魔法少女花騎士☆マギカ   作:繭浮

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いろは カトレアの 神浜ウワサファイル 3-1

 前回のウワサ騒動から一週間とちょっと。しばらく大きな情報が入らない中、なんとなく放課後にクリザンテーモのイートインスペースで菓子パンを食べながら、幾人かで雑談していたとある日。

 

 具体的に言えば、私(と女王様)、燈湖(とデンドロビウム)、ポーチュラカ、おタエさんとおしゃべりしていた。

 

「カトレアさんにトウコさん、良ければシロタエギクさんも。ちょっと相談があるんだよ」

「んー、相談?」

「そうな〝んです、相談だけに!」

 

 ……ポーチュラカの微妙なダジャレになんか体感気温が下がった気がするけど、無視する。

 

 スマホで花騎士をポチポチしながら話していた顔を上げてポーチュラカの方を見ると、メール画面をイジイジしながら難しい顔をしていた。

 

「私がヒユカちゃん家に住まわせて貰うようになってしばらくしてから、何度か来てるメールの事なんだけど……」

「ふむ。確か、鹿目まどかと美樹さやかって2人から、定期的にメールが来てるんだったか?」

「そうそう、それです!」

《何よ、まだ返信してなかったの? さすがにスマホにも慣れて来たでしょ、メールくらい返して無事を伝えときなさいよ》

「いやぁ〜、私もそうは思ってるんだよ。でもなんていうか……私は性格はともかく正確にはポーチュラカであってヒユカちゃんじゃないし、本人と偽ってるみたいで気が引けるっていうか〜……」

「あー、なるほど」

 

 まあ、気持ちはわからないでもないけど。

 

「そういうのは後に回せば回す程、より返信し辛くなるものじゃぞ。ポーチュラカ殿らしく、スパッと返してしまうのじゃ」

 

 どうアドバイスしようか逡巡していたら、商品棚の乱れたパンを整えていたおタエさんが先に答えた。

 

「にしても。スマホに慣れていない時分ならまだしも、ポーチュラカ殿がまだウジついておるのが意外じゃのう」

「えーっとね。うーん……メールの内容の内奥を見れば、私が迷ってるのも分かると思うんだよ」

 

 そう言って、ポーチュラカは自分のスマホを渡してきた。それを受け取った私と、左右斜め後ろから画面を覗く3人(×2)。

 

「……なるほどのぅ。これはどう返すべきか悩むの」

 

 いくつか見たメールの内容は、大きく分けて2つ。

 

 1つは純粋にポーチュラカ、もとい陽友花ちゃんを心配するもの。しかも、ニュースとかでも「莧陽友花さんは記憶のほぼ全てを失っていると思われます」という報道を知っていたのだろう、気遣いメールはポーチュラカが莧家に帰宅?してから半月間程間を空けて、つまりポーチュラカがスマホの扱いに慣れ始めただろう時期に送られ始めている。

 

《……陽友花ちゃんのお友達、気遣いの出来る優しい娘達みたいね》

《そうね。親友と呼び合うくらいには仲良さそうね》

 

 まあ、そのメール自体はほっこりさせられただけなので、ポーチュラカも問題視してはいないでしょう。

 

 けどもう1種の方、こっちが問題だった。

 

《『やっぱり、魔法少女の願いで記憶喪失になっちゃったの?』、『もしかして、魔女化しかけた後遺症とかじゃないでしょうね?』……面倒な匂いがプンプンするわ》

「ああ。そしてこの文言から推察するに」

「うむ。間違いなくまどか嬢ちゃんとさやか嬢ちゃんは、魔法少女の末路を知った上で契約したのじゃろう。それも恐らく、陽友花嬢ちゃんの影響での」

 

 ……この2人が「魔法少女の真実」を知らない上で契約したのなら、ポーチュラカもここまで悩まなかったでしょうね。はぁ、面倒。

 

「ポーチュラカ的に、自分だけ魔女化の心配がない元魔法少女な花騎士だって知らたれたら、気まずくて仕方なくなるだろうな」

「そうなんだよ〜……」

《それでもやはり、早めに返信すべきだと私は思います。あなたはポーチュラカさんですが、世間的にも戸籍的にもミエヒユカさんなのですから》

 

 デンドロビウムがやんわりと促し、続ける。

 

《それとです。ヒユカさんのご両親があなたを「ミエヒユカ」として受け入れているのですから、このお2人も同じ対応をしてくれる可能性が高いです。害虫のような目に見える恐怖に比べたらなんて事はありません、必要以上に恐れなくとも良いのではないでしょうか》

「そっかー、そうだよねっ! 領海内で了解しました!」

 

 そう言ってから、高速でスマホ画面をポチポチし始めるポーチュラカ。多分もういろはちゃんよりスマホ使い熟せてるでしょうね。

 

