魔法少女花騎士☆マギカ   作:繭浮

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 おタエさんの魔法少女ストーリー的なものの前編です。
 急遽書くべきと思い立った上に予想より話が長くなって、朝7時27分投稿は不可能になってしまいました……ので、今回も1 7時27分投稿です。遅くなって本当に申し訳ない。


はじまりのいろはカトレア 閑話 花騎士魔法老女シロタエギク誕生秘話 1-1

 わっちの名は白菊妙。今年で99歳の白寿を迎えた、どこにでもいる……とは、自分視点で見てもとても言い難い婆さんじゃったな……そう、「じゃった」なのじゃ。

 

 魔法少女になった今、髪色こそ白髪のままじゃが、見た目は10代前半の童にしか見えぬ容姿にまで若返った。まあ髪色に関しては、願いで花騎士シロタエギクになった影響じゃが。

 

 そも、名称の通り、魔法少女とは「少女」しかなれぬ、はずなのじゃが……キュゥの字によれば、わっちがなれたのは「恐らく、精神的に少女性を失っていなかったからじゃないかな」、らしい。

 

 まぁ、確かにわっちは純潔じゃし、精神年齢も若いつもりじゃが……恋愛経験が皆無という訳でも、人生において艱難辛苦を一切経験しなかった訳でもない。かの大戦も経験しておるしな。

 じゃがまあ、キュゥの字は嘘はつかぬようじゃし、彼奴の予想が正解なのじゃろう。魂がソウルジェムになり魔法少女になれた時点で、答えは出ているようなものかの。

 

 さらにキュゥの字の話では、わっちが「花騎士シロタエギクになりたい」と願ったら花騎士シロタエギクとの魂の融合が起きる可能性があり、その影響で穢れの異常蓄積が起きて高確率で即魔女になるだろうからお薦め出来ない、と言っておったな。まあ二つの魂が混ざり合うおうものなら強烈な負荷がかかって当然じゃろうしの。花騎士シロタエギクになるためには致し方ないの。

 

 ……それを承知で願ったのかって? 答えはYESじゃ。

 

 理由は色々とあるのじゃが、話すとなると少々長くなる……ふむ、聴きたいと? ならまあ語ってやらんでもない。わっちはパン作りが何より大好き、いや、愛しておるが、誰かとお喋りするのも大好きなのじゃ。

 

 

 

 

 さて。まずは……少し話がズレるかもじゃが、わっちがパン作りに一生のほとんどを費やす決意をしたキッカケにも触れるかの。

 

 わっちが最初にパンを食したのは、戦後の救援物資として海外から小麦粉が届けられ、配給されるようになってからじゃ。

 

 当時パンに関してはにわか知識しかなかったわっちは、飼っていた雌鶏が産んだ卵と水を適当に混ぜて、フライパンで焼いたのじゃが……うむ、察しの通り、出来上がったのはパンケーキじゃった。何か違うと思いながらもそれなりに美味かったからの、今でもパンケーキはわっちの好物……というか、毎朝自家製ジャムをたっぷりかけて食べる、1番好きな料理なのじゃ!

 

 うむ? 好きなはパンじゃないのか、じゃと? うーむ……確かにパンも大好きじゃが、パンの方はどちらかというと自分で食べるより作って誰かに食べて貰うのが好きなのじゃよ。

 ちなみに、わっちのパン屋「クリザンテーモ」の裏メニューならぬ裏商品として、わっちが粉から配合して作ったパンケーキ(冷凍販売)があったりするが……いい加減話を戻すとしようかの。

 

 わっちが最初にパンを食べたのは、戦後学校給食が始まり、コッペパンが給食として提供されるようになってからじゃ。

 

 当然当時のわっちは(見た目が幼いゆえ間違えられる事はあったが)小学生ではなかったゆえ、給食で食べた訳ではない。がまあ、学校給食で出されているコッペパンを食したのじゃが。

 どういう事かというと、端的に言って伝手じゃ。知り合いにたまたま給食を作る職に着いた者がおって、運良く一度だけじゃが焼き立てのコッペパンを味見させて貰う事が出来たのじゃ。

 

 その時の感動は、言葉では言い表せぬの……それ程に焼き立てパンは美味だったのじゃ。

 

 しかし、子供達が給食で食しておるのは、最高に美味しい瞬間である「焼き立て」ではない。それに気付いたわっちは、

 

「焼き立てパンの美味しさを、もっと多くの者に知って貰いたい!」

 

その一念で、単身パンの本場である海外に飛んでパン作りを学ぶ決意をしたのじゃ。

 

