魔法少女花騎士☆マギカ   作:繭浮

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いろは カトレアの 神浜ウワサファイル 3-4

「……いらっしゃっいま!?」

 

 入店直後、私と燈湖の姿を見て、驚きと緊張で言葉を詰まらせる雫ちゃん。まあ、その若干怯えを含む反応は、主に燈湖に向けられたものだけど。

 

《警戒する必要はないし、なんなら今日の会話を梓みふゆに話しても良いぜ? ま、あたしらは普通にモーニングと雑談を楽しみに来ただけの客だからな。マギウスにとって有益な情報は話さないから、気にせず普通に接客してくれ》

《……私の秘密にして置きたかった事を暴いたあなたに言われても、あんまり信頼出来ない。けど……うん》

 

ちら、と一瞬私を見てから、

 

「……ごほんっ。失礼、少し喉がむせてしまいました。いらっしゃいませ、6名様でよろしいでしょうか」

「はい」

 

普通に接客を再開した……けど、私以外の全員が訝しげに私を見てくるので、念話で軽く説明する。

 

《少し前に、燈湖が彼女のプライバシーを侵害しちゃった事があったのよ。だから、燈湖を見てとっさに警戒しちゃったのね》

《ほえー、そうなんだ。プライバシー侵害されたら、そりゃあ心外だよね》

《!? あなた、念話が通じるの!?》

《へ? うん、普通に聞こえてるよ?》

 

 うん? なんか予想外の所から驚きの声が上がったわね。

 

《カトレア、最近は普段使い感覚で私が組み立てた方の念話使ってるけど。普通の魔法少女の念話は、ポーチュラカには届かないんだからね?》

《あー、そうだった》

 

 どうやら暁美さん、ポーチュラカに対して魔法少女デフォルトな方の念話で語りかけたみたいね。

 

 すっかり忘れてたけど、ポーチュラカが、というか陽友花ちゃんが魔法少女になり損なった影響の一つで、彼女は花騎士魔法少女以外と念話が出来ないんだったわ。大体念話する時は、私が中継役としてそばにいたから気にしてなかった。

 

 それはともかく。私が雫ちゃんが黒羽根だと知った経緯を軽く思い出す。

 

 まあ正確には、さっき言った通り、雫ちゃんのプライバシーを侵害するような事を燈湖がやらかしたからなんだけど。

 

 

 

 

       ――――――――――

 

 

 

 

 ミザリーウォーターのウワサの件が片付いた、その週末土曜の朝。

 

「とある魔法少女の実家が純喫茶を経経営しててな。10時半までモーニングセットメニューがあるんだ、行こうぜ」

「また唐突ね……まあ、流石に今週は骨休めしたかったし、いいけど」

 

 週中に色々あったからゆっくり休日の朝を過ごしたかったのだけど、半ば無理矢理朝食前にその純喫茶に連れ出された。

 

 まあそれだけなら、たまにある事、で終わったのだけど。

 

《よう、保澄雫。知り合いの魔法少女が、黒羽根の1人が空間転移――つまりはお前と同じ魔法を使ってるのを見かけたらしいんだが。お前、マギウスの翼なんて怪しい集団に入ってたんだな》

《!?》

 

 入店直後、燈湖が豪速球の直球でそう尋ねた。それに対して雫ちゃんは、驚きのあまりポカンとした顔で立ち尽くした。

 

 確かに、杏子が瞬間移動の魔法を使う黒羽根を見たとは聞いたけど。彼女の固有魔法をまだ知らなかった私達も、唐突な暴露にポカンと燈湖を見つめていた。

 

 でまあ。なんやかんやあって……少し具体的に言うなら、雫ちゃんは親友の毬子あやかちゃんにマギウスの翼入りしたのを知られたくなかったから、燈湖が口止め料として交換条件を出した。

 

 その内容は――雫ちゃんが羽根達を送り届けた先を、過去のもこれからのも含め全部話す事。要するに、燈湖のスパイとして動いて貰う、という事だった。

 

《お前、マギウスの翼に入ったのにそれ程深い理由は無いだろ? 大方勧誘されたからなんとなく、ってとこか? ならマギウスの翼に大して義務感は抱いていないはずだ》

《なんで、そう思うの?》

《お前の思考はいつもふよふよしてるからな、見てれば分かる》

《見てれば……そうかな?》

 

 そう呟きの念話を私達に送る雫ちゃん。

 

《燈湖はあり得ないくらい慎重な性格だからね。観察眼がずば抜けてるのよ》

《ええ、トウコの観察眼が異常なレベルなだけで、普通は親友でも気付かないと思うわよ。私達も気付かなかったしね》

《カトレアさんの危機回避に文字通り命懸けですからね、鋭くもなるでしょう》

《命懸け……》

 

 その呟き念話を境に、何故だか私達(燈湖を除く)への警戒は解いてくれた。理由は聞いても教えてくれなかった。

 

 ちなみに、その日はその後普通にモーニングセットをいただいてから帰宅した。

 

 

 

 

       ――――――――――

 

 

 

 

 回想終了。

 

