ちなみに、前回短かったのと今回が説明回的なヤツなので、ちょっと長めです。
立ち話もなんだから、いろはちゃんにみかづき荘に入れて貰い、リビングに集まって私に届いたメールを見せる。
ここの住人で今在宅していたのは、いろはさんとやちよさんの2人。まあ、2人には前日に訪ねるって約束しておいたから、いて貰わないと困るんだけど。
ちなみに、フェリシアちゃんは他の学校の友達にして魔法少女の、かこちゃんあやめちゃんと遊ぶ約束をしていたらしく、今日はいない。いつもならそこにポーチュラカも混ざるらしいけど、今日は見滝原組と会う約束があったからね。
「カトレアさん達がウワサの魔力を感知したのなら、間違いようもなくウワサでしょうね」
「勿論、メールの文面だけじゃなくて、いろはちゃんのメールからも私に届いたのと同じ魔力を感じ取れるわ。魔力パターン的に、送信者は同じウワサからよ」
「……普通なら迷惑メールとして無視するか、しつこいようならスマホのメールアドレスを変えさせるかするのがベターなのだけれど」
ピロンピロン♪
『お願いです、返事を下さい』
話している内に、再び同じメアドからメールが届いた。私といろはちゃんのスマホ、両方にほぼ同時に。
「これがウワサからなら、マギウスの翼の罠の可能性もあります。が……」
燈湖は一拍置いて私といろはちゃんに視線を送り、提案する。
「この文章選びからして、かなり高い知能を感じます。ここまで高いなら、もはや人間と遜色ありません。あえて返信してみても良いと思います」
「ふむ……雷電さんにしては、リスクのある大胆な行動ね」
そう。燈湖は「超慎重に予測・調査をして、リスクを最小限まで削っての完全勝利」をモットーとしている。だから、このリスクを伴う提案をしてきたって事はつまり。
「電波塔関連の噂情報。どれだけ集まってるの?」
「……ふふふ」
私の問いに、自身ありげに微笑む燈湖。あまり接点のない人から見たら、少し不安感を覚えるかもだけど……どうやら、調査結果は上々みたいね。
「カトレアはともかく。他の皆さんは何が何だかわからない、という状態でしょう。なので返信する前に、今回のウワサに関する調査報告を致します」
そう前置きして、燈湖が今回のウワサの情報開示を始める。
「まず最初に。中央区、電波塔にまつわる「電波少女」という噂、というか都市伝説があります」
「あー、今朝電波塔で説明されたアレよね」
「電波塔下で耳を澄ますと、たまに女の子の声が聞こえる、でしたよね」
「私は莧さんと来た後、あそこには長居しなかったけれど……その様子だと、まどかとさやかは声を聞いたのよね」
「うん、そうだよ! 最初は半信半疑だったけど、確かに楽しげな声が聞こえたから、私もウワサなんだと思う!」
「……楽しげ? 私の神浜うわさファイルの「電波少女の噂」とちょっと違うわね。「助けて……助けて……」ていう、救いを求める声だったような」
「うわ、それだと完全にホラー系都市伝説ですねえ……」
「神浜は都会なのに、
そう。さっき聞いた声は噂と違い、逆の楽しげな声色、というか笑い声に聞こえた。
「でも声が聞こえて来ましたし、やっぱりもう誰かがウワサに巻き込まれてるって事、ですよね。でも、なんで楽しげなんだろう……」
「それに関してですが。とあるホームページ、神浜都市伝説辞典というものに、ほぼ答えがありましたよ」
「ホームページですか!?」
ホームページと聞いて、過剰に反応するいろはちゃん。
「どうしたの?」
「あ、いえ……フェリシアちゃんが、変なホームページの話をクラスメイトから聞いたって言っていたので。ただそのホームページを開いても、パスワードが必要で入れなかったって」
「ええ。そのパスワードは、電波塔の塔脚に書かれていましたよ。朝早くに電波塔に向かったのは、何も知らない状態でまどかさん達にウワサと接触させないため、というのが1番の理由ですが。二番目として、実際にこの耳で電波少女の声を聞くのと、さらにもう1つ、ホームページのパスワードを確認するためでもあったんです。間に合ったようで何よりでした」
「間に合った……マギウスの翼がパスワードを消してしまうかもしれない、と判断したからかしら?」
「その通りです。私達がマギウスの翼に敵対宣言するより前に、マギウスの翼は電波塔付近で何やらしていたと情報を得ています。なので、私達が近い内にホームページを知りパスワードを入手してウワサにまで辿り着いてしまうと判断して、消してしまう恐れがありました」
「……ほんと、あなたの慎重さと先読みには驚かされるわ」
《激しく同意ね》
《ふふっ戦う者として、生き残る上ではこの上なく有用な精神性ではないですか》
