……そして投稿が遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。やっぱり最低月一は目指したいところです。
「それじゃあ講義を始めるけど、みんないいかなー?」
「やるならさっさと始めなよ、焦らされんのはあんま好きじゃないんだよね」
「オレも、キョーコに同じく!」
「……わたしもいいよ、聞く準備は出来たから」
「はい、私も、いつでも……」
「りょーかい! でー」
私達チームフラワーナイトの3人はまだ返事をしていなかったからか、こちらを向いて返答を促すトウカ。
すぐに返事しなかったのは、念のため、カトレアとトウコに最終確認の念話をしていたからだ。
「……ええ、いつでもどうぞ」
代表してデンドロビウムがそう告げ、同意として私とデュランタも頷きで答える。
「うん! じゃあ始めようか!」
子供らしい無邪気そうな笑顔を浮かべつつ、トウカは講義を開始した。
「今回の講義の内容は、魔法少女の真実について! マギウスの翼にいる人なら誰でも知ってる、嘘でも冗談でもない、あるがままのお話だよ!」
まぁ、魔法少女の真実について話すのは事実なんでしょうけど……
「これからそれを、ひとつの物語で話すから、よーく聞いてねー」
……わざわざ物語形式にする所が、怪しいし胡散臭い。罠な香りがプンプンするわね。
《……デュランタ》
《ん。多分大丈夫》
魂融合型だから警戒を促そうと思って念話したけど。感じる雰囲気からしていつも通りの平坦……平常心を感じた。全然問題なさそうね。
講義の内容――「魔法少女の真実」に関する部分自体は、特段内容に間違いはなかった。ただ、問題はある。
講義①:ソウルジェムについて
簡単に言うと、物語形式で「魔法少女はソウルジェムを砕かれると死ぬ」事の説明だった。まあ、これに関してはメリットもデメリットもあるから、あえて何も言わない。
講義②:魔女について
「ね、ねぇ……この話って、Dさんって……!」
問題なのは、その物語も、トウカの言っていた「嘘でも冗談でもない、あるがままのお話」が、フィクションじゃなくてノンフィクション――しかも、明らかにメンバーにツルノを含んだ過去のチームみかづき壮に起きた悲劇である事ね。
更には、ソウルジェムのグリーフシード化、そして魔女の孵化。
「じゃ、じゃあオレが今まで倒してきたの……ま、魔法少女、なのか……?」
この情報は、今まで魔女を憎しみのまま何体も倒して来たフェリシアには、深く刺さる。
……サトミトウカ。幼いのに、なんて狡猾なのかしら……明らかな精神攻撃。ピンポイントで、現チームみかづき壮の崩壊への残酷な最善手を選んでいる。そういう語り方をしている。
これには、流石に口を挟ませて貰う。
「落ち着きなさいフェリシア。魔女は人外、魔法少女は人間よ。あなたは死んで悪霊になった元人間を成仏させているだけだわ。少なくとも、私達はそう思って魔女討伐をしているわ」
「ふみゅ、悪霊かー。それも良い例えだね! わたくしは、パニックホラー映画のゾンビとかで考えてたけど」
「そっか、成仏か……」
フェリシアの表情的に、あまり納得いった感じではないけど。とりあえず、一旦は落ち着いたみたいね。
……それよりも、ツルノの顔色がかなり悪いのが気にかかる。けれど、講義はまだ続く。
講義③:ドッペルについて
最後は、物語のBさんが魔女化の真実から立ち直れず絶望し続け、ドッペルを出し、1人の少女に「一緒に魔法少女を解放しよう」と誘われて終了。
要するに――過去のチームみかづき壮の話なら、Bさんはみふゆ、少女はマギウスの内の誰か……まあ、性格的にトウカでしょうね。
「どう? わたくしってすごいでしょ? マギウスの翼に入りたくなったでしょー?」
自信満々に自分達の正当性を謳いたいようだけど。
「ごめん、灯花ちゃん。目的は立派かもしれないけど、どうしても手段が受け入れられないよ」
「はい……アイちゃんも、マギウスの翼は危険な事をしているって言ってましたし……」
「えー?」
いろはとさなの拒否の言葉に、不満げに頬を膨らませるトウカ。流石にこういう所はお子様ね。
「でも、でもさ……コイツらの計画が上手くいけば、魔女はいなくなるんだろ? なら――」
「そこまでだ、フェリシア。コイツらは「本当の事を話す」って言ったけど、真実全てを話すとは言ってないよ。キュゥべえと同じでね」
「そうだよフェリシア……私達を勧誘するための作り話も混ぜ込んで話してるかも……」