 で、現在。入店直後は燈湖のせいで私達全員を警戒するような気配を僅かに放っていた雫ちゃんだけれど。私達の会話が本当にマギウスの翼に関するものではなったからか、しばらくしたら警戒を解いてくれた。

 

 まあ、警戒を解いてくれた一因として、

 

「私的には、まどか先輩とさやか先輩とは初めましてだから、事故を防ぐために自己紹介するよ! 私の名前はミエヒユカ! ヒューカッコイイ名前って言って欲しいんだよ!」

「!」

「おっ久しぶりに聞いたわね、自己紹介ダジャレ!」

「ふふっ、記憶なくなっても、やっぱり陽友花ちゃんは陽友花ちゃんなんだね! ちょっと安心したよ〜!」

 

ポーチュラカのダジャレのお陰もあるわよね。親友の毬子あやかちゃんと同じタイプの娘がいたから、早めに警戒心が薄れたんだと思われるわね。

 

 ……まあ、それも計算の内で、燈湖はここを選んだんでしょうけど。

 

 そんな訳で。私達は改めて見滝原組へと自己紹介をして自己紹介をされ返して、近況報告や雑談をしつつモーニングセットを堪能した。

 ちなみにセットは1種類で、ドリンクにミニサンドイッチ・ミニサラダが付いたものだ。これでワンコインだから、かなりリーズナブル。

 まあ当然、燈湖的にはこれだけじゃあ全然足りないから、追加でメニューに載っているサンドイッチ3種×3頼んだけど。

 

 

 

 

 その後、10時くらいまで居座ってから神浜を案内がてら、ランチを頂くついでにおタエさんのお店に寄ることに。今日は土曜だから、運が良ければヘヴン……じゃない、天使のパンが売ってるしね。

 

 

 

 

「すまぬのぅ、ついさっき売り切れてしもうた」

 

 ……目玉商品で1番人気だから、この確率が高いんだけどね。ま、他のパンもかなり美味しいから、今回はそれで我慢して貰おう。

 

 ちなみに、今日はアリナさんはいなかった。おタエさん曰く、「わざわざ電話してきての、不機嫌そうに「今日はベリービジーだから」と一言だけ告げて切りよった」とのこと。

 

 とまあそんな訳で。各自好みのパンを買ってから、隣のウォールナッツで昼食がてら、黒羽根の雫ちゃんがいたから話さなかった神浜の現状――ウワサとマギウスの翼に関しての説明を、まなかちゃんを含めてする事にした。

 

「ウワサ、ね……まどか、さやか。巴さんが「神浜の調査が終わるまで近寄らない方が良い」って言っていたのは」

「うん。神浜の魔女が強いのもあるだろうけど、それが一番の理由かもしれないね」

「んもうっマミさんも水臭いなぁ。あたし達だって成長してるんだから、もう足手まといにはならないってのに!」

「巴さんは心配性だもの。まどかとさやかにはまだ早い、と判断したのでしょうね」

 

 さらっと「巴マミ」の名前が出て来て、ちょっと喉を詰まらせそうになった。そうよね、明らかにベテランで見滝原の魔法少女、知り合いの可能性は十二分にあった。

 

 まあ、いろはちゃんの命を狙ったのは今でも許せないけど、杏子の話や燈湖の調査で、お人好しの善人であるのはもう知っている。だから、今はもう怒ってはいない……とは言い切れないけれど、間が悪かっただけと割り切れてはいる。

 

 

 

 ウォールナッツの昼食を堪能した後は、みかづき荘に寄る事にした。クリザンテーモに寄ったのは、お土産として惣菜パンやら菓子パンを買いたかったからもある。

 

 なんでみかづき荘かって言うと。神浜の顔役の1人であるやちよさんに見滝原組と顔合わせさせておきたかったのと、いろはちゃんとまどかちゃんの性格的相性が良い気がしたから会わせたかったからと、いろはちゃんの荷解きがまだ終わってなければ手伝いたかったから……というのは建前で。

 

 単純に、私(と女王様)が、ただ個人的にいろはちゃんに会いたかったからだ。まあ、さっき上げた理由も嘘ではないけれどね。

 

 あとついでに。いろはちゃん達と、電波塔のウワサ――「電波少女のウワサ」に関する情報を、早めに共有しておきたかったからだ。

 

 そんな思いでみかづき荘を訪ねに行ったら、早速玄関前でスマホを持って困り顔をしているいろはちゃんと出会った。

 

「こんにちは、いろはちゃん……どうしたの? またスマホ操作で分からないとこでもあった?」

「あっカトレアさん! ……と、後ろの方達は?」

「ああ、この娘たちは…………」

 

 いろはちゃんのスマホ画面を覗き込みつつ見滝原組を軽く紹介しようとしたのだけど。つい、言葉が止まってしまった。

 

「いろはちゃん、そのメールって……」

「あ、はい……なんか怖いですよね」

 

 そのメールは、私が魔女結界内にいた時に届いたものと同じメールだった。




 少し短めでしたが、キリが良かったので今回はここまでです。

 次回投稿予定は、2月27日(月)でした……色々忙しくて描き終えられなかったので、3月7日(火)になります……本当に申し訳ない。
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