「要するに。今回のウワサの情報はすでに燈湖がほぼ調べ尽くしてくれていたって事ね。ありがたい事だけれど……はぁ」
「……何故そこでため息なのかしら?」
「暁美さんは、まどかちゃんが無茶をしたらどう思うかしら?」
「なるほど」
物凄く納得した顔で即刻頷かれた。なんとなくそうなんじゃないかな、とは思ったけど、暁美さん、燈湖に性質が似てるのね。大切な物を絶対に守り抜く、て決意してるとことか。
ま、それは今は置いといて。
「それで? ホームページにほぼ答えがあったって言ってたけど、具体的に何が書き込まれていたの?」
「そうですね……要点を絞ると、こことここ、でしょうか」
そう言って燈湖が指差した文章を読み上げる。
「『助けを求める声は定期的に変わると言われており、捕らえられている少女が入れ替わっていると思われる』……『※ここ最近は、救いを求める声ではなく、楽しげな声になっているとの情報アリ』……つまり、今監禁されている少女は、ウワサ結界内で快適に過ごしている、と」
「楽しげな声なのだから、そうなのでしょうね……理解不能だけど」
「そして、この都市伝説が間違いなくウワサである証拠が、1番最後に記載されていました」
「最後? ……あー」
「この文面……! カトレアさんの魔力感知がなくても、ウワサで確定ですね」
電波少女の都市伝説のページは、こう締め括られていた。
『神浜市には、電波少女に繋がると思われる噂が囁かれていたが、最近聞かなくなったので、風化する前に記しておく』
――アラもう聞いた?誰から聞いた?名無し人工知能のそのウワサ――
――知らない人からピロン♪と受け取る、謎の人からのイタズラメッセ――!
――それはみんなを監禁しちゃう、名無し人工知能のアマイワナ――!
――悪いことを覚えたせいでデジタルの世界で隔離され、ひとりぼっちで寂しい彼女――
――捕まえた人を手放さないって、中央区の人の間ではもっぱらのウワサ――
――スタンダローン ――!
「どう見ても、ウワサさんの言い回しね」
「ウワサさん……?」
「簡単に言えば、ウワサの化け物の噂話を広める、ウワサ版使い魔みたいなものね」
それにしても。確かに燈湖の先読みや調査能力が優れているとはいえ、集めるのが早過ぎる。絶対燈湖、ちょっと無茶して動いてるわよね。
「ここまで辿り着いたのは、流石雷電さんと言いたいところだけど。流石に1人で集められた訳じゃあないのでしょう? どんな優れた情報網を持っているのかしら?」
「ふふふ。今はまだ、カトレアとだけの秘密です」
「えっ?」
私が知ってる情報源……? んー……ああ、雫ちゃんか。
「ん? ……ちょっと待って、まさか……」
燈湖は純喫茶を退店前、雫ちゃんと念話で何やら手短に会話していた。それはクリザンテーモでおタエさんとも、ウォールナッツでまなかちゃんとも。
ウワサの情報収集に全振り状態のここ最近の燈湖の行動からして――
「今日寄ったとこ全部、電波少女のウワサの大元に辿り着くための……?」
「ご明察です。後は、そうですね……まなかさんから連絡が来れば、大体全てのピースが――」
――テレレレテーレッテレレテッテッレーレテーレ――♪
「――揃ったようです」
会話中に燈湖のスマホに着信。相手は――胡桃まなかちゃんから。
「失礼……もしもし、まなかさん。報告前に、スピーカーモードにしますが良いですね?」
そう確認を取ってから切り替えると、まなかちゃんのどことなく悲痛感の籠った声が聞こえて来た。
『会議中、失礼します。燈湖さんに頼まれ、休憩時間に電波塔下にて電波少女の噂の声を聞きに言ったのですが……燈湖さんの予想通り、その声はまなかと同じ学園に通う少女――最近行方不明になっていた、私の友人であり魔法少女でもある、二葉さなさんの声でした……』
「やはりですか……これで行動方針が確定しました」
まなかちゃんには通話状態のままにしてもらって、会議に参加してもらい、燈湖は次の手を打つ。
「私の情報収集は粗方終わりました。後は電波少女のウワサ――いえ、ウワサさんのセリフからして、現在電波少女として二葉さなさんを捕えている、「名無し人工知能のウワサ」へのコンタクト、ですね」
ピロンピロン♪
そう言い終えると同時、再び私といろはちゃんのスマホに着信。
『魔法少女のあなた達にしか出来ない事です。私が監禁している娘を助けて下さい。そのために――私を消して下さい』
……。なんというか……
「随分と、ウワサの化け物らしくない感じね……」
「ですね。人間臭いというか……と、とりあえす、返信します!」
「そうね」
私といろはちゃんに送られて来てるけど。穏便に話し合いするならお人好しないろはが適任として、いろはが返信する事になった。
