「噂? 私達は妹の、ういの行方を探しているだけですけど……」
《んー。チームフラワーナイト的な意味では、確かにうわさを調べてはいるわね》
カトレアが言うように、今現在デンドロビウム・シンビジューム・デュランタ・ステラの4人で、ウワサのひとつと目されている「絶交ルールのうわさ」について検証している最中のはずだ。私達は、今日はいろはの手伝いを約束していたから外れていたけれど。
「そう……まあ、チームフラワーナイトならつまらないヘマはしないだろうから、まぁ良いけど。だからこそ情報交換したのだし」
そう言ってから、やちよはいろはの肩に乗っているモチョに視線をやる。「モチョは現状無害である」という情報と交換のようなカタチで、噂話が現実になる「ウワサ」について教えて貰ったのよね。
「それで。あなた達は、環さんの妹さんがウワサに巻き込まれてると踏んで「口寄せ神社」について調べている、と言ったところかしら?」
「ま、そんなとこね」
「《えっ?》」
「……もう1人とあなたの片割れの反応がおかしいのだけど」
「だって、あなたに言われて「それもアリね」って私が今決めたからね」
《えぇー……?》
「……途端に不安になって来たわね」
「えっと、あの、すいません……今何の話をしてるんでしょうか……?」
っと、つい事情を知ってる者同士で会話を進めちゃってたけど、いろはは「ウワサ」に関しては何も知らないんだったわね。
という訳で、いろはに現状神浜で起こっている不可思議現象「ウワサ」について、軽く説明した。
「都市伝説みたいな噂が、現実に……? そんな、オカルトみたいな事が実際に起きるだなんて……」
「信じられない? ならあなたの肩に乗っている魔法少女にしか見えない奇怪な生物は何なのかしら」
《そもそも、魔法少女自体が知らない人からしたらオカルトそのものじゃない。今更よ、いろはちゃん》
「あー、そう言われると……でもやっぱり、魔女じゃないのに魔女みたいな事をする謎の存在って言われても、ピンと来ないです……」
「まぁ、気持ちはわかるけれどね。それでも現実として被害者が出始めている以上、西の顔役としては静観している訳にもいかないのよ。まったく……魔女以外の面倒事は、あまり増えないで欲しいのだけどね」
ふむ。やっぱり顔役と呼ばれるだけあって、面倒事には自ら首を突っ込まないとなのね……やっぱり
ま、それはともかく。
「さっきカトレアも言ってたけど、チームフラワーナイトはうわさの検証を始めたわ。まさに今日からね」
「その言い方からして……あなた達は本来うわさ検証ではなくういさんの手がかり集めをしていたけど、急遽の思い付きでういさん探しの一環で「口寄せ神社」も調べてみよう、て事ね」
《女王様のわがままで突然決まったけど……私としては異論はないわ。うわさの内容的にもね》
「はい、私もです。調べてみる価値はあると思います!」
「……そう」
やちよの表情的にやめて欲しそうな気配を醸し出してたけど、私達が引く気はないと見て溜めた息をついた。諦めてくれたようね、状況判断が早くて助かるわ。
そんな訳で。ここからは、やちよを含めて「口寄せ神社のうわさ」についての検証をする事になった。と言っても、私達も始めたばかりだけど。
「神社のうわさはともかく。花騎士魔法少女のうち燈湖さんと幾人かが別のうわさを調べている最中、なのよね」
「そうよ。確か、「絶交ルールのうわさ」について、だっかしら」
「よりによってそれを……昏倒事件の時も思ったけど、あなた達は自ら危険に首を突っ込みたがるわね」
《いやぁ……燈湖は超慎重で心配性なので。親しい人が巻き込まれかねないって判断した「芽」は速攻で「根切り」したがるんですよ》
「その、「絶交ルール」っていうのは……?」
神社のうわさの情報収集をかねて、神浜水名区に点在する神社巡りをしつつ、いろはに被害の出ているうわさふたつについて説明する。
「絶交した後に仲直りしようとすると、たちまちバケモノに連れ去られてしまう……絶交、絶交ですか……」
「うん? どうしたの、いろは」
なにやらいろはが考え込み始めた。
「あ、いえ……灯花ちゃんとねむちゃん、仲良しは仲良しなんですけど、よく喧嘩をしていたので。その度に「絶交だよー」て2人が言い合っていたのを思い出したんです」
《喧嘩する程仲が良いってヤツね〜》
「そういえばちょうど私達が見た時も口論になりかけてた感じだったけど、ういが仲裁に入ってたのよね」
