魔法少女花騎士☆マギカ   作:繭浮

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 お待たせしました。大変遅くなりましたが、何とかナズナの日の内に描き終えられました。


宿命に抗う少女達1-4

 全力で探知した結果、十数秒でこのウワサ本体の位置を特定し、3人で向かう。とはいえ……

 

《……いろはちゃん。さっき、「敵を欺くにはまず味方から」、とか燈湖に言われたのよね?》

「カトレアさん。はい、マギウスを欺くにはそれくらいしないとヤバいと思う、て言われて……」

「つまり。私とカトレア以外の「講義受講組全員」、トウコの作戦を知ってたって事よね……?」

「……あっ。は、はい、そうなります……」

 

 いろはが、私とカトレアが怒気を放っているのに気付き、気まずそうな顔でそう肯定する。

 

「トウコが完全勝利趣味なのは知ってるし、デンドロビウムが彼女を止めるどころかノリノリで手を貸しそうなのも解ってる。けど――」

 

 

 △ ▼

 

 

「――私、騙されるのって、大っ嫌いなのよ!」

《例えそれが作戦でも、私達の事を思ってのことでもっ!》

「燈湖でも! いえ、燈湖だからこそかしら、もの凄いイラついてるのよね!」

《同じくよ!》

 

 私と女王様の気持ちが、完全にリンクする。今の状態なら、変な失敗をする事もないでしょう。

 

 ま、元から女王様の魔力操作能力なら、ぶっつけ本番でも上手くやってくれると知っているから、心配は一切してないけどね。

 

 なんにしても。燈湖は私達に、良かれと思ってだとしても激しく怒らせた。ならこっちは、燈湖が激しく怒る事をしてチャラって事にする。そう決めた。伝わってくる感情から、女王様も同じ気持ちだと分かる。

 

「……待ちなさい。女王様にカトレアさん、あなた達何をしようと――」

「2人は私達から距離を取って、防御結界張って見てて。私の――私達の、とっておきの切り札を切るわ。正直、周りを気遣う余裕はないだろうから」

 

 出し方は、おタエさんから聞いてる。織莉子から、未来で出しているのを視たと聞いた。

 

 ならまあ――失敗はしないでしょ。おタエさんみたいな強靭な精神とかは持ってないから、初回の今回は初回のいろはちゃんみたいになるだろうけど。

 

 ただし――私には、女王様が一緒にいる。世界に愛された、魔法のエキスパートにしてもう1人の私が。

 

《失敗なんて、ある訳ない!》

《当然。じゃあ行くわよ、カトレア!》

 

 

 ⭐︎

 

 

「申し訳ないのだけれど。マギウスの翼にとって邪魔な存在は、力尽くででも排除しなければいけないの。これは魔法少女救済のための、致し方ない犠牲よ」

「……らしくないよ、マミ。アンタが犠牲を前提で、同じ魔法少女を手にかけるだなんてさ」

 

 ……アタシ達が洗脳魔法を耐えてウワサ結界に戻った直後、景色が歪んだと思ったら現実に放り出された。

 その際側にいたのは、アタシ&デンドロビウムと、デュランタと杏子。そして今、殺意なくコチラにマスケット銃の銃口を向けている、巴マミだ。こちらと目が合った瞬間魔法少女に変身してアタシにぶっ放してきやがった。

 

《カトレアは……他の方達は?》

「さあ? 私達の仲間になってくれたか、ウワサに倒されたか、マギウスに倒されたか……何にしても、私はただ、与えられた使命を全うするだけよ」

 

 そう言った瞬間、巴マミの魔力が爆発的に上がり、魔法少女衣装も大きく様変わりする。

 

「!? ちっなんなんだアンタ! ほんとにマミか?」

「……強いね」

 

 白を基調とし王冠とマントを羽織った、まるでどこぞの女王様だか聖女様だかを彷彿とさせる衣装に変わった。

 

(さっきまでは、杏子1人で会話しつつ攻撃を捌けていたが。アタシとデュランタが混ざってなんとかなるか?って強化具合だな)

 

 これにはアタシも流石に少し驚いたが、冷静に敵戦闘能力を見極める。

 

 しかし、この魔力。

 

「ドッペルと違って禍々しさがねえな。カトレアじゃねぇから断言は出来ねえが……ウワサを纏ってんのかそれ?」

「ご明察。今のこの姿は、魔法少女を救済する者の体現。神浜聖女・ホーリーマミよ。そして――フローレンス」

 

 ズァッ――

 

「……」

「私を助けて、フローレンス。私と一緒に、邪魔者の排除をしましょう」

 

 今度は、禍々しい魔力を放つ魔女――ドッペルウィッチを顕現させる。同時に両方展開出来んのかよ、反則じゃね?