「なんて返すの?」

「んー、昨日ね。「記憶がないならまた友達になりたい、直接会って話がしたい」ってメールが来たんだよ。でも私は2人とは会話もした事ないから、ワッと大にして出来る話題とダジャレがなかなか思い付かなくて」

《ダジャレはともかく。相手から歩み寄って来ているのだし、いつも通りにしてれば問題ないんじゃないかしら?》

「いつも通り……それってダジャレを連発しても構わないってこと!?」

《……ちょっと軽率な助言だったかしら》

「でも、ポーチュラカはダジャレで出来ているようなものだし……それを抑えるのはどうかと思うし……んー……」

「そうじゃのう。何事も緩急が必要じゃ。最初は軽いジャブ程度に織り込んで、問題なさそうなら曝け出せば良いじゃろう」

「なるほどなるほど! んじゃあ後は実戦で実践して見るんだよ! ありがとうシロタエギクさん、ダブルカトレアさん!」

 

 さすが年の功、またしても私達が逡巡してる間におタエさんが的確な助言をすぐに返す。さすタエ。

 

「それじゃあ早速ダジャレメドレー考えとかなきゃ! じゃあみなさんっ私はこれで失礼するんだよ!」

 

 そう言って、風のように駆けて退店して……と思ったら、すぐに店に戻って来た。

 

「アドバイスのお礼にパンを買って行くの忘れてたあ! んっと……コレとコレとコレ、くーださーいなっ!」

「くすくすっ! 毎度あり、なのじゃ!」

 

 ……ほんとに、風嵐のような元気娘ね。可愛い。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

「えっと……あなたはどなたですか? まどかさんとさやかさんのお知り合い……?」

 

 まどか達が来るより先に、私は記憶喪失になったという莧陽友花の様子を見に莧家を訪れていた。というのも、今の神浜には前の時間軸に来た時と違って、未知数な部分が大量にあるからだ。

 

 ……まどかにとって危険因子になりうるなら、早めに摘み取る。それが私のやり方だ。

 

「私は暁美ほむら。2人とは友達で、魔法少女としての師匠、てとこかしら」

 

 ふぁさっと後ろ髪を払って軽く威圧しつつ、相手と対峙する。

 

 さて、本当に記憶喪失なのか、私達を騙そうとするブラフなのか。見極め――

 

「ほえ〜、そうなんだ! あっ私はミエヒユカ! ヒューカッコいい名前! て言って欲しいんだよ!」

 

――る必要、なかったかしら……記憶があったなら、全く同じ自己紹介ダジャレをこんな無垢な顔では言えないでしょうし。

 

 とはいえ、念には念を。

 

「……そのダジャレ、私達が最初に会った時にもしていたわよ」

「なっなんですとぉー! ……さすがもう1人の私、ダジャレのセンスも同じだったみたいだね……!」

 

 ……なんか戦慄した顔でそんな下らない事を言い出した。いえ、彼女にとってはダジャレは生き様のようなものなのだし、下らないと評価するのはさすがに失礼ね。

 

 とはいえ、今のやり取りで分かった事が2つ程。

 

「記憶を失っても、やっぱりあなたはあなたなのね」

「ほぇ?」

 

 彼女は変わらず、まどかの大好きなダジャレ製造人だったのは朗報だわ。

 

 そしてもう1つ。

 

「先に私が来たのは、あなたがまどか達にとって害となるか、そうでないかを確認するためよ……ま、杞憂だったみたいだけれど」

「まどかちゃんとさやかちゃんがどんな娘なのか、記憶にはないけど。優しい女の子だっていうのはメールだけでも十分伝わって来てたから! 後は私のダジャレでドッカンドッカン笑って貰って、また友達になるだけなんだよ!」

 

 ……本当に、杞憂としか言いようがないわね。毒気を抜かれた気分だわ。

 

「……先輩よ」

「ふえ? あっ私より年上って事かな」

「それもあるけど。あなたは私達の事を名前の後に先輩を付けて呼んでいたわ。だからまた、そう呼んで欲しいの」

 

 そうすれば……まどかと、ついでにさやかも、喜ぶだろうから。

 

「うーん? よくわからないけど、領海内で了解なんだよ!」

 

 ……多分ダジャレを混ぜ込んでいたのでしょうけど……やっぱり私には、ダジャレの良し悪しはわからないわね。

 

「さ、行きましょう。2人とは、電波塔で落ち合う事になっているのでしょう?」

「デンパ塔? んん〜……あー、あの徹頭徹尾でっかい鉄の塔ですかい?」

「……そうよ。それと今のは、ダジャレに疎い私でもイマイチだと思ったわ」

「だよねー。私もまだまだ精進が足りない! 精進料理を食べて初心に帰って頑張らないと!」

(……。ダジャレって、意外と奥が深いのかも知れないわね)