 数年かけて旅費やら言語やらを学び、わっちはパンの本場・フランス……ではなく、何故か昔から気になっていたイタリアへと留学し、そこでパン作りのノウハウを学んだ。わっちのパン屋の名前がイタリア語なのもそれが理由じゃな。

 

 その後はイタリアを拠点に、フランス・ドイツ・イギリスにも短期留学し、数十年かけて学び倒した……うむ、思い返すと楽しい日々じゃったのぅ。本番まではいかなかったが、恋人と言える人と出会い恋愛を経験したのもその頃じゃ。

 

 じゃが、わっちの本来の目的は、

 

「焼き立てパンの美味しさをもっと多くの者に知って貰いたい」

 

じゃ。当然、その多くの者とは日本人、戦後間も無くでパンが主食として定着しておらんかった時期の日本じゃ。つまり最終目的は、日本でパン屋を開業する事じゃった。

 

 そんなこんなあり、各国でのパンについての知識・技術を十分習得したと判断した時期じゃったな。日本にてパンの主食化が浸透し始めているとの風の噂を聞いて、すぐにわっちは荷物を纏め、日本の地元に帰国。わっちが十数年海外にいた間ずっと空き家のままだった小さな我が家を改装し、パン屋に仕立て上げる事にしたのじゃ。

 

 とはいえさすがに数十年ぶりの日本、伝手がまるでなかった。なのでまずはと、日本を発った当時友人だった者を探したのじゃが……どうもわっちは人との縁に恵まれていたようでの。友人の1人の旦那が隣町で人気の洋食屋を営んでいると知って、その旦那が経営している洋食屋ウォールナッツのオーナーにしてコックの胡桃殿に支援を仰ぐ事にしたのじゃ。

 当時のウォールナッツは三ヶ月先まで予約がパンパンな程の人気店じゃったが、本人はそれに驕る事のない大らかな性格だったので、快く支援してくれたのじゃ。

 

 

 

 

 そんなこんなで、胡桃殿の伝手で良い家屋の改装業者を紹介され、無事パン屋クリザンテーモは開業出来たのじゃ。向こうではパンを作っては売るの日々ばかりで贅沢品の購入などした事もなかったからの、資金は潤沢にと言える程に余っておったから、設備は最高の物を注文出来たのじゃ。

 

 しかし、海外で培ったパン作りのすべては確かに役には立ったが、向こうと日本人とで味覚に差異があるだろうと判断し、しばらくは日本人の舌に合うパン作りのための研究と技術向上に注力したのじゃ。

 

 その間店内に置いたのは、イギリスパン――日本的に言うところの食パンのみ。他は、世話になった胡桃殿の洋食屋へ出庫する分の丸いフォカッチャを焼く日々が続いた。フォカッチャと言う名に馴染みがなかったようで、もっばら丸パンと呼ばれとったから、いつしか商品名も丸パンになっておったのぅ。

 

 食パンのみ置いていたのは、その時すでに地元の街にはパン工場併設のそれなりに大きなパン屋があったからじゃ。それでも、その店より多少値が張るとはいえ大量生産品には負けない味の自信はあったし、実際毎日完売しとったがの。

 

 ……じゃがそれでも、小さいながら妬みは持たれておったようじゃ。っと、その辺りの話は最後の方に回すべきじゃな。

 

 

 

 

 日本人好みのパンの研究を終えた後は、食パン以外にも複数のパンを店頭に置くようになった。イタリアパンを中心に、フランスパンやドイツパンも置くようになった。

 イタリアパンを中心にしたのは、イタリアに思い入れがあったのも多少あるが、日本人的に食感が受けると思ったからじゃ。それは正解で、イタリア系のパンはほぼ毎日完売したが、フランス系のパンはクロワッサン以外の売れ行きが微妙で、ライ麦を使っているドイツ系パンに至っては、毎日必ず売れ残ったものじゃ……まぁそれは今もじゃが。一定数の需要はあるから作り続けるがの。

 

 

 

 

 さて、長々とわっちとパンの話をしたが、ここからが本筋じゃ。

 

 魔法少女になる数ヶ月前。海外にいた頃にも稀に見かけた白い珍獣を、近所で時々見かけるようになった。

 

 最初は「どの国でも一度は見かけたが、日本にもいるとはの……」という感想しか抱かんかったが……どうも最近、わっちのパン屋の周辺を彷徨いているようで、店の前を通りかかると必ず目が合うようになった。

 

 しばらくはそれだけの関係だったのじゃが。とある日、いつもの様に胡桃殿……正確に言えば、世話になった胡桃殿の後を継いだ、現ウォールナッツのオーナーにしてコックにして息子さんじゃが。彼が丸パンを受け取りにわっちの店に来た日の事じゃ。

