魔法少女花騎士☆マギカ   作:繭浮

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花騎士の新たな戦場、神浜市 2-1

 初めての魔女退治から、約二週間。

 

 平日昼間は(教師に指されたらカトレアに代わりつつ)授業を受け、放課後はブロッサムの手伝いか、トウコ・デンドロビウムと一緒に魔女退治の日々を送っていた。

 

 それに加え、下校時にはこのみと一緒にブロッサムに向かうことが多いので、途中で魔女を見つけた場合は三人(?)で討伐していた。

 

 かえでとかこともたまに組むけれど、二人は他のチームに所属しているので時々だ。ブロッサムに手伝いに来た日にどっちかを連れて行くことがある、くらいの頻度ね。

 

《さっすが女王様! 今日も華麗に決まったわね♪ このみさんのサポートも、さすがベテランって感じよねー♪》

「ふふっ、ありがと。でもまあ、魔法少女の先輩ではあるけど、私なんてベテランにはまだまだ程遠いよ」

 

 今日のカトレアはやたらご機嫌だ。やっとこのみと一緒に戦えたからでしょうね。この娘の魔法少女になった動機が「このみと一緒に戦いたい」だから、こうなるのも当然かしらね。

 

 私とデンドロビウムとトウコ、三人の意見交換の結果、今日から魔力弱めな使い魔の時だけカトレアに代わることにした。この二週間で十分戦場の空気はわかっただろう、と判断したためだ。

 

 ちなみに、トウコは初魔女退治から二日後には戦場に出ている。

 

「トウコさんの戦う者としての覚悟は、すでに十分以上に出来上がっていますね。素晴らしいです」

 

 というデンドロビウムのお墨付きが出るほどで、今のところ魔女相手でも文句なしの活躍を見せている。

 

 私の見立てでは、さすがにデンドロビウムには劣るけど、十分にデンドロビウムの闘い方を実践出来ているようだった。シンビジュームといい勝負出来るかもね。

 

 

 

 

 ドゴオンッ!

 

 今の魔女は少し強めだったので、花騎士組がメインで戦って倒した。

 

「ふぅ。結構手こずったね……」

「最初の攻撃で倒せると思ったんだけど……加減、間違えたみたいね」

 

 とはいえ、少し時間はかかったものの、このみのサポートもあり苦戦はしていない。

 

 このみの固有魔法「花を添える」。

 

 本来の効果は「気持ちが華やいで少し調子が良くなる」程度らしいのだけど、私達花騎士とは相性が抜群に良いみたいで、私とデンドロビウムが世界花の加護で戦う時に使うと、このみの感覚的に通常の3倍は効果が上昇しているらしい。

 

 それを聞いて、カトレアのテンションがさらに上がったのは言うまでもない。

 

「……。来世で、あなた達が幸せになれますように……」

 

 デンドロビウムがグリーフシードを拾ってから、そう呟く。害虫相手にたまに呟いていた台詞だけど……

 

《ゲームで聞いたことある台詞ぅ!!》

 

 ……カトレアと思考が一致する。なんとなく解せない気持ちになったのは何故だろう。テンションMAXではしゃいでるからかしら。

 

 まあそれはともかく。

 

 あの台詞は、「害虫が元は益虫だった」のを意識して言った台詞だ。それを何故、魔女相手に……

 

(……まさかね)

 

 デンドロビウムの呟きで思い付いた予想を打ち切る……けど、もし想像通りなら――あまりに、酷だ。

 

《カトレアに女王様、話がある。バイトの後アタシん家に来てくれ》

 

 ……私の予想が正解であるとでも言うかのようなタイミングで、トウコにお呼ばれした。

 

 

 

 

「グリーフシード、ヨシ。んじゃあ始めるか」

 

 トウコ・デンドロビウムと私達、タメジロウさんの三人が座布団に座って顔を付き合わせる。

 

 ついでに中央にはキュゥべえ。私達がこの世界に来た時と同じメンツだ。

 

 ここ二週間でみんなと魔女退治をし続けて得たグリーフシードは、全部で10。この内このみ達三人に渡した分が3、私とデンドロビウムでシェアして使い切ったのが1で、未使用品の手持ちは6だ。

 

 穢れを吸わせ過ぎたグリーフシードは孵化して魔女が生まれるらしく、限界が来たら孵化前にキュゥべえが回収、もしくは魔法で無理矢理破壊するらしい。

 グリーフシードから孵化直後の魔女はグリーフシードを孕んでいる確率がかなり低いらしいので、無駄に魔力消費しないためにも素直に処分した方が良い、とのこと。

 

 さて、話の前にグリーフシードを確認した理由だけど。強い負の感情を抱いた場合に、穢れが急速に溜まるからだ。

 

 ……つまりトウコは、これからそういう類の話を始めようとしているということだ……はあ、面倒。

 

「キュゥべえ、これまでの会話からして、てめぇは聞かれない限り言わなかったりはぐらかしたりはしたが、嘘だけはついてねぇ。だからこれから問う事にも真実を語るんだろう」

「そうだね。ボクは立場上嘘は言えないし、知っている事なら聞かれたら話すよ」

「そうか」

《……何が始まるの?》

 

 一般人思考のカトレアには、まだ事態が飲み込めていないらしい。まあ私も、デンドロビウムの呟きがなければ気づかなかったかも知れないけど。

 

「魔法少女が希望から生まれて、魔女が絶望から生まれると、てめぇは言ったな。つまるところ、絶望から生まれるってのはなんだ?」

「なんでも何も、そのままの意味さ」

《ちょ、ちょっとトウコ、なんの話?》

「カトレア、今は黙って聞いてなさい。それと――心を静かにしなさい」

《う、うん……》

 

 ……この様子じゃ、確実にグリーフシードを使用する事になるわね。

 