「えっと。『あなたは「名無しの人工知能のウワサ」で、監禁しているのは二葉さなさんですか?』……送信、と」
ピロン♪
1秒と間を置かず、すぐにメールが返って来る。
『既にそこまで情報が揃っているのなら、話は早いです。私を消して、さなを解放してあげて下さい。私はウワサの性質上、自分から監禁者を解放する事が出来ないのです』
「んー……『なんで、私とカトレアさんの2人にメールを送ったんですか?』」
ピロン♪
『私は、マギウスの翼からあなた達の情報をある程度得ています。その中でも、カトレアさんならば私を問題なく消せるだけの力を持っていると判断したため。そしていろはさんは――さなの心に寄り添い救ってくれる慈愛心を持っていると、そう判断したからです』
「ふむ。私は火力を、いろははお人好しさを買われた訳ね」
「う、うーん。私で役に立てるかなぁ……」
『……いろはさん。何故、電波少女の声が――さなさんが、今まで捕らわれていた女の子と違って、楽しげだと思いますか?』
「え?」
『まあ、友人とはいえ親友と言える程の深い絆は結べていませんので、まなかも詳細までは知らないんですが……』
しばらく聞きに徹していたまなかちゃんかそう切り出して、「二葉さな」がどんな少女だったかを軽く語ってくれた。
なんでもさなは、学校でも家庭でも孤立した存在、いわゆるぼっち状態らしい。
「……さなちゃん……」
……そういえばいろはちゃんも、宝崎の学校では浮いた存在だったらしくて、半ば孤立状態だったって言ってたわね。神浜ではそんな様子を見せた事なかったから、イマイチ想像出来ないのだけれど……いろはちゃん的に、さなちゃんの境遇に共感出来る部分があるみたいね。
「私の調査では、学校はまだ良い方で家庭での扱いはより酷いものだったようです。家族全員から居ないモノとして扱われ、放任どころか声を発する事すら許されない、完全なネグレクト状態だったようです」
「声すらって……酷い! そんなのってないですっ! 家族なのに、なんで……!」
「……家庭内でも格差は生まれてしまうものだけれど。流石に悲惨ね……そういう娘は、インキュベーターの格好の餌食ね」
「そうですね……そんな家庭環境だったからでしょう。彼女がキュゥべえに願ったのは、「透明人間になりたい」というものだったらしいです。自分はダメな人間で世界から必要とされていない存在だから、透明になって消えてしまいたい、と」
そのセリフに、私と女王様はカチンと来た。世界から必要とされていない、ですって……?
「……許さないわ。誰もがみんな、世界から愛される資格を持って生まれて来るのよ。それを自分から放棄するだなんて……!」
《ええ、ええ、その通りよ。そんな理由で引きこもって、あまつさえ楽しげにしてるだなんて許さない。必ず外に引っ張り出してあげるわ!》
「私も、カトレアさんと同じような気持ちです。誰からも必要とされないなんて、あってはならないです!」
「カトレアさん、いろはちゃん……うん? カトレアさん今、なんで念話で似たような事言ったの?」
《あっ》
まだ私達の
どう言い訳しようか悩み始めた所で、
ピロンピロン♪
名無しの人工知能のウワサ……ちょっと長いから略して、えっと……人工知能、AI……アイと呼びましょ。ウワサとはいえ敵対的ではないみたいだし、あだ名で呼びたい気分だしね。
ともかく。アイから新たなメールが届いた。ナイスタイミング。
『あまり時間はありません。可能ならば、決行は今日中が望ましいでしょう。マギウスの翼……いえ――マギウスの1人が、私の結界内で何やら画策し始めました』
「こう返して下さい。『そのマギウスは、アリナ・グレイですか?』」
「ええっ!? は、はい……」
「アリナさんが、マギウスの翼の最高幹部……?」
燈湖からまさかの人物の名が飛び出して来て、私もいろはちゃんも戸惑う。戸惑いつついろはちゃんは言われた通りの文章を送ると、
ピロン♪
『その通りです』
《……うわ……今まで以上に厄介な事になりそうね……》
女王様と同時に、思わず嘆息してしまう。アリナさんが魔法少女としても強者で癖者なのは、一度絵のモデルになってあげたのとおタエさん情報で、すでに知っている。とはいえまさか、マギウスの1人だったなんて…………
「……まあ、意外、ではないわね」
「あ、あはは……アリナさん、破天荒な方ですもんね……」
彼女が立ち塞がるって考えると、頭が痛くなってくるけど……まあ、女王様とデンドロビウムがいれば抑え込めるだろうから、ひとまず置いといて。
《それより。一番の問題は、「名無しの人工知能のウワサ」、長いからアイって呼ぶけど。彼女?のウワサ結界への入り方が分からない点よね。周辺を軽く飛行したけど、ウワサ結界っぽい魔力は感じたけど、性格な位置が判然としなかったのよ。すでにアリナが動いてるなら、今からじゃが下手に調査出来ないわよ》