 

 その日は胡桃殿と共に、娘のまなか嬢も連れて来ておっての。三人でパンを車に積み入れつつ雑談しておったのじゃが……その時、例の白い珍獣が現れた。

 

「おや、キュゥべえじゃないですか」

「やあ、胡桃まなか。お店の客足は徐々に増えつつあるようだね」

「ええ、おかげさまで……あ」

 

 まなかの嬢ちゃんが、しまったといった感じの声を上げた。それも気にはなったが、わっちとしては嬢ちゃんが珍獣に気安く話しかけたのに驚き、珍獣が人語で返したのにも驚いた。

 

「おぬし、喋れる程の知性と声帯があったのか……これは驚きじゃ、長生きはしてみるものじゃな!」

「ええ!? まさかおタエさん、キュゥべえが見えるんですか!?」

「うむ、ハッキリ見えるし声も聞こえたが。なんじゃ、特殊な素質を持つ選ばれた人間にしか認識出来ぬ類いの霊獣じゃったのか?」

「理解が早い!? あー、そういえばおタエさん、空き時間にはアニメ見たりソシャゲしたりする趣味がありましたね。相変わらず心がお若い!」

「うむ! まだまだ精神は衰えてはやらぬぞー。最近のお気に入りは、フラワーナイトガールというゲームじゃ!」

「ソシャゲですか?」

「そのジャンルのゲームだね」

 

 声は意外な所、珍獣……まなか嬢にキュゥべえとか言われとったな。そちらから返って来た。

 

「ほう。霊獣もゲームを嗜むのかの?」

「休憩を挟みながらなのはいいですけど……みんな、誰とお喋りしてるんですか?」

 

 と、ここで店内から丸パンを運んできた胡桃殿から一言。どうやら胡桃殿にはキュゥべえは見えないらしい。

 

《お父さんに変な子扱いされかねないので、ここからは念話で失礼します》

「おお、頭に直接……」

《魔法少女の適性がある者なら、ボクが中継してまなかと念話で会話出来るよ》

《まさに魔法じゃな! 年甲斐もなくワクワクするのぅ!》

 

 さてそうなると、まなか嬢とキュゥべえから詳しく話を聞いてみたくなった。丁度まなか嬢には、わっちのパン焼き人生の中でも史上最高の一品がもう少しで焼き上がるから試食して貰いたかったしの。

 

「今日の積荷はこれで最後じゃな。胡桃殿、悪いが少しまなか嬢と話したい事があっての。少々時間を借りたいのじゃが、良いかの?」

「はい、大丈夫です。そうですね……まなかさん、30分くらい後に出るから、それまでおタエさんとお喋りして貰って下さい」

「はいっありがとうございます、お父さん!」

「ちなみに、どんなお話を?」

「くふふ、乙女同士の秘密じゃ」

「なのです!」

「そうですか……それじゃあ挟まる訳にはいかないですね」

 

 そう言って、胡桃殿は車への積荷作業に戻る。

 

「話もあるが、新作パンの試食も頼みたかったのじゃ。店内に行こう」

「おタエさんの新作ですか! 是非食べさせて下さい!」

 

 くふ、目をキラキラさせてわっちのパンを求めるまなか嬢、いつ見てもめんこいのぅ。

 

 

 

 工房に一緒に入り窯をチェック……うむ、良い感じ焼き上がったの。さすがに窯出し直後は、熱すぎて食わせられんが……とにかく取り出して食べられる適温になるでしばらく冷ましつつ、キュゥべえが何者かについて軽く聞く事にしよう。

 

「……という訳で、ボクらは日々、魔女に対抗出来る魔法少女の素質がある少女を探しているんだ。勿論タダで魔法少女になって貰う訳じゃない。対価として、願い事をなんでもひとつだけ叶えてあげているよ」

「私はキュゥべえと契約して、お店に再びお客が増えるよう、「料理とお店の名が知れ渡るチャンス」を願いました。そのお陰か、ほんとに徐々にですがリピートして下さるお客さんが増えて来ました。まあ、いまだ閑古鳥が鳴く程度なのですが……お客さんが1人も来ない、という事はなくなったので、願いは一応叶っていると思います」

「ふーむ……まなか嬢はやっぱり努力家じゃのう」

 

 手っ取り早く「お店に客が増えて欲しい」と願うのではなく、自身と父の料理の腕に自信を持っているがゆえに「名が知れ渡るチャンス」と願うか……ほんに、胡桃殿の家人の料理に対する情熱には感化させられるのじゃ……と、パンの粗熱が大体取れた時間じゃの。

