突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが?   作:内藤悠月

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ガチャ出現。

 朝、目を覚ますと、私の目覚めを出迎えてくれたのはガチャだった。

 スーパーやコンビニなどに置かれているあの二段重ねのやつだ。白い筐体に大きく膨らみカプセルを保持する部分。そして出てきたカプセルを受ける皿のあるあのタイプのマシンだ。

 ディスプレイには何も貼られておらず、無闇矢鱈に大量の黒いカプセルが入っているのが見て取れる。

 そんな筐体が部屋の真ん中に鎮座している。

 

 私は兄がこれを悪戯としてここにおいたのかと思ったが、それは違うらしい。

 なぜならこの筐体、重すぎる。

 動かそうとしてもピクリとも動かないのだ。

 まるで床に張り付いているのか、それともその場に固定されているかのごとく動かない。

 全体重をかけて少しでもずらそうとするが、それでも動かない。傾きすらしない。

 それどころか手にかけた部分が凹みすらしないのだ。

 動かすことを早々に諦め、部屋から出る。

 朝飯を食べてから考えよう。

 

 

 

 朝食を済ませ、ガチャと向き合う。

 その際に両親に筐体のことを聞いてみたのだが、全く心当たりがないと答えられたあげく、筐体を見せてもまるでなにもないかのような反応を返す。

 筐体のことを認識していないようだ。

 

 これは私にだけ見える幻覚のようなものか?

 

 私はそこではたと思いつく。ガチャなんだから回してみれば良いんじゃないかと。

 財布を引き出しから取り出し、筐体に向き合う。

 お金を投入しようとして新たな事実に気がつく。

 

 1回800円。しかも上も下も同じ値段だ。

 

 高い。

 なんだその値段は。本当にガチャかこれ。

 なにか別の排出機じゃないか。

 どこかの事務所ではこのタイプの筐体をログインボーナスと称して出社確認に使うと聞いたことがあるが、それの同類ではないのか。

 わけの分からなさに混乱を深める。

 

 なんで1回800円のガチャ筐体が部屋にあるんだよ!

 

 脳内で何度とも繰り返したツッコミがうっかり溢れる。

 

 これ以上ツッコミどころを見つけないうちにささっとお金を投入。手持ちの小銭を全部持っていかれた。

 なんでこんな訳のわからないものに金溶かしてるんだろうという虚無感に心が支配されそうになった。

 

 ガチャガチャ……と音を立てながらもなめらかに回るハンドル。

 排出されたカプセルは「SR」と書かれた白いカプセルだった。

 

 色が! 違う! それにその記号は別のガチャだろうが!

 

 些細な挙動から不条理を放つこの機械、壊してやろうかという気持ちにもなるが、今はカプセルだ。

 もしかしたらこの不条理を覆すだけのなにかが入っているかもしれない。

 もしそうなら私は許そう。

 そう思いながら蓋を開く。それと同時に、足元にどさっという音が。

 

 SR・高級ブランド牛 500g

 

 そう書かれた紙がカプセルの中に入っていた。音のした方向に視線を向けると、そこには高そうな桐箱に入った牛肉が落ちていた。

 

 クソがッ! 生物(ナマモノ)じゃねーか!

 

 

 結局その後、見なかったことにしたかった牛肉は冷蔵庫にしまっておいたら夕食の材料になりました。


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