「言い方が回りくどかったか、問いを変えよう。魔法少女は人間がなる、じゃあ魔女は何がなったものだ?」

「…………」

「同じ人間じゃあねえのか? もっと言えば――ソウルジェムに穢れが溜まり切ると、魔女になるんじゃねえか?」

《……っ!》

 

 カトレアの息を飲むような気配が届く。黙って聞いてと言ったからか、発言はしない。良い子ね。

 

「……いやはや、本当にトウコは理解が早い。現場を目の当たりにしてもいないのにその結論に至った少女は、滅多にいなかったよ」

「否定はしない、か」

「合っているからね」

《……どうして》

 

 キュゥべえが肯定した事で、我慢出来なくなったカトレアが呟く。

 

《どうしてそんなことするの、キュゥべえ!!》

 

 その呟きは、次には悲鳴のような叫びに変わった。

 

「それがボクらキュゥべえの――インキュベーターの目的だからさ」

 

 それに対し、キュゥべえは淡々と言葉を紡ぐ。

 

「それが本来の名前だな……この場合、孵卵器の意味か。てめぇらが魔女を作る理由はなんだ?」

「この宇宙はエネルギー不足によって、いずれ死に至る。ボクらはソウルジェムがグリーフシードへと変質する時のエネルギーを回収して宇宙に補填するために創り出されて、地球へとやって来たんだ」

「地球へ、か。まさかの宇宙人の生体兵器かよ……そこまでは予想してなかったな」

「ボクら自身は、武力と言えるものは持ち合わせていないよ」

「魔法少女や魔女を生み出せる時点で、十分武力持ちだろうがよ」

「やれやれ、認識の相違だね」

《だから!! なんでそんなことするのよ!!》

「……っ」

 

 親友の悲痛な叫び声に一瞬、苦しげな顔になるトウコ。けれど感情を押し殺し、質問を続ける。

 

「……カトレアの問いを意訳するぜ。何故アタシら地球の少女達を選んだ?」

「ボクらもボクらを創り出した者も、基本的に感情という非効率的なモノを持ち合わせていなかったんだ。そして、この星の少女が幸福から絶望に転じた際の感情エネルギーは、他の知的生命体に比べ一際膨大だったのさ」

 

 ……最初から感情の読み取れない無表情だと思っていたけど、本当に感情がなかったらしい。まあ、こんな冷酷な事、まともな感情があったら出来ないでしょうけど……

 

 なんにしても。

 

「あんた、吐き気がする程の最低のクズね……!」

「今あなたの頭部を握り潰したら、新たな魔法少女は生まれないのでしょうか」

 

 私が怒りをあらわにし、いつの間にか肉体の主導権を代わっていたデンドロビウムがキュゥべえの頭を鷲掴みにして持ち上げる。顔は笑顔だけど、これは私以上にブチギレてるわね。

 

「……君たち花騎士もその反応か。宇宙の延命に貢献出来るというのに。感情を持つ者の行動は、あいも変わらずわけがわからないよ」

 

 やれやれといった風にそう言うけど、相変わらずそこに感情は感じられない。

 

「ボクを潰すなんて無意味な行為だよ、デンドロビウム」

「「!?」」

 

 背後からキュゥべえの声。空間移動したのかと思ったけど、デンドロビウムは今もキュゥべえの頭を鷲掴みにしている。

 

「代わりはいくらでもいるからね。とはいえ無意味に消費するのはもったいないから、出来ればやめて欲しいかな」

《個体というより群体生命体ってとこか》

 

 静かに意見を述べるトウコ。

 

「……トウコ、意外と冷静よね」

《そうでもないさ、ハラワタ煮え繰り返ってるからな。事前にデンドロビウムに話してなけりゃ、お前達と似たような反応してただろうぜ……それよりも、カトレアにグリーフシードを》

「え?」

《魔法少女が、魔女に……じゃあ私、人を……? ち、違う、私は人殺しなんかじゃ……殺したくないっ殺されたくないっ……》

「っ!」

 

 ……急に静かになったなと思ったら、カトレアの様子がおかしい。

 

 見ると、私の髪色のように美しかったソウルジェムは、赤黒く濁っていた。と同時に、ドロっとした負の感情と魔力がわずかに送られてくる。

 

 状況を理解したデンドロビウムが、返事をするより早くキュゥべえを掴んでいない方の手でグリーフシードを取ってカトレアのソウルジェムに押し当てると、徐々に淀みは薄れ、グリーフシードに不快な穢れが移っていく。

 

《……はっ。わ、私、何を言って……》

「そこまで穢れが溜まったなら、心の貧弱な子なら負の感情に後押しされて、勝手に穢れを溜め込んでくれる。あと10秒くらいあればグリーフシードになってくれてただろうに、実に惜し――」

 

 グシャッ!

 

 デンドロビウムの掴んでいたキュゥべえの頭が潰れた。

 

「あら、力を入れ過ぎてしまいましたか。手が汚れてしまいました」

 

 そう言って、汚物を振り払うかのように手をプラプラさせる。いえ、かのよう、じゃなくて汚物そのものね。

 

「あーあ、もったいないなぁ」

 

 そう言い、新たに現れた方のキュゥべえが駆け寄って、キュゥべえだったモノを猛スピードでガツガツ食べ始めた。少しグロい。

 

「キュップぃ」

 

 声だけ聞くと可愛らしくも感じるゲップを吐いたのがまたムカつく。

 

《落ち着いたか、カトレア》

《え、えぇ、一応ね。ありがと……》

「正気に戻ったようでなによりよ」

 

 間に合って良かった……まったく、世話の焼ける。もう1人の私なんだから、カトレアには私のように、精神的にも強く気高くあって欲しいわね。

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