな、思わず魂が抜けちゃうレベルの重傷を負った花騎士で、因果の量がある一定以上高い――ゲーム的に言えば、初期レアリティが☆6かガチャ☆5の花騎士の魂が、呼び出せる条件。だと思われる。

 

 ちなみにだけど。フラスベルグがゲームの設定通りの強さなら、魔女に例えるなら伝説の魔女「ワルプルギスの夜」に相当する力を持っていると思われる、とかキュゥべえが言い出した。

 

《え、そんなトンデモ魔女がいるの? 地球に?》

「うん、魔法少女の間では結構有名な魔女だよ。なんでも、本気になったら地球上の文明をひっくり返せるくらいの力を振るう、とかなんとか」

《なによそれ、ほんとに三大害虫レベルじゃない……地球も大概ヤバいわね》

《ワルプルギスの夜、ですか。それ程の魔女なのに、神浜の魔法少女のみなさんの様子からして、警戒している感じはないですし。今は活発に動いてはいないようで何よりですが……》

「そのワルプルギスの夜だけどね。近々日本に来そうだよ」

「……はぁ?」

「と言っても、出現予測地点は◯◯県の見滝原市だから、神浜から動かなければ君たちに被害はないはずだ。気にすることはないさ」

《まあ、うーん……そうねぇ。見滝原のみなさんには申し訳ないけど、フラスベルグ並だとすると、ちょっとねぇ……》

「ああ、どうしようもないな。大規模な自然災害だと思って、避難なりするしかないだろうな」

 

 キュゥべえが地球にも三大害虫級の魔女がいるとか言い出したから、ちょっと話がズレちゃったけど。結論としてはこうだ。

 

「今後もアタシらと同じ花騎士系の少女への実験を繰り返す気があるなら、中止することをお勧めするぜ。少なくとも、神浜にいる同類の捜索は続けるし、見つけ次第注意喚起するからな。余計な労力は無駄ってものだろ?」

 

 と、キュゥべえにもう花騎士魔法少女候補には手を出しても無駄だ、お前が神浜で実験するなら必ず今日のように監視するぞ、と釘を刺すようなことを言って締めるトウコ。これでとりあえずは、手の届く範囲の花騎士系少女(同類)への被害は抑えられる……訳ないわよね。

 

「…………」

 

 当のキュゥべえは無言で返した。感情がないらしいから、実験を完全に辞めさせるのは現状不可能。より不利益になると思わせる判断材料が出て来れば、まだ芽はあるのだけど……

 

《この様子だと、実験は辞めそうにないわよね……早くポーチュラカ娘を見つけないと、よね》

《ええ、そうね》




 次回の投稿予定は、2021年12月27日(月)を予定しております。
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