……ハーメルン内で面白いオリジナル・二次創作小説が多過ぎて読み耽ってたら執筆を後回しにしちゃってただけどす本当に申し訳ないなんでも島村。まぁ夏バテで参っていたのも本当ですが……はよ冬来い。
お母さんの短めのお説教の後は、深夜近くだったのと疲労が思っていたより溜まっていたせいか、軽くシャワーを浴びて軽めの夜食を食べたら電池が切れるようにすぐに眠ってしまった。
ちなみにいろはちゃんは、私達の部屋にお客様用のお布団を敷いて寝てもらった。前回環家ではいろはちゃんの部屋にお泊まりしたから、私達の私室で一緒に寝たかったのよね。
……でもまあ、ほんとに色々と疲れ切っていたので2人して即寝落ちしちゃったけど。本当は前回みたいに布団に入ってからのガールズトークに興じたかっったのよね、ちょっと勿体ない気分……まぁまた機会はあるだろうし、今回は仕方ないと思おう。
☆
《コーッケコー〜〜コォッ!!》
(《うるっさあぁいっっ!!》)
翌朝。まだ日が登り切っていない薄暗い時間に、やけにリアルなニワトリの鳴き声が頭の中に鳴り響いて強制的に叩き起こされた。女王様謹製の目覚まし魔法だ。
《昔、暇潰しに造った魔法なんだけど、使うの初めてだったのよねー……自分で造っといてなんだけど、予想以上にやかましいわねコレ……出来ればもう使いたくないわ》
《同感……ていうか、なんでこんなの造ったのよ》
《んー、なんていうか……滅多に取り乱さないデンドロビウムにドッキリ仕掛けたくて?》
《……無理でしょ》
《そもそも隙がなさ過ぎなのよね……》
無理矢理覚醒させられて不愉快で不機嫌な気分にはなったけど、今日は平日だから仕方ない。学校に行かなければならないのはもちろん、いろはちゃんのソウルジェムに異常がないか調整魔法で調べないとだし、昨晩は適当にシャワー浴びただけだから身体もキチンと洗いたいし……いろはちゃんを環家の朝食時には家に送り届けたいし、電話でウチにお泊まりする事はいろはちゃんの親御さんに言ってはいたけど夜遅くだったから直接会って謝りたいし、登校前に燈湖とか織莉子に事後報告、あっやちよさんにも……あ〜〜んもぅっやる事多すぎるわっ! なんもかんもあのウマモドキのウワサが悪い!
という訳で、まだ寝足りなくて怠いけど布団から這い出て……まだグッスリないろはちゃんの規則正しい寝息と可愛い寝顔を眺めて精神を回復させて……まずはお風呂ね、頭もスッキリするだろうし。
《……とまあ、昨日から今朝方にかけてはそんな感じね》
「そうか……ふーむ……」
《ある意味、こちら以上に大変だったようですね……本当にお疲れ様でした、カトレアさん、女王様》
「だな。お疲れさん」
「ごくん……ん、ありがと」
慌ただしい朝になったけれど、なんとか組み立てた予定通りに雷電家に着いて、燈湖とデンドロビウムに昨晩の顛末を語り終えた。説明は主に念話で行い、女王様と交代しながら環家で頂いた朝食のタッパー詰めの簡易お弁当を急ぎ気味にお腹に詰め込みながらしていた。登校時間が迫って来てるからね、ちょっとはしたないけど仕方ない。
後、織莉子への報告もしたいんだけど……織莉子へ伝えたいのは正確な予知への感謝くらいだし、とりあえずはメールでもいいかな。
ちなみに、いろはちゃんのソウルジェムを(女王様が)調べた結果は、若干穢れが溜まりやすくなっていた程度で、重い後遺症らしき気配はなかった。なので、軽く調整を施しただけで澄んだ。1番の懸念だったけど、大した事なくて一安心……みたまさんとの約束破っちゃったけど、緊急だったし仕方ない、わよね。
……ただまあ、穢れの具現化は未だ未知の現象だから、次発現した時も同じ程度の症状で済むかは不明だし、そもそもまた現れるかすら分からない。危険な橋は出来るだけ渡らせたくはないから、いろはちゃんに私と女王様の2人で「今後穢れはこまめに浄化するように!」と口酸っぱく注意しておいた。
「しかし、神浜外での魔女激減に、見滝原のベテランと思われる魔法少女、ね……巴マミ、だったな。覚えたぞ」
あー、燈湖ったらワクワクした笑顔浮かべちゃって。相変わらずバトルジャンキーなんだから。
「……なあ、いま巴マミって言わなかった?」
