突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが?   作:内藤悠月

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金庫の中身

 創作において、海賊は宝を溜め込むものだと相場が決まっている。

 それは宝を溜め込むことが出来る程の力を持つ強大な海賊が敵方や過去の偉人として登場するためであり、そうでない海賊は十把一絡げにやられるだけのモブに過ぎない。

 そしてそうした宝を溜め込む海賊は、必ず決まった場所に、罠や試練とともに宝を隠すのだ。

 それを得るにふさわしいものか試しているのか、単に宝を奪わせないための仕掛けなのか。

 いずれにせよ、物語を盛り上げるために罠と宝は用意される。

 出た以上は暴かれ、宝は誰かの手に収まるのだ。

 

 今回は宝の地図の座標にあった宝を検分する話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 改めて、金庫から出てきた金貨を見比べているとどうも違う絵柄のものが混ざっていることに気がつく。

 女性の横顔が描かれたものがほとんどだが、一部にはいかつい男の人が掘られているもの、またなんらかの家紋のようなものが造形されているものなど、同じ国で作られたとは想像し難いものが混ざっている。

 

 そう思いながらドラゴンの絵柄が描かれた金貨を手の中でもてあそぶ。

 これ両替とか利くんだろうか。

 というか、そもそも利用出来るだろうか。

 大きさもそんなに違わないし、金としての価値はそんなに差がないように思う。

 

 コインを弾き、後ろの箱へと飛ばす。

 直後、弾いたコインが爆発を起こした。

 百均のクラッカー程度の爆発だが、私の心臓を驚かすには十分な威力。

 そ、そういうのも混ざっているのか……。

 

 金貨の他に宝飾品に刀剣類と、見るからに金になりそうなものばかりが山積みとなっている。

 刀剣類よりは宝飾品が多いあたり、奪いやすい物を優先して集めたように見える。

 

 宝飾品が傷つかないように、ふわふわの材質が貼られた宝石箱に納めていく。

 まあ……最悪なんかあったときに……金に出来るから……。

 面倒事を呼び込みそうだが背に腹は代えられない時があるかもしれないから……。

 そう思いながら。

 ろくでもない効果が付与されてなければいいが。

 

 刀剣類はまとめて兄の倉庫に。

 どうせ使うだろう。

 

 と……目につく奴以外を片付けていったのだが。

 やっぱこれだよなぁ。

 一番目につく、そしていかにもヤバそうな代物。

 

 金で作られた器だ。

 いわゆる盃と呼ばれる、足が長い器である。

 酒を入れて飲むにはいささかでかすぎる節はある。

 運ぶのに私が両手で抱える必要があるほどの大きさがあるのだ。

 加えて、もう存在感がすごいのだ。

 中央にはめ込まれた赤い宝石がなにかの魔力を溜めているかのように怪しく輝き、その光を受けて金の盃がなにかを帯びてその色鮮やかさを強調している。

 

 それに、それにだ。

 その器の中には、得体のしれない液体が並々と満たされており、それは時折静かに波紋を広げるのだ。

 恐ろしいことに、ここまで金庫ごと爆撃を受けて、サメ機人(シャークボーグ)に乱雑に運ばれてきたはずなのにその中身は一滴足りともこぼれた形跡がない。

 

 ともすれば、だ。

 この中身は何があってもこぼれないのか、それとも逆に私が見てから器の内側に湧き出したのか。

 何れにせよ、恐ろしい液体である。

 中身の正体を確かめておかないことには、危険だと言わざるを得ない。

 

 そう思って、杯を持ち上げて運び出そうとしたときだ。

 足元にあった刀剣類を入れた箱に躓いて、思いっきり杯の中身を、地面にぶちまけてしまった。

 

 や、やってしまった……。

 私がかぶらなかっただけマシ、だと言っておくしか無い程度に見事にぶちまけてしまった。

 その結果地面がキラキラと光り輝いている。

 まるでなにかその土が力でも得たみたいに、だ。

 

 それで終わればよかったのだが、私が呆然と見ているうちに、その土からにょきにょきとなにかの植物の新芽が生え、ありえない速度で生育し始めたのだ。

 互いに絡まり合い、より大きな植物にへと変貌していく。

 

 おお、おお……。

 私の目の前で新たな植物が芽吹いたと思ったら、あっという間に大木に変わった……。

 もしかして、この杯の液体はこう……。

 生命の原液、的な……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日。兄が久々に呼び出したサメもどきに、杯の中身の液体を飲ませていた。

 それがどうなったかというと、恐ろしいほどの苦しみを感じているのか激しくのたうち、さらには全身からバキバキ、と激しい音を立てながらその形を変化させていったのだ。

 めったに声をあげないサメもどきが悲鳴をあげながら変化していった先にいたのは。

 サメ頭にサメ肌の……ゴリラ?

 丸太のように太い両腕を持った怪生物だった。

 

 それを見た兄はゲラゲラ笑ってるし、こいつほんま最悪だな、との思いを強くするのだった。

 あ、勢い余って兄がサメゴリラに殴られた。


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