「ですね。じゃあ、本人……アイさん?に直接聞いて見ましょうか。『どうすれば、あなたのウワサ結界に入れますか?』」
ピロン♪
『電波塔から飛び降りて下さい。そうすれば、あなたは電波の世界――私の結界に入り込めます』
「と、飛び降り!?」
「電波塔から飛び降りって……アレ? もしかしてあたし達、今朝のあの人達止めなくてもウワサ結界とかいうのに入り込んで、結局死にはしなかったんじゃ……」
「あれ、そうだったのかな?」
「……そうとも限らないわ。ウワサ結界の前方にあった魔女結界に入り込む確率もあったのだから、あなた達は最善手を打ったのよ」
「そうですね。放置していたら少なくとも何人かは、魔女の養分になっていたでしょう」
「うーんそっかー」
さて。方針はだいたい決まった感じだけど……
「今回の討伐メンバー、どうしようかしら。今ここにいる私達神浜組は、当然参加するけど……」
「ごめん、カトレアさん。私としては、マミさんも探したいとこなんだよね。神浜のウワサを調査するって言って出かけてから、一度も帰って来てないのよ。だから私は、他のウワサも調査したいかなって思うんだけど」
「あー、まどか先輩達、私に会いに来ただけじゃなくて、行方知れずのマミさんも探しに来たんだね」
「うん、実はそうなんだ」
ふーん。あの金髪ツインロール、ウワサを追ってる最中で行方不明なのね。
「それならやっぱり、今回のウワサ討伐に参加すべきだと思うわよ。何せ今回は、ウワサを生み出したと思われる最高幹部サマ、マギウスのアリナがいるらしいしね。マミ程のベテランならマギウスの翼にとってはかなりの厄介者だろうから、何かしら知っているかもしれないわ」
「あ、なるほど! それは盲点だったわ」
「……決まりね。私達も、今回のウワサ討伐に参加させて貰うわ」
最後に暁美さんがそう締め、見滝原組も参加する事になった。
「戦力的には、もう十分な気がするのだけれど……雷電さん、他にも参加する、させたい予定の人はいるかしら?」
「ええ、必ず参加して貰いたい方がいます」
やちよさんの提案に、即そう返す燈湖。
『はい! 戦闘は苦手ですが、出来ればまなかも参加させて下さい! さなさんは勿論、アリナさんとも多少面識がありますので!』
「あら、そうなのね」
電話越しに、まなかちゃんも参加表明をする。
「私的には、チームフラワーナイトは全員参加して欲しかったところですが……まぁ、必須レベルでいなくてはならないのは、白菊妙さんだけですね」
詳しい理由は聞いてないけど、燈湖曰く、対アリナ・グレイに、おタエさんの参加は必須レベルらしい。まぁヘヴ……天使のパンが大好物なアリナさんには、おタエさんがいてくれるのは結構なアドバンテージな気はするわね。時折店内でアリナさんにお説教してるのも見かけるし。
ちなみに、燈湖が参加させたがっていた他の花騎士魔法少女だけど。ステラとデュランタは、今日は風見野の天南星さんの所へ泊まり込みで会いに行っていて神浜に不在だから、参加させようがない。
後のメンバーは華恋だけだけど……施設の門限もあるから、決行の時間次第で参加か不参加か変わるから、補欠的な位置かしら。
ということでまとめると。
「では、これより「名無しの人工知能のウワサ討伐&二葉さな救出作戦」を開始致します。参加メンバーは、見滝原組よりほむらさん、まどかさん、さやかさん、ついでに陽友花さん。神浜組からは、チームみかづき荘よりいろはさん、やちよさん。チームフラワーナイトから、私ことデンドロビウムと、カトレア。加えてチームメンバーではありませんが、妙さんとまなかさん。以上10名が、確定で参加になります」
そう言う事になった。このメンバーで更に役割分担を決める訳だけど……
「今回は、いよいよ敵幹部と激突、か」
《そうですね。私にも結果は読み切れませんが、衝突は避けられないでしょう》
《ハァ、めんど……なんで魔法少女同士で争わないとなのかしら。魔女っていう共通の敵がいるっていうのに……スプリングガーデンを見習って欲しいわね》
「ま、文字通り世界が違うからな」
あの世界を見習うのは、正直どうなのかしら……確かに一致団結出来てるように思うけど、結構ゆるふわ設定なとこあるし……て思うのは、ゲームっていうフィルターがかかってしまっているからかしらね。
次回投稿は、3月27日(月)の予定です。
※追記
諸事情によりモチベーションが上がらないため、今日中に描き終えられそうにないので、次回投稿は未定になります。本当に申し訳ない……生きるのが辛い。