と、リビングに入ってきた杏子が、複雑そうな感情の顔でそう尋ねてきた。
「言ったわよ。知り合い?」
「ん……まあ、な。リボンをマスケット銃に変えて戦う金髪巻き髪の魔法少女だろ?」
名前しか言ってないのにそこまで知っているって事は、古馴染みなのかしらね。ま、見滝原と風見野は近隣都市だし、面識があってもおかしくはないか。
「昨晩、水名神社で出会ってね。いろはちゃんが襲われたから、返り討ち……とはちょっと違うけど、止むを得ず強制的にお帰り願った感じよ」
「ふーん……正義感の塊みたいなアイツが、いろはみたいないい子ちゃんを襲うってのがイマイチ想像出来ないんだけど。帰ったら詳しく聞かせてよね?」
「ええ、勿論」
時計をチラ見しながらそう告げて、キッチンへ入っていく杏子。登校時間ギリギリになりつつあるから気を遣ってくれたようね。
「さて、マジでそろそろ出ないと遅刻しちまう。出るぞ」
「んー、了解……」
すぐに詳細を聞かないでくれた杏子に内心感謝しつつ、燈湖と一緒に玄関へと向かう……はぁ、早く起き過ぎたしバタバタしたし、登校めんど……
《もう一度説明するの面倒だから、トウコかデンドロビウムから話しといてね》
《お断りします。女王様、そこは面倒がってはダメです。当事者でなければ正解な情報は伝えられないものです》
《……はーい、わかったわよ》
《……。ふへへ》
渋々なのを隠さない声色ながら了承する女王様に、親心を感じる微笑み声を念話で送るデンドロビウム……尊い。出会った当所にされてたら尊死してたかも、マジ尊い……
《……何気持ち悪い笑い声出してるのよ》
《別に? 仲良きことは美しきかな、て思ってね》
《……ふんっ》
照れ隠しに不貞腐れたように荒く鼻息を吐いて意識を少し奥に引っ込める女王様。ツンデレ可愛い。
登校前に良いモノ見れて、慌ただしかった朝のせいで削れていた私の登校意欲は全回復した。
昼休み。少し前、具体的に言うと魔法少女になる前までは、教室で燈湖と2人で、たまにこのみさんと一緒に花壇の前のベンチで3人でお弁当をつついていたのだけど。
「かえでのそのご飯……ごこくまい、だっけ? 本当に美味しいの? レナ、その色見てるとちょっと食欲失せるんだけど」
「美味しいよ〜? 蛍光色なスプレーたっぷりかかってるドーナツを美味しそうに食べるレナちゃんには言われたくないかな〜」
「あー、それはなんとなくわかるな」
「ちょ、ももこまで!? ももこだってドーナツ食べるでしょ!」
「アタシはオールドファッションドーナツとかの、シンプルなヤツが好きだしなー」
最近は、ももこのチームの3人と一緒に中庭でお昼を取る事が多くなっていた。同じ魔法少女同士で同じ学校だからか、なんか自然とこうなってた。同じ学校とはいえ学年が違うから、情報共有するならお昼休みが1番都合が合いやすいしね。
《となると……トウコがあと数時間動くのが遅かったら、かもれが「絶交ルールのウワサ」の被害にあってたでしょうね》
「不幸中の幸い、てヤツかしらね。喧嘩する程仲が良いとは言うけど、これからは売り言葉に買い言葉でも「絶交」なんて軽々しく口にしちゃダメよ」
《ましてや私達は魔法少女です。言葉に魔力が乗って「言霊」になる恐れがあります》
ちなみに、燈湖は毎回三段重箱弁当だから、1番最初に食べ始めるけど食べ終えるのは1番最後だ。なもんで、基本的に会話に入って来るのは重箱の中身を全部平らげてから。
だから、燈湖の食事中に(念話で)会話に加わってくるのは、燈湖じゃなくてデンドロビウムの方だ。
「ちょっと待って。「かもれ」って何よ?」
「かえでちゃん、レナ、ももこの頭文字を取って、「かもれ」よ。ももこのチーム特に名前とかないし、女王様から「いちいち3人の名前言うの面倒だからなんかチーム名考えといて」って数分前に無茶振りされてね」
「数分って、ほんとに無茶振りね……にしても、「かもれ」ねぇ……なんかびみょー」
《私もそう思うわ》
レナと女王様両方にダメ出しされた。まぁ今急いで考えたのだし仕方ない、想定内だ。
「あっでもでも、3人チームだから、後ろにトライアングルってつけると、なんとなく可愛いかも!」