 

「……デンドロビウムさん。これ、流石に厳しい……」

《ですね……では燈湖さん。覚悟は良いですか》

「言われるまでもねぇな」

《ふふっ愚問でしたね》

 

 使えるものは、なんでも使って勝つ。それには、自分の命すら含まれている。まあ、アリナと織莉子から一定の安全性を保証されていなければ、容易には切れなかった切り札なのだが。

 

「アタシの操作は任せたぜ、デンドロビウム」

《はい、任されました》

 

 バカみたいに大量のマスケット銃を召喚し、ドッペルに構えさせる聖女マミ(状態異常・洗脳)の前に出る。

 

「二人は、先にアタシん家へ。大丈夫だ、殺しはしねえよ」

「……アレをやるの?」

「ぶっつけ本番で、よくやろうと思えるね……わかった。マミの事、頼んだよ」

 

 事前に「こんな事にもなるかも」と、アタシが切ろうとしている切り札やこの展開については、突入メンバーには伝えてある。

 

 ……カトレアにだけは伝えてねぇが。反対されそうだからな。

 

「……まさか、1人で私と戦うつもり? あなた達花騎士魔法少女の危険性については聞いていたけれど、流石に無謀じゃないかしら?」

「さぁな……やってみなけりゃわからねえ!」

 

 相手が反則級の事をやる可能性があるなら、それを考慮に入れた対策を考えて、アタシも実行する。目には目を、反則には反則を。

 

「何をするつもり――ああ、ドッペルを出すのね」

 

 アタシのソウルジェムがかなり濁っているのに気付いた巴マミが、アタシ達がドッペルを出そうとしてると判断したようだ。

 

 ああそうだ、正解だ……半分だがな!

 

「これは現段階では理論上で、これが初実験みたいなモンだが」

《様々な情報を組み合わせた結果。成功率は、恐らく90%以上です》

「……何の話?」

「続きは拳で語らせてもらうぜ。頼んだ、デンドロビウム」

《はい! 行きます……!》

 

 ……このドッペルでの反則技はデュアルコネクトとは逆で、アタシがメイン、花騎士側がソウルジェムにいる時にしか恐らく出来ない。前に試しでドッペル発動限界寸前まで穢れを溜め込んでみて、感覚的にそう理解した。

 

 でだ。今デンドロビウムがしているのは、シロタエギクがやったドッペル発動方法と同じ。つまり、今まで花騎士として経験して来た「強烈な負の感情を覚えた出来事を思い出す」、だ。

 巴マミが指摘した通り、すでにかなり濁っていたので、デンドロビウムが負の感情を想起すれば、すぐにでもドッペルが出るだろう。

 

 そして、ここでシロタエギクと、アタシとカトレアとで、大きく違う点がある。

 

 シロタエギク含む他の花騎士魔法少女は、「魂融合型」。つまりは、花騎士の記憶や擬似世界花の力が使える以外は、普通の魔法少女と同じく、ソウルジェムが本体だ……ポーチュラカはまた別枠、というか魔法少女みたいな花騎士とかいうややこしい状態なので置いといて。

 

 アタシとカトレアは、「二つ魂型」で、肉体は花騎士の魂のもので、アタシらの本体はソウルジェム。ただし、肉体と魂は本体である花騎士側が許可すれば、魂の移動は可能。ここが裏技のキモとなる。

 

 花騎士がソウルジェムにいる時にドッペルを発動しても、あくまでソウルジェムの本体は日本側のアタシらだ。つまり、出したのはデンドロビウムでも、出てくるドッペルはアタシのドッペル――いや。アタシ自身が、ドッペルとなる。

 

 今まで他の奴らのドッペルを見て来て出した結論として、「ドッペルを完璧に操作するのは不可能」「ドッペルは長時間出せない」だ。

 ドッペルウィッチというだけあり、ドッペルは負の感情の塊だ。暴走させないよう手綱を引っ張り何とか振り回しているようなものだし、アリナから聞いた「神浜限定自動浄化システム」のせいで、長時間出そうとしてもすぐに浄化されて消えてしまう。