 

「ほれ、焼き立てをお食べ。まだ熱いから火傷に気をつけるのじゃぞ」

「これは……コッペパン、ですか。そういえば、おタエさんコッペパンは今まで店頭に出してませんでしたね」

「うむ……コッペパンはの、わっちがパン職人を目指すキッカケのパンじゃったからのぅ。思い入れがあるでの、納得の行くモノが焼けるようになるまで今まで店には出さなかったのじゃ」

「そうでしたか……小さめサイズですし、これにジャムとかを挟むんですか?」

「いんや、これで完成形なのじゃ」

「これが完成形……」

 

 ふむ、疑問顔じゃの。まぁコッペパンといえば何かをサンドするのが普通じゃからな、気持ちはわかる。

 

「キュゥの字も食うかの? というか味覚はあるのかの?」

「一応備えられているよ。味覚があれば少女の勧誘の際に役に立つし、食事からも多少はエネルギーを得られるからね」

「よくわからんが、味覚があるならおぬしからも感想を頼む」

「うん、かまわないよ」

 

 という訳で、まなか嬢に手渡しキュゥの字には皿に乗せ出す。

 

「では、いただきます!」

「いただきます」

 

 2人同時にコッペパン――商品名「天使のパン」にかぶり付く。

 

「「――――!!」」

 

 数秒咀嚼後、またしても2人同時に……なんというか、虚空を見つめ出した。あれじゃな、宇宙猫の画像、と言えば分かりやすいかの。2人してそんな顔をしておった……くふ、これは予想通りの出来だったようじゃな!

 

 まあ、キュゥの字は元からあまり表情は変わっとらんが……

 

「そうか……人間とは……感情とは……」

 

……なんかキュゥの字が虚無り出した。だ、大丈夫かの……?

 

「「はっ」」

 

 数分後。2人共にこちら側に戻って来た。

 

「……まさか、何もつけていないコッペパンが、これ程の……! か、勝てません……今のまなかでは、これに釣り合うものはとても……!」

「いやいや、まなか嬢は何と戦っておるのじゃ」

 

 わっちの一言に我に返ったようで、物凄い勢いでわっちの両肩をがっしと掴み、

 

「今まで食べてきた中で、最上に美味しいパンです!」

「そうだね。胡桃まなかに同意せざるを得ない」

「う、うむ……うむ! わっち史上最高のパンじゃからな!」

 

 まなか嬢の気迫に押されて一瞬引いたが、まあ天使のパンを食べた感想としては当然の反応じゃな。

 

「今はまだ、この域に達しているとは言えません……ですが! いつかはこのパンに見合う実力を身につけて見せます!」

 

 ……うむ。やはりまなか嬢の情熱は心地良い。

 

「…………」

 

 一方で、キュゥの字は先程の一言より何も言わず、考え込むように俯いていた。それ程衝撃的じゃったかの?

 

「まなかさーん、そろそろ出ますよー」

「あっはーい!」

 

 ふむ、いつの間にやらそんなに時間が経っておったか。

 

「今日は本当に良いものをいただきまして、ありがとうございました! ではまた後日!」

「うむ、またのー」

 

 そう言い残して、まなか嬢は帰って行ったが……

 

「おぬしはいつまでおるつもりじゃ?」

「……白菊妙。しばらくキミを観察させてもらっても良いかな?」

 

 ふむ……確かコヤツは、魔法少女か魔法少女の素質がある者にしか認識出来ないのじゃったな。ならまあ良いか。

 

「お客様の邪魔さえしなければの。おぬしの好きにするとよい」

「ありがとう!」

 

 キュゥの字はそう感謝を一言述べてから歩き出す。どこで観察するのか追って行くと、店内のドアの横辺りに座り込み、わっちがパンを焼いたりカウンターに出ている様子を見るようじゃった。

 

(なんだか、店のマスコットの置物か何かのようになっとるが……ふーむ。まぁあの位置なら邪魔にはならぬか)

 

 そんなこんなでそれから数ヶ月間、キュゥの字は毎朝開店と同時に店内に入り込み、ドア横の定位置に座り込み営業終了時間までわっちを見つめる仕事を続けた。

 

 そんな日々がしばらく続いたのじゃが……わっちが魔法少女になる約半月前。今までは観察するだけだったキュゥの字が、わっちに語りかけてきたのじゃ。




 次回投稿予定は4月10日(日)予定……でしたが、マギレコアニメ見て精神を抉られたので、4月17日(日)に変更します……
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