「かもれトライアングル……うーんなんか違うわ、余計に微妙ね」
「えー、可愛いと思うんだけどなぁ。レナちゃんアイドル好きなのにネーミングセンスは無いよね」
「何よ、かえでだって大差ないでしょ!」
「こらこら、アイドルのグループ名決める訳でもないんだし、そんな熱くなるなよー」
口喧嘩に発展しそうになったところでももこにやんわり仲裁されて矛を収める2人。うんうん、仲が良いのはやっぱり美しいわね。
「ももこがリーダーなんだ、チームももこあたりで良くねぇか?」
食べ終えた燈湖が、重箱を風呂敷に包みながらそう提案して来た。
「ま、それが妥当かな」
「レナもそれでいいわ、シンプルで分かり易いしね」
「えー。カトレアちゃんも何か言いなよー、かもれトライアングル消滅の危機だよ?」
「いや、適当に思いついたヤツだし、思い入れも何もないからどうでもいいんだけ――」
「見ぃ〜つけた〜!!」
と、唐突に大声で割り込んでくるサイドポニーテール。
《……騒がしいのが来たわね》
「やちよから聞いたよー? 昨日は結構大変だったのに、トーコししょーもカトレアちゃんも、なんで最強の私を呼んでくれないかなーっ!」
このメンバーにたまに鶴乃ちゃんが今みたいに(文字通り)飛び込んで来たり、都合が合えばこのみさんとかこちゃんが一緒したりする感じね。かこちゃんは図書委員で図書室で受付、このみさんの方は前からお昼休憩中に学校の花壇の手入れをしてから食事していたから、この2人は時々しかタイミング合わないのよね、残念。
ちなみに、鶴乃ちゃんはよくわからない。いつも忙しなく動き回ってるのは見かけるけれど。
……とまあ、こんな感じに姦しく雑談と魔法少女関連の情報交換をしながらお弁当をつつくのが、最近の私達のお昼休みだ。
(いろはちゃんも、今頃お昼食べてるタイミングかしらねー……あー、同じ学校だったら良かったのにな……)
☆
「昨晩は連絡が遅れてしまって、ご心配おかけしてしまって本当に申し訳ありませんでした」
女王様に認識阻害付きで空輸して貰ったお陰で、朝ご飯に余裕で間に合ったのだけど……お父さん達が対応に出てきたら、何故かカトレアさんは深くお辞儀をして謝って来た。何も悪い事された覚えがないから、私もお父さん達もいきなりの謝罪に面食らった。
「頭を上げて、カトレアさん。あなたが謝る事なんてないのよ」
「そうそう、君の人となりを十分信頼していたからこそ、連絡が来なくても僕らは何も心配していなかったんだ」
「……ありがとうございます」
お父さん達に優しく諭されて頭を上げるカトレアさん。まだ申し訳なさそうに苦笑いを浮かべているけど、少しホッとしているようにも見える。
「ふふ、朝から暗い雰囲気なのは良くないわ。丁度朝ご飯が出来上がったの、是非カトレアさんも食べていって」
「あー、お気持ちはありがたいんですけど。この後急いで寄らないといけない用事があるんです」
「お母さん、流石にしょうがないよ。外せない用事らしいし、ただでさえ今から神浜に帰らないとなんだから」
「あらそうなの? 残念だわぁ。あ、それならせめて――」
家に送ってもらう途中、念話でカトレアさんに「燈湖に昨晩の事の詳細を早めに伝えたいからね。いろはちゃんのご両親に挨拶したらとんぼ返りで向かうわ」って言っていた。
(まだ昨晩の事、なんだよね……)
私のソウルジェムが穢れきって、私という存在が闇に溶けてしまったかと思った瞬間に、私の髪の毛とソウルジェムから吹き出した穢れが融合して顕れた、まるで魔女のような何か。
あの子から感じたのは、本物の魔女に似た負の感情だった……のだけど。不思議と不快感は少なく、親近感すら感じた。本当に、なんだったんだろう。
なんにしても……多分、あの子が顕れてくれなければ、私はそのまま闇に堕ちて、溶けきって完全に闇そのものになっていたんじゃないかな。二度と戻っては来れなかったと、直感的に感じたから。
(もう一度顕れてくれれば。また女王様がいてくれて分析してくれれば。もっとよくわかるのかな……)
……でも、カトレアさんと女王様に口酸っぱく言われたように、気軽に試すべきじゃない。冷たい闇にほとんど落ちかけていたからこそ理解出来るし、2人の言葉には強い説得力を覚えた。
