突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
鎖。金属の輪をつなげて作成された紐状の物のことである。
糸を撚りあげて作り上げる綱と比べて、金属でできているぶん強度が優れている反面、重量は金属である通り非常に重い。
またその無骨で物々しい見た目から、創作上では武器として使用される。
主に鞭の代わりに振るったり、まるでしっぽのように自由に操ったりして、先端につけられた鏃や分銅を相手にぶつけたりする。
今回はその鎖が出てきた話だ。
兄がついに宝の地図のダンジョンから宝箱を略奪してきた。
これがまたバカでかいサイズの金庫で、しかも鍵がかかっていて開けられないのだ。
どうにもダンジョン内に宝箱の鍵があったようなのだが、爆破の過程で破壊してしまったようなのだ。
それらしいパズルの組み込まれた石版が砕けていたので多分これが関係していたはずなのだが。
兄は
もうなにをしようかだいたい予測がつく。
案の定グラインダーを取り出して金庫の扉を切断しにかかっていた。
それも
ダンジョンのお約束に明後日の方向から蹴りを入れていくの本当に上手いな兄よ。
そういうと兄は照れくさそうにしていた。
別に褒めていない。
さてガチャを回しておこう。
こういうときって金庫が出て紛らわしくなったりするんだよな……。
R・鎖
出現したのは鎖だった。
大きめの鎖素子が連なって出来ている鎖で、軽く持ち上げただけでも相当な重量がありそうに見える。
あとメッキも何もされていないためにひどく鉄臭い。
あと……それと。
もう目に見えてイヤなのだが、鎖が浮いている。
何かを参照して動いているように、空中で身じろぎするような動きをしているのだ。
ええ……こわ。
すでに空中に浮いているのもわからないし、なぜかそれで動いているのもわからない。
しかし、ここに放置するわけにも行かず、試さないわけにもいかない。
例によって機能を把握していないと兄がヤバい使い方を見つけてろくな目に遭わない。
予習と対策は大事である。
そう思って、鎖に触れた。
その途端、鎖は私の意思に感応するがの如くぐにゃりと曲がったのだ。
私の意思に従ってうねうねと動く鎖。
面白いほどイメージに簡単に追従して来る。
まるで創作の鎖使いのように、好き放題に鎖を動かせるために楽しくなってくる。
……が、これをまともに使おうってのは実際無理だろうな。
だってさ……長さが60センチメートルしか無いんだぜ、これ……。
後日。兄が壁や崖を登る道具にした。
空中に固定できるってことは、つまり壁にも固定できるってことだろ? と言わんばかりに、握りとなる木材を端の金属にねじ込み、尺取虫の如く鎖をうねらせて伸ばしたり縮めたりすることで、垂直な壁をほぼ自動で登っていけるようにしたのだ。
たしかに空中で動きを止められ、鎖なので身体を支えるのに十分な強度があるとは言え。
60センチしかない鎖を使って壁を登ろうという発想は、頭がおかしいとしか言いようがない。
命知らずかよ、兄……。