 

 説明が長くなったが……簡単に言えば。デンドロビウムが出したアタシのドッペルなら、デンドロビウムは完璧に近いカタチで乗りこなせるし、デンドロビウムが負の感情を想起し続けている時間分顕現させ続けられる。今回が初の試みだから、はず、になっちうが……感覚的に、間違ってはいないだろう。

 

 ズァッ――

 

 アタシは、ソウルジェムから穢れが噴出するのを目にした瞬間――

 

 

 ▲ ▽

 

――私の意識は強制的に身体に移り、私の背後、そして両腕に強大な穢れの塊が纏わりついているのを感じる。

 けれど、不快感はない。それは当然――この感情は私の感情であり、穢れの中にトウコさんの魂を感じるから……意識は、初発動なのもあってか朦朧としているようですが。今まで見て来たドッペルと違い、暴力的な感情は微塵も感じられない。

 そして、私の魂とトウコさんの魂が、いつも以上に強固に繋がっているような感覚。確かにこれならば、ドッペルを――ドッペルと化したトウコさんの力を、十全に使える!

 

「……なんなの、あなたのドッペル。言葉に出来ない違和感みたいなものを感じるわ」

 

 トモエさんに言われ、チラリとドッペルトウコさんに視線を走らせる。

 

 背後には植物のデンドロビウムのような茎が密集しており、葉も沢山付いていますが、茎色が鮮やかな緑なのにシワだらけだったり枯れそうに黄ばんでいるのに肉厚で張りがあったりと、チグハグです。葉は、所々傷付いていたり黄ばんでいたりしていますが、枯れそうではなく艶々と光沢があり、やはりチグハグ。

 白い根は触手のように大量に伸びていて、私の腕に巻きついており、肘から先は何故か花開く寸前の色付いた蕾が、ボクシンググローブのように装着されていました。同じ蕾は茎に大量に付いていて、花開く寸前の状態で垂れ下がっている……とまあ、こんな容姿です。

 

 さて。

 

「お互い長期戦は望んでいないでしょう。始めましょうか――闘争を」

「!?」

 

 ジャキキキキキ!!

 

 私が攻撃の意思を向けると、蕾達は一斉に伸びて拳の様に構え、私自身も蕾の装着された腕を前に突き出し構える。

 対するトモエさんは、先程までの慈愛の表情を消し、闘志をむき出しにした真面目な顔付きになり、更に大量のマスケット銃を顕現させ――

 

「スパッツァ!!」

「華砕拳・乱魔!」

 

 無数の銃弾と無数の蕾拳がほぼ同時に放たれた。

 

 

 ⭐︎

 

 

(これが、カトレアのドッペル化か……)

 

 私は、徐々に思い出して来ていたフラスベルグ決戦での死にかけた時の痛みと死への恐怖を思い出し、かなり穢れが溜まっていたカトレアのソウルジェムの穢れを一気に増幅、ドッペルとして顕現させた。その際、予想通りに私の意識は身体に戻り、カトレアの魂はドッペルの方に移動している。

 

 その姿は、一言で表すなら「炎色のカトレア」。植物のカトレアに似た姿で、根は私の足に絡みつき、毒々しいまでの緑色をした糸のように細い茎は私の脇の下を通って頭上に伸び、葉は直刀のようにピンと上を向き、アンバランスに大きな炎のように赤い花を複数咲かせている。

 

「カトレアさんのドッペル、やっぱりお花のカトレア見たいですね……綺麗で、強そうです」

「そうね……でも何でかしら。確かにドッペルの禍々しい魔力は感じるのに、凶暴性を感じないような……」

 

 少し離れた場所で、何やら2人が感想を言い合っているけど。それは今は置いといて。

 

 ギ¬ ∟ギガ+ ガガガガ!|

 

「邪魔、消えろ」

 

 ボ!