キョウコとツルノがそう言ってフェリシアをたしなめる。けど、ツルノはなんか、「そうであって欲しい」って感情が含まれてる感じがする。
うーん……ツルノは結構危ういかもしれないわね。
「本当に、ウソは全然言ってないんだけどなー。花騎士魔法少女さんのー、カトレアだっけ? あなたなら、わたくしが話した事が全部真実だって知ってるよね?」
「え……カトレア、さん?」
……本当に、やり方がいやらしい。私達に、疑いの種を蒔いてくれるとはね。
「いろは達に――魔法少女にとってデリケート過ぎるから、話すタイミングを慎重に見てはいたけど……残念ながら、トウカの言っている事はほぼ真実よ。少なくとも、魔女が魔法少女の成れの果てって部分はね」
ならそれを逆手に取って、綺麗な花を一花咲かせましょうか。
不安げにこちらを見るいろはに、私達にやましい気持ちがないと伝えるために、まっすぐに見つめ返して言う。
「だから私達は――チームフラワーナイトは、目処が立ったらみんなに話すつもりだったわ」
「目処……ですか?」
「マギウスの翼みたいに、大仰な言い方はあんまり好きじゃないけど――私達も、魔法少女の解放を目指して動いていたわ」
「えぇ!?」
「……へぇー」
いろは達は心底驚いたように、トウカは興味深げに声を漏らす。
「当然、目的のための手段は慎重過ぎるくらいに選んでいるけれどね。マギウスの翼みたいに、大のために小の犠牲を良し、とはしていないわ」
「……ふふっ」
そう言ってデンドロビウムに目を向けると、後方師匠顔で意味深に笑い、ひとつ頷いてから続いてくれる。
「私達が元いたスプリングガーデンにも、似たような問題がありました。本来共に歩んでいた存在である益虫が、害虫と化すという問題が」
「あ……」
その一言で、私達の事を――フラワーナイトガールの世界観を知っているいろはは察したようね。
「害虫毒を浄化出来る、世界花の加護の力。今は私達花騎士の魂の宿っている魔法少女しか浄化してくれないけど――それを、普通の魔法少女にも適用出来るようにする」
「ふんふん、なるほどねー。でもそれって、どれくらいかかるのかなー。わたくしたちの目的は、すでに目処が立つ状態まで進捗が進んでいるよ?」
「まあ、貴女達よりは遅れるでしょうね」
「その「遅れる」期間で、どれくらいの小――ううん、大と小が失われちゃうか、ちゃんと脳を働かせて考えてる?」
「けど私達は、小を――一部の魔法少女や一般人を必要な犠牲として進んで使うだなんて、そんな卑劣なマネはしないわ」
「……」
「……」
数秒の睨み合い。お互い引く気はないと気付いたのか、トウカが先に折れる。
「あーあ……やっぱり花騎士さん達は、マギウスの翼にとっての最大の障害かー。ならわたくし達は、これまで通りわたくし達のやり方でいくよ」
「そうですね。では次のステップに進みましょうか」
「みふゆさん、いつの間に!?」
……近くで魔力をかなり消して潜んでいるのは気付いていたけど。やっぱり出て来たわね、みふゆ。
「私は、さっき灯花が話していた物語を体験学習するための案内人ですからね」
「それって、あの……記憶ミュージアムのウワサで洗脳する気、て事……ですよね……?」
「あら、気付いていましたか、双葉さなさん。いえ、雷電燈湖さんからその予測を聞いていた、でしょうか。いずれにしても――」
みふゆがそこまで語り終えてから――奥から、巨大な魔力が迫る。
《デンドロビウム、デュランタ。ここからが本番よ。ウワサが――来る!》
《ん、わかった》
《ええ》
私達が身構えると同時、トウカがベルをチリンと鳴らすと――
ズァッ――
『!?』
一瞬で周囲の風景が変わり、いつの間にかみふゆは一冊の本を持っていた。
「この本はワタシの記憶。講義で語られた物語の記憶です……」
そう言って、悲しげに本の表紙を撫でてから、本を開く、と、そこからみふゆの魔力と共に、ソウルジェムを調整する時のような感覚が襲って来る。
「洗脳だなんて……やめてください、みふゆさん……!」
「お話の続きは、体験学習の後にしましょう。それではみなさん、追体験の旅へ――」
「いってらっしゃーい」
その声を最後に、私の意識はみふゆの記憶の奔流に飲み込まれた――
★
……その後見せられた……いえ、体験させられたのは、まさにさっきの講義の時に聞いた物語そのもの。私はその内の登場人物の1人に追加され、チームみかづき壮のメンバーの1人という視点でみふゆの記憶を追体験させられた。
