突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが?   作:内藤悠月

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R チャリオット

 戦車。今回の戦車は一般的にイメージされる、大砲のついていてキャタピラで走るアレではなく、馬に引かせる戦争用の馬車みたいなものである。

 御者と戦士を乗せることで、馬の速度で戦闘を行うことが出来る乗り物であり、騎兵の前の段階の兵科であると言える。

 また、馬車と同じく輸送の面でも優れているため、装甲車として利用しようと考えた人間が歴史上結構いたようだが、実際に使われたことはあまりないようだ。

 

 今回はその戦車、チャリオットが出てきた話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 兄がやっとこさ、次の層の攻略に移った。

 まともな移動手段がなかったり、惑星ガチャだったり、宝箱だったりで結構な時間がかかっていた。

 ダンジョンが不合理な空間だということはそれだけでも痛いほど理解できてしまうだろう。

 本来ダンジョンとは攻略されないために罠を張り巡らせるものであり、広大な空間は究極的に言えばただそれだけで進軍を阻む壁となる。

 それが海であればなおのこと、だ。

 島国が長い期間侵略の魔の手から逃れていた最大の理由は伊達ではないのだ。

 

 ダンジョンの途中にまともに船を持ち込む手段なんてあるはずがない。

 だからこそ兄は攻略に頭を捻り続けていたのだ。

 

 24層には何もなかった。

 訂正。

 空に浮かぶ島が転々と存在するだけで、上にも下にも右にも左にも青空がずっと続いている空間だった。

 

 こんなもんどうやって渡れと言うんだ。

 生命の原液的なやつでブーストしたサメ機人(シャークボーグ)に装備したドローンで兄は移動して25層への階段を見つけた。

 

 ……まあいいか。

 ガチャを回してティータイムにでもしよう。

 

 R・チャリオット

 

 出現したのはデカブツだった。

 いや、それの用途を考えると大きいわけではないか?

 半分で切り取って天蓋を無くした馬車のようなものが私の前に出現していた。

 

 手押し車にも似ているが、大きなタイヤを考えるとやはり馬や牛のような大きな動物に引かせるものだろう。

 そうそのなんだ、アニメでみたことがあるぞ。

 チャリオットってやつだ。

 

 ただ……やっぱこれ、ちょっと浮いてるんだよな。

 タイヤが接地していない。

 それに、乗るところにUSBのポートが付いている。

 

 ええ……。

 それに手すりのような部分の付け根に、LEDランプがいくつかついている。

 そのことが示すのは……。

 

 走ると発電してUSBバッテリーに充電する……?

 いや、タイヤが接地していないんだから走ろうがタイヤは回らず、発電出来るわけがないんだが。

 それに充電するポートがないせいで、本当にバッテリーとして使えるのかもわからない。

 

 兄にやらせるか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日。兄はあのゴリラと化したサメもどきにこのチャリオットを引かせた。

 筋力が増したサメもどきは馬にも迫る速度で走り出し、半端に浮いているチャリオットは殆ど振り回されるような形で引かれているのだ。

 というかやっぱタイヤが接地していないせいですごい勢いで横滑りしている。

 地面を舐めて跳ねないのは魅力だが、他にない動きなせいで兄も対応に困っているようだ。

 

 充電? 1時間ぐらい走ったら、LEDライトを2分ぐらいつけられる程度に溜まってたよ。

 しょ、しょっぱい……。


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