「ふふっそうなんです! 灯花ちゃんが煽って、ねむちゃんが拗ねて、ういが間に入って仲直り。そんな仲良し3姉妹なんです!」
「ふーん……話には聞いていたけど、本当にキュゥべえに捏造された記憶を植え付けられた、とかではなさそうね」
いろはに「絶交ルールのうわさ」の説明と雑談をしながら、私達は「口寄せ神社」だと思われる神社、水名神社に向かっていた。
なぜ水名神社なのかというと、水名神社にはとある言い伝えがあるからだ。
確か……
〈昔、大名がこの辺りを治めていた時代、町人の男が水名城に住む姫に身分違いの恋をした。
2人は強い絆で結ばれていたが、それを知った許嫁によって男は殺されてしまった。
姫は毎日泣き暮らし毎晩神社へ通い、祈った。「どうか、あの人に会わせて下さい」と。
1500日の祈りの後、願いは叶い、姫は死んだはずの男と再会を果たした〉
……とまあ、ざっくり言ってこんな伝説があるらしい。
「口寄せ神社のうわさ」がこの伝説を利用したものなら、「今は」まだ早い気がするけど……まあ、とりあえず行って見てみてから判断しましょ。
「そんな伝説があるんですね……なんかちょっと素敵なお話ですね」
「まぁ、そこまでならね」
「えっ?」
「確かにそこまでなら綺麗な昔話でめでたしめでたし、だけど。この伝説にはあまり知られていない、残酷な「オチ」があるのよ。教育に悪いから、とかの理由でしょうけど……」
「残酷なオチ……ですか?」
「そう。その最後の一文はこうよ。〈お姫様は、愛しい人ともう一度会うために、城下町に暮らす人々の命を神様へ捧げてしまいました〉」
「そ、それは……なんとも……」
オチを聞いたいろはは、綺麗な昔話を聞いた乙女な顔から、子供向けにマイルドに編集していない本当は怖い童話を聞いてしまった時のような、なんともいえない複雑な表情をしていた。
ちなみに、私達も燈湖から聞いていたのだけど、多分今のいろはと似たような顔になっていたと思われる。
「絶交ルール」と「口寄せ神社」の説明やら雑談やらをしていたら、水名神社のすぐ側まで来ていて、いつの間にか日が傾き始めていた。
風に舞う花ービラー♪
と、ここで着信。あの娘達の実力的に、そろそろ決着が付いていてもおかしくないし、となると。
「ごめんなさいね。きっとトウコからだわ」
2人に断りを入れてスマホを取り出し画面を見ると、予想通りトウコからだった。すぐに通話ボタンをタップして耳に当てる。
「もしもし、こちら洋ランの女王」
『おう、今は女王様か。コードネームで切り出したって事は、近場にそれなりに人がいる場所にいるのか』
「ええ、水名神社近くにいるわ。まだ日が暮れ始めたばかりだから、それなりに人はいるわね」
『ほう、「口寄せ神社のうわさ」調査を始めたか』
「そんなとこよ」
さすがトウコ、理解が早い。
「それで? 連絡くれたし声も余裕そうだし。そっちは問題なく解決したのかしら?」
『ああ、予定通り滞りなくな』
「ふふっ流石ね。んー……とりあえず顛末を教えて頂戴」
『おう、了解』
という訳で、聞き出した情報はだいたいこんな感じ。
まず、ステラとデュランタがうわさの検証のため、お互い不満を言い合って「絶交」を口にした。
具体的には、「いい加減カロリー責めを控えめにしてくれないなら、りつさんとは絶交ですっ!」と告げ、対してデュランタは「頑なにぷにぷにへの道を拒絶するなら……うん。絶交も止むなし、かな……」と返して、無事?絶交ルールのバケモノの出現条件を整えたらしい。
ちなみに、「本心から絶交したいと思わないとウワサのバケモノは出ないかもしれないから、2人にはお互い本心を、本気で不満に思っている事を言い合って貰いました」とのこと。
その後数時間置いて、ステラから「気に入った人をぷにぷににしようとするのは、やっぱりちょっと控えて貰いたいですけど、絶交は言い過ぎました。まだまだりつさんの手料理は食べてたいので、虫のいい話かもですけど……仲直り、して下さい!」と言い終え、その数秒後、魔女の使い魔に似て非なるナニカにステラは連れ去られてしまったらしい。
側に控えていたデンドロビウム(トウコじゃない所にウワサを全力で潰す本気度が伝わるわね)とシンビジューム、デュランタの3人で全力で使い魔モドキを追いかけ、魔女結界に似て非なるモノを発見。即突入すると、使い魔?と共に使い魔に操られた様子のステラが現れたので、デュランタにステラの足止めをしてもらい、デンドロビウムとシンビジュームとでウワサ本体を捜索。