 

 巨大花から放たれた火炎弾の一撃で、ウワサは一瞬で燃え尽きた。ふむ、これも予想通り、ドッペルカトレアの力を100%扱えてる感覚。

 

「うわぁ……ドッペルが強力なのは、私も出した事あるから分かりますけど……」

「……勝てるイメージが浮かばないわね。私がドッペル出したなら……いえ、何となくだけど、勝てる気がしないわ」

 

 んー、でも。初めてだからカトレアの意識がないのは仕方がないとはいえ、やっぱり真価は――

 

 

 ⭐︎

 

 

 ちょっと考え事をしている内に景色が歪み、記憶ミュージアム(廃墟)へと戻って来た、

 

「ティロ・セントドッペリオン!!」

「魔・華砕拳! 破城ノ極(ハジョウノキワミ)!」

 

 ゴッッ!!

 

瞬間物凄い衝突音と衝撃波に襲われて、思わず耳がイカれるかと思った。ドッペル出してるおかげか、ちょっとキーンとする程度で済んだけど。

 

「予想はしてたけど。デンドロビウム、というか、トウコもドッペル化してたわね」

 

 そして、多分今の必殺技の打つかり合いで打ち勝ったのは、デンドロビウムの一撃。腕のグローブ(蕾?)を華砕拳と融合してトモエマミ(なんか前と衣装やら魔力やらゴチャゴチャのおかしな事になってるけど)の砲弾を殴り飛ばし、砲台を破壊していた。

 

「パ、パワーが違い過ぎる! 私達以上だなんて――」

「フッ!」

 

 ゴズッ!

 

「ぐうっ!!」

「魔・華砕拳! 破城ノ極!」

 

 デンドロビウムはいつも以上の振動を伴う震脚の後、もう片方のグローブ華砕拳をトモエマミ本人へと放つ。

 

(ふむ。追撃してトドメを撃つか、あーでも過剰かしら、うっかり殺しちゃうかも――)

 

「……!」

 

 と逡巡していたら、迫り来るグローブ華砕拳に対して近くにあった何かを投げつけ、

 

 ボンッ! バシュウウウウ……!!

 

 赤い何かは破裂し、内容物を盛大にぶち撒け煙幕と化した。

 

「……粉末消化器だったようね。女王様、ドッペルの魔力のこもった炎だと不燃性を無視して燃えて粉塵爆発するかもだから、やめてちょうだい」

 

 煙に巻かれた瞬間魔力も消えたから、追撃の火炎弾を放とうとしたら止めれた。

 

 デンドロビウムはというと、華砕拳を放った姿勢のまま、残心だっけ?を数秒間していたけど、チラリとこちらを見てから構えを解く。

 

「今の私が魔力をほとんど感知出来ない時点で、逃げられたか気を失ってるわ。ドッペルも解除して良いわよ」

「……。ふうっ」

 

 デンドロビウムにそう告げると、止めていた息を吐き出すようにして脱力し、ドッペルを消す。私もドッペルを消しつつも、魔力感知を続ける。

 

「さて。煙邪魔」

 

 あまり炎以外使わないのだけど、魔法で風を生み出し煙を吹き飛ばした。

 

「誰もいませんね……逃げた、んでしょうか」

「……そう見たいね。魔力が遠ざかっているわ」

 

 にしても、さっきのトモエマミ。なんかウワサを着ていたというか、融合合体していたというか。ともかく複数の魔力がごちゃ混ぜになってて気持ち悪かったわね。

 

「はぁ……なんか、すっごく疲れました」

「ええ。お疲れ様、新リーダーさん」

「あー、そうでしたね……うん、頑張らないと!」

 

 ともかく。敵は全部撃退出来たけど……私とカトレアには、まだやる事がある。カトレアとトウコは、まだ気を失ってるみたいだから、先に私ね。

 

 緩む空気の中、私はボロボロになって今にも倒壊しそうな廃墟をワザとカツカツと音を立てて歩き、デンドロビウムに近付く。

 

「あー……はい」

 

 私の足音で私の感情を理解したデンドロビウムは、姿勢を正して私の正面に立つ。

 

 私はそのまま止まる事なく、デンドロビウムの前に辿り着き。

 

 パチンッ!

 

「「!!」」

 

 デンドロビウムに、生まれて初めて平手打ちをした。




 内容的にはもう少し描き進めたかったですが、文字数がかなり増えそうなのでキリの良い所までです。

 次回投稿予定は5月27日(月)になります。

※追記
 しばらく鼻風邪状態が続いておりまして、頭が回らずあまり続きが書けておりません。ので、次回は6月7日(金)に延期となります。申し訳ありません。
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