 

 彼女の変わらぬダジャレへの熱意を見ていると、そう思わずにはいられなかった。この時間軸でのまどかはダジャレ好きだし、少し勉強してみるのも良いかも知れない。

 

 ……そんな下らない事を考えている辺り、私もこの娘の真夏のような元気の良さに当てられているのかもしれないわね。

 

(……それが良い事なのかは、私にはわからないけれど)

 

 

 ☆

 

 

「ふむ……電波少女ねぇ」

 

 今日は、ポーチュラカが見滝原から来る陽友花ちゃんの友人に会う日だ。ちなみに曜日は土曜。私達と燈湖達は、最新のウワサと思われる噂について、現地に向かいつつ考察していた。

 

 電波塔の近くに寄ると、どこからともなく女の子の笑い声が聞こえる、という噂。私達はまだ行ってないから聞いてないけど。燈湖達は、鶴乃ちゃんとフェリシアちゃんが出前の器回収帰りに電波塔付近を通った時に聞いたって電話が来たらしくて、速攻で向かって声を聞いたらしい。

 

《まぁ、間違いなくウワサだろうから、私達が現地で魔力探知すれば何かしら掴めるでしょうけど……》

《女王様、少し歯切れが悪いですね。何か懸念でも?》

《ウワサ自体は別にいいんだけどね? 今日ポーチュラカ……ていうより、ミエヒユカの友達が待ち合わせにしてる場所が、電波塔らしいのよ》

「あのメールの娘達がメール通りのお人好しなら、声を聞いたら勝手に調査始めちゃうかもって思ってね。ウワサの厄介さを知らない娘が、安易に踏み込むのは引き止めないとね」

「なるほどな。早起きが得意じゃないカトレアがわざわざ早起きしてまで向かってるのは、それが理由か」

「一言余計よ」

 

 ちなみに、今日はいろはちゃんは連れ出していない。朝早くで迷惑かもっていうのもあるけど、いろはちゃんはみかづき荘に越して来たばかりで荷解きがまだ終わってないらしいから、私達が先行して調べる事にしたのよね。

 

 それはともかく。見滝原の莧陽友花ちゃんの親友2人は、ポーチュラカの事を案じるメールを何度も送って来ていた。だから、2人が記憶喪失の親友に早く会いたいからと気が早って、始発電車で出てもう電波塔に着いている事も考えられる。それなら、私達も早めに向かわないとね。

 

《……何気にカトレアも、トウコの超慎重な性格に毒されてるわよね》

《慎重な事自体は悪い事ではないですし、少し影響を受けている程度ですから問題はないでしょう》

 

 そんなこんなで早歩き気味で向かいつつ念話で雑談していたら、あっという間に電波塔に着いていた。

 

 さて。2人の容姿はポーチュラカのメールに添付されていた写真を貰ってるから、居ればすぐ気付くだろうけど……ん?

 

「この嫌な魔力……ウワサじゃなくて、魔女のものね」

《ふむ。んー……あ。あの非常階段登ってる人達、口づけ受けちゃってるわね》

《断言したという事は、魔女の魔力が纏わりついている、という事ですね》

「で。非常階段を登ってるって事は、電波塔の上から飛び降りさせるつもりか」

《でしょうね。まったく、こんな時にめんどくさいわねぇ……》

「まぁまぁ女王様。見つけた以上見捨てたら後味悪いでしょう?」

《分かってるわよ、助けないとは言ってないわ》

 

 4人で会話しつつ、身体はもうすでに駆け出している。

 

 さて、口づけを受けた人達はまだ階段の半ばくらいだけど……魔女の気配は電波塔の上の方からだ。魔女結界に入って魔女を探している内に、集団飛び降り自殺を決行されてしまう方が早そうよね。

 

 とはいえあの人数、私達2人だけだと全員を止められるかどうか――

 

《……人手の方はなんとかなりそうよ》

「えっ?」

《2人の魔法少女が、私達と同じく非常階段へと駆けているわ》

 

 言われて進行方向をよく見てみると、ちょうどピンク髪ツインテールの娘と青髪ショートヘアの娘が私達より先に非常階段に着いて、駆け上がって行った……って。

 

《カトレアさんの予想通り、始発で来たのでしょう》

「容姿も一致しているし、女王様が魔法少女と断定したなら、あいつらがそうなんだろうな」

 

 どう見ても、ポーチュラカに会いに来た2人――鹿目まどかちゃんと、美樹さやかちゃんだった。




 一応補足として。今回の時間軸のほむらちゃんは、神浜で魔法少女解放云々言うメッセンジャー(たまたまういちゃんの姿だったアレ)を受信していません。

 次回投稿は、1月7日(土)の予定です。
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