突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
タイヤ。乗り物や手押し車など、何らかの物を地面に平行に移動する際に楽に扱えるように人類が作り出したものである。
性質上、地面に接地している部分にはタイヤが必要になるため、ほぼ同じ大きさ、形状のものを作成する技術が求められる。
また、さらに地面の凹凸をもろに受けるため、それを緩和する試みが人類の歴史上、何度も試行錯誤されてきた。
今回はタイヤが出た話だ。
タイヤだけ出てもどうしようもないって?
まあはい。
3キロ落とすのに大変苦労した。
太るもとは兄が勢いで使い切ったため、これ以上肥えることはないが、一度ついた肉はそうそう落ちない。
普通に生活しているぶんには体を維持する程度にしか食べ物を必要とせず、またその逆も然り。
痩せるということは、体を維持するエネルギーよりも少ない食料摂取しかなく、それを行うには結局のところ2つしか無い。
1つは食べる量を減らすことだ。
シンプルでわかりやすい。維持するエネルギーよりも入ってくるエネルギーのほうが少なければ体内にあるエネルギー、つまり肉を使うしか無い。
最も、身体がガタガタになるからやめたほうがいいが。
もう1つは、体を動かして、維持に必要なエネルギーを引き上げることだ。
運動量を増やせばそれだけエネルギーを必要とする。シンプルなことだ。
問題は元々の身体の維持に使われているエネルギー自体が相当に大きいため、結構な量の運動をしなければならないことだ。
日課にマラソンを加えてなんとか減らせた。
ダイエットはもう二度とやりたくねえ。
さて、ガチャをさっさとしてしまおう。
あんまりガチャのこと考えたくねえ。
R・タイヤ
出現したのは、タイヤだった。
乗用車用のあのゴムタイヤだ。
銀の金属色のホイールに、黒いゴムがはまっている。
横倒しの状態で出現したそれは、回っていた。
ゴムが回転を止めているのか、時計の秒針ほどの速度でしか無いが、なんの外力も受けずに回転を続けている。
直球で変なやつが来たな……。
私は思わず呻く。
回っている以上、手で触れたり持ち上げたりするとこれは即走り出してしまうだろう。
さりとてここはテラス。
私の憩いの場で、そんな場所にこれを置きっぱなしにはしたくない。
というかすごい勢いで擦れて唸ってるし。
うおおお、触りたくねぇぇぇ……。
そうか。
兄にやらせよう。
こいつの変なところはどうせ勝手に回るだけだろうしな……。
後日。兄が
がっしりと両手で押さえ込んで持ち上げようとしたところ、反動で両腕がねじ切れたのだ。
それだけで済めばよかったのだが、腕の配線や骨格の残りが身体を強引に牽引。
そのまま胴体まで破断させた。
恐ろしい回転力……。
人間がやってもおそらくは手が滑るだけのオチになる。
良くも悪くも
なおタイヤは持ち上げた瞬間に縦向きになった結果、地平線の彼方にへと走り出して帰ってくることはなかった。
グッバイホイール。
戻ってくると兄が悪用を考えそうだからもう帰ってこないでくれ。