全力で探した結果発見したのは、歪な階段と天辺に大きな鐘が付いた、魔女に似て非なる気配を放つ本体。
その、「絶交階段のウワサ」とでも言えるバケモノ相手に、抜群の師弟コンビネーションで難なく秒殺。魔女結界が消失するのと同じように景色が歪み元の場所に出ると、デュランタが足止めしていたステラは正気に戻り、これまた魔女結界に囚われた人と同じように「絶交ルールのウワサ」に囚われていたと思われる幾人か(全員一般人だったらしい)も、気絶した状態で近くに倒れていたらしい。
「……さすがデンドロビウムさんと言ったところね。未知の相手なのにアッサリ倒してしまうだなんて」
「2人がかりとはいえ秒殺って……私、普通の魔女ですら1人だと苦戦するのに……すごいなぁ」
ちなみに途中から、「絶交ルールのウワサ」の顛末を話し出したくらいからスピーカーモードにし、いろはとやちよにも聞いて貰っていたりする。
『交戦してみて、ふと感じたのですが』
「うん?」
やちよがいるからか私達の周りの耳目を気にしてか、スピードモードにしてからはデンドロビウムモードなトウコから、とある情報がもたらされた。
『「絶交ルールのウワサ」で出てきた使い魔的な存在もウワサ本体も、確かに魔女に匹敵する強さでしたが……どうにも魔女のような、禍々しさというか、呪いを振り撒く存在、という印象ではありませんでした』
「へえ……となるとやっぱり……いえ、たったひとつウワサを潰しただけで、予想を確定させるべきじゃないわね」
『ええ、その通りです。とはいえカトレアなら、実際にうわさのバケモノと交戦してみれば、私達より多くの情報を読み取ってくれるでしょう。吉報を期待してます』
「ふふっ、世界に愛された私達に任せなさい」
『とにかく、「口寄せ神社のうわさ」でも、「絶交ルール」のようにエセ使い魔や魔女モドキが出現する可能性は十二分にあります。くれぐれも注意して、油断せず調査して下さいね』
「ええ、わかってるわ」
そう言い残してから、通話を切るトウコ。最後にトウコらしい心配性な面が出たわね。ふふっ。
「さて、待たせたわね。日が傾き始めているし、夜は門を閉じてしまうのでしょう? ちゃちゃっと調べてっちゃいましょ」
「ええ、そうね」
「了解しました!」
という訳で、数分歩いて着いた水名神社にて、私達は二手に分かれて調査をした。いろはとやちよが神社の関係者とか参拝客に悲恋の伝説の事を改めて聞いたり口寄せ神社の噂話の事を聞き込みしてもらい、私とカトレアとで境内を歩き回りの魔力の流れを見て、怪しい所がないかを調べた感じだ。
「こっちは、これといって新情報はないわね」
「口寄せ神社の噂に関しては、知っている人知らない人、半々と言った感じでした」
「ふーん。ま、都市伝説を信じる人なんて、余程のオカルトマニアか魔法少女の関係者くらいでしょうからね。そんなもんでしょ」
「さて、どうしましょうか。水名区内に神社は点在しているし。有名なここじゃなくて、忘れ去られたような寂れた神社の方が当たりなんじゃかって思うのだけど」
「うーん、それはありそうですね……」
いろはとやちよは別の場所を探す気になっているようだけど。
「あのね。あの伝説で――」
Get Up & Go!!La La La Galaxy――♪
と、やちよのショルダーバッグから、多分スマホの着信音が――
「はっしまった!」
慌ててスマホを取り出し、音を消して(タイマー機能だったらしい)画面の現在時刻を確認する。
「ここからだとギリギリだけど、魔法少女脚力なら――」
「何よ、用事を入れてたのを忘れてた――」
「お願い2人共、手伝って頂戴!」
何やら切羽詰まった勢いで頼み込み始めたやちよ。そんな顔をするなんて、余程大切な用事が――
「今日は◯◯スーパーの特売日で、タイムセールがもうすぐ始まってしまうのよ! 今日は急遽水名に来たからうっかりしてた!!」
「「《えっ》」」
……という訳で。何故か私達といろはを巻き込んで、やちよの食料買い出しの手伝いをさせられる羽目になった。
まぁちょうど時間は潰せたからまだいいけど。いきなり私達をこき使うなんて、やちよもなかなか大物よね。あー、西の魔法少女の顔役だし、まあ一応大物かしら。
次回投稿は、6月27日(月)の予定です。