闇に堕ちきった先は、多分――死ぬよりも恐ろしい何かだろうから。
手のひらの内にある二つのグリーフシードを、キュッと握り締める。
ひとつは昨日、偽物の梓みふゆさんと対峙して穢れが溜まったやちよさんのソウルジェムを浄化した時の使いかけ。もう一つは、今朝女王様に調整して貰った後に、半ば無理矢理プレゼントされた未使用品。
(貴重なグリーフシード、それも未使用のをポンとくれるなんて、やっぱり神浜最強格なんだなぁ)
大切に使わなきゃ、と考えていたら、カトレアさんがお母さんから朝食のおかずを詰めたタッパーを受け取って、丁度こちらに振り返った所だった。
「お邪魔しました。じゃあいろはちゃん、また明日ね」
「はい。また」
急いで燈湖さんの家に行きたいのだろうけど……早足ですれ違い様。
《グリーフシード、使い渋るんじゃないわよ》
《穢れは溜まり始めたらすぐに落とす事!》
《あ、はい……》
また注意されちゃった……こちらの表情で、何を考えていたか読まれちゃったみたいだ。
というか、2人の言う通り、使うのを先延ばしにしちゃったからこそ昨晩の事件が起きたようなものだもんね。大切に使うって気持ちに変わりはないけど、それでまた穢れきっちゃったら今度こそ戻っては来れないかもしれないんだ。言われた通り、穢れは早めに除去するように心がけよう。
「ふぅ。ごちそうさまでした……うん?」
「……がいいよな」
「……それなら安心ね」
朝ご飯を食べ終えて。一息ついたと同時、先に食べ終えて食器を流しに置きに行っていたお父さんとお母さんが、キッチンの奥で何やら話しているのが聞こえた。
「2人とも、そんな隅っこでどうしたの?」
食べ終えた食器を持って近づくと、2人は笑顔で話し始めた。
「どうしようか悩んでいたんだけど……不安要素がなくなったから、2人して安心していた所なんだ」
「不安要素……?」
何の話か全然見えてこない。
「いろは、実はね……お父さんの長期の海外出張が急に決まってね。お父さん1人じゃ生活とか不安だから、私も着いていく事にしたんだけど……」
「……え? かっ海外!?」
寝耳に水だった。お父さんもお母さんも心配性だから、一人娘って事になっちゃってる私1人をこの家に残しては置けない、て話になったはず。でも……
「一週間くらい前には決まっていたんだけど、いろはがここ最近なんだか深刻そうな顔をしていたし、頻繁に神浜市に行っていたようだから、なかなか切り出せないでいたんだ」
「そ、そうなんだ……」
うーん……困った。せっかくういの事を思い出せたのに、神浜で手がかりを探さないとなのに、海外なんて行ってなんかいられない。
「学生寮がある学校に転校させよう、って母さんと話し合っていたんだけど。どこにするかがなかなか決まらなくてね」
……その言葉に、内心ホッとする。流石に宝崎から遠く離れた学校に転校させたりはしないだろうから引き続きうい探しは出来るだろうし、やっと出来た友達のカトレアさん達と離れ離れにならずに済む。
「安心出来る、みたいな事言ってたし、条件の良い学校が見つかったって事だよね」
「ああ。近々いろはには――神浜市立大附属の学生寮に引っ越して貰う事にしたよ」
「神浜市立大附属……って、それってカトレアさんの!」
「ふふ、そうよ〜。折角あんな素敵な娘さんとお友達になれたんだもの、学校も一緒の方がいろはも嬉しいでしょう?」
……実は私は、今の学校に馴染めずにいた。誰とも会話が出来ていないという程ではないけど、流行に乗り遅れやすい性格も合間って、明確に友達と言える娘もおらず、クラスで若干浮いた存在だった。
もしかしたら、お父さん達は薄々察していたのもあって、海外出張を機に友達のいる学校への転入をさせたかったのかもしれない。
なんにしても……!
「ありがとう、お父さん、お母さんっ!」
いちいち宝崎から通う必要がなくなるからうい探しも捗るしだろうし、それに!
(友達と――カトレアさんと一緒の学校に通える……!)
初めて出来た友達、それも私を親友と言ってくれる友達と、一緒の学校に通える。それが何よりも嬉しかった。
次回投稿予定は、9月7日(水)の予定です。