その物語には、私達の知らない……まあ、トウコは何らかの情報網で知っていたかも知れないけど。ともかく、名前だけでなく容姿や性格すら知らないはずの魔法少女2人――かなえとメルの最期を見せられた。
この体験は、本当にその場に自分もいたかのような現実さがあり、みふゆの記憶そのものなのだと理解した。
けど――
(物凄い
私が魔法への耐性が強いのもあるかもだし、即席とはいえ精神耐性付与魔法をかけているからなのもあるでしょうけど。
私にほぼ効いていない最大の理由はやっぱり――見せられた時期に、私が日本にいるはずがないから。日本とは文明レベルで差異がある、スプリングガーデンにいた時期が長いから、でしょうね。同じ理由で、多分デンドロビウムにもほぼ効果はないでしょうね。
ただ――メイン魂をカトレアにしていたら。深く引きこもらせていなければ、ウワサの精神攻撃の影響を受けた可能性は高いと感じた。それくらい、結構強力。
(トウコの予測通り、引きこもらせて正解だったわね。さすトウ)
ちなみに、トウコも一応引きこもらせている。トウコの精神性なら惑わされる気が全然しないけれど……まぁ念には念を、超慎重なトウコならどうあれ引きこもったかしらね。
(さて。追体験は終わったようだけど……)
とりあえず瞳を開いてみると、目の前に微笑むみふゆとトウカの姿があった。あたりがモヤで包まれているし、精神干渉も続いているから、まだ身体はウワサの影響下にあるわね。
つまり、目の前の2人は本人ではない。
「どうですか、カトレアさん。ワタシの過去を追体験して、少しはマギウスの翼に入る気になりましたか?」
「ええ、少しもならないわ」
「……即答ですか。予想通りではありますけど……」
「なんで即答するかなー。ちゃんと脳細胞働いてる? 女王様の大事なお友達も、魔法少女の呪縛から解放されるんだよー?」
「少なくとも、今のサトミトウカ。貴女がトップなら、私もカトレアも、チームフラワーナイトのみんなも。絶対にマギウスの翼には入らないし、入らせないわ。多分、デンドロビウムも同じ受け答えしてるでしょうね」
「そんなにハッキリ拒絶されると、さすがに傷付くなー」
「全然そんな風には見えないけど?」
んー……ここまでハッキリと拒絶すれば、洗脳失敗判定で抜け出せると読んでたんだけど。まだ続くか。
「もう一度だけ聞くけど。なんでそうまで拒絶するのー?」
「そうね……理由は大きく分けて2つあるわ」
「2つも? 何かなー?」
「1つは、「魔法少女の解放」の仕組みについて、抽象的な言葉ばかりで具体的にはほとんど話していないからよ。まるでキュゥべえみたいで不快なのよ、貴女のやり口」
ま、トウコの予測とアリナの張っている結界の効力を考えて、何となくの答えは出しているのだけれど。結局はあくまで予測、正解かどうかはマギウスにしか分からない。アリナもそこだけは話そうとはしないし。
「もう1つの理由。実際に会話してみた感想と、いろはからの情報から、確かに天才的頭脳は持っているみたいなのは認めるけれど。貴女の上から目線で何もかもを思い通りに動かしてるよーって感じ、舐められてるみたいで癪に障るわ」
「えー。1つめはともかく、そんなくだらない理由でー?」
「人間は自分の欲のために動くものよ。あなたの好きなやり方だと、私達の欲は満たされない。だから拒絶するの。だから、貴女にとってはくだらなくても、私のプライド的に、貴女達のやり方は受け入れられないわ」
「ふーん……わたくしには理解出来ない思考回路で動くんだねー」
「
「うん、まぁ、それはあるかな」
ま、偉そうな事をお子様に言ってるけど、私もまだまだ子供だ。さっきの理論だって、半分はデンドロビウムの受け売りだし。
「んー、もういーや。わたくしの言葉じゃ女王様は動きそうにないし。じゃ、次は現実のわたくし達と対峙してねー」
トウカ(仮)が一方的にそう告げると、私の周囲は一瞬で真っ暗になり――
☆
「ん……」
目を覚ます……とは、微妙に違うかしら。瞼を開けたら立っていたし、精神干渉は受けていないけど未だウワサ結界内だったから、抜け出せた、が正確かしらね。
「さて、他のみんなは……あら?」
近くに誰かがいる気配。一番早く抜け出すなら私かデンドロビウムだと思っていたから、デンドロビウムかと思って振り返ったら。
「……なんでやちよがここに?」
次回投稿は、3月7日(木)の予定です。